メイン > 週刊エコノミスト書評 『ブックレビュー』 > 2008年3月4日~3月11日

抜本的税制改革と消費税―経済成長を支える税制へ
抜本的税制改革と消費税―経済成長を支える税制へ森信 茂樹

大蔵財務協会 2007-10
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効率的な税制を目指して「消費課税」「税額控除」を提言

著者は旧大蔵省主税局で主要課長を歴任後、学界に転身した税制のエキスパートである。大蔵省というと「また増税話か」と身構える読者も多いと思うが、そうしたステレオタイプな批判は本書には当てはまらない。税制改革には「望ましい税制とは何か」と「どの程度の規模の政府が望ましいか」という2つの論点があり、著者はこれらを分けて議論すべきとし、本書では前者の「望ましい税制」を論じる。

世界の税制改革には2つの新たな潮流が見られる。1つは「公平から効率へ」の流れである。人や資本など経済資源の移動が自由な現在、それらが生み出す付加価値への増税は困難となっており、効率的な資源配分を促す成長志向の税制にシフトしている。

著者は、効率的な税制として、消費課税に軸足を移した税制を掲げる。勤労所得と資本所得などを合算し、累進税率を適用する現在の包括的所得課税は、限界にきているという。勤労所得においては、公平性確保のためのさまざまな所得控除が税制を極めて複雑にし、課税ベースが縮小している。一方で、専門知識を使えば租税回避行動が可能になるなど、公平性を損なう本末転倒の事態も生じている。

また、資本所得においては、資本蓄積の過程で一度課税され、さらに配当などに課税される二重課税の問題がある。成長のためには資本蓄積の促進が必要であり、資本所得を分離したうえで、低い税率で課税する二元的所得税を採るべきだとしている。消費税は、その本質が貯蓄・資本への課税ではないため、経済成長への負荷が小さい。

もう1つの新潮流は、所得再分配の考え方の変化である。成長志向の税制の構築過程で、格差拡大が各国で問題となったが、セーフティーネット拡大などの従来型の政策では「大きな政府」をもたらし、非効率を生む。所得再分配でも市場メカニズムに基づいた税制にシフトしつつある。著者は「所得控除」よりも「税額控除」がより有効であることを強調し、さらに、税額控除のみでは恩恵を受けられない低所得者もいるため、給付付き税額控除の導入を提案している。負の税率の考え方を含む給付付き税額控除は理論の世界にとどまらず、実際に導入する国も増えており、日本でも真剣に検討すべきであろう。

この他、法人税率の引き下げや基礎年金の全額税負担の財源としての消費税率引き上げなども提案されており、抜本的税制改革のための具体的かつ現実的な提言の書といえるだろう。【評者 河野龍太郎 BNPパリバ証券経済調査本部長】

■2008/03/11, 週刊エコノミスト

仕事と日本人 (ちくま新書 698)
仕事と日本人 (ちくま新書 698)武田 晴人

筑摩書房 2008-01
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おすすめ平均 star
star「仕事観」の整理のために
star仕事観の起源
star資料としてなら星5つ

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仕事とは「報酬の多寡」か?「評価」「対価」から問い直す

「時間を守る」ということは、現代社会にあっては基本的なルールであると言えよう。

著者は『遅刻の誕生』という本を援用しながら、働く場所で時間を守ることと、その時間内に「どれだけのことができたか」の生産性が問われるようになったのが近代だと言う。なるほどよく分かる。

しかし「どれだけのこと」という質と量が問われる時、そこに「裁量」の余地があるかどうかも問われなければならない。その点で現代社会は、個々の労働者が「労働の主人になる余地はかなり限られている」と本書は指摘する。全く同感である。

ホワイトカラーとブルーカラーの仕事(労働)は少し違うが、「裁量」という側面から見れば、それがない。つまり言われたこと、与えられたことだけをやる作業は、賃金も安く、自由もきかない。それに対して、裁量の余地が広く、自由度が高く、従事していて楽しい仕事は報酬も高いのが一般的だ。サービス業が発達してくると後者の仕事が増えてくるように思うのだが、実際はどうなのだろう。

近・現代の「労働観」を丹念にたどりながら、「何をしたかではなく、どれだけ稼いだかで人の価値を測る」のは、現代のイデオロギーである、とする著者による本書は、「労働とその評価」そして「労働とその対価」について執拗に問いかける。

項目を紹介すると、(1)「労働」という言葉について、(2)「仕事の世界」と「はたらきの世界」、(3)工場の登場と労働という観念の成立、(4)時間の規律、(5)残業を含めた賃金と仕事の成果、などを点検しながら、最後に(6)「近代的な労働観の超克」のために、営利企業と非営利企業の統合を呼び掛けている。

評者は「労働観」というものが「超克」可能なものなのかどうかはよく分からない。ただ経済学(者)が、働くということの評価基準を「報酬の多寡」に限定し過ぎていることにいら立つ著者の気持ちに深く共感する。

「金銭的な報酬の多寡への注目は、それとは異なる労働の意味を問いかけることを妨げている病根のように見える」と著者は言う。そして、そのような「理解」を「どのように変えていくのが私たちにとって望ましいのかを考えるのは無駄なことではない」と「あとがき」にある。全くである。

それゆえ本書を高く評価しつつ、若干の不満を述べたい。最後のところで、NPOやボランティア、あるいはオランダモデルが数ページ言及されているが、「望ましさ」についてもう少し著者の見解を知りたいと思った。【評者 中沢孝夫 兵庫県立大学環境人間学部教授】

