メイン > 週刊エコノミスト書評 『ブックレビュー』 > 2008年2月19日~2月26日

人口経済学入門
人口経済学入門加藤 久和

日本評論社 2001-05
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人口減少の始まった日本 経済学からみた未来は?

本書は、気鋭の人口経済学者によるタイムリーな啓蒙書である。著者によると、人口経済学とは、人口を切り口にして経済活動との相互依存関係を広く分析し、これからのあるべき政策の処方箋を描くという目的を持った学問である。

わが国では最近になって人口が減少し始めるという大きな変動期を迎えている。また、少子高齢化が世界一のスピードで進行し、家計のやりくり、家族のあり方、労働市場、社会保障制度など、国民に関心の深いさまざまな分野で人口動向が大きな影響を与え始めている。こうした時に、人口経済学の入門書が新書という形で提供され、コンパクトに分かりやすく、かつアカデミックにも一定の水準を維持しながら説明されている点は高く評価できる。

本書では、最初に日本や世界の人口変化などの基礎的な知識が紹介されている。100年ほど前まで日本の総人口は5000万人以下であったし、50年後の人口が今より4000万人減少して8000万人程度になるかもしれないというのは、多くの読者にとって驚きだろう。

次いで、本書は人口経済学の基礎的な理論を紹介している。マルサスの人口論からミクロ経済学のアプローチ、さらには近年の研究動向まで、人的資本と出生行動の関係などが手際よくまとめられている。さらに、労働市場と人口・経済の関係、なかでも女性の就業行動、結婚・出生を分析している。また、人口変動とマクロ経済の関係や年金・医療など社会保障制度も説明している。最後に、人口減少時代の経済・社会政策を取り上げて、今後わが国が取るべき政策対応について議論している。

このように、限られた紙幅で、人口動向にかかわるさまざまな理論、実証、政策を簡潔に紹介している点は高く評価できる。広く、人口問題に関心のある読者に有益な好書である。

最後に、2つの点をコメントしたい。第1に、経済が豊かになると少子化が進行する可能性は解説されているが、なぜわが国で(あるいは東アジアで)それが顕著なのか、また、今後こうした少子化傾向はいつまで続くのか、少子化対策はどの程度有効なのか。これらの点をより突っ込んで議論することは、有益だろう。第2に、最後の章でテーマとした人口減少時代の政策対応は、わが国政府が試行錯誤している政策を要領よくまとめているが、政府の公式見解にかなり近い記述も見られる。著者独自の見解をより大胆に展開してもよかったのではないか。【評者 井堀利宏(東京大学大学院経済学研究科教授)】

■2008/02/26, 週刊エコノミスト

合衆国再生―大いなる希望を抱いて
合衆国再生―大いなる希望を抱いてバラク・オバマ 棚橋 志行

ダイヤモンド社 2007-12-14
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おすすめ平均 star
star初の黒人大統領誕生なるか?
starオバマ氏の人柄と主張がよくわかり、ファンになります。
starオバマ氏が出てきた。

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高揚感に満ちた主張に酔うがちょっと安易な感じも

本書の原題は“The Audacity of Hope”である。本文中の邦訳は「大胆不敵な希望」となっている。もう少し説明的に訳せば、「希望を持つことの大胆さ」という感じだ。「逆向きの証拠はいろいろあっても、争いで分裂した国に一体感を回復することは可能だと信じる大胆さ」。著者は、この大胆さこそ、「これぞ、アメリカの精神で最上のものではないか」と考えている。

この希望のメッセージが、今、全米の多くの有権者たちの心を引きつけている。

大胆に希望してやまないエネルギー。それを著者はどこまで持ち続けることができるだろうか。それを考えながら、本書を読み進んだ。確かに、本書は高揚感に満ちている。「黒人のアメリカも、白人のアメリカも、ラテン系のアメリカも、アジア人のアメリカもない。ただ、アメリカ合衆国があるだけなのだ」という言葉は、人種対立を克服した21世紀のアメリカのイメージに、大きな希望を抱かせる。

ジョージでもなく、ビルでもなく、ロニーでもなく、ジミーでもない。名はバラク、姓はオバマという人が、アメリカ大統領選に向けての最有力候補となる日が来た。この日が来るという大胆な希望を、果たしてどれだけの人々がどこまで抱いていたことだろう。

あらゆる意味で、うきうき感を持たせてくれる本である。ただ、そうであればあるほど、本当にそうなのか、本当にこれでいいのか、という気分にもなる面がある。

ワーキングプア問題は解決可能だ。グローバル化に伴う痛みは解消できる。人種対立は克服可能だ。相異なる宗教は共存できる。著者の希望の大胆さはとどまるところを知らない。

すべての不可能を可能にできるという信念はすばらしい。だが、気になることが1つある。それは、著者が不可能を可能にするための寄る辺をどこに求めているかという点だ。この点に関するオバマ的勘所は、どうも「中葉」ということにあるように思える。いわく、「根の深い部分は別にして、わたしたちの共通点は増えてきているような気がする」。

