メイン > 週刊エコノミスト書評 『ブックレビュー』 > 2007年1月30日~2月6日
| 悲楽観屋サイードの失踪にまつわる奇妙な出来事 | |
![]() | エミール ハビービー Emile Habiby 山本 薫 作品社 2006-12 売り上げランキング : 68907 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
中東の現代史に翻弄される「イスラエルのアラブ人」の悲喜劇
著者のエミール・ハビービーは1921年に現在のイスラエルのハイファに生まれたアラブ人で、イスラエル建国後もハイファに居住したアラブ系イスラエル人である。ヨルダン川西岸やガザ以外のイスラエルに住むアラブ人はイスラエル総人口のおよそ2割だが、社会のエリートになれないなど2級市民的な扱いを受けてきた。ハビービーは、イスラエル共産党員としてイスラエル国会の議員を3期務める一方で、党の文芸誌などに作品を発表し、96年に亡くなっている。
本書は高名なパレスチナ系アメリカ人の文芸批評家、エドワード・サイードが「パレスチナ文学の最高傑作」と形容した小説であるが、パレスチナに生まれながらも祖国を持てず、敵国で暮らす不条理や悲劇を「笑い」で抵抗している。アラブの国ではないイスラエル市民になった主人公の悲喜劇が軽妙に描かれ、それがかえって中東現代史の矛盾の重さをあらためて教えているかのようだ。イスラエルが建国されて60年近く経過し、また中東和平が紆余曲折を経るなかで、国際社会はイスラエルに居住するパレスチナ人のことを忘れ、また西岸やガザに住むパレスチナ人たちも、自らと異なる生活様式の下で暮らすアラブ系イスラエル人を異質な目で見ている。
本書は敵国の市民となったアラブ系イスラエル人の哀切な心情を伝えている。刑務所の外ではアラブ人の家を破壊し、刑務所のなかではアラブ人に新しい刑務所を建てさせるというのは、イスラエルの人権状況を典型的に言い表しているかもしれないが、それさえも滑稽に表現されている。主人公が故郷であるハイファに戻ると、「イスラエル国にようこそ」と言われ、胸を締めつけられる場面もある。突然生活環境を変えられてしまったアラブ人の切ない心情を表すものだ。イスラエル市民になった屈辱のなかで、笑い、歓喜のなかで雄叫びを上げ、解放されたいという心情をハビービーは切々と訴えている。
ハビービーの歴史に対する造詣の深さには驚嘆するものがあるが、中東世界の人々の歴史意識を典型的に表している。欧米諸国や日本はこうしたイスラム世界の歴史意識の強さに注意を払うべきだ。本書はアラブ・イスラム世界の歴史を知るうえでも有益で、彼らがいかに自らの歴史に誇りを持っているかをうかがい知ることができる。注釈もきわめて丁寧で、イスラムの歴史やパレスチナ問題に関する多くの知識を得る機会を与えてくれる。アラビア語からの翻訳はまさに労作といえるだろう。【評者 宮田律(静岡県立大学助教授)】
| 本能はどこまで本能か―ヒトと動物の行動の起源 | |
![]() | マーク・S. ブランバーグ Mark S. Blumberg 塩原 通緒 早川書房 2006-11 売り上げランキング : 4914 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「本能」というキーワードで読む人間とは何か
母親が子どもに無私の愛情を注ぐ行為を母性本能と言い、ハトがどこに連れて行かれても自分の巣に戻ってくることを帰巣本能と呼ぶ。本能とは、先天的に持っている能力で遺伝し、学習や経験とは関係しない生得的な行動の根源と考えられている。つい私たちも、「それが本能だ」とか「DNAに書かれている」と言われると、分かった気になってしまう。本能は摩訶不思議な呪文と化しているのだ。しかし、本能とは一体何なんだろうか。
本書は、生まれつき持っていると思い込んでいる能力は、実は見えざる部分での学習や経験、環境との相互作用や文化など後天的な影響の下で変成されており、その結果として適応的行動となって表れることを多くの事例で示し、「生まれか育ちか」とか「生得的か後天的か」の2 分法が成り立たないことを論証しようとしている。
例えば、新生児が母親を認識する能力は子宮にいる間に発達したものであり、決して本能だけに帰するものではない。母親のラットを粉末のエサで育てると、迷い出た子を巣に引き戻す母性行動が見られなくなる。食環境が行動を規制してしまうのだ。本能によると思われていた事象や行動は、環境条件によって容易に変わりうることを教えている。
カモの子には卵から出てきたとき最初に目にした動く物体を母親と思い込む「刷り込み」現象がある。これは体内に母親像のテンプレートを持つ本能なのか、何らかの(ヒナに孵る前に得た)環境刺激が対象への好みを発達させるためなのか。どうやらその双方が同等に関係しているらしい。
