メイン > 週刊エコノミスト書評 『ブックレビュー』 > 2008年5月6日

クリエイティブ資本論―新たな経済階級の台頭
クリエイティブ資本論―新たな経済階級の台頭リチャード・フロリダ 井口 典夫

ダイヤモンド社 2008-02-29
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米国の都市競争に影響及ぼす 3割の知識労働者、日本では?

著者によると、いまやクリエーティブ経済の段階に至っており、それを支えるクリエーティブ階級(知識労働者層)がアメリカでは3割に達し、その他のサービス産業や製造業、農業に従事している階級よりも、高収入である。クリエーティブ経済は技術、才能、寛容性の英語の頭文字をとった3つのTに規定されており、都市の成功はクリエーティブ階級を魅了し、引き留めることこそが重要となる。具体的には、同性愛者が多く、芸術家の人口が多い都市ほど寛容性が高いためクリエーティブ経済で成功している。

原著が2002年にアメリカでベストセラーになったとき、わが国のマーケティング関係者の間でちょっとした話題になった。ブームを起こすものを追い求めている者には、未来はクリエーティブ階級の時代だというご託宣は、魅力的に映ったのだろう。しかし、原著がすぐに訳されなかったこともあって、日本では話題にならずに終わり、やっと訳出された。

話題にならなかったのは、本書には評論家の未来論のような断定口調がなく、研究者らしい抑制が効いていたことと、事例がアメリカに特化していたことによるのだろう。あくまでもアメリカの都市競争力に関する研究書なのだ。そして、一番大きな原因は、もう未来はアメリカではなく、昔のようにすべての人がアメリカのようになりたいとは思わなくなったためではないだろうか。

中核としているクリエーティブという能力は育てられるものでなく、著者が提案しているのも、そういった人材を引きつける場や制度を都市が作ることだけなので、都市計画の専門家以外には、自らの問題として認識しづらい。

まっとうな議論が豊富なデータを添えて積み重ねられているが、いくらクリエーティブ経済がこれまでの情報経済や知識社会論とは異なると繰り返されても、クリエーティブを付加価値という言葉に換えれば、それで済むような点も多く、梅棹忠夫の情報産業論や堺屋太一の知価革命に触れてきた日本人には繰り返しの議論が少なくない。日本人は仕事で自己実現をし、職場のどのレベルでも創意工夫を行ってきた歴史があるため、製造業もクリエーティブであり、本書の知見を日本には単純に当てはめるわけにはいかない。

個人的逸話が多いため冗長だが、労作であることは間違いないし、翻訳もこなれて読みやすい。アメリカの都市の競争力に関する研究状況を知るには格好の本である。【評者 浜野保樹 東京大学大学院新領域創成科学研究科教授】

■2008/05/06, 週刊エコノミスト

個人データ保護―イノベーションによるプライバシー像の変容
個人データ保護―イノベーションによるプライバシー像の変容名和 小太郎

みすず書房 2008-03-21
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技術革新で脅かされる「個人データ」というプライバシー

「プライバシー」という概念は19世紀末に認知されたらしい。端的に言えば「独りにしておいてもらう権利」のことであり、「私人のもつ思想、感情、感性のうち、秘匿しておきたいもの」である。以来、さまざまな要素が付け加わってきたが、コンピュータが実用化するにつれ、「個人データ」と等値されるようになった。イノベーション(技術革新)がプライバシー像を変容させ、多様な意味を持たせるようになったのだ。

本書は、個人データといわれているものがどのような広がりを持つようになったか、その保護と監視がどのようにせめぎ合ってきたかについて、アメリカの事例を参照しながら現状をあぶり出そうとしたものである。

個人データには2つの側面がある。1つは、個人の状態を把握するため住居や選挙人名簿や子育ての情報を明らかにしなければならない側面で、社会の円滑な活動のために当事者間においてはオープンにすることが求められる。もう1つの側面は、個人の病歴や友人との対話や遺伝子情報など秘匿しておきたい事柄で、人間のすべてを掌握しようと企む政府による監視の圧力を常に受けている。むろん、この2つは互いに入り組んでいて単純に割り切れるものではないが、コンピュータがその2つの差違を限りなく縮小していることは否定できない。