共有できる価値観を軸に歩み寄る。それは誠に結構だ。著者の育ちの良さと性格の素直さが生み出した発想なのだろう。だが、ちょっと安易な感じもする。

誰もが中葉を得た標準的アメリカ人になることで、不可能は本当に可能になるのか。機会があれば、直接聞いてみたいところだ。【評者 浜 矩子(同志社大学ビジネススクール教授)】

■2008/02/26, 週刊エコノミスト

こころげそう 男女九人 お江戸恋ものがたり
こころげそう 男女九人 お江戸恋ものがたり畠中 恵

光文社 2008-01-22
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おすすめ平均 star
star切ないなぁ~。

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夢霊
夢霊桑原 美波

講談社 2008-01-24
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幼馴染み9人の恋愛から「大人になる」意味を知る

時代小説のヒットメーカー畠中恵の最新作『こころげそう』は、男女の恋愛模様が不可解な事件を解決するヒントになる捕物帳なので、謎解きと人情話の融合も見事である。

下っ引きの宇多の前に、片思いをしていた於ふじの幽霊が現れる。於ふじの死を調べ始めた宇多は、成長した9人の幼馴染みが恋愛トラブルを抱えていることを知る。

ぼて振りの弥太は、お染と恋仲。だが弥太を好きなおまつは、お染の父親が交際に反対なのを知っているので、弥太のことが諦めきれない。仲間内のリーダー重松は、おまつが好きだが、養子をもらう話が持ち上がっていた。

江戸時代は自由恋愛が難しく、それが“せつない恋”を盛り上げている。その意味で現代と異なる部分もあるが、つらい恋愛を通して、真に相手を想うとは何か、将来どのように生きるべきかを模索していく宇多たちの葛藤は普遍的。大人になることの厳しさと喜びを表現したラストには、思わず共感してしまうだろう。

桑原美波のデビュー2作目で、初の時代小説となる『夢霊』(講談社、1575円)は、室町時代の京を舞台に、吉夢を売り買いする“夢霊師”晴一の成長を描いている。

夢の吉凶を占う乳姉妹の小雨から、いずれ都に出て出世すると言われた晴一は、その言葉を信じ京に上る。やがて再会した2人は、夢にかかわる事件に巻き込まれていく。

夢幻的な物語は、ある時は伝奇小説風、ある時は推理小説風と変幻自在に進むが、その根底にあるのは夢を持つことの大切さ。夢を実現するために突き進む晴一は、物質的豊かさを重視しがちな現代人に、本当に大切なものは何かを問いかけているのである。【末國善己(文芸評論家)】

■2008/02/26, 週刊エコノミスト

最後の大奥天璋院篤姫と和宮 (幻冬舎新書 す 2-1)
最後の大奥天璋院篤姫と和宮 (幻冬舎新書 す 2-1)鈴木 由紀子

幻冬舎 2007-11
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おすすめ平均 star
starブームに乗っただけの本なのかもしれません

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著者インタビュー 鈴木由紀子(作家)

想像以上に大きかった大奥の女性たちの影響力

──これは前作の『大奥の奥』(新潮新書)の続編となりますか。

■ええ、大奥の最後を見届けたのは天璋院篤姫と和宮で、この2人をきちんと書きたかったのです。宮尾登美子さんの『天璋院篤姫』以降に発見された新資料も踏まえ、分かりやすいノンフィクションにしようと考えました。

──薩摩藩が幕末の政局に影響を及ぼせたのも、実は8代将軍吉宗の時代に将軍家の養女・竹姫が島津家に嫁ぎ、大奥とのパイプができていたから、と指摘していますね。

■本書でも助走のところが長いかもしれませんが、篤姫に至るまでの島津家と徳川家の関係は重要な意味があるんですね。薩摩藩にすれば竹姫との縁組は迷惑だったかもしれませんが、結果的には大きな幸運をもたらした。調べていて、女縁というか、婚姻関係のすごさを感じました。倒幕の主役でもある薩摩に幕府と親密な関係があったことも知ってもらいたかったんです。

──篤姫は22歳で13代将軍家定の3度目の夫人となります。紹介しておられる手紙や逸話などから、聡明で見識が広く優れた判断力を持つ女性だったことが浮かび上がってきました。

■政略結婚のひとつのコマにすぎないかもしれませんが、嫁入りしたあとの働きぶりは想像以上。温和で包容力があり、考え方も柔軟。後継者選びを方向付ける「つなぎ」の役割もした。後世のドラマなどで大奥の女たちは色香を使って男を動かすというような印象ですが、実際は巨大な官僚機構のなかで、人事や政治にも発言力を持ち、活躍していたんです。

──天璋院と和宮は、年齢差が11歳の姑と嫁ですが、なかなか個性的で魅力的ですね。本書に収録されたそれぞれの写真も、イメージをかき立てます。

■ドラマや小説では嫁姑の確執に焦点を当てがちですが、そうした次元の対立ではなかったと私は思っています。和宮と14代将軍家茂が交わした手紙などはまるで恋文のようで、お互いを思いやっていたことが分かる。その家茂を養母として支えたのが天璋院。優しく誠実な家茂が、嫁姑を結び付けたのではないでしょうか。天璋院も和宮も短い結婚生活のあと夫とは死別、子供もいない。共通項は多く、本質は似ていたと思いますよ。