あるいは、言語学者のチョムスキーは言語の根本にある普遍文法を解明したが、子どもが容易に言語の学習ができることを生得的な言語能力のためと主張した。子どもの言語本能というわけである。しかし、むしろ言語に文化的永続性があり、容易に学習できる側面が子どもの頭の働かせ方とマッチしたと考えるほうが自然である。言語構造のほうに適応性があるのだ。単に言い換えただけのように見えるが、環境との相互作用による進化と発達という見方をすれば、より動的に子どもの行動が捉えられ、心理学的な洞察も得られるだろう。
本能という生得的な部分と、学習という後天的な部分から人間は成り立っており、それらが渾然と混じり合うことによって多様な人格が形成されているのである。私たちは、そろそろ生まれか育ちかの2分法から決別しなければならないと思う。【評者 池内了(総合研究大学院大学教授)】
| まとい大名 | |
![]() | 山本 一力 毎日新聞社 2006-12 売り上げランキング : 47561 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
父子2代、江戸の町火消しが命をかけてまといを振る
江戸の町火消しは、いろは四十七組が有名だが、大川より東の本所・深川地域では、一組から十六組の町火消しが活躍していた。山本一力『まとい大名』は、深川を舞台に、火消し一家の愛情と下町の人情を細やかに描いている。
三組の組頭・徳太郎は、菜種油によって燃え盛る納屋に飛び込み、自らの命と引き換えに火を鎮めた。徳太郎の殉職は、江戸庶民だけでなく、南町奉行の大岡越前守も絶賛した。名火消しの父のあとを継ぎ三組の組頭となった銑太郎は、父のような火消しになるべく修業を重ねていく。
江戸は7日に1度小火が出るほど、火事が多かったという。それだけに火の始末には誰もが注意していて、火へのかかわりから庶民の生活を描いたところは斬新だった。火消しの日常生活や消火活動のプロセスも徹底したディテールで活写されているので、知っているようで知らなかった火消しの実態を知ることができるのも嬉しい。
危険を顧みず火事に立ち向かう火消しは、江戸庶民から尊敬されていた。だが当時の消火は延焼を防ぐ破壊消火が中心なので、火消しは家を壊された人から怨まれることも珍しくなかった。その事実を突き付けられた銑太郎は苦悩し、真の火消しとは何かを模索し始める。
組織を率いるリーダーは、“大の虫を生かして小の虫を殺す”必要に迫られることがある。ただ“小の虫”の苦しみを酌み取っている人と、“小の虫”など単なる数字にすぎないと考えている人とでは、おのずと対応が異なるはずだ。弱者の立場を理解し、そのうえで火消し組頭としての職務をまっとうしようとする銑太郎は、理想の指導者像を現代に示しているのである。【末國善己 文芸評論家】
| レッドブック ワルツの雨 | |
![]() | RE 幻冬舎 2006-12 売り上げランキング : 37159 おすすめ平均 ![]() 暗いところで読みましょう。 ローテクで画期的な三次元小説 2度の衝撃が約束された希代のミステリ。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
著者インタビュー 飯野賢治(作家) 『レッドブック ワルツの雨』
伝説のゲームクリエーターが仕掛けた「エンピツ小説」
――飯野さんは10年ほど前、ヒット作「Dの食卓」などでゲーム業界の寵児となりましたね。その後突然シーンから消えたので、私のようなゲーム好きには「伝説の人」と化していました。それが、今回はまた突然の小説家デビューでびっくりした次第です。
■小説は以前雑誌に発表したことがあります。単行本は初めてですね。しかし今回はあくまで、ミステリー作家の「R」と私「E」――こう呼び合うことに決めています――のユニット「RE」としてのデビューです。お互いにファンということで親しくなり、3年前からいろいろ試作していました。それがやっと実った形です。
――しかも当たり前の小説ではない。ミステリーですが、ところどころに空欄があり、2回目に読むときそこを鉛筆でこすると文字が浮かんで、隠れた物語が明らかになる仕掛けです。
■われわれはこれを「エンピツ小説」と呼んでいます。普通の小説も試作しましたが、REは新人ですから、何か仕掛けがないと目立たないと思ったのです。でも、とってつけたような無理やりな仕掛けではなく、物語との関係で必然性があると思います。鉛筆でこするという身体的な感覚まで含めて楽しんでいただきたい。身体を使うという意味で、DSやWiiといった、任天堂さん的方向ですね。
――物語の舞台は無国籍的な異空間。出てくるのは名前のない「男」と「女」だけ。鉛筆でこする仕掛けも含め、こういう独自な発想と世界観はかつての飯野さんのゲームを彷彿とさせます。