■2008/03/11, 週刊エコノミスト

新・御宿かわせみ
新・御宿かわせみ平岩 弓枝

文藝春秋 2008-01
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おすすめ平均 star
star酷評せざるをえない
star湘南ダディは読みました。
starやっぱり…

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一力版“赤ひげ”は“必要悪”を認め患者を救う

山本一力『たすけ鍼』は、“医は仁術”を実践し権力にも媚びない凄腕の鍼灸師・染谷が活躍する連作集である。

染谷は病気を治療するには、患者の肉体だけでなく、病の原因になる社会悪にも挑む必要があると考えているので、山本周五郎『赤ひげ診療譚』を彷彿とさせる。

だが社会を知り尽くす染谷は、善と悪が明確に区分できないことも知っている。例えば高利貸が廃業すると、借金できない庶民が増える危険もある。そこで染谷は、利息の引き下げや強引な回収をやめるように交渉をするのだ。

やがて豪商・野島屋の気骨を認めた染谷は、二人三脚で治療院を大きくするが、利益が出なければ慈善事業も長続きしないとの野島屋の意見を決して否定しない。

人情ものは“清貧”を美徳とすることも多いが、著者は金儲けを否定していない。ただ企業は利益を独占するのではなく、社会に還元してこそ認められるとしているのだ。野島屋の決断は、企業と社会の関係を再考する契機となるはずだ。

平岩弓枝『新・御宿かわせみ』(文藝春秋、1470円)は、2006年に完結した人気シリーズの続編である。

時は明治6年、幕末維新の動乱は旅籠「かわせみ」の人々にも、激変をもたらしていた。物語は、イギリスで医学を学んで帰国した神林麻太郎を軸に進んでいく。

麻太郎は最新医学を用いて不可解な事件を解明するので、新時代らしさも随所に見られるが、変わらないのは根底にある人情。西洋から輸入された文物で価値観が揺らいだ明治は、非常に現代と似ている。激動の時代を懸命に生きる麻太郎たちの姿は、人生の指針となるだろう。【末國善己 文芸評論家】

■2008/03/11, 週刊エコノミスト

江戸のエリート経済官僚大岡越前の構造改革 (生活人新書 238)
江戸のエリート経済官僚大岡越前の構造改革 (生活人新書 238)安藤 優一郎

日本放送出版協会 2007-12
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著者インタビュー 安藤優一郎(歴史家)

景気浮揚や社会保障も名奉行は政策マンだった

──町奉行は、江戸の治安を守り、お裁きをするという時代劇のイメージとは違うのですね。

■今でいえば、東京都知事と警視総監、東京地裁所長を一緒にして、そのうえに幕閣に連なり経済財政担当相も兼ねていたというところでしょうか。譜代大名から選ばれる老中、若年寄を大臣、副大臣とすれば、旗本から選抜されて実務を担当する奉行は、各省庁の事務次官・局長クラス。町奉行は、その最高位でした。

──そのなかで、大岡忠相は異色の存在だったのですね。

■一般に50~60歳代で就任する町奉行に、徳川吉宗は大岡忠相を41歳で抜擢したのです。そのため、19年も南町奉行を務めることになりました。

──元禄のバブル、正徳の治のデフレと続いたあとの享保の改革。大岡忠相が活躍した時代は、現在の経済環境と通じるところがありますね。

■正徳の治で行われようとした改革と、享保の改革とは連続しています。改革を継続する一方で、景気浮揚も考えなければならない。さらには、デフレで切り捨てられた人たちへのフォローアップも必要だ。それらの課題を担ったのが、大岡忠相だったのです。景気刺激のために物見遊山を奨励したり、お堀を浚渫したり、また小石川養生所の設置などの社会保障策も行っています。

──本書を読むと、大岡忠相の少なくとも経済政策は必ずしも成功していないように見えます。功績とは。

■最大の功績はデータ整備だったのではないでしょうか。江戸の経済課題は(米を除く)物価の抑制だったのですが、彼は物資の江戸への流入量などの経済データを整備して物価の監視を行いました。近代的な政策手法の先駆けといってもいい。さらに経済データに限らず、大岡はすべての政策を公文書として残したのです。裁判の判例集を作ったのも彼でした。

大岡忠相がやり残したこと、失敗したことを、彼が残した文書を土台にして、その後の寛政の改革や天保の改革、また田沼意次や遠山の金さんこと遠山景元らが経済政策に反映したと考えていいと思います。

──大岡忠相の魅力は。

■「大岡裁き」といわれている裁判のうち、実際に大岡が担当したのは1件だけだったようです。それよりも、当時縦割り行政にはなっていなかったのか、行政官としてあらゆる分野に手を出して新しい政策を行おうとしています。改革にかける、そのバイタリティーは魅力です。

──今は“江戸ブーム”ですが、江戸の面白さは。そして、次は何を。

■政治であれ、経済であれ、文化であれ、現代の私たちにつながるものが江戸時代にはあった、ということが江戸の面白さなのではないでしょうか。そこから「江戸に学ぶ」ことも可能だと思います。次は、徳川家の家臣たちが明治をどう生きたかという『幕臣たちの明治維新』(講談社現代新書)を3月中旬に出す予定です。