──女として成功できなかったことが、かえって強さや賢さを引き出したかもしれませんね。

■今でいう負け犬ですね(笑)。しかも実家の仕打ちが冷たい。でも、実家に戻るという選択を2人ともしなかった。政略結婚に利用しておいて、また利用されてたまるかとの強い意思も感じました。

──歴史に「もしも」はありませんが、江戸城の無血開城を導いた2人の女性がいなかったら、日本はどうなっていたでしょう。

■清国の二の舞いもありえますね。内戦が起こって、英仏代理戦争の場になったかもしれない。土壇場のぎりぎりのところでそれを避けられたのは、日本にとっても幸いだったと思います。

■2008/02/26, 週刊エコノミスト

効率が10倍アップする新・知的生産術―自分をグーグル化する方法
効率が10倍アップする新・知的生産術―自分をグーグル化する方法勝間 和代

ダイヤモンド社 2007-12-14
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おすすめ平均 star
starテレビで見た
star生産性を高めて何を得るのか
starターゲットは誰なのか

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知的生産性のスキルを向上させるには、(1)原理原則論を学ぶ、(2)テクニックすなわちケースを学ぶ、(3)自分のやり方を試行錯誤する、とあるところは、並のノウハウ本とひと味違う。マッキンゼー流を含めて、情報のインプット、アウトプットのコツは参考になる。副題は「自分をグーグル化する方法」だが、グーグル(=IT)にはできないことをする人間になるための本。

■2008/02/26, 週刊エコノミスト

仕事と日本人 (ちくま新書 698)
仕事と日本人 (ちくま新書 698)武田 晴人

筑摩書房 2008-01
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おすすめ平均 star
star資料としてなら星5つ
starさまざまな視点から経済を紹介
star歴史的経緯を疎かにしてはなりませぬ

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江戸時代から現代までの「仕事」を分析し、働くことの意味を問い直す問題提起書。「働きの主人」が自分自身だった時代から、一定の時間と空間、組織のなかでの骨折りという近代的な「労働」が定着する歴史をたどりつつ、それを超える道を探る。ともすれば金銭的な物差しでしか評価しない仕事観ゆえに、過剰労働・過剰消費の病理を抱え込む現代社会を考え直す多くの手掛かりを提供してくれる。

■2008/02/26, 週刊エコノミスト

最強の経済学者ミルトン・フリードマン
最強の経済学者ミルトン・フリードマンラニー・エーベンシュタイン 大野 一

日経BP社 2008-01-17
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おすすめ平均 star
star20世紀を代表する思想家の1人
starちょっと美化しすぎではあるけど

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「選択の自由」を掲げ米レーガン政権、英サッチャー政権の理論的支柱となった20世紀後半を代表するシカゴ学派の経済学者の伝記。ケインズ流「大きな政府」が破綻、「小さな政府」への流れのなかで評価が急上昇し、変動相場制、税率区分の簡素化、政府機関の民営化などの改革は日本でも取り入れられた。異端扱いされることが多い巨人の足跡をたどるのに便利な1冊だ。

■2008/02/26, 週刊エコノミスト

東京裁判 (講談社現代新書 1924)
東京裁判 (講談社現代新書 1924)日暮 吉延

講談社 2008-01-18
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おすすめ平均 star
star「白か黒か」だけではない。
starテーマで絞った裁判史

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最新の学術研究の成果を盛り込んだ、と胸を張るだけあって「なるほど」と感心する部分が多い。ABC級の意味、ドイツのニュルンベルク裁判と似た点、違う点をはじめ、A級戦犯の人選方法、起訴、判決段階の葛藤、絞首刑と釈放にいたる複雑な駆け引きなどが国際政治の大きな流れとの関連で解き明かされる。A級戦犯靖国合祀問題もこれを読むと理解できる。一読を。

■2008/02/26, 週刊エコノミスト

美術の核心 (文春新書 614)
美術の核心 (文春新書 614)千住 博

文藝春秋 2008-01
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おすすめ平均 star
starちがうと思う
star描く人ならではのものの見方
star美術全般について、すらすらっと読めます

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美術の面白さはどこに?

美術館に行くのは好きだが、美術館や美術書の解説はもうひとつ物足りない。結局、その絵が好きかどうかが判断の基準になってしまう。おそらく、こんな私のような感じを美術に対して持っている人は少なくないだろう。

日本画家である千住博の『美術の核心』(文春新書、798円)は、そんな人たちに美術の面白さを教えてくれる。

要するに、それぞれの絵画は作者がその時代に発しているメッセージだというのだ。

当然、その時代背景、その国の文化を十分理解しないでその絵画を理解することはできない。もちろん、名画のメッセージにはそれなりの普遍性があるものが多いから、そんなことが分からなくても好きになるということは十分あり得るのだろうが。

