メイン > 週刊東洋経済書評『ブックレビュー』(2005年) > 2005年4月2日~4月30日

通貨の興亡―円、ドル、ユーロ、人民元の行方
黒田 東彦

中央公論新社 2005-02
売り上げランキング : 29,922


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ドルや人民元の話題が新聞に載らない日はないほど、今日では、外国通貨の問題が日常的な存在になっている。しかし、為替の仕組みは複雑で一般には分かりにくい。

本書は、最近まで財務省の財務官として通貨政策の当事者だった著者が、自らの体験を踏まえて、「一般向けの読み物」として語った通貨読本である。国際通貨問題の過去、現在、そして将来を通観しつつ、今日、直面している日本円の問題と「円外交」のあり方を平明に説いている。問題をまず大づかみに理解するには格好の概説書である。

本書はまず、歴史について解説する。戦前の国際通貨ポンドの栄光と没落、戦間期のドルへの覇権移行、そして第2次大戦後のブレトンウッズ体制の発足と終焉、変動相場制の下でのドル本位制、1990年代後半のユーロ誕生と人民元の台頭……と、いささか駆け足の感もあるが、読者は17世紀以来の国際通貨の興亡の歴史を概観できる。

こうした大河のような通貨の歴史のなかで、日本が、戦後、経済大国に発展したにもかかわらず、円の存在感は薄かった。それはなぜだろうか。 97年のアジア通貨危機をきっかけとして、日本の円外交は歴史的な大転換を果たした。それまで、円の国際通貨としての役割を極力回避してきた大蔵省が、遅ればせながら「円の国際化」、そして、そのための金融ビッグバンへと大きく舵を切ったのである。

大蔵省きっての国際派である著者は、それまでの「円の国際化」の遅れを、国内金融秩序をより重視する日銀・大蔵省の国内派の反対のせいだったと率直に認める。巷間ではつとに指摘されてきたことだが、当局者自らの発言だけに重みがある。

著者は、アジア危機後の円の「国際通貨化」への筋道として、自らアジア通貨基金構想(AMF)や、通貨預け合い、アジア債券市場育成などに取り組んできた。 AMFは米国の反対で頓挫したが、こうした地道な地域金融協力や、FTA(自由貿易協定)など貿易面での機構作りなどは着実に進んでいる。

著者は、こうした実績を踏まえて、できるところから漸進的に金融資本市場の統合を進め、最終的にはアジア共通通貨の実現を目指すべきだと主張する。 評者は、通貨制度が漸進的に進化を遂げて究極には世界通貨制度に至るという、いわゆるトリフィン仮説には懐疑的だが、長期ビジョンを見据えたうえで、まず中国の民主化や日中関係の改善など、足元の難問に取り組むべきだとする著者の主張には共感できる。【評者 神尾昭男 経済評論家】

■005/04/30, 週刊東洋経済, 126ページ

元気が育つ家づくり―建築家×探訪家×住み手
仙田 満 渡辺 篤史

岩波書店 2005-02
売り上げランキング : 103,280


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本書は、テレビの住宅探訪家として知られた渡辺篤史氏と建築家の仙田満氏の対談からなる本である。話題はあちらこちらに移るが、目的は明確である。美しく住みよい街、住宅とは何か、どうすればそれを実現できるかである。

日本の住宅環境が欧米に劣るのは否定できない事実と思う。もちろん、日本の個々の家を見れば、その大きさはともかく、欧米に比べて一方的に劣っているとは思えない。にもかかわらず、街並みが劣るのはなぜだろうか。本書は、「間合い」という言葉を使う。パリでは、旧市街から離れたところに斬新な建物がある。現代建築のル・コルビュジェの建物は、通りから絶対に見えないところにあるという。「学んだことが咀嚼されない人間と同じように、小賢しい主張を繰り返している街並み」という言葉を引いて、日本の街並みを評する。街並みばかりでなく、日本の現在についての言葉かもしれない。

建物が個性的であれば緑が必要で、建物と建物の距離がゼロに近ければデザインの共通化が必要だと指摘する。緑に囲まれたアメリカの郊外住宅とヨーロッパ市街地の密集した住宅がともに美しい理由が分かった。

街並みの美しさについての議論も啓発的であるが、建築家の設計した個々の家も魅力的である。最初に登場するのは、3階建てコンクリート住宅の屋上にプールのある家である。吹き抜けと高いガラス・サッシから光がさんさんと注ぎこむ。住宅用のサッシでは間に合わないので、店舗用のサッシをそのまま使ったという。元気が育つというより、元気があるから楽しい家という気もする。住宅や街並みという視覚的なものについての評価をめぐる本であるのに、小さい写真がやや多いのは残念な気がした。【評者 原田 泰 大和総研チーフエコノミスト】