本書では、メーリングリストやクレジットカードや電話番号のデータベース化・システム化によるプライバシー保護と逆行する事態から、空中撮影、ICタグ、監視カメラ、バイオメトリクスなどの新技術がプライバシーを希釈し、個人の壁を透視してしまう状況までを詳細に追いかけている。電話やメールの盗聴が日常化しているアメリカに比べてまだ日本では顕在化していないが、市民監視がますます強まろうとしている現在、どのような未来社会が待っているかを知るうえで好適である。

今後、情報イノベーションはますます強力になり、いつも後追いになる法律による規制よりも、技術によるデータ制御に傾きそうな雲行きである。プライバシーの保護も監視も侵害もすべてコンピュータにお任せになるのだろうか。著者はこれに関してはノーコメントである。

さて、私たちが情報イノベーションとどうかかわるか、考え改善する余地があるのか、それとももはや技術主導の時代に突入してしまい抵抗不可能なのか、答えは明らかではない。まさに、私たちは情報化社会の渦中に巻き込まれつつあるのだ。【評者 池内 了 総合研究大学院大学教授】

■2008/05/06, 週刊エコノミスト

チックタック 上 (1) (扶桑社ミステリー ク 1-12) (扶桑社ミステリー ク 1-12)
チックタック 上 (1) (扶桑社ミステリー ク 1-12) (扶桑社ミステリー ク 1-12)ディーン・クーンツ 風間 賢二

扶桑社 2008-03-28
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おすすめ平均 star
starホラーとコメディを融合した無茶な作品

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チックタック 下 (3) (扶桑社ミステリー ク 1-13) (扶桑社ミステリー ク 1-13)
チックタック 下 (3) (扶桑社ミステリー ク 1-13) (扶桑社ミステリー ク 1-13)ディーン・クーンツ 風間 賢二

扶桑社 2008-03-28
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ハーンの秘宝を奪取せよ 上巻 (1) (新潮文庫 カ 5-41)
ハーンの秘宝を奪取せよ 上巻 (1) (新潮文庫 カ 5-41)クライブ・カッスラー ダーク・カッスラー 中山 善之

新潮社 2008-03-28
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おすすめ平均 star
starダーク・ピットシリーズ復活

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ハーンの秘宝を奪取せよ 下巻 (3) (新潮文庫 カ 5-42)
ハーンの秘宝を奪取せよ 下巻 (3) (新潮文庫 カ 5-42)クライブ・カッスラー ダーク・カッスラー 中山 善之

新潮社 2008-03-28
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全盛期を超えたか? 巨匠クーンツのホラー

ぬ、何だこれは?

ヌイグルミの人形がスーパーパワーを持って襲ってくる話。ディーン・クーンツの『チックタック(上・下)』(扶桑社ミステリー文庫、上720円、下740円)である。ひところは、ベストセラー・ホラーの覇者を王者S・キングと競ってデッドヒートを演じていたクーンツ印であるが、いつしか超訳本の巨匠になり、「愛と正義は勝つ」の連発しすぎが祟ったか、後は……。

その巨匠がである、チョー安っぽいホラーアクションに戻ってきた。生還してきた。コンピュータに侵入した人形が「おまえのイノチは夜明けまでよ」とメッセージを送る。あとは襲われては逃げ、襲われては逃げ。ブロンドの美女が助っ人に現れるが、敵のほうがまだ強力だ。また、襲われては逃げ。ただそれだけの話なのだ。

主人公はべトナム難民。20年の滞米生活、アメリカン・ポップス大好きで、チープなミステリを書いて生計を立てている。ホラーの怪物は数あれど、子供だの玩具の人形だのはもう一通り使い古されてしまった。今どきこれで勝負するのだから、さすがシンゾー男クーンツだ。コテコテのがらくたアイデアと追跡劇描写の獰猛さでのし上がってきた全盛期を……超えたか。チックタック。