■僕はもちろんゲームが好きですが、小説は小説で大好きです。ゲームと比較すると、小説のほうが自由度が高いと思いますね。ゲームは集団で作るから個人の個性がそのまま通らない。小説のほうがコストが安いこともあり個性を出しやすいはずです。
ところが、最近の日本の小説は作家の個性が希薄なのが不満です。REとして打ち出したかったのは、ひとつの独自の世界観、はっきりとした個性です。これが、われわれが読みたかった世界観。少数でもいいから、同じ感覚の濃いファンが現れてくれたら嬉しいですね。
――作家としての活躍とともに、「天才ゲームクリエーター飯野賢治」の復活を期待している人も多いでしょう。
■ゲーム業界を離れたのは様々な理由が重なった結果ですが、高校を中退してずっとゲーム業界にいたから、別の世界を知りたかったというのも大きかった。いまやっているのは消費者視点のインターフェースを企画・設計する仕事です。たとえば、携帯電話でコカ・コーラが買える自販機の企画や設計をしました。他にはデパートのディスプレーの設計とか。
5年ほど前に始めて、最初の3年は注文も少なく苦しかったけれど、最近は非常に好調です。いまの仕事が成功しない限りゲーム業界には戻れない、と思っていましたが、やっと順調になったんで、そろそろ……ね。
| 戦略広報―パブリックリレーションズ実務事典 | |
![]() | 電通パブリックリレーションズ 電通PRセンター= 電通ピーアールセンター= 電通 2006-12 売り上げランキング : 12197 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
繰り返される企業の不祥事。不二家事件では、改めて広報対応の悪さが目立ち、社会を敵に回す結果となった。なぜ、きちんとした広報活動ができないのか。本書はそんな疑問に答える広報の実践書。第8章の「危機管理のノウハウ」では危機管理委員会の設置、リスクの洗い出し、危機管理マニュアルの作成などが並び、緊急時の対応方法も。これらがちゃんとできれば、「名広報」だが……。
| 農業は有望ビジネスである!―新たな高付加価値産業になる時代 | |
![]() | 涌井 徹 東洋経済新報社 2007-01 売り上げランキング : 36793 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
著者は秋田県大潟村で、年商60億円を超える米穀類の小売り会社「大潟村あきたこまち生産者協会」を率いる人物。この本は、国の減反政策と真っ向から闘い、「ヤミ米農家」の烙印を押されながらも「自分たちの米は自分たちで売る」道を模索し続けてきた記録であり、日本農業の新たなビジネスモデルの提言でもある。
| 将軍様の鉄道 北朝鮮鉄道事情 | |
![]() | 国分 隼人 新潮社 2007-01-17 売り上げランキング : 455 おすすめ平均 ![]() よくぞここまで!Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ナゾの国とされる北朝鮮。国内事情はあまり伝わってこない。その北朝鮮の鉄道事情を、写真とともに詳しく記してある。駅の様子、路線図、建設の歴史など実に詳しい。鉄道は社会の基礎インフラであり、それを知れば国情も分かる。鉄道ファンでなくても十分楽しめる本だ。
| 貧困の光景 | |
![]() | 曽野 綾子 新潮社 2007-01-17 売り上げランキング : 267 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
インド、中近東、アフリカなどの国々をまわり、20年来、貧困に苦しむ人々を見続けてきた著者が、各地で目の当たりにしてきた光景を描き出す。ただ餓死するのを待つしかない悲惨な状況から、貧困ゆえに起こる盗みや差別、汚職、人々の意識の問題。「日本人は貧困とはいかなるものかという客観的知識において貧しかった」と著者は語る。この現実を踏まえ、私たちは何をなすべきなのかが問われる。
| 2007年団塊定年!日本はこう変わる | |
![]() | 原田 泰 鈴木 準 大和総研 日本経済新聞社 2006-12 売り上げランキング : 12304 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
団塊の世代が定年を迎え始める2007年、日本の経済・社会はどのように変わっていくのか。戦後のベビーブーマーである団塊世代が、どのように生まれ、教育を受け、若者文化を生み出し、働いてきたのかなど、生きてきた時代ごとの分析を踏まえ、今後を占う。定年後の就労・雇用問題、消費スタイルの変化や資産運用、高齢化と制度改革、年金、医療問題、熟年離婚、団塊起業、地方への移住など、幅広い視点から読み解く。
| 満鉄とは何だったのか | |
![]() | 山田 洋次 藤原書店 2006-11 売り上げランキング : 116809 おすすめ平均 ![]() ここから始まる冷静な議論Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「知の集団」としての満鉄の先進性