■2008/03/11, 週刊エコノミスト

税制改革の渦中にあって
税制改革の渦中にあって石 弘光

岩波書店 2008-01
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長く日本の税制改正を手がけた著者の政党、マスコミ、国民への怒りの書である。少子高齢化が進み、国・地方の債務残高はGDPの180%近く。なのに昨年の参院選も、予想される総選挙に向けても与野党からは消費税率引き上げの議論が聞こえず、耳に心地よいバラマキ政策が跋扈する現状への怒りである。石氏の近著『現代税制改革史』との併読がお薦め。

■2008/03/11, 週刊エコノミスト

アメリカの経済政策―強さは持続できるのか (中公新書 1932)
アメリカの経済政策―強さは持続できるのか (中公新書 1932)中尾 武彦

中央公論新社 2008-02
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現役の財務省幹部が米国を中心に世界の経済政策について独自の分析を試みた。著者は同省国際金融畑が長く、現在も実質的にG7の舞台裏の進行を担当。サブプライムローン問題に揺れる米国は底力を維持できるのか、米政府にとっての対中国経済政策の重みや日本経済との関係は、米国内の格差問題はどうなるのか……といったことについて、米国勤務時代の経験をもとに解きほぐす。

■2008/03/11, 週刊エコノミスト

イギリス経済再生の真実―なにが15年景気を生み出したのか
イギリス経済再生の真実―なにが15年景気を生み出したのか日本経済新聞社

日本経済新聞出版社 2007-11
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おすすめ平均 star
starいまひとつ内容が薄い
star一風変わった今のロンドンを歩くためのガイドブック
star英国の特異なポジションの再確認(大雑把な「つかみ」としては有効)

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最近の英国は日本がお手本にしたい国だ。15年間、景気拡大が続き、世界経済のなかでのプレゼンスは大きくなっている。英国の復活は、サッチャー改革の結果なのか、それともブレアによる軌道修正ゆえなのか。その一方で、バブル崩壊の可能性はないのか――本書は、いまいちばん気になる国、英国経済の現状を報告することで、こうした疑問にも答えてくれている。

■2008/03/11, 週刊エコノミスト

老いはじめた中国 (アスキー新書 (049))
老いはじめた中国 (アスキー新書 (049))藤村 幸義

アスキー 2008-02-12
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おすすめ平均 star
star現代中国への懸念をさらっと
star予測しがたい中国の「確実な未来」
star広範囲な観察による意表をつくテーマ、面白い

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2001年に高齢化社会に入った中国は26年ごろには高齢化率14%以上の高齢社会に猛スピードで突入する。都市と農村との格差は地方の反乱を生んでおり、山峡ダム建設などの環境破壊と公害による健康被害が社会問題化し、食の安全軽視、資源漁りは国際問題化した。北京五輪後のバブル崩壊をにらみながら、中国の万般を分析した入門書。もう中国には頼めない、か?

■2008/03/11, 週刊エコノミスト

在日 (集英社文庫 か 48-1) (集英社文庫 か 48-1)
在日 (集英社文庫 か 48-1) (集英社文庫 か 48-1)姜 尚中

集英社 2008-01-18
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おすすめ平均 star
star持っててよかった在日特権
star姜尚中の綴る在日の想い 

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テレビなどで大活躍中の東大教授の半生の記。単行本に大幅加筆した。朝鮮戦争勃発直後に熊本県の在日集落に在日韓国人2世として生まれ、多感な青春時代、自己アイデンティティー確立に悩みながら民族運動にかかわり、悲壮な覚悟で日本名の永野鉄男から姜尚中に変えた。指紋押捺拒否運動を機に新しい人生が開けた、という内容。姜教授の言説をより深く理解するためにも一読をお薦めする。

■2008/03/11, 週刊エコノミスト

誰も知らない 世界と日本のまちがい 自由と国家と資本主義
誰も知らない 世界と日本のまちがい 自由と国家と資本主義松岡 正剛

春秋社 2007-12-20
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おすすめ平均 star
starこれは著者独自の考えではない、何時もの事だが・・・

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世界を悪くしたのは誰か

松岡正剛『誰も知らない世界と日本のまちがい』(春秋社、1890円)は、前著『17歳のための世界と日本の見方』の後編とでもいうべき世界史のコンテススクトのなかで展開される松岡流日本論である。

今回は近代のネーション・ステート(国民国家)に対する強い異議申し立てが軸になっていて、なかなか読み応えがある。しかも、ネーション・ステートに対する批判は、民主主義と資本主義を全面的に受け入れてしまっている今の「世界と日本のまちがい」という指摘にもつながっている。

「国民国家や資本主義や民主主義というものは、たいへんよくできたシステムです。自由競争を組み立て、誰にもチャンスがあることを了解させたわけでした。かんたんにいえば勝者と敗者をはっきりさせるというシステムです。それをもって『社会の自由』と定義したのです」

「けれどもだからといって、今日の社会の大勢がこれでいいというわけではないでしょう。競争に勝っただけの社会がこんなに罷り通っていて、いいはずがない。それを、徒競走はやめよう、国が手を出して管理するのは控えます、格差はなくす、賞味期限は守りなさいというだけでは、何の改善にもなりません。それこそ賞味ならぬ正味が途絶えてしまう。かえって資本主義と民主主義のルールばかり肥大化させ、悪者叩きが得意な連中を増長させるだけです。もっと社会の分節を取り戻すか、新たな分節をつくりなおすべきでしょう」

