メイン > 週刊東洋経済書評『ブックレビュー』(2005年) > 2005年10月22日~10月29日
| 働きすぎの時代 | |
![]() | 森岡 孝二 岩波書店 2005-08 売り上げランキング : 249 おすすめ平均 ![]() 労働者が万雷の拍手で迎える本 いつのまにか働きすぎになっていませんか 悪いのは労働者ではないAmazonで詳しく見る by G-Tools |
過労死が大きな社会問題になったのは、バブル経済盛んなりしころの1980年代後半であった。「Karoshi」という言葉が英語にもなったが、人々は、いや日本人はなぜ死に至るほど働きすぎるのだろうか。
もっとも、日本人がみな過労死するほど働きすぎるのではない。役人が過労死したという話はあまり聞かないし、大学の先生が過労死したということも聞かない。会社に勤めている人が会社のために働きすぎているのである。バブル経済が崩壊したあと不況が長期間続いたので、会社の仕事も減り、働きすぎる人も少なくなるはずだったが、そうはなっていない。
なぜ、そんなに働きすぎるのか。株主オンブズマンの運動を先頭に立って行ってきた著者は株式会社論を専門としているが、かねて労働時間の問題に深い関心を抱いて論文や本を書いている。
著者によると、働きすぎは日本人だけの問題ではなく、アメリカ人やイギリス人も働きすぎになっているという。そこで、グローバル資本主義、情報資本主義、消費資本主義、フリーター資本主義という四つの面が現代の資本主義の特徴であり、これが人々を働きすぎにしているのだという。確かにグローバリゼーションや情報化が世界的に進展していることが働きすぎを起こさせているのだろうが、しかし、逆にグローバリゼーションの進展で労働時間が短くなるということも可能だし、パソコンやインターネットの普及で仕事の時間が少なくなるということも考えられる。
にもかかわらず、なぜそうならなかったのか。グローバリゼーションも情報化も、そして消費資本主義もフリーター資本主義も、それを積極的に推進しているのは会社、とりわけ巨大株式会社ではないか。70年代からのプロフィット・スクイーズ(利潤圧縮)に対抗するために巨大株式会社が主体的に推進したのが著者が挙げているような四つの面であった。
そしてこのために労働基準を緩和させ、働かせすぎを可能にしたのも巨大株式会社の利益のためではなかったか。このような働きすぎにブレーキをかけるにはどうしたらよいか、ということを最終章で取り上げ、労働者は自分と家族の時間を大切にせよ、年休をいっぱい取れ、残業はできるだけするな、などという。そして労働組合や企業もそれに協力すべきだし、国の法律や制度も変えるべきだと具体的に提案している。
この当たり前の提案が受け入れられれば問題はないが、はたしてそうなるであろうか。問題は会社のあり方にあるのではないか。【評者 奥村 宏 株式会社研究家】
| ビジネスゼミナール 証券分析入門 | |
![]() | 井手 正介 高橋 文郎 日本経済新聞社 2005-07-23 売り上げランキング : 8,533 おすすめ平均 ![]() はじめの一冊に最適 あの井手&高橋のコンビが出した最新本Amazonで詳しく見る by G-Tools |
本書は、同じシリーズで企業財務についての好著『経営財務入門』と同じ著者の手によるもので、これまたなかなかの好著だ。400ページ余りとかなりの大著だが、株式投資の基礎から応用まで体系的・実践的に学べる「教科書」的存在といってもよいだろう。
本書でたびたび紹介されているのは、「証券分析の父」ベンジャミン・グレアムとその愛弟子で全米第2位の資産家ウォーレン・バフェットの投資哲学およびその手法だ。いわゆる企業の「ファンダメンタル分析」に基づいた「バリュー株投資」と呼ばれる彼らの手法は、今やさまざまな投資関連本で取り上げられているが、本書のユニークな点は、それを日本株に適用し分析している点だ。具体的にはグレアムの五つの「割安」基準と五つの「安全性」基準に従って東証1部上場銘柄を分析し、「割安度」「安全性」、それぞれの視点で二つ以上の基準を満たす銘柄を選び出している。
この分析から驚くのは、グレアムの割安株を見出す基準が70年経った日本の株式市場でもよく当てはまることだ。つまり日本の株式市場が必ずしも効率的ではなく、ファンダメンタル価値より株価のほうが割安の企業がたくさんあるということだ。