もう十数年前、初めて大連に行った時、かつての姿をそのままとどめているヤマトホールと満鉄調査部のビルを見て、何か強い感動を覚えた。別に戦前・戦時中、満州に住んでいたというわけではないのだが、満州という土地のイメージは、私を含めた多くの日本人に特別な思いをもたらすようだ。
後藤新平が初代総裁を務め、巨大なコングロマリットに育て上げた満鉄、そして、大変な調査能力を持っていたといわれる満鉄調査部について、それほど詳しく知っているわけではない。しかし、そこにはかつての日本人の夢と野望、そして理想の国家と無惨な植民地とが混じり合った混沌がある。それは明治の近代化、産業化から第2次世界大戦に至る日本の光と影を示している象徴でもあるように思える。 『満鉄とは何だったのか』(別冊『環』、山田洋次ほか著、藤原書店、3465円)は、そうした満鉄の実像に様々な角度から迫った興味深い特集である。
本書の中心をなす鼎談のなかで、早稲田大学教授の小林英夫は、満鉄の特色を次のように要約している。「……鉄道会社でありながら鉄道会社でなかったというところに、満鉄のおもしろい性格があるのではないか」「……日本の政治が満鉄のなかに、ある面では拡大され、ある面では矮小化された形で表現されてくる。そういう意味でも会社の性格は、一種の日本の出先の小国家だった」
こうした環境のもとで満鉄は調査に力を入れ、満鉄調査部は「日本の元祖シンクタンク」だったという。調査部は「……ソ連に対抗して新しい経済システムをつくる発案者となり、これが『満州国』に引き継がれ、岸信介に引き継がれて、戦後の経済復興、高度成長までつながっていく」。
また、飛行機の旅が一般的でなかった当時、満州が一番ヨーロッパに近い(満鉄からシベリア鉄道でヨーロッパへ2週間)ところで、ここが実はヨーロッパへの窓だったという。「ヨーロッパ文化がここに到着し、早く花開いたという。そういう意味で、満鉄は「先進性」と「知の集団」という性格を持っていたと、小林は論じる。【榊原英資 早稲田大学教授】
| 2時間でわかる図解 「墨子」のパワーを身につける―中国・春秋戦国時代の組織論のプロに学ぶ | |
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侵略には昂然と立ち向かった墨家集団
ボロ着をまとい、ボロ靴をすり減らし、家にも居つかず、民衆のために東奔西走する。これぞ中国の戦国時代来、伝承される墨子の姿である。彼が説く「勤倹」は、勤労に人の価値を認めて督励し、実用に物の価値を認めて倹約を勧める教え。彼の姿にはそれがみごとに投影されている。
この思想の根底には生活資源を有限と見なす認識があり、生活に不要なものを排除しなければ、それをめぐって争いが絶えないとの危機感を孕む。かかる立場は反文明主義と言えようが、老子のように原始社会を志向するものではない。あくまで現実社会の基盤の上にそのあり方を模索したもの。今日のエコ派的発想と言ってよい。ともかく、文明推進派の儒家とは激しく対立することになる。
ところで、墨家は当時、希薄化した「天」への信仰を堅持し、鉅子と呼ばれる最高指導者の下、強固な組織を誇った宗教教団でもあった。その博愛精神(兼愛)の主張、禁欲主義(節用)の実践、侵略の否定(非攻)も、ここに由来する。いわく、天意なりと。
小国を侵略しようとする大国へは直接出向き、その利害得失を説いて未然に阻止しようとした。が、やはりもの言うのは軍事力。そこで彼らはその強固な組織力と科学技術力を結集して精鋭の戦闘集団を組織し、城邑の防衛には積極的にかかわっていった。「墨守」という語がその証拠。今日では旧習や自説に固執することだが、墨家が守城戦に巧みであったことに由来し、その鉄壁の守備力を讃える語であった。
かつて墨家の鉅子孟勝は守城戦を請け負って敗北し、その引責で180人の弟子と自決を遂げた。かかる生き様に武士道精神、あるいは任侠的精神を看取することもやぶさかではない。
2月初旬、人気コミックを映画化した「墨攻」が封切られる。コミックの原作は同題の小説で、墨者の守城物語である。これを機に墨家思想の正確な理解がなされれば、と思う。が、題名の「攻」への違和感は消えない。
岡本光生著『墨子のパワーを身につける』(中経出版、1680円)は墨子思想の最良の解説書。現代社会のあり方に対する示唆に富む書でもある。【水野実 防衛大学校人間文化学教授】
| あなたのTシャツはどこから来たのか?―誰も書かなかったグローバリゼーションの真実 | |
![]() | ピエトラ リボリ Pietra Rivoli 雨宮 寛 東洋経済新報社 2006-12 売り上げランキング : 627 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「Tシャツの一生」から世界の仕組みが見えてくる