近代資本主義、近代の議会制民主主義のモデルを作ったといわれるイギリスを槍玉に挙げ、次々と「常識的」歴史観を崩していく松岡の鋭い論理の展開はなかなか痛快である。

要するに、こんなに世界をめちゃくちゃにしてしまったのはイギリスではなかったかというわけなのだ。そして、世界全体も日本も結局はこのイギリスモデルに従った。本のタイトルである「誰も知らない世界と日本のまちがい」はこのことを指している。

ではどうしたらいいのか。「自由と国家と資本主義」の組み替えに「日本流」が役立つのではないかと松岡は言うのだが、明確な構図はいまだ見えない。【榊原英資 早稲田大学教授】

■2008/03/11, 週刊エコノミスト

編集者国木田独歩の時代 (角川選書 417)
編集者国木田独歩の時代 (角川選書 417)黒岩 比佐子

角川学芸出版 2007-12
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おすすめ平均 star
star独歩の大河ドラマのような激動の人生と人間模様に感動

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編集者としての国木田独歩

今年は国木田独歩が36歳の若さで夭折して100年に当たる。私たちの世代には独歩はなじみ深く、中学・高校の国語の教科書には必ず独歩の作品が載っていた。私の記憶では、「明治の浪漫主義」として、独歩の「忘れえぬ人々」が紹介されていた。抒情詩「山林に自由存す」も教科書で読んでいたものである。20代後半のこと、東京に転勤することになって、独歩の『武蔵野』の文庫本を買ったこともある。その文体は一向に旧くさくなく、心に沁み入ったことを憶えている。口語体で小説を書き出した初期の作家であったため、中村光夫のごときは、独歩を目して「近代短編小説の祖」と、最大限の賛辞を贈っている。

しかし当時(明治中期)は、一葉とか眉山ら文語体の名文家が好まれ、独歩の作品は売れず、窮迫の日々を送っていた。西園寺公望邸の食客となっていたのはそのためもあった。第2短編集『独歩集』の序文で、独歩は自らの人気のなさを嘆いている。独歩に人気が出たのは晩年のわずか2年ほどで、その意味では気の毒な作家であった。

黒岩比佐子著『編集者 国木田独歩の時代』(角川選書、1785円)は、以上のような作家としての独歩でなく、編集者、ことにグラフ誌出版者としての独歩を詳しく論じた異色の書である。現在も続いている『婦人画報』は、国木田独歩が始めた雑誌だと言えば、驚く人もあるだろう。独歩は若くして矢野龍渓の知遇を得、矢野の紹介で豊後佐伯に教師の経験があり、『源をぢ』や『春の鳥』はその副産物であるが、日露戦争の直前に矢野から画報の編集を任され、『戦時画報』が大ヒットして一躍編集者として脚光を浴びる。

戦争後、龍渓から画報社を引き継いで、自ら独歩社を興し社長となった。社員として協力した吉江孤雁(喬松)は、独歩社は“自由の王国”であったと回想している。独歩社は手を広げすぎて1年あまりで倒産するが、『婦人画報』だけは売れて今に続いており、独歩の編集者としての優れた一面を物語っている。とにかく、独歩は近代メディア史上の重要人物であったことを本書は遺憾なく示しており、私のような独歩ファンには、見逃せぬ本である。【今谷 明 国際日本文化研究センター教授】

■2008/03/11, 週刊エコノミスト

学歴社会の法則 教育を経済学から見直す (光文社新書 330)
学歴社会の法則   教育を経済学から見直す (光文社新書 330)荒井 一博

光文社 2007-12-13
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おすすめ平均 star
starやや古い議論
star経済学という視点
star「学校は人的資本を形成するのか?」を読んでいないようです

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2つの理論で「学歴」を分析 ひねりの利いた議論が面白い

日本の教育論議は思い込みに支配されているが、本書は、それから自由に、証拠に基づいて教育を議論するという貴重な試みである。証拠に基づいて議論するためには、ある事象が起きている理由を、その事象への好悪の感情とは別に明らかにする必要がある。

学歴が所得格差を生み出す要因を、本書は、人的資本理論とシグナル理論の2つで説明する。人的資本理論は、教育が人々の生産性を高めるという。一方、シグナル理論は、教育は能力のありそうな人を選び出す機能しかないという。この考えをさらに推し進めれば、人々は高い能力を身に着けているふりをして、社会における自分の地位を有利にするために教育を受けることになる。著者は、シグナル理論はひねりの入った考え方だと指摘するが、確かにそうだ。

また、著書の議論も、さまざまな面でひねりが入って面白い。シグナル理論から、必修逃れが起きるのは当然であることが理解される。企業は、高校生が本来身に着けているべき世界史の知識などに関心がなく、あるレベルの大学卒業生であることに関心がある。とすれば、高校生が、なるべく少ない努力で、大学生というシグナルを得ようとするのは当然だ。シグナル獲得競争の望ましくない面と、その克服策が興味深く語られる。

後半は、教育をめぐるさまざまな問題に焦点を当てている。働く母親と専業主婦はどちらが子供の学歴を上げるか、学校選択制と教育バウチャー(利用券)制度、いじめの経済学、学級規模と成績、学習法もある。