アンディ・ウォーホルに代表されるポップアートがアメリカ文明そのものの表現であり、それがヨーロッパに対するある種の反抗であるというのはよく理解できる。良くも悪しくも20世紀後半、われわれはポップアート的世界に住んでいたのだ。

バルビゾン派の人々、ミレーなどがキリスト教的一神教を超えて、多神教的自然崇拝をどこかに持っているという指摘も面白い。

「その最も代表的な例は『春』(オルセー美術館蔵)でしょう。画面右は晴れていて、しかし左は雨上がりで虹が出ている。その中で恩恵にあずかり、感謝しながら農業に従事する人の姿を小さく描き、光に輝く中にも闇の存在を示しつつ、広大な空間を表わそうとする超自然的な神秘の雰囲気をただよわせている。いわば中国の山水画のような、宗教や洋の東西すら超えた画境なのです。その意味で農耕民族の日本人やアメリカ人がミレーの作品をこよなく愛する理由がわかってくるような気がします」

このバルビゾン派の章だけではなく、本書全体が美術論を超えたある種の文化論になっている。特に22章「紅白梅図の謎 光琳の声」は見事な日本文化論になっている。

鴨長明の「方丈記」を意識しながら光琳を見れば、今までと違った味わいがあるだろう。【榊原英資 早稲田大学教授】

■2008/02/26, 週刊エコノミスト

キメラ―満洲国の肖像 (中公新書)
キメラ―満洲国の肖像 (中公新書)山室 信一

中央公論新社 2004-07
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おすすめ平均 star
star満洲国を知るために
star情念も
star日本人にしては中道左派系

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馬賊で見る「満洲」―張作霖のあゆんだ道
馬賊で見る「満洲」―張作霖のあゆんだ道澁谷 由里

講談社 2004-12-11
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おすすめ平均 star
star馬賊とはどんな人たちか
star馬賊を通じて中国社会の特質を解き明かす

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満洲―記憶と歴史
満洲―記憶と歴史山本 有造

京都大学学術出版会 2007-03
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おすすめ平均 star
star山本有造先生の割には・・・

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「偽満州国」を読み解く

昨年を象徴する漢字を日本漢字能力検定協会が公募したところ、1位は「偽」であった。国民は「偽」に振り回された。ところで中国では「満州国」を「偽満州国」と呼ぶ。正当性のない国家の意味である。1932年3月から45年8月までのわずか13年5カ月で消滅した日本の傀儡国家であるが、今もって残留孤児や旧日本軍遺棄兵器未処理などの問題は未解決のままである。国家による偽装の業は深い。

「満州国」に関する出版物は数限りなくあるが、今回は次の3冊、山室信一『キメラ』(中公新書、1008円)、澁谷由里『馬賊で見る「満洲」』(講談社選書メチエ、1680円)、そして山本有造編『満洲』(京都大学学術出版会、4935円)を取り上げよう。

山室は満州国をギリシャ神話の怪物キメラ(頭はライオン、体は山羊、尾は蛇)に例えている。これは建国の理念である五族協和(漢・満・モンゴル・朝鮮・日本)と王道楽土(武力によらず徳で治める)が傀儡国家を偽装するスローガンであったことを意味する。本書は小冊子ながら、日本の武力による満州国建国の背景、統治機構、さらに文化的思想的側面に至るまで、史料を基礎に理論づけた力作である。

「満州」といえば馬賊を想起する人は多いと思われる。日本人の馬賊像は大地を跳梁する無法者として興味本位に潤色されがちである。ところが澁谷は、馬賊張作霖の歴史的社会的基盤に留意して、彼の生涯を描いている。張は関東軍や満鉄とのせめぎあいを通して、東北軍閥のドンに成長した。しかし1928年6月、日本軍の謀略によって爆殺された。

山本編著は個別の専論の収録であるが、サブタイトルに「記憶と歴史」とあり、「これまでの歴史叙述に見えなかった側面」、例えば開拓農民、日本人技術者、中国人労働者などの口述記録を史料として事実を明らかにしようとする。いわゆるオーラルヒストリーである。それぞれの論文には京都大学グループの研究蓄積が反映して、「満州」研究の現状を教えてくれる。3冊とも実証的な筆の運びであり、昭和の戦争が国家による偽装の連続の時代であったことを物語っている。【中村 義 東京学芸大学名誉教授】

■2008/02/26, 週刊エコノミスト

円の未来 Yen's Future (光文社ペーパーバックス)
円の未来   Yen's Future (光文社ペーパーバックス)田村 秀男

光文社 2007-11-22
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starこのまま円は凋落、人民元がアジア通貨になるか?