Tシャツがどこから来ているかは誰でも知っている。そう、中国からだ。でも原料の綿はアメリカから来る。アメリカの綿はなぜ世界を制覇できたのか。
産業革命の時代、機械で綿織物が作られるようになり、多量の綿花が必要になった。綿は不規則で膨大な労働力を要する作物だった。本書では不規則な労働需要を賄うという観点から、奴隷労働の意味が解説される。インドや中国にも奴隷に近い人々を持った領主たちがいたが、彼らは綿の需要爆発に対応しようとはしなかった。アメリカだけが、この需要に応えることができた。
奴隷は解放されたが、技術革新のおかげでアメリカの綿栽培は労働集約的な産業ではなくなった。政府から補助金を搾り取る綿作農家の腕前は大したものだが、革新精神にも富んでいる。
綿は中国に入って布になり、Tシャツになる。グローバル化に反対する人々は、安いTシャツは世界の貧しい女や子供を搾取した結果だという。しかし、貧しい人々はTシャツを作っていなかったら何をしていたのか。ここで読者は、日本の女工哀史を思い起こすだろう。日本史の教科書には書いていないが、本書には、何をしていたかが書いてある。
アメリカでも繊維製品を自国で作っていた。繊維産業は輸入規制を求めて戦ってきた。同時に、輸入規制の撤廃を求めて戦っている小売り、中国ロビー、衣料品を扱う企業もある。輸入規制を求める企業団体の力は弱まっている。世界は、自由貿易を神聖視する経済学者の考えるようには動いていない。しかし、自由貿易の力もまた強い。
複雑な規制は意外な効果をもたらす。輸入規制は様々な国に輸入割り当てを与えているが、それは小さな国々に発展のチャンスを与えた。中国独占でもおかしくない市場が多くの国々に割り当てられたからだ。これらの国々は自由貿易のために戦う一方、自国の割り当て権利のためにアメリカ繊維産業と共に戦ってもいる。自由ではなく市場の力から自分を守る競争の結果が世界を作っていると分かる。
しかし最後にTシャツは、自由となる。古着となったTシャツはアフリカに輸出され、全くの自由な市場で売られる。そこには自分を守ってくれる規制はないが、人々は市場で生きる才覚を磨き、経済発展のための準備をしているのだ。
本書は経済学の本であるとともに、世界がどう機能しているかを教えてくれる。Tシャツを主人公にして、これほどスリルとサスペンスに満ちた経済書を書いた著者の力量に脱帽。【評者 原田泰(大和総研チーフエコノミスト)】
| スキャンダリズムの明治 | |
![]() | 朝倉 喬司 洋泉社 2007-01 売り上げランキング : 147536 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「へこたれない」明治の新聞パワーを描き出す
2006年最後のスキャンダル「政府税調会長の官製妾宅」をなぜ、大手新聞は報道しないのか。怒りを感じていた。
愛人と東京の超豪華マンション(実は官舎)を格安7万7000円(相場45万~50万円)で借り受け、甘い生活?を続けた前政府税調会長。財務省は「大阪に住む大学教授」に異常な便宜を供与し、その見返りに「住民税アップ」の提言を貰った……。「官」がワイロを贈る奇妙な贈収賄?
新聞記者はこの事実を知っていた。が書かない。初めて書いたのは『週刊ポスト』だった。
何故、大新聞はスキャンダルを書かないのか? その理由を『スキャンダルの明治』という娯楽風歴史書(?)が説き明かしてくれる。著者の朝倉喬司氏は『週刊現代』記者を経てノンフィクション作家。早大在学中にベトナム反戦直接行動委員会を結成。東京・田無の日特金属工場を襲撃し、指名手配された人物で、『涙の射殺魔・永山則夫と六〇年代』などで高い評価を受けている。
明治20~30年代、東京には『二六新報』『国民新聞』『東京日日新聞』『万朝報』などが乱立する新聞戦国時代。政府高官であれ、大富豪であれ、不義不正の匂いがあれば新聞はヤリ玉に挙げた。「赤新聞」と蔑まれてもへこたれない。市民は部数でそうした新聞を支持(応援)した。著者はマイクロフィルムに残された当時の新聞を点検して、この勇ましい報道に光を当てる。
主な主人公は『万朝報』の黒岩涙香と『二六新報』の秋山定輔。大手の『都新聞』を辞めた涙香は権力者の不正を執拗なまでに追及する「マムシの周六」(周六は彼の本名)。「蓄妾実例暴露」と題する醜聞記事を延々490例も紹介する。妾は間接的に一夫多妻を国風に認めることになると論陣を張り、読者の「覗き趣味」に応える。涙香は、「妾がいる」という常識をスキャンダルにすることに成功した、と著者は言う。もちろん狙いは部数増。現在の新聞は宅配制だから、スキャンダル報道で危険を犯すことはない。