本書ではまた、トヨタ自動車がケーススタディやその他の事例で取り上げられているが、今旬な企業だけに、その分析は大変興味深い。
さて、折から個人を中心に株式投資熱が高まっているが、巷の情報に惑わされず、自分で企業分析を行った上で投資したいものだ。その点、本書の割安銘柄リストは大いに参考になるだろう。本書で学んだ手法を基に、リストの銘柄の詳細分析、さらには東証1部上場企業以外の企業についての分析も行ってみると面白いだろう。【評者 黒田康史 ベンチャーキャピタリスト】
| 成瀬巳喜男の世界へ リュミエール叢書36 | |
![]() | 蓮實 重彦 山根 貞男 筑摩書房 2005-06-23 売り上げランキング : 10,372 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
小津安二郎、黒澤明、溝口健二ら国際的な評価を受けている日本の映画監督は多い。その中でもここ数年、急速にその地位を高めているのが成瀬巳喜男である。本書は今年生誕100年を迎えたこの日本の名匠に捧げられた、評論家、映画監督、過去の出演女優や美術監督、カメラマンらの寄稿やインタビューによって構成されている。
トーキーの時代にデビューし、松竹や東宝の専属監督として積み重ねた90本に及ぶ豊かな作品群は、当時の銀幕のスターであった高峰秀子、原節子、山田五十鈴、司葉子ら女優陣の美しさと人間的な弱さやしたたかな強靭さの二面性を鮮明に描写している。まさに女優の美を存分に引き出した名匠といえる。
だが国際的な評価が高いとはいえ、日本ではほぼ忘却された映画作家でもあった。日本映画史に屹立する名作『浮雲』(昭和30年作)でさえビデオやDVDも満足に利用できない状況が続いていた。しかし、本書の編者たちの地道な活動が反映してか、生誕100年を記念してDVDの選集が発売され、フィルムセンターやテレビなどで包括的な回顧も始まって、国内においても再評価の機運が急速に高まっている。
本書の蓮實重彦やベルナール・エイゼンシッツの論考に描かれているように、成瀬の映画の特質は、『浮雲』に描かれた、都会とは際立った遠辺の地に男女が逃避し、かれらの孤高の愛を際立たせる物語が大半である。そしてその男女の孤独な逃避行は、どちらか一方のさらなる逃避や突然の死亡などにより一層深まる、という孤独の二重奏が展開されている。成瀬作品に印象的なのは、世間と孤立してまで手に入れた愛自体が脆く崩壊していく様子なのである。本書は成瀬作品の豊潤な作品世界を知る格好の企画である。【評者 田中秀臣 上武大学ビジネス情報学部助教授】
| 犯罪は「この場所」で起こる | |
![]() | 小宮 信夫 光文社 2005-08-17 売り上げランキング : 886 おすすめ平均 ![]() 示唆に富んだ良書 犯罪の原因はそれを起こさせる環境にある!? 犯罪予防は身近なところからできるAmazonで詳しく見る by G-Tools |
近年、日本の犯罪発生率は増加の傾向が顕著だが、他方、欧米諸国の犯罪発生率には歯止めがかかり、減少する傾向さえ見せているという。日本人のライフスタイルが欧米化し、犯罪に至るルール違反を抑止してきた集団の求心力が弱まったことに一因がある。一方、欧米の発生率の減少は、従来の犯罪理論から脱却した対策の成果だという。
従来の犯罪学は、犯罪を犯罪者の異常な人格や劣悪な境遇などに帰因させるなど、原因を犯罪者の側にのみ求め、「機会」の観点が抜けていた。機会を減らせば犯罪は減らせる。街に人に、犯罪を起こしにくい状況を作り出すのが効果的なことが実証された。
これからは日本もこの方法の導入が必要となる。警察や行政だけではない、犯罪被害者にならないために、教育現場や、地域住民一人ひとりが取り組むべき課題だ。豊富な内外の事例を紹介して、閑却されていた視点からの効果的な犯罪回避方法が示される。
| 中世ヨーロッパ騎士事典 | |
![]() | クリストファー グラヴェット リリーフシステムズ あすなろ書房 2005-09 売り上げランキング : 194,844 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