■005/04/30, 週刊東洋経済, 127ページ

成果主義神話の崩壊
斎藤 貴男 東京管理職ユニオン

旬報社 2005-02
売り上げランキング : 10,920

おすすめ平均
成果主義の問題点、改善点がコンパクトにわかりました

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現在大企業の80%以上で導入され、中堅、中小企業でも急速に広がっているとされる成果主義。だが、「目標設定が低くなる」「評価システムが不透明」など、指摘されてきた問題点の多くは、依然として未解決のまま。実際民間調査機関の調べでも、労使ともに実に約9割が問題ありと見ているというありさまだ。

本書は『機会不平等』等の著作でいち早く成果主義の問題点をえぐったジャーナリストの斎藤貴男氏と、個人加盟の労働組合である東京管理職ユニオンが、制度導入の背景、現状、法律問題等の検討を通して、成果主義の問題点を余すところなく描いている。

中でも圧巻は、ユニオンに寄せられた悲劇的な相談事例の数々。突然の賃金ダウン、不透明な降格、パワーハラスメントと「何でもあり」の世界が広がっているこの制度の実態を、リアルに伝えている。企業別組合では勝てない、プロ野球選手会の精神に学び個人加盟労組を活用すべきと喝破する。

■005/04/30, 週刊東洋経済, 127ページ

南京事件「証拠写真」を検証する
東中野 修道

草思社 2005-01-31
売り上げランキング : 1,162

おすすめ平均
真摯に検証する
見破ります
虚偽写真など常識になるべき

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南京事件とは、1937年12月の南京戦において、6週間にわたり日本軍によって行われた虐殺、暴行、掠奪、放火などの非人間的行為である。当時の“証拠写真”によって歴史的事実として国際的にも定着している。本書によると、これらの延べ3万枚余りの“証拠写真”の初出は、南京戦の半年後に刊行された『日寇暴行実録』と『外人目撃中の日軍暴行』であった。

ところが、これらの写真の中には、当時日本の雑誌に載った写真を転載、キャプションを改竄したもの、「日本兵」の軍服や軍装に矛盾があるもの、真冬の南京には不向きな夏服を着ているもの、被写体と影の関係から6月初旬の撮影と特定されるものなどが含まれ、驚くべきことに“証拠写真”として通用するものは一枚もない、という。

「たしかに南京事件はあった。だが、現在それを告発するための写真は、プロパガンダ用の写真にすぎない」と本書は結んでいる。

■005/04/30, 週刊東洋経済, 127ページ

その後の慶喜―大正まで生きた将軍
家近 良樹

講談社 2005-01
売り上げランキング : 46,502

おすすめ平均
歴史の愉しさに浸れます
大政奉還後の慶喜の長い人生

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日本人なら徳川慶喜を知らない人はほとんどいないだろう。尊皇攘夷の元祖、水戸徳川家に生まれ、御三卿の一橋家に養子に入り、さらに徳川宗家を嗣いで第15代将軍となったが、時すでに明治維新前夜。政権からの自発的撤収に活路を求めて大政奉還を決断するものの、王政復古クーデターで心ならずも鳥羽伏見戦争に突入、そして敗北。「朝敵」の汚名を着せられ、寂しく歴史の表舞台から消えていった……。と、大方の認識はこんなものではないだろうか。しかし、明治元年の時点で、慶喜はまだ30歳。実は、ここから、彼の長い後半生が始まるのだ。

戦争後、慶喜は謹慎を命ぜられ、徳川宗家当主の座を退く(第16代当主には御三卿の田安家から幼名亀之助、後に貴族院議長になる家達が迎えられた)。一時は処刑の可能性もあった慶喜だが、皇女和宮(第14代将軍家茂夫人)や勝海舟、山岡鉄舟らの働きにより刑を免れ、家達とともに静岡に行く。俊秀と謳われた人だけに、新政府に対してさまざまな意見や思いは当然あったはずだが、彼は渋沢栄一などの旧幕臣との面会でも、政治向きのことに関しては、ほとんど黙して語ってはいない。