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米中の「持ちつ持たれつ」で取り残され、自滅する日本

通貨の信用を支えるのは、結局、国家の権威である。それがなければ、ただの紙切れにすぎない。このことは、明治維新後の「藩札」や、第2次大戦中の「軍票」が、いずれも紙切れに堕ちてしまったという歴史が証明する。このように、著者は現場の政治力学を重視しながら明快に現代の3通貨(米ドル、中国元、日本円)を語る。その主な内容は、アメリカの相対的後退、中国のしたたかな政治力、そして残念ながら、日本の自滅である。

一例を挙げよう。パックス・ブリタニカにおける英国の海外投資は英国に富の蓄積をもたらしたが、日本円の為替相場はヘッジファンドによる円キャリー・トレードによって翻弄され、日本の富の流出をもたらしているだけだと批判する。それはなぜか。大英帝国の時代にあって、非居住者がポンドを借り入れたのは、ポンドで国際決済を行うためだったが、現代のヘッジファンドは、円の金利が低いというだけの理由で、円資金需要に群がる。そして、円資金を借り入れるや否や、為替市場で米ドルなどの高金利通貨に転換される。つまり、この旺盛な円借り入れ需要は、円保有意欲を意味するものではない。したがって、円売り・米ドル買いが膨脹し、円安が恒常化するが、米ドル不安になれば、米ドル売り・円買いを誘発し円高に逆転する。まさに、主権国日本が通貨円を支配する能力を喪失した証拠なのだというのが著者の主張である。

そして、米中間の「持ちつ持たれつの利害関係」が強調される。米政界重鎮には、ポールソン財務長官のような中国通が座り、中国は金融市場の改革・開放の知恵をアメリカから借りる。見返りに、中国は米国債を売却しないことを約束する。中国の大手国有商業銀行の自己資本に米国債を組み入れたことは、米中の利害一体化を物語る。米国債も米ドル相場も、サブプライム問題で震撼するが、米金融市場の安定化いかんは、ひとえに米中協力による、とされる。

一方、米中間のような利害を共有する対等の戦略は、日米間や日中間ではない。例えば、日本の不良債権処理のためにヤクザへの対応マニュアルを携えて日本市場に乗り込み、不良債権処理を進めたのはアメリカの不動産ファンドだったが、そうした資本の論理の背後には、米軍関係者すら動かすアメリカ国家の意思が働いていた。豊富な情報を駆使して描かれる日米中の三角関係のゆがみは刺激的で、興奮すら覚えるが、自滅する日本という懸念に、哀しいながらも同意せざるをえなかった。【評者 中尾茂夫 明治学院大学経済学部教授】

■2008/02/19, 週刊エコノミスト

民主化の韓国政治―朴正煕と野党政治家たち1961~1979
民主化の韓国政治―朴正煕と野党政治家たち1961~1979木村 幹

名古屋大学出版会 2008-01
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おすすめ平均 star
star「大統領直接選挙制」実現=民主化、という言説の形成過程

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韓国の民主化を実現させたものとは何か

昨年末に行われた韓国大統領選挙において、李明博氏が勝利し、10年ぶりに保守派が政権に復帰した。

しかしそれ以上に印象深かったのは、大統領選挙に対する韓国民の反応が、かつてほど熱気を帯びていないことであった。1987年の民政移管以降20年を経て、韓国の民主主義が定着し、日常的になってきたことを意味しているといえよう。

日本では、大きな出来事に限って韓国政治に対する報道が増えるが、48年の建国後、8度の憲法改正を経て現在の第6共和制にまで至った韓国政治の構造や、それを支える政治文化といったものに関する分析を目にすることは少ない。

その点で、韓国政治を専門とする若手研究者が、現在の第6共和制との比較を念頭におきながら、朴正煕大統領期の第3共和制下での民主化の挫折を分析した本書は、われわれの韓国政治理解の奥行きを広げてくれる本格的研究である。

著者によれば、韓国政治における民主化は、大統領選挙の実現という形で理解されている点に大きな特徴がある。そしてこの理解は朴正煕政権下で育まれた。朴正煕政権は軍事クーデターによって発足したが、63年にはいったん民政移管し、大統領に強大な権限を与えつつ、大統領を選挙で選ぶ第3共和制となった。

しかし朴正煕が訴えた「民族的民主主義」は、日韓国交正常化に反対する学生運動が燃え上がるなかでナショナリズムを引きつけることに失敗した。さらに朴正煕は大統領として3選に出馬しないという公約を破り、71年には「維新体制」と呼ばれる独裁的な第4共和制へと移行した。

この朴政権下の経験が野党勢力を急進化させ、金泳三や金大中といった当時若手の政治家が、大統領選挙の民主的履行を求める民主化運動の旗手となり、現在の第6共和制の実現へとつながったという本書の主張には説得力がある。

同時に本書の叙述からは、65年に締結された日韓基本条約をめぐる政治過程が、ちょうど日本での60年安保闘争のような意味を持っていたことに改めて印象づけられる。

日本では反安保のエネルギーは55年体制に吸収されていったが、韓国では独裁政権下での抑圧のために、民主化まで左翼ナショナリズムとして温存されたように見える。

とすれば李明博政権の登場を許した左翼の退潮は、左翼とナショナリズムの結合の終わりを告げるものとも理解できよう。【評者 中西 寛 京都大学公共政策大学院教授】

■2008/02/19, 週刊エコノミスト

ザ・テラー―極北の恐怖 (上) (ハヤカワ文庫 NV (1156))
ザ・テラー―極北の恐怖 (上) (ハヤカワ文庫 NV (1156))ダン・シモンズ

早川書房 2007-12
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ザ・テラー―極北の恐怖 (下) (ハヤカワ文庫 NV (1157))
ザ・テラー―極北の恐怖 (下) (ハヤカワ文庫 NV (1157))ダン・シモンズ 嶋田 洋一

