メイン > 週刊エコノミスト書評 『ブックレビュー』 > 2008年4月15日~4月22日

松下電器の経営改革 (一橋大学日本企業研究センター研究叢書 2) (一橋大学日本企業研究センター研究叢書 2)
松下電器の経営改革 (一橋大学日本企業研究センター研究叢書 2) (一橋大学日本企業研究センター研究叢書 2)伊丹 敬之 田中 一弘 加藤 俊彦

有斐閣 2007-12-25
売り上げランキング : 8300

おすすめ平均 star
star
star完結かつ詳細
star文句なく、ここ数年来の名著

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奇跡の復活を遂げた松下電器 「中村改革」はなぜ成功したか

2001年度に当期純損失4310億円を計上した松下電器は、企業としての存続すら危ぶまれる文字通りの「経営危機」に陥った。同社がこの苦境から脱却し、再生の道を力強く歩み始めることができたのは、00年から06年にかけて社長を務めた中村邦夫が断行した大規模かつ徹底的な経営改革が成果を上げたからである。

本書は、日本を代表する企業で遂行された壮大な改革として、将来にわたって語り継がれるに違いないこの松下電器の経営改革(端的には「中村改革」)を、一橋大学商学研究科の日本企業研究センターに集う気鋭の経営学者たちが多面的に分析した、注目すべき経営書である。

本書では、中村改革について、研究代表者である伊丹敬之が総括的な議論を展開するとともに、若手の経営学者たちが雇用構造改革、事業構造改革、家電営業改革、管理会計・バランスシート改革、IT革新、テレビ事業改革という各論を掘り下げている。また、利益率への影響や松下幸之助の経営理念の継承という側面からも中村改革を論じており、さらに、中村と伊丹との対談を掲載していることも、本書の価値を高めている。

伊丹は「同時多発改革」という言葉を使っているが、本書を読んで強い印象を受けるのは、中村改革の全面性、網羅性である。「ヒト・モノ・カネ・情報、すべてが対象になっている。それだけ全面的に改革しなければ、部分改革では大きな成果は生まれない」というのが、伊丹の見立てである。

1つのシステムを構成する複数のサブシステムの間には相互補完作用が働き、特定のサブシステムのみを変化させる(改革する)ことは困難であると言われる。「制度補完」と呼ばれる議論であるが、これを根拠にして制度派の経済学者のなかには、戦争のようなシステム全体に大きなインパクトを与える「外圧」が発生しない限り改革は起こりにくいと主張する者がいる。しかし、中村改革の場合には、松下電器という1つのシステムを構成する多数のサブシステムを同時に改革することによって、内側から経営改革を実現した。本書で、中村改革が歴史の流れを加速したと評価されるのは、この点を反映したものであろう。

本書に関して特筆すべきは、松下電器によって刊行されたのではなく、研究者によって刊行された点である。この結果、後世に伝承されるべき中村改革は、より客観的な形で史実としての検証を受けたのである。【評者 橘川武郎 一橋大学大学院商学研究科教授】

■2008/04/22, 週刊エコノミスト

文明の接近―「イスラームvs西洋」の虚構
文明の接近―「イスラームvs西洋」の虚構エマニュエル・トッド ユセフ・クルバージュ

藤原書店 2008-02
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人口学から見たイスラムの未来近代化の道程は西洋と変わらず

エマニュエル・トッドが『帝国以後――アメリカ・システムの崩壊』を書いて大きな衝撃を与えたのは2002年のことだった(邦訳は03年)。

その邦訳への序文で、イラク戦争はアメリカの「演劇的小規模軍事行動主義」によるもので、弱いものいじめ以外のなにものでもない。これによってアメリカは世界支配を完成するどころか世界のリーダーシップを失いつつあるとし、財政的には世界の乞食になっているのだ、と主張した。

トッドはフランスの人口学者であるが、彼がイスラム圏の人口動態研究者であるユセフ・クルバージュとともに書いたのが本書である。

歴史的に見て、世界的に人々の識字率が高まると宗教が退潮し、その結果、人口の出生率が低下する。これはイスラム教圏だけでなく、キリスト教圏や仏教圏にも共通して起こることだが、これが近代化をもたらすと同時に、その移行期に混乱と革命が起こる。

ヨーロッパの宗教改革、そしてイギリスやフランスの革命、ロシア革命もそうであるが、今イランやイラクなどのイスラム圏で起こっているのもこれである。

イラクやイランは今この移行期の混乱を経験しているのだが、やがてこの危機を脱して近代化していくだろう、という。

アフガニスタンやイラク、イラン、そしてパキスタンなどで大きな政治的混乱をもたらしているイスラム原理主義なるものも、人口動態的に見て、近代化への移行期に起こっている普遍的な現象で、かつてイギリスやフランスなども経験したことである。