秋山の『二六新報』は三井財閥攻撃・娼妓自由廃業支援などのキャンペーン。それに廉価販売で日本一の18万部を達成した。この本では詳しく触れていないが、『二六新報』は明治36年6月17日に「日露和約成立」の号外を出す。実は日露間の交渉は決裂。「金をもらって日本の人々の世論操作を図った」という噂が立ち、やがて瓦解する。スキャンダラスな報道に走るのは、時に「命取り」でもあるのだ。【評者 牧太郎(毎日新聞専門編集委員)】
| 血まみれの鷲 | |
![]() | クレイグ ラッセル Craig Russell 北野 寿美枝 早川書房 2006-11 売り上げランキング : 213841 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| 摩天楼のサファリ | |
![]() | ジョージ・C. チェスブロ George C. Chesbro 雨沢 泰 扶桑社 2006-12 売り上げランキング : 141913 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
クレイグ・ラッセル『血まみれの鷲』(ハヤカワ文庫、1050円)は、デビュー作にふさわしく、様々な要素がぎゅう詰めになった力作だ。大枠は、ハンブルクに出没するサイコキラーと警察組織との対決。残虐きわまる殺しが秘密教団の秘儀の見立てに通じるところから、まったく別の空間が開けてくる。
ドイツ方面の因果話となると必ず出てくるナチスの亡霊は、まあ「またか」と思わせる道具立てだが、それだけでは済まない。ソ連解体以前のアフガン紛争、チェチェン紛争、さらには過激派ドイツ赤軍の残した傷痕まで引き出される。さながらヨーロッパ現代史の展示場だ。しかもトルコマフィアとウクライナマフィアの「侵攻」にさらされる現在がある。
刑事が身をもって示す正義は相対的なものでしかない。一人の人物に述べさせているように「道徳と法の基準は別」なのだ。時には無用とも思われるサイドエピソードを割りこませる強引さだが、それもドイツのかかえる社会矛盾の現状を訴えたいモチーフゆえだろう。読ませる力技は圧倒的だ。
宿敵を倒すに至らなかった結末は、当然、同一スケールの続編を期待させる。
ジョージ・C・チェスブロ『摩天楼のサファリ』(扶桑社ミステリー文庫、840円)は、異色の夢幻的アクション。作者のキャリアは長いが、紹介は切れ切れで、やっと邦訳4作目。ミステリファンの認知度はごく低いだろう。
チェスブロが造型するヒーローは超人であり同時にハンディキャップも背負うという特質で共通する。本作の場合は、夢の探索者という能力を持つが、しばしば現実との接点を見失う元諜報部員が主人公。彼のマンハントは夢の追跡でもあり、変則ながら、アメリカ体制への異議申し立てでもある。「反動作家」たちがバリバリと書き飛ばす漫画的に景気のいいドンパチとは、一味も二味も違う。【野崎六助 作家・評論家】
| マンハッタンのKUROSAWA―英語の字幕版はありますか? | |
![]() | 平野 共余子 清流出版 2006-10 売り上げランキング : 101419 おすすめ平均 ![]() 裏方の苦労に感動しましたが……Amazonで詳しく見る by G-Tools |
著者インタビュー 平野共余子(映画史研究家) 『マンハッタンのKUROSAWA』――英語の字幕版はありますか?
日本映画は世界的ブランド自信を持って海外に出そう
――平野さんは2004年暮れまで18年間、ニューヨークにある非営利団体、ジャパン・ソサエティーで日本映画を紹介する仕事をやってきました。フィルムが届かなかったり、入場券を買えなかった人に怒られたりと、ハプニングにハラハラしつつも、何とかニューヨーカーにいい映画を見せたいという気持ちがわかりました。
■映画を上映する喜びを共有したかったんですね。あとに続く人の参考になればと思い、具体的に書きました。いまは、失敗や問題ばかりだったかなと反省していますが(笑)。
――18年間で日本映画への関心はどう変わりましたか。
■仕事を始めた1986年は、ちょうど変わり目でした。それまでは、日本に関心がある人が異国情緒を求めて日本映画を観る、というのが一般的でした。でも80年代半ばからは、ビジネスの相手国として重要さが増し、普通の人たちが日本に関心を持って映画を見始めた。いま日本映画といえば、アニメ、ホラーが、米国に限らず世界的な人気です。
――一方で、古い日本映画も根強い人気だと書いています。巻末の「担当した上映作品リスト」は圧巻でした。
■溝口健二、小津安二郎、黒澤明などの古典作品は欠かせません。また、現代の日本を伝える新しい映画も必要です。「タンポポ」で火がついた伊丹十三はじめ、北野武、黒沢清など現代作家の作品も上映し、米国で新しい観客を育ててきたと自負しています。
作家の故スーザン・ソンタグが選ぶ日本映画シリーズも盛況でしたが、彼女が選んだのも溝口や成瀬巳喜男なんです。ソンタグが認めたというだけで、観に行こうという米国人が多い。日本映画の黄金時代を築いた小津、成瀬、黒澤などは、技術的にも、描かれる内容でも、世界映画史の最高峰です。