早川書房 2007-12
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北極探検隊が大自然に敗北する姿を克明に

「血も凍るキョーフ」

などといったところで、今日び、だれも怖がってなどくれんだろう。ところが、これは、文字通り、身体全身がばりばりと凍りつくこと間違いなしの超大作。ダン・シモンズ『ザ・テラー――極北の恐怖(上・下)』(ハヤカワ文庫、各1029円)である。

中身は、冒険アクションが半分、超常ホラーが半分といったところ。19世紀のなかば、大規模な遭難を起こした北極探検隊の史実にのっとっている。歴史の真相に迫るサスペンスといった読みどころも備え、リサーチは周到、構想雄大、タッチはダイナミック。

作者は、クーンツ、キングと並ぶホラー界の大物。SF、ホラー、アクション、サスペンスと芸域は広い。前二者のような臭いビッグマウスに欠けるからなのかどうか、人気はなかなか伸びないけれど、本作は新たな代表作となるだろう。

冒険といっても、人間の可能性が試され羽ばたいていくような、心躍る讃歌の方向ではない。反対に、大自然の試練に立ち向かい、次々と敗北していくさまが克明に再現される。彼らは氷原に閉じこめられること数年、極寒と栄養不良に苦しめられる。彼らを外から襲う謎の怪獣に加え、内部の反乱者が……。生き残りは艦を捨て、徒歩で橇を引いて氷結のとぎれる海洋をめざす。

十数人の主要人物の視点をとおして語られる物語は悠々たるペースで進む。なにしろ「生存者ゼロ」のやりきれない話、こちらも休み休み読むほうがよろしい。

だが後半になって、極地にさす陽光のごとく、神話めいた局面があらわれてくる。ここに至っての解放感はまさしく超長大な「物語の快楽」そのものだ。文明と未開、人間と酷薄な自然。手垢のついた題目ながら、単なる冒険ホラーの域をこえ、なるほどと納得させる。

なに、寒い冬には読みたくない? たしかにね。【野崎六助 作家・評論家】

■2008/02/19, 週刊エコノミスト

空腹力 (PHP新書 499)
空腹力 (PHP新書 499)石原 結實

PHP研究所 2007-12-14
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おすすめ平均 star
star西洋医学と漢方をミックスした石原ワールド
star大変いい本です。

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著者インタビュー 石原結實 医師

現代人は食べ過ぎ 空腹で健康を取り戻そう

──現代人は食べ過ぎの人が多くて、それが健康を阻害している。だから空腹を作り出すことで健康になれると、説いていますね。

■最近注目のメタボリックシンドロームなんて高脂血症、高血圧、高血糖とみんな「高」が付いてるでしょ。要するに食べ過ぎで太りすぎている。肉体労働者ならいざ知らず、多くの現代人の労働量と運動量では、3食きちんと食べるなんて食べ過ぎなんですよ。

──人類は歴史上ずっと飢餓の危険にさらされてきたため空腹には耐えられるということですね。

■そうです。食べると血糖値が上がりますが、血糖値を下げるホルモンはインシュリン1つだけ。でも空腹でふらふらの時、血糖値を上げるホルモンは10種類もある。そういうメカニズムから見ても、人間は空腹に耐えるほうが自然なのです。

──水の取り過ぎへの警告や、血液の汚れが病気の原因だとする東洋医学的な考えが随所に示されています。

■血栓症を怖がるあまり、最近は血液をサラサラにすべきと水を取るような指導が多いですが、東洋医学では水は体を冷やすので「水毒」と呼び、取り過ぎは良くないとしています。また、病気などの体の不調の原因は血液の汚れです。血液が汚れる一番の原因は食べ過ぎです。腹いっぱい食べると血液も栄養過多になり、免疫力の元である白血球も満腹で働きも悪くなります。逆に空腹なら白血球も腹ぺこで、ばい菌やガン細胞もよく食べてくれる。その意味で空腹力は健康の元です。

──長崎大学で西洋医学を学んでいたのに、どうして東洋医学に?

■体が弱く下痢ばかりしていましたが、大学時代に青汁や玄米食などの民間療法を試し、すっかり健康を回復したのです。元々食に興味があったので米国の自然食ツアーに参加したり、自然療法だけで多くの患者を治療しているスイスのB・ベンナー病院で研修も経験し、食事療法の大切さを痛感したのです。それで自分が納得のいく治療、それが東洋医学だったんですが、それができる診療所を開設し、伊豆に断食保養所を作ったんです。