ところが、そこに無理やり介入して混乱を引き起こしているのがアメリカである。 「今日、地球上にのしかかる全世界的な均衡を乱す脅威は唯一、保護者から略奪者へと変質したアメリカそのものである」。そして、そのアメリカは経済的にはもちろん、軍事的にもイデオロギー的にも、あまりにも弱すぎる国になってしまっている、という。

本書の内容の大部分はアラブ圏をはじめとする世界の人口動態の変化について詳しく述べているが、それが識字率、出生調整、脱宗教化とからめて説明される。正直言って叙述は煩雑で、先の『帝国以後』のような読みやすい本ではない。

何より人口動態の変化から世界の歴史を説明していくというやり方は単純すぎないか……。【評者 奥村 宏 会社学研究家】

■2008/04/22, 週刊エコノミスト

岩倉具視―言葉の皮を剥きながら
岩倉具視―言葉の皮を剥きながら永井 路子

文藝春秋 2008-02
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star確かに面白いが・・・

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お龍
お龍植松 三十里

新人物往来社 2008-03
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おすすめ平均 star
star勝ち気で奔放なお龍

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「尊皇」「攘夷」の新解釈で見えてきた幕末維新の実像

永井路子『岩倉具視』は、「勝利者への惚れこみ」も「敗者への過度の挽歌」も「歴史をまともにみつめたことにならない」と語る著者が、丹念な史料調査で真実と虚構を峻別しながら、“維新の元勲”の実像に迫った史伝である。

著者は、幕府の命令で朝廷が与える官位、政権運営に賄賂が必要だったこと、天皇周辺で働いた女性たちの活躍など、これまで注目されてこなかった事実に着目することで、「尊王」「攘夷」「佐幕」といった言葉が、当時と現代では全く違った意味で使われていることを指摘。それを踏まえて、明治維新が尊王主義者が進めた改革運動ではなく、幕府、朝廷、薩摩、長州などが泥沼の権力闘争を繰り広げた結果、偶発的に天皇を頂点とする国家ができ上がっただけであることを論証していく。

これは明治が天皇中心の秩序ある国家だったとする見解や、その明治に回帰すれば日本が“美しい国”になるという復古主義への批判にほかならない。歴史の再検討が叫ばれている現代、観念ではなく、史料を典拠に幕末維新の実像を明らかにした本書が書かれた意義は大きい。

植松三十里『お龍』(新人物往来社、1995円)は坂本龍馬の偉業を支えた妻お龍を主人公にしているが、なかでも龍馬の死後、龍馬の実家に帰ることも許されず、流転の人生を送った後半生を描いた部分は興味深い。

“内助の功”で夫を支えるタイプでなかったお龍は、その活発さを理解する龍馬の存命中は問題なかったが、龍馬が暗殺されると誤解と偏見にさらされる。女性蔑視の風潮に抗って懸命に生きたお龍の姿は、現代の働く女性にも勇気を与えてくれるはずだ。【末國 善己 文芸評論家】

■2008/04/22, 週刊エコノミスト

堂々たる政治 (新潮新書 257)
堂々たる政治 (新潮新書 257)与謝野 馨

新潮社 2008-04
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著者インタビュー 与謝野 馨 前官房長官】

政治の停滞を打開するためどんな仕事でも引き受ける

──「堂々たる政治」とは、大きく構えましたね。

■政治に問われるのは「結果」であり、究極の目的は「世の中が治まっていること」です。停滞する政治を何とか打開したいという思いをこめました。

──衆参の「ねじれ国会」は大混乱しています。持論の消費税増税審議までは相当ハードルが高くなりますが。

■物事を決める国会のシステムを早く再構築する必要があります。それは大連立でも定期的な政策協議でも政界再編でもいい。国民の生活、経済を守るため、物事が決められず日本が漂流していく事態だけは避けなければなりません。

──福田康夫首相は一体何をしたいのかが見えてきません。

■首相は日常の仕事をこなすと同時に、この社会がどういう方向で進んでいくのかを国民に示さなければいけない。福田さんは就任してから日常業務に埋没しているとの批判があるから、日本をこう引っ張っていきたいという力強いメッセージを発信してほしい。

──経済成長重視・上げ潮派の中川秀直元自民党幹事長とは、ご自身いわく「高級な論争」を展開しています。

■高い経済成長がいいに決まっているから、私は上げ潮派なんです。ただし、高い成長率を当てにしすぎると空振りに終わる。国の財政を考えれば、控えめな成長率を前提に社会保障制度の維持に向け、国民に一定の負担をお願いすることは正しいと思っています。

──倒閣を狙う小沢民主党と折り合う点はありますか?