中世において騎士になるのは貴族の子弟であった。まず、7歳くらいで小姓として他の貴族に仕える。次に14歳くらいで従者として騎士に仕え、騎士の見習いを始める。さらに従騎士として、時には騎士とともに戦闘に参加して研鑽を積み重ね、21歳くらいで騎士という名誉ある軍人の位階に受け入れられる。この時、騎士叙任の特別な儀式が大聖堂で執り行われ、司教が叙任者の役割を務めることもあった。
これほど厳格な制度であったがゆえに、アーサー王伝説を嚆矢とする騎士道、甲冑、武器、城などの絢爛たる文化の華が咲いたのだった。しかし、火縄銃の導入、銃を装備した歩兵部隊の登場という変化が起こり、それにまったく対応できない重装備の騎士が戦場から消えることになる。まさに中世の終焉であった。
本書には日本の武士との比較もある。イギリス人の著者が「侍」をどう捉えているか、これも興味深い点である。
| 古寺歩きのツボ―仏像・建築・庭園を味わう | |
![]() | 井沢 元彦 角川書店 2005-04 売り上げランキング : 23,614 おすすめ平均 ![]() まさにツボ 入門書としてはいいと思う こころ静かに!Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ジャーナリズムに日本史のユニークな論点を提供し続けてきた井沢元彦による古寺巡礼の入門書。井沢の手になるならと期待して読んだが、期待に違わぬよくまとまった本だった。
たとえば仏像。古寺にある仏像をしっかり鑑賞するためには本来、仏教教理の基礎知識、宗教史、東洋史、日本史、美術史などの教養が必要で、これらすべての修得はたやすくないが、本書は一般人が仏像を見る場合、最低知っておくべき知識を紙数の制約の下で、要領よく盛り込んでいる。
如来と菩薩は何が違うのか、釈迦如来と阿弥陀如来と大日如来の違いは、なぜ多くの菩薩は宝冠や宝石で着飾っているのに如来はどれも単衣だけなのかなど、当然わき出てくる疑問の答えを知ることができる。
また、京都・奈良以外のあまり知られていない地方の古仏・秘仏の紹介も、古寺巡りの好きな読者に役立つ。初心者が守るべき古寺訪問のマナーについて言及しているのもいい。
| 大空真弓、「多重がん」撃退中! | |
![]() | 大空 真弓 宝島社 2005-09-01 売り上げランキング : 28,061 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
やはり、がんは怖い! 私の周りでもバタバタとがんで斃れていく。もちろん早期発見・早期治療ができれば、撃退もそれなりに可能と聞くが……。
女優の大空真弓さんが、1998年から5年間で乳がん、2回の胃がん、食道がんを体験し、現在も入念な経過観察中だという。
不幸中の幸いと言うべきか、それぞれがみな初期がんであり、原発性のがんであった。それゆえ、彼女は多重がんを退治するためには、「モグラ叩き」以外にない、と決意する。
それにしても、彼女の撃退法は凄まじい。まず初めに乳がん、温存法の選択もあったが、左乳房の全摘手術を受ける。演劇の共演者には一切知らせないようにと箝口令を布き、病院を抜け出して、撮影と稽古、そして姪の結婚式に出席するといった武勇伝(?)まがいの日々。それに彼女の生来の陽気さが加わる。
本書の後半部の、彼女の半生記は面白く、また健康法も参考になる。
| 経済 | |
![]() | 川本 隆史 岩波書店 2005-05-12 売り上げランキング : 122,798 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
経済と倫理の関係は、経済学と倫理学の始まりから問題とされてきた。応用倫理学講義シリーズの一冊として刊行された本書は、経済と倫理にかかわるさまざまな問題を論じる。
その対象は、A・セン、J・ロールズ、R・ドウォーキンの議論の検討から、最近隆盛の著しいビジネスエシックスの問題、たとえばインサイダー取引や金融機関への公的資金投入の倫理性の考察まで広範囲に及ぶ。
巻末の「四酔人経綸問答」からは、今の社会の担い手ともいえる1950年前後に生まれた世代の経済社会観をうかがい知ることができて、これもまた面白い。この世代は高度成長からの戦後日本社会の激しい変容を体験してきた人々である。成長はそれ以前の貧困からの脱出を可能にした。しかし、それはまた別の問題を作り出した。