親子合作でベストセラー・シリーズを書き継いでいるのは、クライブ&ダーク・カッスラー『ハーンの秘宝を奪取せよ(上・下)』(新潮文庫、各700円)。今度で19弾目。

合作になってから、ヒーローもジュニアの出番が多く、世代交替なるかと心配したが、今回は、きっちりダーク・ピット1世と相棒アルのおっさんコンビが活躍する。寄る年波には勝てんとぼやいていたのが、佳境に入るにつれ、やはり超人的にばりばり暴れ出すところがご愛嬌。バイカル湖に眠るチンギス・ハーンの墓と石油利権の争奪。生臭さのない冒険ロマンで一息つける。【野崎六助 作家・評論家】

■2008/05/06, 週刊エコノミスト

天下之記者―「奇人」山田一郎とその時代 (文春新書 621)
天下之記者―「奇人」山田一郎とその時代 (文春新書 621)高島 俊男

文藝春秋 2008-02
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おすすめ平均 star
star山田一郎その人よりも、彼を取り囲む人や出来事に興味が向いてしまう微妙な一冊

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著者インタビュー 高島俊男 エッセイスト

わが身を振り返ると敗者に引かれてしまう

──明治中ごろに「天下之記者」と呼ばれた山田一郎という人物の生涯を著した本ですね。これを読むまで名前さえ知りませんでした。

■すごく単純過ぎてかえっていそうにない名前ですね。僕も知らなかったが、ある雑誌で名前を知り、彼の死後1年目に友人たちがまとめた『天下之記者一名山田一郎君言行録』を読んだら面白くてね。いいことばっかりでなく悪い面もはっきり書いてあった。

──天下之記者というのは犬養毅の命名だそうですね。私も記者の端くれなので、興味を覚えました。

■そうです。今で言うとフリージャーナリスト。明治の中ごろ、どこの新聞社にも所属しないで、あちこちに記事を書き送るような人はいなかった。

──そういうことができたのも貴重な東京大学卒の学士だからですね。早稲田大学の創設にかかわり、日本初の政治学者でもあった。その学生時代や改進党から早稲田創立時代の話も詳しく、とても面白かった。

■帝大と呼ばれる前、大学が全国で1つしかなかったころの東京大学のね。学士であれば値打ちがあった。事実、同窓生たちは、政治家でも役人でも学者でも、どんな方面でも出世していい暮らしをしている。でも山田一郎だけは違った。特に後半生はみじめで、結局、野垂れ死にをした。

──そうなんですよね、読んでいて歯がゆく思うときがすごくあった。他の同窓生のような人生も選べたと思うけど、自分から悪い選択ばかりしているような……。

■せっかく友人たちが暮らしが立つようにと計らっても、いざとなると逃げちゃう。東京の新聞社の主筆にだってなれたのに静岡に行ってしまう、国会議員へのお膳立てまでしてもらったのに、自分から立候補をやめてしまう。そういう優柔不断なところを、市島謙吉や高田早苗のように受け入れてくれる人もいたが、坪内逍遥なんかは嫌っていた。

──「奇人」という評判も仮の姿を装っていたという人もいます。

■早稲田大学図書館にある彼の直筆を見ると、活字のような文字で、小心で几帳面な性格が見て取れます。自分を自堕落な人間と見せていた。人は多かれ少なかれ、実際と違う側面を見せたがるが、山田一郎はそのギャップが大きかったのではないでしょうか。

──どうしてそんな山田一郎のことを書こうとされたんですか?

■敗者に興味があるんです。自分も敗者だから。

──先生が敗者なんて……東大を出て大学の先生も務められたし、『お言葉ですが…』シリーズなどエッセイでも活躍されているじゃないですか。

■いや僕の同級生なんて、みなエラくなっていますよ。それに比べたら……。山田一郎を見てると、自分と同じようなやつが昔もおったんだなあ、と非常に興味深い。今書いている本も、死後の評価を重視する中国では敗者だった人の話です。

■2008/05/06, 週刊エコノミスト

立憲主義の政治経済学
立憲主義の政治経済学川岸 令和

東洋経済新報社 2008-03
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早稲田大学21世紀COEプログラムの成果の書籍化。9・11以後のアメリカがテロとの戦いを優先、個人の自由が侵食されている現状に危機感を抱き、危機時の憲法、立法府・行政府の役割見直しなどで民主主義と立憲主義との折り合いを提言。また、立憲主義とは何か、を経済学アプローチも含めて多角的に検討した。ゲーム理論的分析は「なるほど」の連続だ。

■2008/05/06, 週刊エコノミスト

円と日本経済の実力 (岩波ブックレット NO. 719)
円と日本経済の実力 (岩波ブックレット NO. 719)鈴木 淑夫

岩波書店 2008-03
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おすすめ平均 star
star円が強くなければ日本経済は立ち直らない!!