■自民党はあくまでも民主党との話し合い路線を模索すべきです。現在の民主党は参議院で多数派。旧社会党のようなただの少数野党とは違う。政権運営にも一定の責任を持ってもらわないとね。

──政界再編と中選挙区制復活論にかなり踏み込んでいますね。

■ほとんどの政治家は国会でこれだけ物事が決まらず、決まっても季節外れになってしまうことに嫌気が差し、そのマイナスにも気づいています。与野党のねじれを解消するため、最も現実的な選択肢は政界再編ではないでしょうか。小選挙区制と中選挙区制のどちらがいいかと言えば議論が分かれてしまうから、にわかに結論は出ないでしょう。政界再編の時期は総選挙の前か後か、私の周りで2説ある。いずれにしても、各党のなかで動きは活発になってきますよ。

──フランス帝政期に「政治的人間」と称された政治家フーシェの伝記に強い影響を受けたそうですね。

■ただ理屈や正論を言うだけでは政治が進まない。両者の言い分にどこかで折り合いをつけるため、陰で支える人が自民党にも民主党にも必要です。

──「与謝野救国政権」論も出ています。今後のご自身の役割は?

■私は仕事することに職人的な喜びを感じる人間なんで、日本の社会や将来に役立つなら、どんな仕事でも引き受けてやりますよ。

■2008/04/22, 週刊エコノミスト

3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代 (ちくま新書 (708))
3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代 (ちくま新書 (708))城 繁幸

筑摩書房 2008-03
売り上げランキング : 87

おすすめ平均 star
star安易な続編販売は成功せず
star著者の女々しさに辟易
star努力しても報われない閉塞感

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生活保障の見返りとして、終身雇用の会社に忠誠を尽くし、縛られ続ける「昭和的価値観」の見直しを訴える問題提起書。キャリアをベースにした転職、自分の価値観を大切にする独立の成功、そして失敗事例を多角的に紹介、分析し、企業の人事制度や大学改革の方向性を提言。昭和を超える「平成的価値観」のキーワード“多様性”実現のため、若者には「もっとワガママに生きろ」とエールを送っている。

■2008/04/22, 週刊エコノミスト

さらば財務省!―官僚すべてを敵にした男の告白
さらば財務省!―官僚すべてを敵にした男の告白高橋 洋一

講談社 2008-03
売り上げランキング : 54

おすすめ平均 star
star真実とはかくのごとし。
star経済オンチな官僚の実態

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役人支配の社会は、プロセスは説明されるが、結果は押し付けられる。小泉政権時代は、プロセスは十分に説明されないが、結果は分かりやすかった。その時代のプロセスに深くかかわった本人の告白。あの時代の政策決定のプロセスが説明される。それは同時に、役人支配の病理の告発になる。役人は国益に貢献しないことが分かる。

■2008/04/22, 週刊エコノミスト

「公共性」論
「公共性」論稲葉 振一郎

エヌティティ出版 2008-03
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マルクス主義思想の敗北後、「公共性」という言葉が批判的社会思想のキーワードとなっている。「市民社会とは? 公共性とは?」をハーバーマス、アーレントやフーコー、ドゥルーズらを頼りに読み進め、人工環境の下で「動物化」する私たちの公共圏の可能性を分かりやすく説く。法学、経済学、現代思想、認知科学まで動員した知識はものすごい。入門書として最適だ。

■2008/04/22, 週刊エコノミスト

占領期の朝日新聞と戦争責任 村山長挙と緒方竹虎 (朝日選書 840)
占領期の朝日新聞と戦争責任 村山長挙と緒方竹虎 (朝日選書 840)今西 光男

朝日新聞社 2008-03-07
売り上げランキング : 51744

おすすめ平均 star
star重厚な内容を簡明に記した名著

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「村山長挙と緒方竹虎」の副題のように戦後の朝日新聞を大株主・村山一派と緒方一派の熾烈な権力闘争として描いた力作。戦争責任の取り方、共産党の台頭、GHQ権力との応接、公職追放、朝鮮戦争と、波乱の時代にいかに現在の朝日新聞の土台が築かれたかを実証的に示した。『新聞 資本と経営の昭和史』の続編。今西流「近現代新聞史」として読める。

■2008/04/22, 週刊エコノミスト

世にも美しい数学入門 (ちくまプリマー新書)
世にも美しい数学入門 (ちくまプリマー新書)藤原 正彦 小川 洋子

筑摩書房 2005-04-06
売り上げランキング : 21370

おすすめ平均 star
star面白い
starさらさらと楽しく読める
star数学の美しさは・・・

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数学と俳句の美しさという共通点

「子と親のための明日のリーダー塾」で、数十年ぶりに小谷元子・東北大学教授の数学の授業を聞いた。

「自然の中の形を決める原理」という講義だったが、自然の美しさの基本はその単純さ、簡潔さだという命題に改めて強い印象を受けた。エネルギー最小の法則でさまざまな形が作られ、美しい幾何模様が自然を彩るのだが、美しさと簡潔さをつなぐ論理が数学という学問というわけだ。

そんな講義のあと、藤原正彦・小川洋子著『世にも美しい数学入門』(ちくまプリマー新書、798円)を読み直してみると、数学の美しさを語る2人の著者の主張が素直に伝わってくる。