評者が特に興味をそそられたのは、市場経済に対する編者の“わだかまり”である。たとえば、冒頭に置かれた吉野源三郎『君たちはどう生きるか』(岩波文庫)をめぐる解説がそうだ。この本の主人公、コペル君は、自分が赤ちゃんのときに飲んだ粉ミルクが、実は遠く離れたオーストラリアから来たことを知る。「何千人だか、何万人だか知れない、たくさんの人が、僕につながっているんだ」。ここから編者は「人間分子」を結びつける網の存在に、経済と倫理の関係が問題となる根本的なきっかけを見出していく。
しかし、オーストラリアの粉ミルクが日本にやってくるのには、市場を通じた国際貿易を必要とすることはいうまでもない。だとしたらなぜ編者が人々を「見たことも会ったこともない大勢の人と、知らないうちに網のように」つなげるグローバル市場経済のもつ倫理性をもっと積極的に評価しないのか、評者には大変興味深く感じられた。また、端々に見られる経済学批判の多くには、率直に言って誤解が含まれていると思う。
本書の中で最も思索を刺激するのは、巻末の対談である。ここでも市場経済とそれが成し遂げた経済発展の成果に対する“わだかまり”が感じられるのは興味深い。さらにいえば、現在の経済倫理学の争点の一つである世代間対話を試みたならば、より興味深いものになったことだろう。
けれども、このような反応を引き出した本書は見事に成功しているのだろう。人々が「わたしたちはどう生きるか」を問い始めたときに倫理学は誕生した。経済学はその倫理学を一つの母体として誕生した。これからも両者の対話を生産的に進めるのが大事だろう。【評者 若田部昌澄 早稲田大学政治経済学部助教授】
| 幻の終戦工作 ピース・フィーラーズ 1945夏 | |
![]() | 竹内 修司 文藝春秋 2005-07-20 売り上げランキング : 4,736 おすすめ平均 ![]() リアルな終戦工作の記録Amazonで詳しく見る by G-Tools |
昔、読んだ松本清張のミステリー『球形の荒野』を思い浮かべた。主人公は第2次大戦末期に海外で終戦工作を行った元外交官だった。小説の題材となった事実を、新発掘の資料などで掘り起こしたのが本書である。
戦争中の和平工作では「対ソ交渉」が有名だが、並行して進行した秘密活動の一つに「ダレス工作」がある。後のCIA長官で、当時はアメリカの戦時諜報機関の欧州責任者だった。
ダレス工作には二つのラインがあったが、本書が取り上げたのは駐スイス陸軍武官の岡本清福中将や国際決済銀行の北村孝次郎理事が同行経済顧問のペル・ヤコブソンという人物を介して進めた働きかけである。
腕利きの編集者だった著者はヤコブソンが残した詳細な記録に出会う。アメリカ国立公文書館の資料も当たり、工作の軌跡を追った。動機は、「他の活動に比べても、もっとも実現の可能性が高かった、と信じられるから」と述べる(第1章)。
終戦工作はなぜ幻に終わったか。謎を解くカギは本書の冒頭の「無条件降伏」という言葉にある。天皇護持の日本、戦争完勝と対ソ戦略優先のアメリカの「双方を呪縛していた」のだ。
昭和20年5月、降伏したドイツの惨状を見て、日本を破滅の危機から救うために、岡本や北村が動き出した。そこから終戦まで、日米両政府の動きを重ね合わせ、工作の経緯を一日ごとに詳細に再現する。毎日の記述の後に書き添える「B29約六百機、同時に艦載機など約千機、大阪を中心に阪神一帯を爆撃」(〈7月24日〉の項)といった一行が破滅に向かう緊迫した状況をリアルに伝える。
330ページに及ぶ長篇だが、引き込まれて時間を忘れてしまった。清張ミステリーに匹敵する面白さの歴史ノンフィクションだと思う。【評者 塩田 潮 ノンフィクション作家】
| 辛基秀と朝鮮通信使の時代―韓流の原点を求めて | |
![]() | 上野 敏彦 明石書店 2005-08 売り上げランキング : 107,802 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「朝鮮人街道」という石碑が偶然、目に入った。滋賀県近江八幡市を訪ねた時のこと。その碑は、朝鮮通信使が通った「特別な道」の痕跡らしい。東京と近江の関係史を取材中、思いもかけず日韓の「人的」交流史に出会った。それは私の中で温かなショックとして記憶された。