──本格的な断食ではなく、家庭でもできる半日断食を勧めています。夜は好きな物を食べて、アルコールもOKというのが魅力的ですね。

■私なんか、もう10年以上1日1食です。朝はニンジン・リンゴ・ジュース、昼は黒糖入りのショウガ紅茶、夜だけは好きな物を食べ、アルコールも自由です。ついつい飲み過ぎてしまいますが。そこまでしなくても、1食か2食抜いて1食だけ自由に食べる方法を勧めます。基本は総カロリーを抑えることです。空腹を感じたら黒糖をかじれば大丈夫。空腹にも慣れますよ。朝食抜きはダメとよく言われるが無理して食べることはない。もちろん朝食を食べて調子のいい人は食べればいい。その場合は昼を抜くか、ショウガ紅茶だけにする。ただ空腹力を鍛えるだけでなく、体を温めることや運動も忘れないでください。

■2008/02/19, 週刊エコノミスト

戦後日本経済史 (新潮選書)
戦後日本経済史 (新潮選書)野口 悠紀雄

新潮社 2008-01
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戦後日本は占領軍が導入した農地改革、財閥解体、労働立法の経済民主化改革によって出発した、という常識を覆し「戦後の日本経済は戦時期に確立された経済体制の上に築かれた」と説く。特に高度成長期には役立った間接金融中心の金融システムが機能不全に陥っているのは、「戦時経済体制」では新しい技術体系に適応できないからだ、と変化の必要性を強調する。

■2008/02/19, 週刊エコノミスト

金融商品にだまされるな!
金融商品にだまされるな!吉本 佳生

ダイヤモンド社 2007-11-09
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starオプションなどを活用した、昨今の金融商品の裏を説く

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「高金利」「元本保証」などをセールスポイントにして日本で販売されている金融商品に秘められた「ワナ」を解き明かし、賢明な投資とは何かを考える入門書。銀行勤務の経験もある金融工学の専門家が、金融商品の複雑な仕組みと理論を分かりやすく解説。各種商品の特徴を浮き彫りにする広告例をふんだんに盛り込み、読者が金融商品のカラクリをより身近に理解できる構成になっている。

■2008/02/19, 週刊エコノミスト

日本一わかりやすい労働ニュースの読み方
日本一わかりやすい労働ニュースの読み方北見 昌朗

東洋経済新報社 2007-12
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starすぐれもの!の一冊
starQ&A方式でわかりすい解説です。
star本当にオススメの一冊です!

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年金や給与・退職金、労務など、労働関係の問題については、その基本や法律でどうなっているかを知らない人が意外に多い。本書は、社会保険労務士で、中小企業を対象に独自の賃金調査を行ってきた著者が、分かりやすく対話形式のQ&Aで書いた解説書。なかには「東京の若者の給与相場はいくらですか?」などという質問もあって、ユニークで、かつ実践的だ。

■2008/02/19, 週刊エコノミスト

ネット君臨
ネット君臨毎日新聞取材班

毎日新聞社 2007-10-20
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おすすめ平均 star
star質量からすると新書に相応しい内容
starひろゆきのインタビューが長くなっていた

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インターネットの急速な発展は、あたかも実社会とは別の世界ができたような錯覚を生じさせる。しかし、ネット上で人の名誉を傷つければ実社会と同様に責任が問われることは必要である。ネットに関する議論を人中心にもう一度やり直す時期に来ており、ネット社会を発展させるには、普通の人が安心して使えるようにするための環境整備や最低限の規律作りが必要だと、本書は提言している。

■2008/02/19, 週刊エコノミスト

ルポ貧困大国アメリカ (岩波新書 新赤版 1112)
ルポ貧困大国アメリカ (岩波新書 新赤版 1112)堤 未果

岩波書店 2008-01
売り上げランキング : 2335

おすすめ平均 star
star選択された市民の声の説得力
star充実した取材で米底辺社会を描く
star日本が進むべき道

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9・11に遭遇し、ジャーナリストになった著者が市場原理主義、新自由主義で弱者を切り捨てるアメリカの現状をえぐる。サブプライムローンと貧困ビジネス、災害対策民営化とハリケーン・カトリーナ、病院に行けない貧困層、戦争民営化と多国籍企業と裏口徴兵などなど。いやというほど「アメリカの真実」が語られる。この姿が「明日の日本」でなければいいが。

■2008/02/19, 週刊エコノミスト

すべらない敬語 (新潮新書 (245))
すべらない敬語 (新潮新書 (245))梶原 しげる

新潮社 2008-01
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おすすめ平均 star
star読んでよかった!
starすべらない程度に勉強させていただきます
star空気を読む人の話し方

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きちんとした敬語とは何か

敬語の乱れがひどいというのは、ある世代以上の常套句とさえ言えるものだ。私は、これは教育の問題と考えていた。実際、ふだんギャル語で会話している娘の友達が家に訪ねてきたり、電話をかけてきたりする際には、きちんとした敬語が使える。中学受験勉強も捨てたものでないと考えた根拠の1つとなった。

大人でも自信がない人が多い。そこで敬語本、正しい日本語本の大流行だ。しかし、そもそも敬語とは何のために使うのだろう。人間関係をスムーズにするため、相手に好感を持たせるためではないのか? 確かに敬語を使うことで余計に慇懃無礼に感じさせたり、冷たい役所言葉のような印象を与えたりすることがある。その根源的問題に答えてくれるのが、梶原しげる『すべらない敬語』(新潮新書、714円)である。梶原氏は言わずと知れた名パーソナリティーだが、50歳になって心理学の大学院に入り直した現役カウンセラーでもある。