例えば、最初に小川が俳句と数学が似ていると述べ、次に藤原が同意している部分はまさに数学の美しさのエッセンスというべきものだろう。 「いま偶然、俳句という言葉が出ましたけれども、実は数学において複雑な数学的現象を1行の数式でピッと統制する美しさと、大自然を五七五という最小の言葉で表現する俳句とは、非常に近いものがありますね」

「そうですね。数学の美しさについては、いろんな定義がありますけれども、ひとつは魑魅魍魎といいますか複雑多様なものを、ひとつの数式で一気に統制してしまうという豪快さというか、美しさというものがありますよね。本質をパッと切り取るっていうのは俳句と似ていますよね」

俳句などに見られるこうした日本文化の特質は、日本人が高い数学的才能を持っているということにつながるという。ノーベル賞に数学部門があったら、日本人のノーベル賞受賞者の数は大きく増加していただろうと藤原は言う。

美しいものを追求して、芸術の世界や数学の世界に耽溺できる人は、評者にはとてもうらやましい存在だ。

現実の複雑さや絶え間ない変化に足を取られて、美の追求に十分な時間を割けない人々が多い世の中で、凡人はつかの間でも自然や芸術、そして数学の美しさをめでることができれば、それで満足しなければいけないだろう。  もっとも、数学の美しさをめでるにはかなりの知識が必要だが……。【榊原英資 早稲田大学教授】

■2008/04/22, 週刊エコノミスト

線香の火
線香の火増井 経夫

研文出版 1987-04
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忘れ得ぬ歴史家の名随筆

古典籍に造詣が深く、東京浜町河岸育ちの東洋史家、故・増井経夫の著書『線香の火』(研文出版、1890円)は味わい深い随筆である。魯迅、郭沫若、郁達夫などの追想、東大の恩師や安井曽太郎、藤山一郎に及ぶ交遊は史料的意義のある人物月旦でもある。したがって28編から何を選ぶのかは難題であるが、書名となった「線香の火」を取り上げたい。というのは日中両国の歴史研究の有り様を比較する一例と思うからである。

中国では中華人民共和国樹立後、太平天国が中国革命の先駆として積極的な研究対象となっていた。晩年の増井の研究の1つも太平天国であり、指導者の1人李秀成の人となりに関心をよせていた。増井の中国語の師高田集蔵の言葉に「線香の火でも本が読めるよ、消灯後兵営の寝袋で線香の火を近づけて聖書を読んでいたら、軍曹に見つかり散々殴られ聖書を破り捨てられた。しかし、後に軍曹はキリスト教信者になった」と。この体験談に増井は困難な陣中でも書物を手にした貧農出身の李秀成の好学心を愛し、逮捕後の彼の『獄中手記』の知性に感動し、高田の姿に重ねた。また李秀成軍に参加した英人リンドレーの従軍記には、部下に信頼される李の姿が描かれている。こうした史実から増井は太平天国を長髪賊と呼んで賊の面を強調する伝統的歴史観を批判し、中国農民のなかに新しい人間像形成を見たのであった。

ところが中国の歴史学会では無名の戚本禹が、1963年の『歴史研究』に「李秀成供状を評す」の論文を発表し、李秀成は変節した革命の裏切り者と批判した。これが口火となり、李秀成を非難する大キャンペーンとなった。反論はあったものの、李秀成批判は毛沢東路線と対立する国家主席劉少奇を李秀成と見なして追放を謀る文化大革命の前哨戦となり、歴史研究は政治路線に直結する様相を呈した。

この当時の中国の実情を、リベラリスト増井は「つっこんでいえば革命に熱狂する人たちが、ふと李秀成の姿の中に自分自身を見つけ、ギョッとして急にいきりたったかのようである」と結んだ。短絡的な政治主義を嫌う増井の人間味ある歴史観であった。【中村 義 東京学芸大学名誉教授】

■2008/04/22, 週刊エコノミスト

タタ財閥―躍進インドを牽引する巨大企業グループ
タタ財閥―躍進インドを牽引する巨大企業グループ小島 眞

東洋経済新報社 2008-02
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躍進するインドを牽引する巨大企業グループ・タタ財閥の実像に迫る。活発な海外企業買収でグローバル化を本格化させる一方、従業員や地域社会を重視する独自の経営理念や組織構造を分析し、中核企業ともいえるIT、鉄鋼、自動車、電力の4部門の動向を詳細に考察。自由化が進んだ90年代以降のインド経済の流れと全体的な課題に関連づけて、企業グループの将来を展望している。