本書をめくりながら、あの時の感動が蘇ってきた。ドキュメンタリー映画『江戸時代の朝鮮通信史』を制作し、3年前に亡くなった在日コリアン・辛基秀。本書は、たぐいまれな辛の行動力と生活哲学を通して生涯を記録した人物ノンフィクションだ。辛は日本で生まれ、神戸大経営学部を卒業し、長年日韓の架け橋作りに力を注いだ。
「朝鮮からの客人一行を見つめる日本の民衆にあこがれに近い感情を読み取った」辛は、映画作りに奔走する。その「あこがれ」の視線を、辛は江戸の絵巻に描かれた日本人の表情から確かめた。あるいは半島から伝えられた「唐人踊り」や、通信使の姿をうつした「土人形」に見て取った。絵巻や踊りや人形という「生活文化」の細部から、手触りから、確かに存在した深く温かな交流の歴史を掴み出す、辛独特の手法。映画『江戸時代の朝鮮通信史』はそこから生まれた。辛のしなやかな手つきは、著者・上野の取材執筆手法とも、重なって見えてくる。
江戸時代、「友好」を軸に12回も派遣された朝鮮通信史。技術や文化を伝えた「幸福な交流」の痕跡。しかし今の日本人は、その史実をどれほど知っているだろうか。対立や併合の歴史は繰り返し強調されてきた。だが、「交流」をめぐる史実の方は影に覆われ見えにくい。「韓流ブーム」が異様な盛り上がりを見せ、竹島問題等で反日が深まる複雑な今。本書の交流の「記録」が、両国の新たな関係の可能性を拓く力になってほしい。【評者 山下柚実 ノンフィクション作家】
| 古代ギリシア入門 | |
![]() | アン ピアソン あすなろ書房 2005-07 売り上げランキング : 94,604 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
碧く輝きわたる海、そこに点在する淡い銀色の島影。石灰岩の山稜、そこにへばりつくように散在する平野。このギリシアの「原風景」は、今も変わらない。
本書は、紀元前20世紀のミノス文明、その後のミケーネ文明という宮廷文明から、前10世紀の都市文明を経て、前4世紀の「大王」アレクサンドロス3世の遠征と病死を含むヘレニズム時代までを扱っている。
いうまでもなく、古代ギリシア文明は、都市的景観、大規模な建造物、文字という三つの要素において、その後の西洋文明、さらに世界の歴史に多大な影響を与えた。ちなみに本書に紹介されているものの多くは、ロンドンの大英博物館の収蔵品であるが、この建物も、古代ギリシアの建築にヒントを得て建てられたという。
こうした瞠目すべき壮大な文化を創造し、それを数百年単位で維持した古代ギリシア人の生活はいかに?という点まで本書は触れている。
| 恥ずかしい和製英語 | |
![]() | スティーブン・ジェームズ ウォルシュ Stephen James Walsh 草思社 2005-10 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
日本語におけるカタカナ語の氾濫はひどい。原語を正しく使っているならまだしも、我慢ならないのが和製英語だ。本書は、よく使われる和製英語が、英語ではどんな意味になるのか、本来の正しい表現は何かなどを楽しく説明している。
たとえば空港などで行われる「ボディチェック」。これでは「ラグビーなどで相手をブロックするための体当たり」の意味になる。正しくはsecurity check。サッカーボールを足でもてあそぶ「リフティング」。英米人はこの言葉を聞いても、手でつまみ上げる動作しか思い浮かばない。転じて万引の意味にも。正しくはkeepy-uppyである。
ひどいのが「マイカー」。よく「連休の行楽地はマイカーで溢れた」などと言っているのを聞くと、「お前は行楽地から溢れるほど自分の車を持っているのか」と言いたくなる。正しくはone’s own carである。
うかつにも和製英語であることを知らなかったものもあり、反省させられる。
| 南スペイン・アンダルシアの風景 | |