ドラマチックな映画作りで黒澤が有名ですが、日本のお家芸はむしろ、何げない日常を感動的な映画にしてしまう小津や成瀬が担っていると思っています。オズやナルセは世界に誇れるブランドなのだから、自信を持って、どんどん出してほしい。
――上映料が高くて大変だと書いていますね。 ■以前に比べて高額になっています。最近では上映1回数百ドルも要求する会社があり、世界中で困っています。デジタルの時代であり、著作権管理は重要な問題ですが、その一方で、これだけ高くなると、映画祭や非営利団対などはとても負担できない。こういうときに公的な基金の助けがあると、もっと広く見てもらうことができるのにな、と残念に思います。
――日本映画は外交にも役立つというのですね。
■映画は具体的なイメージから入れるからいいんですよ。犯罪もあり、ヤクザや、どうしようもない人間も登場する。でも、かえって日本に親近感を持つきっかけになる。いいも悪いも含めて360度の人間を見せることが、本当の理解につながるはずです。
| 17歳のための世界と日本の見方―セイゴオ先生の人間文化講義 | |
![]() | 松岡 正剛 春秋社 2006-12 売り上げランキング : 95398 おすすめ平均 ![]() 17才向けとしては難しいが、良書Amazonで詳しく見る by G-Tools |
現代は「関係」の時代であり、その「関係」のなかに、しっかりした「意味」を発見していく必要があると著者は語る。世界と日本をめぐる「意識」や「文化」が歴史的にどのように発生し、変化し、様々な対立や融合を生んでいったのか。神話や仏教、和歌や物語、能など、日本人自らが知ることの少なくなってしまった日本文化に思いを馳せつつ、世界と日本を考える。
柳傳志 聯想をつくった男
徐 方啓
IBMのパソコン事業を買収して世界に衝撃を与えた中国のIT企業、聯想(レノボ)。その創業者である柳傳志に焦点を当て、現地取材や柳氏本人への直接取材をもとに、知られざるレノボとその経営者の人間ドラマを描き出す。著者は、江蘇工業大学創造経営学研究所所長で、日中企業の経営比較研究などでも知られる。
| 新女性マーケット Hahako世代をねらえ!―男が知らない母娘の消費と恋と胸のウチ | |
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『「おひとりさま」マーケット』『独身王子に聞け!』などで知られる著者が、団塊世代の母娘(Hahako)400組への取材をもとに、「男が知らない母娘の消費と恋と胸のウチ」を解き明かす。「マザー婚」「母娘シェアリング」「アンチ炊事ング」「投資DEセラピー」などのキーワードから母娘マーケティングを読む。
| 外国人投資家 | |
![]() | 菊地 正俊 洋泉社 2007-01 売り上げランキング : 5929 おすすめ平均 ![]() グローバルな視点での日本の株式市場Amazonで詳しく見る by G-Tools |
日本の株式市場で最大のシェアを持ち、株価の動向に大きな影響力を持つ外国人投資家とはどのような存在なのか。ミステリアスに語られがちな一部の誤解を解き、実態に迫る。地理的な分類から、投信や年金基金、ヘッジファンド、プライベートエクイティ(買収ファンド)などの業態分類、運用スタイル、日本株への影響、日本の政治・経済への見方など幅広い角度から分析する。巻末にはフィデリティをはじめ、大手外国人投資家の紹介も。
| 「陰」と「陽」の経済学―我々はどのような不況と戦ってきたのか | |
![]() | リチャード クー Richard C. Koo 東洋経済新報社 2006-12 売り上げランキング : 9313 おすすめ平均 ![]() 経済がわからない人の為の経済学の本 経営者のはしくれとして共感をもったAmazonで詳しく見る by G-Tools |
1930年代の大恐慌も、過去15年間に日本が経験した長期不況も、民間が債務の最小化に走ることで発生したバランスシート不況だったと著者は論じる。経済を縮小均衡に導く「陰の経済」の不況下では、拡大局面の「陽の経済」で論じられてきた金融政策は有効には働かない、として過去の不況を分析。主流派経済学者たちが拠り所にしてきた「大恐慌の教訓」に異を唱え、戦後最長の景気拡大に潜むリスクを考察する。
| 海峡のアリア | |
![]() | 田 月仙 小学館 2006-12-15 売り上げランキング : 1907 おすすめ平均 ![]() 歌は国境を超えて 感動しました 凄い本だと思いますAmazonで詳しく見る by G-Tools |
| ザ・ペニンシュラ・クエスチョン―朝鮮半島第二次核危機 | |
![]() | 船橋 洋一 朝日新聞社 2006-10 売り上げランキング : 887 おすすめ平均 ![]() 文句なしの大作 圧倒的な情報量、国際的競争力を持った一書 今、そこにある危機Amazonで詳しく見る by G-Tools |