■2008/04/15, 週刊エコノミスト

リーダーシップ原論―名経営者24人の「自著」を読む
リーダーシップ原論―名経営者24人の「自著」を読む江波戸 哲夫

プレジデント社 2008-03
売り上げランキング : 21980

おすすめ平均 star
star経営の入門書としてお勧め

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「名経営者24人の『自著』を読む」が副題。松下幸之助、ヘンリー・フォード、小林一三、盛田昭夫、稲盛和夫、丹羽宇一郎、ジャック・ウェルチら24人の経営者の自伝をダイジェストした紹介本。というとお手軽本のようだが、内容紹介にとどまらずに、その人物の評価をうまく盛り込んでいるのが著者のうまさ。ビジネス・ヒントあふれる人間学の宝庫だ。お薦めの1冊。

■2008/04/15, 週刊エコノミスト

日本人の背中
日本人の背中井形 慶子

サンマーク出版 2008-03-05
売り上げランキング : 5317

おすすめ平均 star
starうっすら上から目線
star大きな物語を背負わない主張
star考えるきっかけを与えてくれる本

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日本人は、他人からどう見られているかを人一倍気にするくせに、海外の人々が日本をどう見ているかについては鈍感だ。そしてバブル経済崩壊後、自慢の経済にかげりが出ると、自信を喪失してしまった。しかし、まじめで勤勉な日本人の信用は今も高い。長年、海外が日本人をどう見ているかを観察してきた著者は、日本をここまでもってきた独特の文化・社会の力を見直したらどうか、と説く。

■2008/04/15, 週刊エコノミスト

つぶせ!裁判員制度 (新潮新書 254)
つぶせ!裁判員制度 (新潮新書 254)井上 薫

新潮社 2008-03
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おすすめ平均 star
star裁判員制度の問題点が極めてよく分かる解説書
star裁判員制度は即刻廃止すべき。著者の悲痛な叫び。
star素人「裁判官」が人権を滅ぼす

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来年春までに実施される裁判員制度は憲法違反である、と元裁判官の弁護士が訴えている。法律に基づく裁判ができない、という根本的な欠陥を問題視、「法律の素人ができるならば司法試験はいらない。実施前に廃止せよ」と言い放つ。世論調査でも反対が多数派で、なぜ導入されるのか、いまだにはっきりしない。導入直前の駆け込み勉強には最適の参考書だ。

■2008/04/15, 週刊エコノミスト

「心」が支配される日
「心」が支配される日斎藤 貴男

筑摩書房 2008-03
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道徳の補助教材「心のノート」を使った「心」の授業、スピリチュアル・ブームなどのニセ科学、清掃ボランティアなど「心」を磨く社会運動……。新自由主義者、復古主義者、親米主義者が結びつき、米国の人格教育ブームと符節を合わせた日本国民の「心」の支配が始まっているのではないか、と警鐘を鳴らす。地をはう綿密な取材で明かされる事実はどれも新鮮だ。

■2008/04/15, 週刊エコノミスト

メタル・ウォーズ
メタル・ウォーズ谷口 正次 ・

東洋経済新報社 2008-02-15
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おすすめ平均 star
starスイカを縦に割りたい!!
star鉱山開発の環境問題に迫る一冊
star迫力はあります

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著者インタビュー 谷口正次(資源・環境ジャーナリスト)

中国発の資源争奪戦 乗り遅れる日本

──鉄や銅などのベースメタル、ニッケル、コバルトなどのレアメタル、金やプラチナなどの貴金属、それにレアアース(希土類元素)といったメタル資源が危機的状況にある。その原因として、3つの大きな動きが起きている、というのが問題意識ですね。

■その1つが中国の勢いです。「爆食」といわれるように、中国の金属資源消費がものすごい勢いで伸びています。中国といえば資源大国というイメージが強いのですが、ベースメタルはほとんど自給できていません。鉄鉱石でさえ、自給率は60%ほどです。資源確保のために、中国が行っているアグレッシブな資源外交には驚かされます。胡錦濤主席自身が、援助を片手にアフリカで積極的な資源外交を展開し、オーストラリアや、モンゴル、北朝鮮、さらに中南米にも手を伸ばして、資源の囲い込みに奔走しているのです。3年前ですが、住友金属鉱山が豪WMC社からニッケルを大量に買っていた長期契約が、更改に際して突然打ち切られました。新しい行き先は中国でした。

──2つ目は、資源メジャーと呼ばれる巨大鉱山会社の動向です。

■中国の動きに、もっとも神経を尖らせているのが、これまで世界市場を支配してきた資源メジャーです。中国に対する危機感から、資源メジャーの間で、買収合戦が始まっています。かつて豪BHPと英ビリトンが合併して世界最大の総合資源メジャーが誕生したときに、新会社のCEOが「いずれ資源メジャーは3~4社に集約される」と断言したのですが、いまその言葉通りに事態が進んでいるのです。まさに“恐竜の共食い”であり、勝ち残ったものが価格支配力を強めることができるのです。

現在、最大のBHPビリトンが3位の英豪系のリオ・ティントに買収を仕掛けています。もし実現すれば、鉄鉱石と原料炭では世界の海上貿易量の約40%、日本向けでは実に60%を1社で占めることになります。