著者は、学校選択制とバウチャー制度に批判的である。その理由は、学校に生徒を選択する自由がない状況では学校の質は高まらず、自由を認めれば学校に行けない生徒が出てしまい、義務教育が成り立たないことによる。しかし、日本の公立高校は生徒を選択できる。生徒を選択できる高校以上の教育で、バウチャー制度が機能するのか、著者に意見を聞いてみたい。

日本では、子供は減っているが、教師は減っていないので、学級規模は小さくなっている。学級人数を少なくするコストは高いので、学力に与える効果を知ることは重要だが、日本では、研究がほとんどないという。海外の研究では、さまざまな要因が絡み合って、一概には言えないようだ。私の考えるところ、効果がないと実証されては困るから、そのような研究ができないようにデータを出さないのだと思う。ひねりの利いた議論を読んでいるうちに、私もひねりを入れたくなった。【評者 原田 泰 大和総研チーフエコノミスト】

■2008/03/04, 週刊エコノミスト

「論理的」思考のすすめ―感覚に導かれる論理
「論理的」思考のすすめ―感覚に導かれる論理石原 武政

有斐閣 2007-11
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柔らかい科学観で「素直に論理立てて考える」大事さを伝える

著者の石原武政氏は、マーケティング・商業分野の理論研究の第一人者。『マーケティング競争の構造』や『小売業の外部性とまちづくり』といった著作を通じて、学会の共通財産ともなる重要な理論的地平を切り開いた。使用価値や消費者欲望は所与のものではなく競争プロセスを通じて創発するという概念(競争的使用価値)、また小売商業と「まちづくり/街並みづくり」との相克(商業の外部性)の概念は、先進的な理論家の関心をとらえてやまない。

その著者が、自らの研究経験を振り返り、「研究するとは、どういうことか」を、現実とのかかわりのなかで語ったのが本書。理論(家)が現場に向き合う作法から始まり、論文を書く技法、現場に寄り添った理論づくりと話は展開する。そして、本質や矛盾といった理論用語を俎上に載せつつ、上記の「競争的使用価値」や「商業の外部性」概念が誕生した理論的背景に話は及ぶ。競争から創発する使用価値、あるいは社会のなかの商業に注目する氏の視点は、改めてカール・マルクスやニクラス・ルーマンといった社会科学の深い理論的伝統へ誘うと同時に、現場で日々苦労する商業者やマーケッターや行政担当者にも温かい視線を注ぐものとなっている。

本書の真骨頂は、その柔らかい科学観にある。「理論と現実との峻別」「理論家の認識優位の立場」、あるいは「理論を支える唯一絶対の客観的証拠」といった、いわゆる自然科学をベースにした硬い科学観とは一線を画している。「理論や命題が現実を正確に照射しているというのは、それが真理であるための必要条件ではあっても十分条件ではない」という。つまり、理論は理論として自存できず、現実と理論とは切り離しがたく結びついていて相互に影響を与え合うことを避けるわけにはいかないというのだ。

この言葉、当たり前に聞こえるかもしれないが、思う以上に立場としてはラジカルだ。というのは、ビジネスの現場においては、いまだに硬い科学観が尊ばれるからだ。時には、それをかさに着て、常識でもわかるような経営の手続きを仰々しく理論と呼び、数字データを解析した結果を理論的成果と呼ぶ学者も少なくない。硬い科学観でもうまく使えば現場の判断を助けるのだが、下手に使うと、現場の人々が現実を理解する力を逆に弱めてしまう。注意しなければならないと著者は説く。極めて平易な語り口のなかに、「素直に論理立てて考える」ことの大事さが伝わってくる。【評者 石井淳蔵 神戸大学大学院経営学研究科教授】

■2008/03/04, 週刊エコノミスト

名画消失 (ハヤカワ・ノヴェルズ)
名画消失 (ハヤカワ・ノヴェルズ)ノア・チャーニイ 山本 博

早川書房 2008-01
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エコール・ド・パリ殺人事件 レザルティスト・モウディ (講談社ノベルス フK- 2)
エコール・ド・パリ殺人事件 レザルティスト・モウディ (講談社ノベルス フK- 2)深水 黎一郎

講談社 2008-02-08
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蘊蓄満載の美術ミステリ 新人2人のネタは共通?!

さして美術趣味も人並みの鑑賞眼もあるわけではないのに、美術ミステリと銘打たれた本に惹かれる物好き。――わたしのことです。少々の不細工は我慢して贔屓目に(?)読んでしまう。今回の2点のお手並みはどうか。

ノア・チャーニイ『名画消失』(早川書房、1995円)は新人の第1作。これは、じつに、どっぷりと濃厚な名画ミステリだ。盗みのテクニックのみならず、贋画つくりの内幕も愉しめる。プラスアルファのサービスが満載。

カラヴァッジョは最近プチブームのようだが、そちらの好奇心も満たしてくれる。真っ白の抽象画が盗まれ、その「下」からまた贋作が現れる、とか。テンポは快調、美術犯罪の諸相への講義もぎゅうぎゅう詰め。お勉強にはなりますが、消化不良にもご用心を。 「泥棒を信じろ」というラストの1行がキマッた。

深水黎一郎『エコール・ド・パリ殺人事件』(講談社、945円)は、新人の2作目だが、デビュー作のような意気ごみがむんむん。こちらは、絵画談義の蘊蓄が作中人物の著作引用というかたちで章ごとのアタマに堂々と置かれる仕掛け。いわばアウトソーシングで、このほうが書き手としては効率的か。絵画論のほうが本体より面白かったりすると困るのだが……。

悲運の画家について綿々と語られた論考はもちろん、殺人の謎と緊密に結びついている。密室で殺されるのはこの著者なのであるから。このような人物が一筋縄の方法で殺されるわけがないだろ、という話なのだ。そこを行儀悪く読み飛ばすと、面白さは半減する。多少の窮屈さは仕方あるまい。

2点とも、ミステリとしての燃焼度が気になるところ。肝心な部分をごまかすなといわれれば、真正面から答えましょう。

ネタをバラすぞ。どちらも犯人は絵だ。【野崎六助 作家・評論家】

エッ?