本書は、文化庁文化審議会が昨年2月に出した「敬語の指針」を、恐らくどの本より分かりやすく解説してくれる。それだけでも十分ありがたいのだが、その背景にある人間関係の変化や心理の面からの説明はもっとありがたい。ジャーナリストらしく、それを作った国語学者に丁寧にインタビューしているのだ。

特に秀逸なのは、「敬語は自己責任である」という指摘である。この言葉は、この指針を作った敬語小委員会の会長でもある作家・阿刀田高氏のものだそうだ。著者は阿刀田氏の「(敬語を使った後)周りの人がどういう風にその人を評価するのか、人間関係がどうなるのかについては、それこそ、自己責任だと覚悟を決めてもらうしか無いでしょうね」という発言を引用したうえで、言葉と人間関係の問題に入っていく。相手と対等に話す、いわゆる“タメ語”には相手との心理的距離を詰める「ポジティブ・ポライトネス(丁寧さ)」の効果があり、敬語は対人距離をおく「ネガティブ・ポライトネス」にあたるという考え方が提示され、しかし、日本の敬語は、そうとは限らないという考察もなされる。

敬語とタメ語の使い分けの解説など、実用的な「ことばの使い方」論は、放送現場でリスナーの心をつかみ、大学で心理学を学んだ著者ならではのものだ。私ももっと心理学を使えるものにしなくてはと反省させられた。【和田秀樹 精神科医】

■2008/02/19, 週刊エコノミスト

人種偏見―太平洋戦争に見る日米摩擦の底流
人種偏見―太平洋戦争に見る日米摩擦の底流ジョン・W. ダワー 斎藤 元一

ティビーエス・ブリタニカ 1987-09
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おすすめ平均 star
star良い本です。
star連合国の深層心理
star米国人だから、かえって米国に厳しくなれるのでは?

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アーサー・シイク義憤のユダヤ絵師
アーサー・シイク義憤のユダヤ絵師袖井 林二郎

社会評論社 2007-11
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スターリン、ヒトラーと日ソ独伊連合構想 (朝日選書 (816))
スターリン、ヒトラーと日ソ独伊連合構想 (朝日選書 (816))三宅 正樹

朝日新聞社 2007-02
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おすすめ平均 star
star三国同盟はソビエトを含めたユーラシア大陸大同盟を作る為のものだった。
star独ソ戦への道

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風刺画に描かれた日本人と日本の進路

風刺画というジャンルがある。20年前に「ジャパン・アズ・ナンバーワン」に上りつめた日本は、カメラと日章旗を持ってマンハッタンの高層ビルを買い占める眼鏡男として描かれた。ピークを過ぎて衰退期に入り、アニメやコミックは数少ないグローバル商品となったが、風刺画は伝統として残らず、わずかにネット上のマッド・アマノのパロディーに痕跡を残す。

そんな国だから、かつて太平洋戦争期に日本が風刺画でどう描かれたかは、アメリカのジョン・ダワー『人種偏見』で「黄色い猿」と教えられ、桃太郎の鬼退治では勝てなかったと納得した程度で「美しい国」の自己陶酔が甦った。だが風刺画は、映画やラジオと並ぶ戦時情報戦の強力な武器だった。

日米関係史研究の先達、袖井林二郎の『アーサー・シイク 義憤のユダヤ絵師』(社会評論社、2625円)は、忘れられた第2次世界大戦期、連合国側の対日風刺画を収集し、正面から向き合う。ポーランド出身のユダヤ人画家が、亡命先の英米で細密画芸術から風刺画へ移ったのは、ナチスのホロコースト告発のためだった。ヒトラー、ムッソリーニと並んで日本の昭和天皇や軍人がどう描かれたかを100枚以上の漫画を発掘し、強烈に示す。

シイクの風刺画の1枚に「1941年の地政学」というカリカチュアがある。日独伊3国同盟にソ連を加えた4国を、ポーランド分割を進めた元凶として醜く描き出す。ヒトラー、ムッソリーニと並ぶ高い頬骨に出っ歯で目をつり上げた小柄な日本軍人を、同席したスターリンは後ろに拳銃を隠し持ち腹黒く睨みつけている。

日独伊にソ連を加えた4国枢軸構想は、松岡洋右、海軍関連で語られてきたが、日独関係史の碩学、三宅正樹の『スターリン、ヒトラーと日ソ独伊連合構想』(朝日選書、1470円)は、新発見の独ソ資料を用いて綿密に検証し真相を暴く。1940年11月モロトフ訪独時の4国条約案が頂点で、日本は独ソに翻弄される無知な脇役だった。

国際政治の力学に脳天気な日本の指導者と膨大な犠牲にコスト。落日の日本経済、片想いの日米同盟のなかで、今こそ真剣に向き合うべき過去である。【加藤哲郎 一橋大学大学院社会学研究科教授】

■2008/02/19, 週刊エコノミスト

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