──資源開発が引き起こす環境問題にも紙数を割いています。

■1年間に15万トンの銅と16トンの金を採るために、5500万トンの岩石などの廃棄物を投棄しなければならないというように、資源開発とは、そのまま自然破壊にほかなりません。さらに環境問題だけにとどまらず、現地で暮らす先住民の権利や鉱山労働者の人権問題、資源をめぐる地域紛争や政府・行政の腐敗、そして資源ナショナリズムの再燃など、資源産出国の不安定化もまた資源危機につながってきます。

──日本はどうすればいいのでしょう。

■資源の確保ができなくては「ものづくり立国」とはいえないでしょう。お金さえ出せば資源が買えるという時代は終わったのです。資源に対する認識を変えていかなければなりません。そのうえで、地下資源がないのであれば、近海の海底資源とともに、廃棄された電子機器などから金属を回収して再利用する“地上資源”を最大限に利用することに尽きると思います。

■2008/04/15, 週刊エコノミスト

後藤文夫―人格の統制から国家社会の統制へ (評伝・日本の経済思想)
後藤文夫―人格の統制から国家社会の統制へ (評伝・日本の経済思想)中村 宗悦

日本経済評論社 2008-03
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戦前の「新官僚」が模索した新しい“国のかたち”

実際の政策過程を見ると、本当に影響力を持っているのは学者というよりは、政治家や官僚やジャーナリストではないかと思うことがある。ことに日本においては官僚の自律性は強く、政策過程への影響力は大きいという印象を受ける。しかし実務家は自らを語ることが少ないし、通常の思想史は学者を中心とする定式化された理論や文章を対象とするので、実務家の思想までなかなか手が回らないというのが実情だ。

本書は、これまでまとまった形で取り上げられることがほとんどなかった官僚の経済思想に肉薄しようとする意欲的な試みである。著者が取り上げる後藤文夫は一般的な認知度は低いだろう(後藤新平とは別人)。しかし、彼は戦前期を中心として内務官僚として経歴を始めて以来、台湾での行政に関与し、さらに政治家に転じてからは5・15事件から2・26事件に至る時代に農務大臣、内務大臣を歴任した「新官僚」の代表格である。

彼の活躍した時代は昭和恐慌という近代日本未曾有の経済危機をはさむ。J・F・ケネディの言葉ではないが危機はチャンスでもある。つまり危機においてこそ、さまざまな企図、構想を持つ人々が競争を繰り広げる。

既存の政党政治に疑念を抱いていた後藤がとくに力を入れたのが農村問題と教育問題であり、昭和恐慌で疲弊した農村対策に尽力し、青年団の組織化に奔走した。現代日本でも、大停滞を経て地方振興と教育が「問題」とされるようになった。昭和恐慌からの離脱に必要だったのはマクロ政策だったが、人々の目はより「根本」へと向けられた。いつの時代も危機への対応は似ている。

本書の描く後藤は自治、自己修養、人格陶冶を推奨しながらも上からの「定型化」の必要を認める統治エリートの姿である。それは政策においてよく表れている。上からの組織化・統制でありながら下からの国民運動を生かすことを好み、一党独裁や完全な官製運動には反対し、そして歴史の表舞台から退場した。

人格の統制が国家社会の統制につながるという発想は、もとよりある種の儒教的思想をうかがわせる。この点は「昭和の教祖」安岡正篤の影響としても言及されている。しかし、社会問題が発見された時代の内務官僚後藤が学んだ思想はほかにもあるのではないか、という印象が残る。

ともあれ、とらえにくい実務家の思想を描いた著者の労を多としたい。【評者 若田部昌澄 早稲田大学政治経済学術院教授】

■2008/04/15, 週刊エコノミスト

日本経済見捨てられる私たち
日本経済見捨てられる私たち山家 悠紀夫

青灯社 2008-02
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構造改革で生活悪化はなぜ? 福祉の「小さな政府」に警鐘も

いま、この国では「小さい政府」「効率」「財政再建」の追求が、当然であるかのように語られている。本来、言葉の吟味をせねばならないのだが、流行語=「常識」となることで、意味を問い対抗案を示す力が、押さえつけられてしまっている。

刺激的なタイトルの本書は、1990年代以降の経済社会における「常識」を、平易な文章と豊富な統計データのもとに検証し、単なる神話にすぎないことを解き明かしていく。非正規就業者、ネットカフェ難民、フリーターの増大が社会的問題とされる。それは「バブルの崩壊」「経済のグローバル化」のためだといわれる。はたして本当か。企業の業績が悪化し、そこで働く人々の暮らしが厳しくなっているならば分かる。だが、日本の貿易収支(経常収支)は、2006年度に20兆円近くの黒字であり、先進国のトップである。