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「もはや一流でない」の閣僚発言まで飛び出した日本経済。その沈下の理由を、(1)実質GDP成長率、(2)GDPデフレーター、(3)円相場の3つのトレンドを手掛かりに探った。その結果、小泉政権以降、財政緊縮・金融緩和のポリシーミックスによって、いかに輸出と企業に有利で、内需と家計に不利な経済が出来上がったかを浮き彫りにした。シンプルで分かりやすい日本経済の現状分析には説得力がある。

■2008/05/06, 週刊エコノミスト

国際金融ノート―BISの窓から
国際金融ノート―BISの窓から吉國 眞一

麗澤大学出版会 2008-03
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日銀国際金融次長、ロンドン駐在参事から2001年に国際決済銀行(BIS)に移った著者が、主要国中央銀行総裁らとの触れ合いなどをつづった。BIS規制という言葉しか知らず、BISは怖いと思っていたが、誤解だった。グリーンスパン氏の講話を聞いて高橋是清の偉大さを思い、中国を旅して歴史を回顧するエッセーを通じ、自然と国際金融の基本が理解できる。

■2008/05/06, 週刊エコノミスト

市民はいかにして戦争に動員されるか―戦争史の底辺を歩んで
市民はいかにして戦争に動員されるか―戦争史の底辺を歩んで小森 良夫

新日本出版社 2008-03
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1月に81歳で亡くなった国際労働運動研究者の個人史。小学校時代に満州事変。戦争だらけの生活で、京都の三高時代の1945年1月19日には動員先の川崎航空機工業明石工場が空襲され、学徒16人を含む334人が死亡した。「戦争によって一番被害をこうむったのは普通の民衆。指導者たちは生きながらえた」と、憲法9条の大切さを若者に訴える「遺言」は重く響く。

■2008/05/06, 週刊エコノミスト

宇宙への秘密の鍵
宇宙への秘密の鍵ルーシー・ホーキング スティーヴン・ホーキング さくま ゆみこ 佐藤 勝彦

岩崎書店 2008-02
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おすすめ平均 star
star大人も子どもも楽しめる宇宙冒険物語 ホーキング博士の宇宙への秘密の鍵とは?
star【子供から大人まで】楽しめる宇宙の神秘!
star脇役のキャラクター設定が魅力的

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宇宙と地球、理論物理学を児童向けファンタジーとして読み物にしてしまった野心作。作者は車いすの物理学者、ホーキング氏と娘のルーシー。登場人物は少年ジョージと科学者エリック、その娘のアニー、そして何より世界一のコンパクト・コンピュータ「コスモス」。エリックがブラックホールに飲み込まれた。末尾には「第2巻に続く」とある。

■2008/05/06, 週刊エコノミスト

ほんとうの環境問題
ほんとうの環境問題池田 清彦 養老 孟司

新潮社 2008-03
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おすすめ平均 star
starただエコブームに乗るバカバカしさを認識するために
star「専門家」に騙されないために
starあっけらかんとした明快さ

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環境問題の根源を問う

私も経験することだが、対談本とか共著書とかいうのは、出版社から売れないと思われているようで、実際、大して売れないようだ。おそらく、単著と比べて中身が薄いとかレベルが低いとか思われているのだろう。

しかし、前回紹介した『国家情報戦略』にしても、最近の本で私が最も影響を受けた、吉川元忠と関岡英之の対談集『国富消尽』にしても、考察は幅広いし、話し言葉ならではの分かりやすさでハイレベルな内容のものが多い。

そのなかで、また目からウロコが落ちるような本を発見した。池田清彦と養老孟司の対談集『ほんとうの環境問題』(新潮社、1050円)である。

養老氏は言わずと知れた有名人だが、池田氏は早稲田大学で教鞭を執る生物学者で、著作の幅が広い。本書でも環境問題を国益や経済学、歴史(しかも人類が誕生する前の地球の歴史レベルを含んで)から考察している。