■2008/03/04, 週刊エコノミスト

日本は世界で第何位? (新潮新書 240)
日本は世界で第何位? (新潮新書 240)岡崎 大五

新潮社 2007-11
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star著者岡崎さんの人柄が伝わってくるようで
star世界を知って日本を知る
star世界ランクと旅人の体験談

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著者インタビュー 岡崎大五(作家)

68のランキングから日本と世界の関係を見る

──どうして世界ランキングを本に並べようとしたのですか。

■海外で旅行添乗員をしていたころ、日本人に説明してもなかなか旅先の実情を分かってもらえない。貧しい国で旅行者は当然「かわいそう」と思うけど、現地の人はそんな物差しで生きていない。独裁者の国に行ったら、民主主義的な観点だけでものを言ってもかみ合わない。日本での情報や教育で理解しにくい世界がまだごまんとあります。それをどうやって日本の人たちに伝えられるか。ランキングは世界を俯瞰し、旅行記がズームインするものだから、2つ合わせて世界と日本の関係を眺められれば面白いと思いました。世界旅行の気分で読んでほしい。

──ランキングのなかでご自身が驚いたことは?

■ガソリン価格、セックス頻度から美人度、ビッグマックの値段、住宅寿命など主観を含め68の世界ランキングを集め、日本と海外を徹底比較しています。小さいと思っていた日本の国土は世界193カ国のうち62位と上位3分の1に入り、欧州にあったなら7位とドイツや英国、イタリアより広いのです。消費税と女性の社会進出に不思議な関係がうかがえます。消費税率はスウェーデン、デンマーク2位(25%)、ノルウェー6位(23%)など北欧が高く、日本は先進国のなかで最低。女性国会議員の比率もスウェーデン2位、ノルウェー5位、デンマーク6位で、日本は130位。税金が高い分、夫の給料だけで家計は賄えないから女性が普通に働き、社会進出するわけです。主婦は海外では特殊なんですね。

──世界何カ国を旅したのですか。

■83カ国は行っています。僕が文化学院を中退した1985年はターニングポイントで、プラザ合意で円高は進み、外に目を向けるチャンスが広がっていきました。時代の“ノリ”で海外へ出て、インドなどを放浪したり、タイで法律コンサルタントをしたり、10年ぐらい日本に帰らず、帰国したらまた添乗員暮らし。20年あまり、海外から日本を見る機会に恵まれました。

──旅から何を学びましたか。

■自分の常識、想像と現実の世界の違いを教えられます。日本では、海外で評判の悪い日本人の話をよく聞きますが、実は日本人への評価は高く、日本人でよかったとどれだけ思い知らされてきたことか。日本の謙譲の美徳などどんどん世界に広めていきたい。

──最近、日本の国力低下が指摘されますが、危機感はありますか。

■外にもっと目を向けないと国力は衰えます。どれだけの日本人が生の中国の姿を理解しているかは疑問で、相変わらず一昔前のルックダウンの発想です。中国は経済だけでなく、人間の立ち居振る舞いも急激に進歩しています。

──中国とはどう付き合えば?

■中国人のガイドは欧州人に対し「北京、南京があって、トンキンは東京」と説明します。冷凍ギョーザ事件の解明は重要ですが、一事が万事と考えず、大らかな気持ちで接するべきです。

■2008/03/04, 週刊エコノミスト

死都ゴモラ―世界の裏側を支配する暗黒帝国
死都ゴモラ―世界の裏側を支配する暗黒帝国ロベルト・サヴィアーノ 大久保 昭男

河出書房新社 2008-01-11
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star読みにくいが、読む価値あり!

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都市型マフィアの“闇”を暴く

イタリアといえば、シチリアのマフィアが有名だが、半島の「ブーツのつま先」のカラブリア州のヌランゲッタ、「かかと」のアプーリア州サクラ・コロナ、ナポリを拠点に暗躍する都市型マフィア「カモラ」に関する書物は少ない。

『ゴモラ――「カモラ帝国」への旅』の作者、若きロベルト・サヴィアノは身の危険を冒しても「この1冊はどうしても書かなければならない」と覚悟を決めたのだろう。両親が医師と教師というサヴィアノは、ナポリに1979年に生まれた。以来、故郷近辺でカモラが殺害したのは推定3600人。後に反マフィア団体で働いた作者にとって、「組織犯罪を忌み嫌う」ことが原点だった。

サヴィアノによれば、カモラは恐喝やタバコの闇販売のようなスケールの小さいことはしない。とっくにグローバル化しており、南米やナイジェリアの麻薬カルテルとじかに交渉、ダイヤモンドでマネーロンダリング、EUからの農業補助金をかすめ取ることは朝飯前。中国の犯罪組織と組み、ナポリの近港から、半分近くが非合法という数百万トンの商品を毎年輸入している。すでに「イタリアンファッション」は中国人非合法労働者によってヨーロッパ中で作られ、ロシア製武器を東欧各地に所蔵している。また、年末から山積しているナポリのゴミ問題でも、カモラは有害ゴミを資源として海外に輸出している。