では、彼は不本意な隠遁生活を強いられていたのだろうか。著者は、静岡での明治10年代こそ、慶喜にとって最も幸福な時代だったという。好奇心が強く、新しいもの好きの彼は、静岡で写真、釣り、投網、狩猟、囲碁、将棋、鵜飼い、謡い、能、小鼓、洋画、刺繍、自転車といった趣味にのめり込んでいく。写真、洋画、投網などは、玄人はだしの腕前だったという。

こうして悠々自適の生活を楽しんだ慶喜は、明治21年に従一位叙任、明治35年にはついに公爵に叙せられ、大正2年、決して不幸とはいえない76歳の天寿を全うしたのであった。

■005/04/30, 週刊東洋経済, 128ページ

中国の人口問題と社会的現実
若林 敬子

ミネルヴァ書房 2005-02
売り上げランキング : 104,480


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現在わが国は、少子高齢化という難題を抱えているが、世界に目を向けても、宗教や民族対立、環境破壊や人権などと密接に絡み合い、一筋縄ではいかないのが人口問題である。厚生省人口問題研究所出身で中国の人口問題を専門とする著者は、世界の人口問題を俯瞰的にとらえつつ、中国の人口問題をさまざまな側面から掘り下げている。昨今、エネルギーにしろ食糧にしろ、中国の動向が商品相場に与える影響は大きくなっている。中国の人口問題を知ることは、中国経済、社会について理解を深めるためにも有益だ。

本書によると、中国の一人っ子政策は、狙いどおりの人口抑制効果をもたらしたが、一方でいびつな男女比(重男軽女)という弊害も進んでいる。その実態は老後を考えて女の子を欲しがるという日本とまったく様相を異にする。また中絶をめぐる各国の法規制や衝突、国際会議での議論も紹介されているが、非常に興味深い内容となっている。

■005/04/30, 週刊東洋経済, 128ページ

人は仕事で磨かれる
丹羽 宇一郎

文藝春秋 2005-02-24
売り上げランキング : 356

おすすめ平均
就職活動をする学生や若い人達に一読をお勧めする
ビジネスマンは見習おう
修羅場が人を磨く

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著者は安保闘争時、名古屋大学自治会のリーダーだった。当時の純粋な気持ちは大商社のリーダーになっても持続された。カネや権力や名誉から相対的に自由でいられた経営者が人をその気にさせる才能を存分に発揮させたらこうなる、という話がここにはある。年を経ても言動に一貫した軸があって、それが経営理念に凝縮されたとき、強い説得力を持つのである。

伊藤忠社長として、4000億円もの不良資産を一括処理して大赤字を計上し、返す刀でファミリーマートをはじめとした巨額の投資をやってのける。社長退任を前に減損会計の先取りで身軽な体質を実現、決断こそ経営だということを身をもって示した。過去最高益という結果も伴って。

率直この上ない語り口は著者の性格そのものであり一気に読ませる。企業の活性化とはこのようにするのだという実例にも満ちている。世の経営者にぜひ読んでほしいし、ミドルにも励ましの1冊となるだろう。

■005/04/30, 週刊東洋経済, 128ページ

いま、現実をつかまえろ!―新世代・優良企業のビジネス法則
ラリー・ボシディ ラム・チャラン

日本経済新聞社 2005-01
売り上げランキング : 17,990

おすすめ平均
現実をきちんと捉えることの難しさ!

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本書は、ボシディとチャランの名コンビによるベストセラー『経営は「実行」』の続編だ。前著では、経営における「実行」の重要性を説き、戦略、業務、人材という三つのプロセスを効率的に結びつけて成果を出す方法が示された。本書では、そのさらに前段階ともいうべき「現実の直視」に焦点が置かれている。つまり自分たちが戦っているゲームの現実を完全に理解して初めて有効な戦略もその実行も可能になるというわけだ。

著者たちが開発した、この「現実」を理解するための具体的でユニークな方法が「ビジネスモデル」だ。事業を取り巻く外部環境、事業で達成すべき財務目標、その外部環境で財務目標を達成する際に基盤になる社内の活動と能力の三つの要素の最適なバランスを探して結びつける、そしてこれを完全で効果的なものにするために繰り返し「検証」するプロセスのことだ。

本書ではまた、「ビジネス感覚」「知識欲」「イニシアチブ」といったキーワードが出てくるが、これらも、ぜひ押さえておきたい。

本書は実例が豊富だが、なかでも目を引くのは、3Mのマックナーニ、ホームデポのナーデリ、GEのイメルト、それに著者のボシディも含め、「ウェルチ門下生」が多く登場している点だ。これも、ウェルチが重視していた「現実の直視」が、GEの企業文化として根づいていることの証しといえよう。

