メイン > 週刊エコノミスト書評 『ブックレビュー』 > 2007年10月2日~10月9日

歴史が教えるマネーの理論
歴史が教えるマネーの理論飯田 泰之

ダイヤモンド社 2007-07-27
売り上げランキング : 10072

おすすめ平均 star
starいい本なのだけど読者を選ぶ
star日本史に詳しい方に特にお薦めの貨幣理論入門書

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マネーとは何か、貨幣理論の進化を歴史的事例から読み解く

何ごともそうだが、経済にも「勘所」とでもいうべきものがいくつかある。比較優位がその1つだ。これは取引や交換といった市場経済の根幹にかかわり、経済のグローバル化を見る時にも欠かすことができない。

もう1つ挙げるとすると、マネーである。マネーのない市場経済はデンマーク王子のいないハムレットである。とはいえ、勘所というものは得てして理解が難しい。どうすれば理解は容易になるだろうか。

まず著者はマネーと物価、為替レート、そして金融政策という3つの対象に絞り込む。さすが『ダメな議論』など、論理的思考法に関心の深い著者だけあって、よく考えられた選択だ。マネーについては、時に哲学的な考察も必要となる。しかし、まず学ぶべきものはそうではない。マネーの価格とは何かを問い(それが国内的には物価であり、対外的には為替レートである)、その変化をもたらすものは何か(マネーの需要と供給)と進む手順は、マネーの問題を考えるうえでも論理と実証に基づいた経済学の標準的な道具が役に立つことを示している。

さらによいのは理論を解説するのに歴史的事例をふんだんに用いていることである。ストーリーにまとめられる時、人間の理解は飛躍的に進む。もちろん、事例に頼りすぎると一般性を損ないかねない。しかし、昭和恐慌、ドイツのハイパーインフレから、19世紀末のデフレ、果ては2700年前の中国まで、縦横無尽に語られる事例は、ある意味で人類が昔から似たような問題を扱ってきたのだという感慨を引き起こす。

全編を通じて、ある時は主役、ある時は敵役、そしてある時は狂言回し役を務めるのは貨幣数量説である。説という翻訳は昔の慣行であり、本来ならば理論と呼ぶべきものだ。

本書は一見したところ、貨幣数量説を批判したように見える。しかし、貨幣量と物価水準が比例的に変動するという素朴な貨幣数量説が歴史的事例を通じて批判を浴び修正されていく過程は、貨幣数量説が進化していく過程でもある。その進化は、マネーそのものが貴金属との裏付けをもった兌換貨幣から信用のみに基づく不換貨幣へ、また固定相場制から変動相場制へと、そして金融政策が期待を重視するものへという、市場経済の変貌と軌を一にしていたことがよくわかる。

巻末には名作経済小説『大君の通貨』の作家佐藤雅美氏との対談が置かれている。本書にふさわしく、まことに楽しい。【評者 若田部昌澄 早稲田大学政治経済学術院教授】

■2007/10/09, 毎日エコノミスト

アジア・太平洋戦争 (岩波新書 新赤版 1047 シリーズ日本近現代史 6)
アジア・太平洋戦争 (岩波新書 新赤版 1047 シリーズ日本近現代史 6)吉田 裕

岩波書店 2007-08
売り上げランキング : 869

おすすめ平均 star
starこの間の歴史研究の成果を集大成
starおさえておくべき基礎的な内容
starよく読みも(読めも)しないくせに…

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満州事変から太平洋戦争まで広義でとらえた概説書

数々の中東イスラム世界の紛争に接し、わが国の戦争はどのような経緯で始まり、いかなる惨禍を経て、敗戦に至ったのだろうか、またそれは私たち日本人の歴史観の形成にどのような役割を果たしているのだろうかという思いは、ずっと持ち続けてきた。戦争は人間社会の営みのなかで最も醜悪なものだが、その戦争に日本人はいかにかかわったのだろうか。

著者は満州事変、日中戦争、太平洋戦争という一連の戦争を「アジア・太平洋戦争」という広義の概念で把握することを提唱し、通例「太平洋戦争」と呼ばれる戦争までの背景、開戦初期の「成功」、戦局の転換、戦時社会の変容、敗戦に至る過程を、コンパクトながらも実に広範囲な目配りで書き上げている。資料的実証に基づいて「アジア・太平洋戦争」を客観的に知り得る有意義な概説書といえるだろう。

現在では極めて無謀であったと思われる戦争を開始した背景に「臨時軍事費」による軍備充実があり、それが軍部にある種の自信を与えていたこと、また三国同盟に賛同していった海軍の思惑が海軍軍備の増強にあったこと、さらに陸軍にとって「アジア・太平洋戦争」が日英戦争を意味したことなど、日ごろこの戦争にあまり注意を向けない者には新鮮な説明が続く。