カモラにとって、ベルリンの壁崩壊はビジネスチャンスを東欧へ拡大することを意味した。東ドイツで最初に建設工事を請け負ったのはカモラの経営する企業だったが、カモラはポーランドやルーマニアのホテルも買収。有能な弁護士を雇い、完全にホワイトカラー化した。

イタリアでは、犯罪組織が経済に占める割合が、国内総生産の7%にも上っている。本書の原題「ゴモラ」とは、ソドムと並び、旧約聖書に出てくる犯罪者と罪人の街。神はそんなゴモラの街を雨、火事、硫黄で殲滅したのだった。サヴィアノがあえて「ゴモラ」と題したのも、カモラに毒されたナポリの街を一掃してもらいたいとの願いからか。

一昨年、イタリアで発売されて以来、大ベストセラーとなった本書は、「囚人たちが最も読みたがる書物」と言われ、硬い題ながら、読みやすく書かれている。一方、ナポリ港での肉体労働など、潜伏取材をしたこともあるサヴィアノは、ボディーガードなしでは生活できない毎日を強いられているらしい。【福田直子 ジャーナリスト・在ミュンヘン】

■2008/03/04, 週刊エコノミスト

秘密の国オフショア市場
秘密の国オフショア市場ウィリアム・ブリテェィン・キャトリン 森谷 博之 船見 侑生

東洋経済新報社 2007-12
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starケイマンの存在なくして多国籍企業は存在しない!

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タックスヘイブンで名高いケイマンを舞台に、なぜオフショア市場が作られ、それを世界の巨大資本がいかに利用したか、米国などのオンショアの国家との間で、どのように共存と軋轢を繰り返してきたかをリポートしたノンフィクション。1990年代以降のBCCI、LTCM、ロシア危機、そしてビンラディンなどの“ダークサイド”を取り上げた「オフショアの地政学」も面白い。

■2008/03/04, 週刊エコノミスト

日本人が知らなかったタイ株
日本人が知らなかったタイ株阿部 俊之

翔泳社 2007-12-18
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中国やベトナムなどを中心に新興国投資ブームが続いている。1997年のアジア通貨危機から10年あまり、タイ株にも本格的な回復のきざしが見られ、「穴場」の新興国として注目されている。バンコク在住の著者が、タイ経済の背景をはじめ、特に注目度の高いタイの上場企業について詳細に解説する。

■2008/03/04, 週刊エコノミスト

こうして伸ばす子どもの脳力・子どもの学力
こうして伸ばす子どもの脳力・子どもの学力木俣 佳丈

アチーブメント出版 2008-01-30
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著者は参院議員で、現在、文教科学委員会のメンバー。安倍内閣の教育基本法改正や教育再生会議設立の動きを見て、教育現場の声を聞こうと取り組んだ結果がこの本に。川島隆太・東北大教授や「百ます計算」で有名な陰山英男・立命館小学校副校長など7人と対談して教育改革のヒントを得ている。出身地・豊橋市内の小学校52校、中学校22校の校長や教頭の声を聞き、その結果、豊橋市は全国の教育現場のモデル市になれる、とほめているが。

■2008/03/04, 週刊エコノミスト

マイ・ドリーム―バラク・オバマ自伝
マイ・ドリーム―バラク・オバマ自伝バラク・オバマ 木内 裕也 白倉 三紀子

ダイヤモンド社 2007-12-14
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starカリスマ オバマ
star「アイデンティティ探し」の長い道のり
starBarack Obama: Future US President

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ヒラリー・クリントン氏と壮絶な民主党大統領候補指名争いを展開中のオバマ候補の自伝。父はケニアの黒人。母はアメリカの白人。コロンビア大卒業後、シカゴで社会福祉活動に従事、政治の大切さに目覚めるまでの半生の記録だ。ハーバード大大学院入学後については2006年初版の『合衆国再生』に譲るが、黒人差別への見解など、氏の原点を知るにはこの本が必読。

■2008/03/04, 週刊エコノミスト

さらば、“近代民主主義”
さらば、“近代民主主義”アントニオ・ネグリ 杉村昌昭

作品社 2007-12-22
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2004年から05年にかけてパリの国際哲学コレージュで行われた10回の連続講演録。国民国家から帝国へというポスト近代(モダン)を特徴づけるマルチチュード、生政治、グローバリゼーション、エクソダス、〈共(コモン)〉、絶対的民主主義などの言葉を平易に解説した。訳者が言う「近代政治思想の批判的概念辞典」という位置づけがぴったりのネグリ入門の書。

■2008/03/04, 週刊エコノミスト

がんのひみつ
がんのひみつ中川恵一

朝日出版社 2008-01-10
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starがんを知り良い人生を!
star広めるべき書
star本のサイズを知らずにアマゾンさんで購入。

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医者も知らないがんの話

以前、本欄で触れたこともあるが、私は映画を作った。その映画「受験のシンデレラ」が、3月末より公開される。改めて内容を紹介すると、がんに侵された受験のカリスマが、貧乏な少女に自分のある限りのテクニックを伝えながら、東大合格を目指すという話である。