さて、日本企業では、過去の成功体験が忘れられず、また既得権益や自己保身のために、なかなか「現実の直視」ができない経営者がいまだに多い。こうした経営者には、ぜひ本書を読んで目を覚ましてもらいたい。本書はまた、一般のビジネスパーソンが読んでも非常に役立つ実践的な内容だ。前著と併せて読んでみたい。 【評者 黒田康史 ベンチャーキャピタリスト】

■2005/04/16, 週刊東洋経済, 119ページ

淋しきカリスマ堤義明
立石 泰則

講談社 2005-01
売り上げランキング : 54,109

おすすめ平均
立石氏の作品としては・・・・
最後の土地神話、崩壊!
寄せ集め

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堤義明氏と西武鉄道グループの凋落ぶりがひどい。非常に強力な経営者のイメージがあった同氏だが、フタを開けてみれば彼の企業は、前近代的な経営スタイル、社会貢献を忘れた課税逃れ、有価証券報告書の虚偽記載に象徴される企業の私物化等々の「非常識」がまかり通る存在だった。

本書は、その義明氏の人間と経営者としての像を追ったノンフィクション。彼の経営手法を決定的に性格づけた複雑きわまりない家族構成や彼自身の生い立ちに関する記述は読ませる。

信じがたい暴君の父・康次郎、終生日陰の存在だった母・恒子、義明氏同様、複雑に屈折した異母兄弟たちなど、人々の織りなす関係性の重さが読み手にずっしりと伝わってくる。義明氏の本質は、父のコピーだったのか、それとも彼は反逆者だったのか。義明氏は異母兄たちに本当のところ何を感じていたのかなど、読み手自身が考えることを迫る。“ひと”を描くことに成功した作品である。

■2005/04/16, 週刊東洋経済, 119ページ

渋谷ではたらく社長の告白
藤田 晋

アメーバブックス 2005-03-31
売り上げランキング : 32

おすすめ平均
ものすごく面白い
藤田社長の、真実のストーリー
この本を読むのはどんな人…?

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将来を夢見ている学生、仕事の壁にぶつかったビジネスマン、IT経営者を十把一絡げに見ている人、そして人生にへこたれている人。全ての人に本書を贈りたい。

著者の藤田晋氏はビットバレーの生き残り、サイバーエージェントを7年にして年商360億円規模の上場企業に育て上げた若手ベンチャーの代表格である。女優の奥菜恵氏と結婚し話題にもなった。

こう書くと、浮ついた若手起業家と感じるかもしれない。一度本書を手にとってほしい。創業当時カネもなく人脈もなくあるのは若さと頑張りだけ。藤田氏たちは週110時間、月に440時間以上働いた。「何を聞かれてもできないというな。持ち帰ってできるようになればいいんだ」。藤田氏は創業仲間にそう話す。株式上場後はネット上で攻撃される日々。単純なサクセスストーリーでは決してない。成功は必然であることを教えてくれる。青春小説としても一級品。

■2005/04/16, 週刊東洋経済, 120ページ

夢を叶える仕事術―恋も仕事も思いのまま
福井 泰代

ビジネス社 2005-01
売り上げランキング : 142,610

おすすめ平均
一読の価値あり!
勝ち負けではない
子育て主婦必読

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地下鉄のホームで必ず目にする「乗り換え便利マップ」。著者はこれを作った女性起業家だ。かわいらしいタイトルや装丁、女性同士のおしゃべりのようなソフトな語り口で、起業や経営にまつわる体験談が失敗も含めて率直につづられていて、一見するとお気楽なエッセイのよう。

だが、起業に欠かせないポイントがしっかりと押さえられ、想像以上に硬派な内容は、お堅い起業指南書と比べても遜色ない。発明主婦が、ふとした思いつきから「乗り換え便利マップ」を作り上げ、ビジネスにしていく。成功すると、それを膨らませて次のビジネスにつなげていくさまはみごと。特にビジネスについて学んだことはないというが、日々の仕事の中からつかんだ「42のエッセンス」には説得力がある。

女性が働くこと、起業すること、経営することの、メリットとデメリットは半々という。起業を目指す女性だけでなく男性にも読んでもらいたい本。

■2005/04/16, 週刊東洋経済, 120ページ

グローバリズムの「失敗」に学ぶ15の原則―世界を揺るがす危機を読み解く
M.ゾニス D.レフコビッチ S.ウィルキン

アスペクト 2005-01
売り上げランキング : 91,728

おすすめ平均
ローカルな政治力学再考

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グローバリズムを普遍化への動きとしてとらえるとき、その絶頂期に歴史を逆行させるかのような事件が、世界各地で頻発してきた。それは“キムチ”を咀嚼せずに、各国各地一律のグローバリズムを進めようとしてきたからだ……本書の主張は、この一点に尽きている。