![]() | 川成 洋 坂東 省次 丸善 2005-09 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「ピレネーを越すとアフリカだ」と言ったのはナポレオンだが、スペインの南端に位置するアンダルシア地方は、人々を魅了してやまない自然と文化の宝庫である。欧州の一部でありながら、その歴史は、しばしば地中海史あるいは北アフリカ史の一部として語られてきた。
澄み渡った蒼空の下に広がる赤土の大地と紺碧の地中海。古くは8世紀のイスラムの北アフリカからの侵攻と15世紀の国土回復運動、近くはスペイン内戦とこれへのナチスの介入などで歴史の表舞台になったことも多い。日本とのかかわりについても、かの支倉常長が欧州に第一歩を印した地がここである。
これら多彩な歴史を今に伝えるアンダルシアを愛してやまない総勢37名の執筆陣が、豊富な知識と各自の体験を基に、その魅力を余すところなく語るのが本書である。ここは、文芸の面でもロルカ、マチャードといった偉大な詩人やピカソを輩出した地でもあった。
| 禁煙ファシズムと戦う | |
![]() | 小谷野 敦 斎藤 貴男 栗原 裕一郎 ベストセラーズ 2005-09 売り上げランキング : おすすめ平均 ![]() ちょっと喫煙者に優しくなれるかも 副流煙被害 真実への無駄な抵抗Amazonで詳しく見る by G-Tools |
■著者インタビュー 国際日本文化研究センター客員助教授 小谷野 敦
――小谷野さんは鋭い評論活動で固定ファンが多いのですが、今回は編著者として斎藤貴男さん、栗原裕一郎さんと一緒に昨今の反タバコ運動の行き過ぎを「禁煙ファシズム」として批判する本を出されました。世間の反応が気になるところですが……。
今のところ、アマゾンに好意的な反応が二つ出ているくらいで、ネット上ではあまり見ません。私が名指しして批判した連中は、相変わらずなしのつぶてです。
――過剰な反タバコ運動の背景は何なのでしょうか。
一言で言えば、遺伝の問題の隠蔽があるでしょう。ヒューマン・ジェノーム(ヒトゲノム)の解析で、人間の多くの疾病や寿命は先天的に決定しているということがわかってしまった。ところが、多くの人々はこのことから目をそらしたかった。その結果、タバコという後天的な素因を操作することによって、疾病や寿命の定めから逃れようとしたということが反タバコ運動の根底にあります。
――本の中に書かれていますが、日常的にずいぶん戦っておられるんですね。
私は、別にあらゆる場所でタバコを吸っていいんだと主張しているわけではないんです。同席者がタバコは吸わないでほしいと言えば私は吸わない。しかし、たとえば私鉄などでは、吹きさらしの駅のホームの、それも人のいない状況でも禁煙だ。最近も、そうしたところで私が吸っていたら、駅員がやってきて吸うなと言う。そこで私は「それなら警察を呼んで、逮捕してもらっても結構だ」と言った。しかし、警察は来ないし、逮捕などしない。法廷で争えば必ず負けることがわかっているからです。
――東京の千代田区など、自治体の中には、条例で路上喫煙に課金することを定めているところもありますね。
健康増進法も分煙すべしとしか定めていない。だから路上全面禁煙というのは、非常におかしいんです。区の職員に課金を求められたら行政訴訟を起こそうと思っているんだが、残念ながらなかなか捕まらない(笑)。この条例の根拠を質そうと思って、区に問い合わせたことがあるけれども、さんざんたらい回しされた揚げ句、結局、責任者は出てこなかった。
――メディアも、禁煙主義一色ですね。
それはもう戦争中の新聞みたいなもので、まさにファシズムです。反タバコ記事を書いた記者に反論の手紙を書いても、全然返事がないし、まったくひどい。
――こうした流れは今後もっと強まるのでしょうか。
いや、だんだん収まってくると思います。新聞の投書欄などでも、極端にひどいのはしだいになくなってきた。それに私がいる限り、こうした喫煙への異常な抑圧運動は収めるつもりです。私だって野放図な喫煙を推奨しているわけではない。人混みでタバコの火を外に向けて歩いているのが危ないのは当然だ。マナーのよくない喫煙者がいるのは確かだが、悪い酒飲みがいるから酒は一律禁止、悪いドライバーがいるから車は一律禁止とはならんでしょう。タバコもこれらとまったく同じです。


労働者が万雷の拍手で迎える本
いつのまにか働きすぎになっていませんか