この映画のテーマは、人生はやり方を変えればうまくいくということなのだが、それは受験に限った話ではない。がんにしても、仮に治らないことが分かっても、治療法で残りの人生が非常に豊かなものになることも伝えたかった。

それが緩和ケアの意味なのだが、緩和ケアについて、私に勉強するきっかけを与えてくれたのが、東大病院の緩和ケア診療部長の中川恵一氏である。がんは痛みや苦しみがなければ、死ぬ間際まで頭がはっきりしていて、やりたいことができる病気なのだから、むしろがんで死にたいという彼の言葉は説得力がある。

その中川氏が、日本で最も分かりやすいがんの解説書を出した。『がんのひみつ』(朝日出版社、714円)という小型本で、値段も安く読みやすい。その割には、多くの日本人が(医者でさえ)知らないような話が多数出てくる。

がんが細胞の老化現象の一種であり、できてから発見されるような大きさになるまで10~20年かかるという話。それゆえ、寿命が延びるほどがんが増えるのは当たり前で、将来は2人に1人はがんで死ぬという話。ウイルスや細菌の感染が原因でなるアジア型のがん(胃がん、肝臓がん、子宮頸がんなど)は衛生環境の改善で減っているが、欧米型のがんが増えているという話。がんはできる場所によって進行の速さが違うので、検診を受ける意味が違うという話。要するに進行の速いがんを早期発見するには1カ月に1度検診を受けないといけないので、事実上無理だし、遅いがんなら様子を見ていいこともあるというのだ。結局検診に意味があるのは、大腸がん、子宮頸がん、乳がんという知識も重要なものだ。

それ以上に読んでおきたいのは、がんにかかってからの知識だ。日本の医療用のモルヒネの使用量はカナダ、オーストラリアの7分の1、アメリカの4分の1で、日本のがん死亡者の8割が激痛に苦しみながら死ぬのに、実は痛みを取ったほうが長生きするという事実が紹介される。やはり死ぬにも知識は大切だ。【和田秀樹 精神科医】

■2008/03/04, 週刊エコノミスト

モムゼン・ローマの歴史〈1〉ローマの成立
モムゼン・ローマの歴史〈1〉ローマの成立モムゼン Theodor Mommsen 長谷川 博隆

名古屋大学出版会 2005-04
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starじっくり読むのがよい
starローマ史のBIBLEです
star必読

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モムゼン・ローマの歴史〈2〉地中海世界の覇者へ
モムゼン・ローマの歴史〈2〉地中海世界の覇者へモムゼン Theodor Mommsen 長谷川 博隆

名古屋大学出版会 2005-04
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おすすめ平均 star
star戦うローマ、ここにあり
star激動の時代へ突入です

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モムゼン ローマの歴史〈3〉革新と復古
モムゼン ローマの歴史〈3〉革新と復古モムゼン Theodor Mommsen 長谷川 博隆

名古屋大学出版会 2006-04
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おすすめ平均 star
star内臓疾患の時代
starまぁ確かに値段は高いんだけどねぇ

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ローマの歴史 4 (4)
ローマの歴史 4 (4)モムゼン 長谷川 博隆

名古屋大学出版会 2007-12
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名著中の白眉、モムゼン『ローマの歴史』完訳

戦前の学生が好んで歌ったデカンショ節は、デカルト、カント、ショウペンハウエルのごとき難解な哲学書を愛読していたことにちなむとか。確かに旧制の高校生や大学生の知性と教養は高かったようだ。

彼らなら真っ先に飛びつくような歴史書が完訳された。テオドール・モムゼン『ローマの歴史(全4巻)』(名古屋大学出版会、1~3・各6300円、4・7350円)は名著中の白眉といえるもの。なにしろ、『戦争と平和』の文豪トルストイや社会進化論の哲学者スペンサーをおさえて、1902年のノーベル文学賞を授与されたのだ。その栄誉に輝いた唯一の歴史家でもある。

1「ローマの成立」は、共和政国家が鍛え上げられ、イタリア半島の覇者となる経緯について語る。今日の考古学や言語学の知見からすれば、もはや古くさい記述も少なくない。だが、戦場ばかりでなく、「精力的で大規模な国政運営の腕」をふるいながら、征服地の保全につとめるローマ人に向ける視線は鋭い。

2「地中海世界の覇者へ」は、史料が増えるためか、政治史の舞台で動く個人の姿が生き生きと描かれている。ハンニバルもスキピオもカトーも登場するが、時代を動かすのは経済、社会、宗教、芸術、文化の全般が織りなす構造であることが理解できる。

3「革新と復古」は、マケドニアとカルタゴの勢力を壊滅させた後、絶大な覇権国家がさまよいつつ混迷を深める様に焦点を当てる。グラックス兄弟に始まる革命と反動が繰り返され、地中海世界をまきこむ人間と体制が激しくゆれる全体史として描かれる。

4「カエサルの時代」は全巻中のクライマックスをなす。実力者のしのぎあいのなかから、カエサルという天才が立ち現れる。この人物に寄せる著者の絶賛はひとかたならぬものがあり、ローマ人の営為のなかで軍事君主政としての世界帝国が形を整えていく歴史叙述は圧巻である。

「古代史を学ぶ者は誰でもモムゼンの弟子である」とはよく言ったものだ。ローマ共和政史の第一人者にして訳者たる長谷川博隆氏の偉業を喜びたい。【本村凌二 東京大学教授】

■2008/03/04, 週刊エコノミスト

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