ここでキムチは、正真正銘、韓国を代表するエスニック料理を指している。韓国人には三食欠かせないが、欧米人にとっては避けて通りたい食べ物だ。しかし、キムチを韓国人の食卓から追い払い、世界各国に普及しているという理由だけでビッグマックを食することを強要すれば、グローバリゼーションを信仰する勢力は、信じがたいほどの抵抗や反対に遭遇する。

グローバル化の波に洗われるようになると、必ず各国・地域それぞれに固有の政治力学や経済的固有性、制度の不備などが噴出し、世界基準に統一できない状況が出現する。

その結果、グローバリゼーションは各国政治の不安定性を増幅し、機能不全国家が抱える問題を世界的に拡散してしまう。9・11同時多発テロが象徴するように、当初はいかに些細な事件、地域政治、地域的な紛争であっても、無視すればたちどころに不幸を世界に拡散する。

これは当初は予期しえなかった事態なのだが、解決の方法はある。それは市場開放経済の陰で作用している各国・地域それぞれに独特な政治力学(=キムチ)を無視しないことだ。

本書では、世界情勢に重大な影響を及ぼす政治・経済ダイナミックスを、15の原則に基づいて分類・分析する。そしてローカルな政治力学を理解・予測する枠組みを提供して、真のグローバリズムが浸透していくことを願っている。「そのためにあなたはキムチを食べられますか」という問いかけである。

■2005/04/09, 週刊東洋経済, 137ページ

次代のエースは育っているか?―20代・30代コア人材の育て方
佐藤 政人

同友館 2004-12
売り上げランキング : 99,766

おすすめ平均
細かいノウハウや調査データも豊富
こういう考え方も重要

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部下に恵まれなくても、テレビコマーシャルのように人材派遣会社に電話して替えてもらうわけにはいかない。そういう部下を使いこなし、一人前に育て上げることも上司たる者のつとめである。とはいえ、高額の管理職研修に放り込んで一丁あがり、というほど簡単なものではない。部下をいかに育てるべきか、悩める中間管理職に、本書は「コア人材」を発掘し、育てる方法を指南してくれる。

20代、30代は、現時点での貢献度はさほど大きくないとしても、育成次第では将来大きく伸びる可能性を持つ。また、狭い範囲内であっても、高い成果を上げることもある。だが、そういった成果を、あまり評価もせず、組織の中に埋没してしまう状態が続くと、人材が育たないばかりか、意欲ある人材であればあるほど流出してしまう可能性が高い。こういった「コア人材」予備軍を活性化し、人材の流出を防ぐことが、企業自身の活性化につながることは間違いない。

■2005/04/09, 週刊東洋経済, 138ページ

お寺の経済学
中島 隆信

東洋経済新報社 2005-02
売り上げランキング : 1,275

おすすめ平均
お寺の仕組み、仏の道。

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徳川幕府により導入された檀家制度のおかげで大半のお寺(檀家寺)は戦後も長らく安泰だった。葬儀、追善供養、寄付などの安定収入が得られたからだ。だが、経済成長に伴う人口移動や地域コミュニティの崩壊によって檀家の寺離れが進み、昨今、葬儀市場は葬儀社に、墓地市場は石材店にお株を奪われつつある。高齢化も助けにならない。葬式を出される側は増えるが、出す側が減るので、葬儀はおのずと質素になる。

本書は檀家制度、本山・末寺制度の歴史、宗教法人、税制、葬式仏教のカラクリなどお寺を取り巻く制度、慣行を検証したうえで再生の道は墓をお寺から切り離し、檀家制度を一度完全に解消するしかないと提言している。仏の教えを広め、苦しみを救うという本来の役割に立ち戻るのだ。そうすれば人々は必ずお寺に戻っていくと著者は言う。実際、ストレスの多いこの時代、拠り所となるお寺が身近にあってくれたらどんなにいいだろう。