市民の生活が落ち込む一方なのは、橋本政権に始まり小泉政権の下で加速された「構造改革」のためだ。「構造改革なくして成長なし」は、小泉政権時代に繰り返されたフレーズである。だが、97年度に企業の経常利益は27兆円、06年度に54兆円にまで増大した。一方で、労働基準法や労働者派遣法に見る規制緩和、医療保険制度や介護保険制度での市民の負担増は、家計から企業へ所得が移転したことを意味する。だからこそ、どの年齢層でも所得格差は拡大し、生活は悪化の一途をたどったのである。つまり、構造改革とは企業がもうけやすい経済構造をつくることだったのだ。

「構造改革」が一応の所期の目標を達成した今日、政権の旗印は「財政再建」となっている。著者は「小さい政府」のもとでの社会保障支出の削減、政府事業の民営化の狙いを解き明かし、いまでも「小さい政府」であり、企業の社会保険料負担の低い国が、このまま突き進めばどんな事態が起きるのか警鐘を鳴らす。

福祉の「小さい政府」にしなくとも軍事面、公共投資面で「小さい政府」とし、消費税の増税によらずとも法人所得税の増税や所得税の累進税率の強化などによって基礎的財政収支の均衡は可能であると結論づける。

戦後日本政治にそれなりの影響力をもった社会民主主義思考は、すっかり姿を消してしまっている。本書は全体としてその復権をもとめたといってよい。メッセージはいずれも正当である。ただ、このメッセージに応える有力政党が存在していない。そこに評者も含めて暗澹たる思いにかられるのである。【評者 新藤宗幸 千葉大学法経学部教授】

■2008/04/15, 週刊エコノミスト

ルーズベルト暗殺計画 上巻 (1) (新潮文庫 ロ 14-8)
ルーズベルト暗殺計画 上巻 (1) (新潮文庫 ロ 14-8)デイヴィッド L.ロビンズ 村上 和久

新潮社 2008-02
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star良質のポリティカルスリラー

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ルーズベルト暗殺計画 下巻 (3) (新潮文庫 ロ 14-9)
ルーズベルト暗殺計画 下巻 (3) (新潮文庫 ロ 14-9)デイヴィッド L.ロビンズ 村上 和久

新潮社 2008-02
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君の望む死に方 (ノン・ノベル 845)
君の望む死に方 (ノン・ノベル 845)石持 浅海

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病死か? 暗殺か? ルーズベルト 死の真相

現代史の偉人につきものは暗殺秘録。「この人がいなければ歴史は変わった」式の話は相変わらず高支持率らしい。ヤルタ会談にのぞんだ英米ソの三巨頭もその例外ではない。ただし、フランクリン・D・ルーズベルトを除いてのこと。理由は単純。ずっと体調不良であったFDRが戦争の終結を見ずに病死を遂げてしまったからだ。歴史の裏読み物の世界では、瀕死の巨人は、チャーチル、スターリンに大きく水をあけられた。

ここに堂々と登場するのが、デイヴィッド・L・ロビンズ『ルーズベルト暗殺計画(上・下)』(新潮文庫、上700円・下660円)。作者は、第2次大戦秘話のいわば専門家。『鼠たちの戦争』では独ソの狙撃兵同士の対決を、『クルスク大戦車戦』では独ソ戦車隊の激戦をダイナミックに描いた。今回の暗殺作戦の首尾はいかに。病死――じつはナントカ?

それとも?

物語は、1945年の正月、アメリカ東部海岸に暗殺者がひそかに上陸してくるところから始まる。たった1人の暗殺者。後方支援の協力者はいるが、潜入・立案・実行まですべて1人。はたしてその任務は貫徹されるのか。その手段は。

短剣? 拳銃? 肉弾? いやいや、事の顛末は書かぬが華だ。本文を読みたまえ。この小説の魅惑は、一に暗殺者の造型にかかっている。ペルシャに生まれた肌の黒い美貌の女テロリスト。狙われたアメリカ大統領にあやかりたい、ってな気分になるから不思議だ。これはまあ、好みかもしれないが、下巻ラストの30ページは蛇足と感じた。

ついでの紹介になるが、石持浅海『君の望む死に方』(祥伝社、880円)は、暗殺ゲームのシチュエーション・ドラマ。死期の迫った男がある人物に殺される計画を立てるところからスタート。本格ミステリのモードを意想外の設定にずらしたレシピづくりが、この作者の得意技。けっこう流行りなんだろうね。【野崎六助 作家・評論家】

■2008/04/15, 週刊エコノミスト

国家情報戦略 (講談社+α新書)
国家情報戦略 (講談社+α新書)佐藤 優 コウ・ヨンチョル

講談社 2007-07-20
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starインテリジェンスの面白さと恐ろしさ
starインテリジェンスとはこういうことなのか
star北朝鮮のインテリジェンス能力は高かった

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インテリジェンスのない日本

憲法9条改正だの、国連常任理事国入りだの、核武装だのと勇ましいことを言う人が多いが、日本の軍事力を考えるうえで、いちばん欠けている視点は、私は何と言ってもインテリジェンス(国家情報)だと考えている。