日本では「タブー」ともいえる昭和天皇の戦争への関与についても客観的に踏み込んだ説明がなされ、天皇が「能動的君主」として戦争を決意したことがあらためて分かる。東条英機が天皇の信頼をいかに獲得していったかにも触れ、東条の国民の人気を獲得しようとするパフォーマンスは現代の「メディア政治家」を彷彿させ、政治家の本質をうかがわせるかのようだ。

米軍との戦力比較なども具体的に図表によって知ることができ、戦争の無謀性や不合理性を確認することができる。本書によれば、「アジア・太平洋戦争」は、東南アジア経済を破綻状況に追い込んだが、現在では東南アジアに対して日本がどのような損害を与えたかについて多くが語られることもない。

読み終えて、日本人はなぜ戦争の責任者を自らの手で裁くことがなかったのだろうという思いにかられた。それが戦争への真摯な反省になっていない原因なのではないかという気がした。「ファシズムと戦い民主主義を擁護するための戦争は……多くの国民に積極的に支持され」などの表現は少し気になったが、憲法改正、集団的自衛権の論議など歴史の岐路にある日本人には一読の価値がある本といえよう。【評者 宮田 律 静岡県立大学国際関係学部准教授】

■2007/10/09, 毎日エコノミスト

キラー・イン・ザ・レイン (ハヤカワ・ミステリ文庫 チ 1-7 チャンドラー短篇全集 1) (ハヤカワ・ミステリ文庫 チ 1-7 チャンドラー短篇全集 1)
キラー・イン・ザ・レイン (ハヤカワ・ミステリ文庫 チ 1-7 チャンドラー短篇全集 1) (ハヤカワ・ミステリ文庫 チ 1-7 チャンドラー短篇全集 1)レイモンド・チャンドラー 小鷹 信光・他

早川書房 2007-09-07
売り上げランキング : 8684


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探偵マーロウの誕生前史を一望に

新訳『カラマーゾフの兄弟』がベストセラーとなり、話題を呼んでいる。古典力の再評価か。こちらは、ミステリ限定とはいえ不動の支持率を維持するチャンドラーの話。「準古典」と称された『ロング・グッドバイ』のロング・テール効果でもないだろうが、短編新訳全4巻が、1の『キラー・イン・ザ・レイン』(ハヤカワ・ミステリ文庫、882円)から刊行された。

何が一新されたかというと――。「雨の殺人者」は「キラー・イン・ザ・レイン」に。なるほど、タイトルがカタカナになったのか、などと罰当たりなことをいってはいけない。この4巻全集は、作品が年代順に再構成される。それゆえ1巻目の本書では、探偵マーロウ誕生の前史を一望にできるわけだ。ここにあるのは、45歳でパルプ雑誌にデビューした作家が、粗雑な暴力小説の世界から出立し、次第に独自の叙情を確立していくまでの歩みである。

たとえば、第1作「ゆすり屋は撃たない」の第1行。パウダー・ブルーのスーツを制服のようにまとった「騎士」が登場する。だが俗悪なクラブの照明のもとでは、とても本来の色には見えない。いかにもひねくれたこだわりの導入だが、この部分が後の長編第1作の冒頭に、入念な制服描写となって再生されていることを、年季の入ったチャンドラリアンなら知っている。――といった新たな発見もいくつかあるだろう。

収録6作は、いずれも長めの短編。模索的ではあっても、おそれいるほどの秀作ではない。ハメット亜流の素っ気ないスタイルに、叙情の1行。その1行点描がだんだんと増えていくところがことのほか面白い。

表題作「キラー・イン・ザ・レイン」は、多くの場面が長編『大いなる眠り』に流用されているが、別の読みどころもある。ここに描かれた無垢の依頼者のタイプは『さらば愛しき女よ』の大鹿マロイの原型だったのだ。【野崎六助 作家・評論家】

■2007/10/09, 毎日エコノミスト

旧かなづかひで書く日本語 (幻冬舎新書 は 1-1)
旧かなづかひで書く日本語 (幻冬舎新書 は 1-1)萩野 貞樹

幻冬舎 2007-07
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おすすめ平均 star
star伝統文化の破壊をもたらすものは
star早速使ってみました
star私は楽しめましたが・・・

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著者インタビュー 萩野貞樹(元産能大学教授)