■2005/04/09, 週刊東洋経済, 138ページ

成功した起業家が毎日考えていること―ケーススタディで学ぶベンチャー・マーケティング
レオナルド・ローディッシュ ハワード・モーガン エイミー・カリアンプル

中経出版 2004-12
売り上げランキング : 5,117

おすすめ平均
ベンチャー・マーケティングのエッセンスを理解できた
マーケティングの本質が明確に理解できました。

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評者は仕事柄、ベンチャー企業の経営に関わっているが、最近、特に、ベンチャー経営で最も大切なのは、いかに自社の製品・サービスを売って利益を上げていくかだということを痛感している。どんなに素晴らしい技術や製品・サービスがあっても、売れないことには、資金的に余裕のないベンチャーは会社として存続できないからだ。

本書は、こうしたベンチャー経営者やベンチャーキャピタリストの最も深い悩みを解決してくれるヒント満載のマーケティング書だ。この種の本でベンチャーに焦点を当てたものはほとんどないだけに、その意義は大きい。著者は、起業マネジメントとマーケティングでは世界的権威であるウォートンスクールのベンチャーマーケティング担当教授が中心だ。彼らの長年の経験から得られたスキルやノウハウは非常に実践的であり、加えて、ほどよく配された22のケーススタディが読者の理解を深める上で役立っている点は高く評価できる。

本書では、ポジショニング、セグメンテーション、ターゲティングといったマーケティングの基本や、コトラーの4Pに沿っての議論が中心だが、あくまでベンチャー仕様だ。また、製品開発の際にコンセプトテストが大切なことや、価格決定の際に顧客の「知覚価値」を高めることが大切なことなど、ベンチャーでは見落とされがちなポイントが多いのもありがたい。

さらに、ハイテクマーケティングの祖、ムーアのキャズム理論やブランド論の第一人者アーカーの理論をベンチャー向けに取り入れたりと、さまざまな工夫が凝らされているのもよい。

ぜひ本書によって、1社でも多くのベンチャーが成功することを願いたい。ベンチャー経営者、ベンチャーキャピタリスト必読の書である。【評者 黒田康史 ベンチャーキャピタリスト】

■2005/04/02, 週刊東洋経済, 173ページ

逆転戦略 ウィルコム-「弱み」を「強み」に変える意志の経営
鈴木 貴博

ダイヤモンド社 2005-01-28
売り上げランキング : 3,275

おすすめ平均
後半が面白い
実現性の高い仮説ストーリー
業界の俯瞰は正確。しかし組織分析の詳細が甘い。

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ウィルコムのエアエッジフォン「AH―K3001V」。「今さらピッチ?」と思う人は遅れている。これは携帯電話と同じような外見をしているが、小型ながらパソコンと同じ本格的ブラウザを内蔵、パケット料金完全定額制、インターネットつなぎ放題という驚くべき端末なのである。

この2月、PHS通信のDDIポケットは、新社名「ウィルコム」として生まれ変わった。PHSの唯一の勝利者だった同社を世界最大級のエクイティファンド、カーライルグループと京セラのコンソーシアムが買収したのだ。なぜ彼らは今さらPHSに投資をしようというのか。勝ち目はあるのか。そんな疑問を持った人も少なくないだろう。

本書は、こうした疑問に明快に答えている。今回の買収劇の意味、ウィルコムが今後展開しようとしているビジネス、今後のPHSの可能性などをわかりやすく解説してくれる。何を隠そう、評者も読んで目からウロコが落ちた一人だ。

■2005/04/02, 週刊東洋経済, 173ページ

談合しました―談合大国ニッポンの裏側
加藤 正夫

彩図社 2005-03
売り上げランキング : 10,304

おすすめ平均
警備業界の談合はまだ根が浅い
談合は契約担当者側の責任が大きい
強制捜査の迫力 と 談合解説のわかりやすさ

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談合。この公共事業の宿痾は、現代社会の到るところにはびこっている。大は数百億円の大型プロジェクトから、小は事務用品の納入まで、およそ役所が業者を使う場合、談合が行われないケースのほうが稀である。しかし、業界の外にいるわれわれにとって、談合が実際にいかにして行われているのかを知ることは、なかなか困難だ。

著者は、ある地方に本社を置く警備会社の経理部員だった人。偶然のきっかけから会社が取り仕切っている談合の現場に立ち会うハメになる。談合“初心者”だった彼は、現場で生々しい実態を見る。そしてその後、同業者間の感情的対立による密告、警察による摘発、会社幹部の逮捕、入札の指名停止、リストラといった激動の日々を体験することになるのである。

本書は、描写がリアルなうえ、構成がドラマチックで読み物としても上々の出来だ。それにしても、読んだ後、談合を廃絶する難しさを実感させられた。

■2005/04/02, 週刊東洋経済, 174ページ

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