6者協議で枠づけられた在日の歌姫の悲願の行方
年が明けても北朝鮮問題の糸口は見えない。日本にとっては拉致問題が懸案だが、国際的には核保有問題が加わりいっそう難解になった。 『海峡のアリア』(小学館、1575円)の著者チョン・ウォルソン(田月仙)は在日コリアンのオペラ歌手、兄4人はいわゆる帰還事業で北朝鮮に渡った。1985年に北朝鮮の芸術祝典で、94年に韓国のオペラハウスで、2002年ワールドカップ日韓共催時には当時の小泉純一郎首相と金大中大統領の前で歌った。その半生は哀切の物語だ。
東京・立川の在日朝鮮人活動家の家に生まれ、朝鮮学校で日本語も朝鮮語も学んだ。大好きな音楽に才能を発揮し、ピアノと西洋音楽に魅せられた音大志望の少女は、高校時代に父の会社が倒産し試練に立つ。弾き語りのアルバイトで勉強を続けたが、朝鮮高校卒には資格なしと受験を拒否され、唯一認められた桐朋学園へ。二期会からプロの声楽家としてデビュー、そこに朝鮮総連からピョンヤン音楽祭への招待で、兄たちと四半世紀ぶりに再会。だが北に渡った兄たちは想像を絶する悲惨な境遇にあった。持ち歌「高麗山河わが愛」「イムジン河」のDVDを聴きながら読むと、いっそう心に響く。
こうした悲劇は、在日コリアンの多くも韓国・日本などの拉致被害者家族も共有するが、北朝鮮にとっての「戦争」は60年も続いている。国際関係のジグゾーパズルから6者協議の枠組みが設定されたが、拉致被害者の慟哭や脱北者の悲惨は議題にするのも難しい。
そんな複雑なパズルを解きほぐすのが、船橋洋一『ザ・ペニンシュラ・クエスチョン――朝鮮半島第二次核危機』(朝日新聞社、2625円)。756ページにぎっしりと6者協議当事国の政策決定の裏面とメカニズムがつまっている。日朝共同宣言の陰の当事者ミスターXから米国ネオコン・アジア専門家、露中韓の要人・実務担当者に至る一人一人の思惑が個性的に描かれる。
米朝2者から10者まで数あるプランのなかで6者協議に落ち着くパワーゲーム分析は圧巻。巻末インタビューリストで情報の精度がわかる。日本でもようやく生まれた、ジャーナリストによるハルバースタムばりの同時代史。【加藤哲郎 一橋大学大学院社会学研究科教授】
| 妻が得する熟年離婚 | |
![]() | 荘司 雅彦 朝日新聞社 2006-10 売り上げランキング : 67943 おすすめ平均 ![]() 離婚の原因は結婚にある 法律書版「世にも不思議な物語」 タイトルに難あり?Amazonで詳しく見る by G-Tools |
2007年4月から、離婚に際して配偶者の厚生年金や共済年金を分割する制度が発足する。それを待って、たくさんの女性が熟年離婚を切り出す、現在逆に離婚が減っているのはそれまで離婚を手控えているのではないか、という説が根強い。実際は08年4月までに納付した年金については、配偶者の同意か裁判所の決定がないと分割されないのだが、裁判にまでもつれこむと、やはりかなりの部分が分割される(最大2分の1)だろうから、中高年の男性にとっては脅威であるには違いない。
少なくとも、これに備えをしておいたほうがいいという点で、取り上げたいのが、荘司雅彦著『妻が得する熟年離婚』(朝日新書、756円)である。荘司氏は、かなりの数の離婚事件の経験を持つ弁護士だが、本書は、その経験に基づいたケーススタディー(守秘義務があるだろうから物語の体をとっている)で、簡単に読めるし、具体性がある。
財産分与や子供の戸籍、何を不貞行為と認めるのか、弁護士費用など、裁判の経験がない人が、実はほとんど知らないようなことを、一つ一つ事例に基づいて解説してくれるので、離婚裁判という、近くて遠い話が、かなりリアルに感じられる。私も知らなかったのは、結婚後の姓について、結婚した段階で姓が変わっているので、妻は旧姓に戻るのが原則だが、婚氏を使い続けるのも勝手だということだ。要するに戸籍が別なので、同姓の他人と同じ扱いになり、夫がそれをやめろという権限がないそうだ。
ただ、本書を読んで痛感したのは、夫の地位などというものは、実際はそれほど保護されたものではないし、妻が離婚したいというケースは、ちょっとした浮気を長く覚えていたり、夫が大事にしてくれない積年の恨みのようなものが積もった結果だということだ。夫にしてみたら大したことがないように思っていることで、いきなり切り出されるのである。
年金を半分持っていかれると、離婚後の男性は、それ以前と比べて負け犬になると本書でも書かれていたが、メンタルヘルスのうえでも、離婚された男性が弱いのは私も経験からわかる。むしろ自分の婚姻関係のチェックをして、それを長続きさせる対策のためにも、男性も読んでおきたい名著である。【和田英樹 精神科医】





暗いところで読みましょう。
ローテクで画期的な三次元小説


