「旧かな」は現実の発音に近く論理的で難しくない

――すっかり姿を消したと思っていた旧かなづかいですが、本書は全国で売れているそうですね。

■はじめは昭和10年代生まれの世代を念頭においていました。「そういえば、家にあった本は旧かなだった」と面白がって読んでくれるのではという気持ちです。結果的には若い読者も少なくないようです。

――日本語の基本である「いろはにほへと」をはじめ、旧かなが実際によく使われ、現代人も理解しているといった例は面白いですね。

■旧かなや文語表現、旧漢字などは、実は現代語の欠かせない部分になっています。例えば「君が代」の歌詞のもとになった古歌。そこでは「さざれ石のいはほとなりて」と表され、「巌となって」という意味だと分かる。ところが現代かなで「いわおとなりて」と表記しているため「岩音」と誤解する人も多いらしい。これはほんの一例ですが、少なくとも昭和20年代までの日本の文化は旧かなで成り立っていて、旧かなを理解することは国語の基本中の基本なんですよ。

――本書のなかで、小さな子供は旧かなの唱歌を違和感なく歌えるし、旧かなを恐れる必要はない。いくつかの規則さえ覚えれば、簡単だ、決して難しくないと強調されていますね。

■その通り。世間には旧かなを軍国主義と結びつけて考えるような偏見もあって、問題です。ちなみに戦後の日本を象徴する日本国憲法も旧かな・旧漢字で、そのまま「護憲」されていますね。旧かなは決して難しくないし、実はこの本だって、全編、旧かなづかいで書いたのですが、ほとんど気づかれなかったはず。読むことはほぼ問題なくできるし、書くことだって簡単な決まりを知れば、2、3日で習得できます。難しいとか非合理的といった批判はまったく当たらない。

――旧かなのよさの一端を教えてくださいますか。

■文句なくいいんですよ。日本語の発音の仕方がよくなります。例えば「思う」と書けば「う」と発音しそうだけれど、現実には「ふ」に近い。千田是也や宇野重吉、滝沢修といった人がいったように日本語の語尾はすっと消えるのが自然で、「う」とはっきりいうべきでない。

――すっかり旧かなにしたほうがいいといわれるのですか。

■戻れるのならば、それが希望です。でも、旧かなで読み書きしている人はごく限られている。だから現実には無理でしょう。でも、旧かなを少し勉強して携帯メールで使ってみる、CMや標語などに利用してみるといった楽しみを広く分かってほしい。短歌、俳句を詠む人にはぜひ旧かなを使ってほしい。そもそも歌や俳句は古典が背景にあるのですから。

――旧かなを使ってみようといったグループもできているそうですね。

■ええ、現代かなを旧かなに変換してくれるソフト「契沖」などというものも出ていますから、気軽に楽しみをみつけてほしいというのが希望です。

■2007/10/09, 毎日エコノミスト

マサイの恋人
マサイの恋人コリンヌ ホフマン Corinne Hofmann 平野 卿子

講談社 2002-09
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おすすめ平均 star
star主人公の情熱に圧倒される
star女の見た「アフリカ」・アフリカで生きるということ
starいろんなことを考えさせられます・・・

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ドイツで健闘する小さな出版社

今年も世界最大の書籍メッセ、恒例のフランクフルト書籍見本市(10月10~14日)が迫ってきた。

ドイツでもあちこちで小さな書店が店じまいし、中間取次業のリストラが目立つなか、書籍業界は全体としては好調である。ドイツの年間新刊タイトル数は2005年、9万点近くあった。これは日本の7万点を大きく上回る。ドイツ語人口は日本の人口とほぼ同数だが、毎日約250点の新刊が市場に出ていることになる。これはドイツの読者が日本より個別化しているためだ。つまり、タイトル数が多いのは専門書が多いからで、あえて違いを挙げれば、ドイツでは日本人のように「一般教養を深めたい」とか「みんなが読むからぜひ読みたい」という傾向が日本ほど強くないように思える。

一方、筆者の住むミュンヘンは、ニューヨークに次いで出版社の数が多い「出版都市」として知る人ぞ知る存在だ。なかには、自宅の一室でがんばっている小規模の出版社もあるが、これがなかなか健闘している。以前、ある産婆さんは、自分の経験から独特の出産方法と育児の本を出したいと思ったが、出版社が見つからないので自分で出版社を設立。自著を出版し、プチベストセラーになったという逸話もある。

『マサイの恋人』(邦訳は講談社刊)のコリンヌ・ホフマンも、わずか3人で経営する出版社が発掘した無名の作者だった。1998年に発行され、初版8000部はたちまち売り切れた。