日本の現状の兵力であれば、アメリカ以外の国であれば、そう負けることはないということだ。特にこちらから攻めていくのでない自衛の戦争であれば、負けるはずがないくらいの軍備だそうだ。

しかし、そうは言っても、奇襲などがあればかなりの被害が出る。やはり周辺国の機密レベルの情報収集は必須だ。

そんな国家の情報戦略の現状を、実際に分析官として活動していた経験から教えてくれるのが、『国家情報戦略』(講談社+α新書、840円)だ。

著者の佐藤優氏は、最近著書も多いこの分野の第一人者であるし、共著者のコウヨンチョル氏にいたっては、韓国の国防省で海外情報官を務めていた軍人だ。ともに国策で逮捕されたというのも面白い。

本書は、興味深い内容がたくさん書かれている。日本では、友好国だと信じ切っているため、アメリカに対してインテリジェンス工作は全くやっていないだとか、ワシントンの日本大使館の180人の職員のうち、アメリカの内政情報を集めているのはわずか2人という能天気な現実。アメリカ中央情報局(CIA)の年間予算が100億ドル以上というのでさえ驚きなのに世界的通信傍受網「エシュロン」を動かす国家安全保障局(NSA)の予算は400億ドルと推定されていることなど、日本の立ち遅れを痛感させられる。

一方で、戦前の日本の情報活動は、世界トップレベルだったという。善悪はともかくとして、偽札を大量に作って、外国の経済を混乱させるなどということさえやっていたのだ。日本人にはインテリジェンスのDNAがあるという。

そのベースになるのが陸軍中野学校だそうだが、驚くべきは、北朝鮮のインテリジェンス活動は基本的に中野学校のやり方をベースにしているということだ。

実際、私は北朝鮮の情報工作は予想外にすごいと私は見ている。これだけ、反北の感情が高まっているのに、総連系のパチンコ店の税務調査など、金の流れの解明がほとんど進んでいない。

情報収集だけでなく情報操作のテクニックも知りたかった。【和田秀樹 精神科医】

■2008/04/15, 週刊エコノミスト

私のマルクス
私のマルクス佐藤 優

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star青年時代の知的交流そして恐さ
star異能を生む読書、友人そして師
star半自叙伝としておもしろく読める

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山田盛太郎―マルクス主義者の知られざる世界 (評伝・日本の経済思想)
山田盛太郎―マルクス主義者の知られざる世界 (評伝・日本の経済思想)寺出 道雄

日本経済評論社 2008-01
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おすすめ平均 star
star講座派を見直す近年珍しい本
starまさか

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今さらマルクス? 今こそマルクス?

休職中外交官佐藤優は、最近の論壇を一手に引き受け、かき回している。その知的生産の量ばかりでなく、扱うテーマの多彩さにも驚かされる。佐藤優『私のマルクス』(文藝春秋、1700円)は佐藤工房の秘密を知る格好の素材で、とにかく面白い。

今さらマルクスと食わず嫌いになるなかれ、その読み方・学び方が参考になる。佐藤のマルクスとの出会いは書物からではない。1975年浦和高校在学中にハンガリー・ソ連を回る旅に出て、ブダペストのペンフレンドと出かけた野外ディスコで巨大なマルクス像に会う。佐藤はそのマルクスを「やぶにらみ」と評する。プラハの春挫折後の東欧社会主義の屈折と、内ゲバ・連合赤軍事件で自滅に向かう日本の左翼運動がオーバーラップしている。

佐藤が2度目にマルクスと会ったという同志社大学「アザーワールド」は、ほとんどドストエフスキーの世界。共通1次試験が始まり偏差値が跋扈するようになるころ、大学均質化に最も遠い神学部で、佐藤は聖書の神学的解釈と宇野弘蔵3段階論を介した『資本論』との世界観的対決を迫られる。それも黒旗を掲げる学生運動の小宇宙での必要に迫られた学習で「行動の規範はあくまでもイエス・キリスト」と言い切る。その延長上に、10年後のモスクワでマルクスの資本主義切開の論理が外交官としてのソ連崩壊の解析に応用できた3度目の出会いが暗示される。現代史の断面を鋭く切り取る絵巻物だ。

佐藤が宗教とマルクスを重ねたように、シリーズ「評伝・日本の経済思想」第1回配本、寺出道雄『山田盛太郎――マルクス主義者の知られざる世界』(日本経済評論社、2625円)は、山田の『日本資本主義分析』にロシア・アバンギャルド芸術が刻印された最先端モダニズムのアーキテクチャーを見出す。コミュニズムが非合法であったが故にマルキシズムが現実的意味を持ちえたという解釈は説得力がある。

格差から貧困へと論点も転回してきた。定職なき若者も会社人生を顧みる団塊世代も『資本論』に挑戦してみては。いや【加藤哲郎 一橋大学大学院社会学研究科教授】

■2008/04/15, 週刊エコノミスト

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