ペットボトルのリサイクルには、実はかなりのエネルギーを要するので、それを自分用に何回も使ったほうがいい。ペットボトルを生ごみと一緒に燃やしたほうが重油を使わなくて済む。石炭や石油をエネルギー源にしてから森林伐採が減り、自然環境を救った。バイオエタノールは原料のトウモロコシを作るのに多くの石油を使っており、原料価格の高騰が貧困層の食料を奪っている……。次々とわれわれの知らない話が出てくる。極め付きは、今より炭酸ガス濃度のはるかに高い時代があったが、その時のほうが大型動物が進化していたという話。

それ以上に考えさせられるのは、アメリカもヨーロッパも国益で動いているという指摘である。バイオエタノールブームも、アメリカは自国の農民の利益のため、ヨーロッパは環境ビジネスのためだという。それに比べ、京都議定書が議論されたとき、先進国で国民1人当たりの炭酸ガス排出量がいちばん少なかった日本が「外国にもわが国のようにしろ」と言えず、さらなる削減を飲まされた「おぼこさ」。

さらに膝を打ったのは、支援金目当ての人に子供を産んでもらおうという発想より、地球環境や食糧、エネルギー問題のためには、人口は減ったほうがいいという当たり前の説だ。養老氏のベストセラー『バカの壁』よりもっと売れてほしい本だ。【和田秀樹 精神科医】

■2008/05/06, 週刊エコノミスト

都市計画の世界史 (講談社現代新書 1932)
都市計画の世界史 (講談社現代新書 1932)日端 康雄

講談社 2008-03
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おすすめ平均 star
starこれは・・・教科書ですね

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江戸の大普請 徳川都市計画の詩学
江戸の大普請 徳川都市計画の詩学タイモン・スクリーチ 森下 正昭

講談社 2007-11-29
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おすすめ平均 star
star外国人著者のいいところが出ている

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街づくりに見る西洋と江戸の違い

生身の人間が語ることは厄介だが、死者の言葉にはウソがないとか。さらに真意を伝えるのは形であろう。

日端康雄『都市計画の世界史』(講談社現代新書、 1050円)は「自然は神が創り、都市は人間が造った」を手軽に理解させてくれる。日本の都市は例外だが、都市はなによりも外敵の侵入を防ぐ城壁で囲まれていた。この都市建設の経験は古代ローマ都市に生かされている。ヨーロッパの大都市はこの古代の市街地を出発点とする。

パリもまたセーヌ河の中州になるシテ島を中核にして始まった。市街地が広がるにつれて、城壁も幾度も同心円状に移築されている。だが、火薬と大砲が登場すると、もはや城壁は無用の長物となった。城壁が撤去された跡地はペリフェリックと呼ばれる環状道路として活用されている。

ところが、城壁のない東京ではそう事は運ばない。放射状の街道には恵まれたが、密集した市街地を走る環状道路の敷設には辛苦をなめる。環状7号線の実現には半世紀もかかったのだ。

近現代の都市計画思想の背景には理想都市論の系譜がある。ハワードの田園都市論、ガルニエの工業都市モデル、ル・コルビュジェの立体都市モデルなどが提案されてきたが、答えはまだ見えないのだ。

さて、日本の都市を西洋人の目で見るものに、タイモン・スクリーチの『江戸の大普請』(講談社、1890円)がある。副題に「徳川都市計画の詩学」とあるように、将軍の都を構想する心を読み解こうとする。

漁村の風情でしかない江戸に大幕府の城下町を建設する。中心に城があるにしても、城の北側の地区に被支配者がいてはならないという。中国の洛陽を都市モデルとすれば、「洛」たる都の宮廷は北に置かれるべきだった。支配者が南を向くとき太陽が顔にあたって輝くからである。仏像もまた同じ理由で南向きに安置される。だが江戸では北地区に身内たる旗本御家人を住まわせ、背後に従わせる。外様の大名や下々の民は南に住まわせるのだった。かくして幕府の威光は華々しく飛び散る。なるほど、と唸りたくなる。【本村凌二 東京大学教授】

■2008/05/06, 週刊エコノミスト

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