「当出版社にしては思いきった初版の部数だった」と版元のA1出版、インゲ・ホルツハイマー氏はいう。氏は、1度も本を書いたことがなかったホフマンを発掘した。「他の出版社に断られたホフマンの原稿を読み、すぐ単行本化しようと思った」という見識は鋭い。15年前に、3人で始めた出版社は、今も社員5人の小規模経営だ。毎年10冊の新刊を出しているが、「なにを出版しようかこれまでに困ったことはない」という。編集会議が長引き、企画にすぐ横槍が入る大手出版社と違い、出版への決定権を握るのが少人数ということは大きな利点だろう。

『マサイの恋人』は、アフリカへ旅立った女性がマサイ族の戦士と恋に陥るという内容で、世界中で300万部が売れた。30カ国で翻訳され、映画化された2年前には、ドイツで最も動員数が多かった。書籍見本市ではハリウッドのスカウトマンたちも映画になりそうなシナリオ探しに余念がないという。【福田直子 ジャーナリスト・在ミュンヘン】

■2007/10/09, 毎日エコノミスト

不動産は値下がりする!―「見極める目」が求められる時代 (中公新書ラクレ 252)
不動産は値下がりする!―「見極める目」が求められる時代 (中公新書ラクレ 252)江副 浩正

中央公論新社 2007-08
売り上げランキング : 187

おすすめ平均 star
star不動産の動き。
star内容はよいが詰め込みすぎて少しわかりにくい
starリクルートの江副さん

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著者はあのリクルートの創業者である。不動産の需給は緩んでいるのに、低金利を前提に不動産価格が上がっているのはバブルである。外資も日本の不動産を売り始めた。金利が上昇すれば、再びバブル崩壊の悲劇を繰り返す、というのが著者の見方だ。8月の米サブプライムショックには触れていないが、構造は変わらないだろう。著者の論理と直感には同感せざるをえない。

■2007/10/09, 毎日エコノミスト

「軽」ウォーズ戦陣訓―スズキvs.トヨタvs.ホンダ 組織が勝つか、人間が勝つか (PRESIDENT BOOKS)
「軽」ウォーズ戦陣訓―スズキvs.トヨタvs.ホンダ 組織が勝つか、人間が勝つか (PRESIDENT BOOKS)永井 隆

プレジデント社 2007-07
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おすすめ平均 star
starこれは掘り出しもの!

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軽自動車の世界で異変が起きている。33年間シェア首位を保ち続けたスズキが2006年度に、ダイハツにその座を譲ったのだ。だが、そこにはスズキのしたたかな世界戦略があった。国内の自動車販売が低迷するなか、好調を維持する軽自動車業界の熾烈な競争を、経営・製造・販売の現場から描く。カリスマ経営者である鈴木修・スズキ会長の経営論の紹介にもなっている。

■2007/10/09, 毎日エコノミスト

メディア・イノベーションの衝撃―爆発するパーソナル・コンテンツと溶解する新聞型ビジネス
メディア・イノベーションの衝撃―爆発するパーソナル・コンテンツと溶解する新聞型ビジネス橋場 義之 佐々木 俊尚 藤代 裕之

日本評論社 2007-07
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「爆発するパーソナル・コンテンツと溶解する新聞型ビジネス」のサブタイトル通り、ジャーナリスト、ブロガー、マーケッター、コンサルタントによる60時間徹底討論は玉石混交、興味深い内容。ニュースの取捨選択にマーケティング手法まで取り入れられているネット空間は従来の新聞型世論とは異質の言説を生む。市民社会とネットを考える際、参考になる。

■2007/10/09, 毎日エコノミスト

石油で読み解く「完敗の太平洋戦争」 (朝日新書 57) (朝日新書 57)
石油で読み解く「完敗の太平洋戦争」 (朝日新書 57) (朝日新書 57)岩間 敏

朝日新聞社 2007-07-13
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おすすめ平均 star
star切り口は満点の本
star石油から見ても日本は負けた。

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太平洋戦争敗因の研究は多いが、そもそも無謀な戦争だったことを石油需給の数字を使い、平明に解き明かした。元石油公団理事らしくデータは完璧。軍部がいかに根拠のない数字で天皇、政治家をだまして戦争に突入したか、石油枯渇で船も飛行機も動かないのに戦争継続を叫び、反対勢力を圧迫、国民を死に追いやったかを淡々と書く。現代に生かせる教訓満載の書だ。

■2007/10/09, 毎日エコノミスト

牛頭天皇と蘇民将来伝説――消された異神たち
牛頭天皇と蘇民将来伝説――消された異神たち川村 湊

作品社 2007-08-28
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各地に残る「蘇民将来子孫」の伝説は千数百年間、民衆に支持されてきた。著者は記紀神話とは異質のこの神々は朝鮮半島由来という。明治の国家神道は牛頭天王、蘇民将来、婆梨采女といった神々を歴史の表層、信仰の現実から跡形もなく消滅させた。天皇制イデオロギーが恐れた牛頭天王神話とは何か? 庶民の情念を吸収してきた神々の無念さがにじみ出たような本だ。

■2007/10/09, 毎日エコノミスト

負けない生き方
負けない生き方財部誠一

東京書籍 2007-08-30
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おすすめ平均 star
star全ての世代へのメッセージ!

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大採用時代の生き方

この春、企業の採用数が激増したという。みずほフィナンシャルグループだけで約2400人、東京三菱UFJ銀行は約2200人。つい最近まで就職氷河期と言われていたことを考えると夢のような数字である。

この大採用時代の将来像と、就職氷河期世代のこれまでと将来について、年余にわたる経済ジャーナリストとしての経験から鋭く分析した本を見つけた。

財部誠一『負けない生き方』(東京書籍、1575円)である。

財部氏によると、こんなに新卒を大量就職させているのに、氷河期に就職し損ねた優秀な人材を中途から採用するようなことをほとんどしていないという。したとしても、社長になれるような逸材だけだと。 「世代間に社員数の分布にデコボコができたら経営の安定がはかれなくなる」という彼の指摘も正鵠を射ているのに、経営トップは自分の任期中の業績しか考えないからこんなことが起こるのだという。

そこで何が起こるのか?

大手メガバンクに入れたところで、金融商品を売る戦士として使われて、半分はやめていくだろうと採った会社のほうは考えているし、それでも出て行かなければ、能力主義の名目で追い出していくだけだそうだ。

おそらくその通りなのだろう。

企業が生き残りのために正社員を減らし、格差社会のもとになったが、正社員を大量に採用するようになっても、アメリカ流の競争原理・市場原理至上主義がある限り、格差社会は是正されない。

そして、就職氷河期組は転職を重ねたところでキャリアアップにつながることはなかった。

では、どうして生きていけばいいのか? 財部氏は最後に、3つの原則を挙げている。

どんな職場にいようが、自分なりに最善を尽くすこと。うそをつかないこと。大義名分をもって生きること。

綺麗ごとのように聞こえるが、結果的にまっとうに生きていれば、損をすることはあっても人生で大負けはしないということである。

確かに、厳しい競争社会だからこそ、また情報がすぐに広まる時代だからこそ、まっとうな生き方のほうが強いという言辞には逆に重みがある。【和田英樹 精神科医】

■2007/10/09, 毎日エコノミスト

知性の眼―イタリア美術史七講
知性の眼―イタリア美術史七講小佐野 重利

中央公論美術出版 2007-05
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「視覚」が重視されたイタリアの中世

現代人には当然のことだが、情報の大半は視覚から入る。だが、歴史を通じてそうだったのか。狭義の歴史家は文字に頼るしかない。表象を手掛りに存在に迫るのは美術史家である。

小佐野重利『知性の眼』(中央公論美術出版、2940円)はイタリアの15世紀は視覚が重視されるようになった時代だという。それに先立つ中世であれば、教養(自由7学芸)としては光学よりも音楽が上位にあった。やがて、読書習慣でも音読よりも黙読が当たり前になる。

名高いヴァザーリの『芸術家列伝』には、遠近法の研究に没頭して妻に促されても寝食まで忘れたパオロ・ウッチェロの話がある。それほど「視覚は知性に至る第一の門である」という言説がまかり通るようになっていた。

14世紀の詩人ペトラルカは報われなかった愛の人妻ラウラを生前も死後も思慕しつづけ詠っている。「黄金の波打つ髪」「純白の優美なうなじ」といった表現がくりかえされ、この美人のトポスは後の画家の手であざやかに表象される。ジョルジョーネの通称《ラウラ》やバルトロメオ・ヴェネトの通称《フローラ》はその代表作であるという。

ジョットからはじまる『列伝』はその頂点にミケランジェロの天才を恵み深き天上の采配として描き出す。ローマで息をひきとった天才の遺体はフィレンツェに運ばれたが、22日間棺に置かれても腐乱もせず腐臭もなかったという。大理石彫刻《ダヴィデ》は古代も現代もすべての彫刻を凌駕した作品として称讃される。ミケランジェロとともにルネサンス神話が完成するのだ。

ところで、ルネサンスは芸術家だけの力で生み出されたわけではない。中世という時代に蓄積された富、とりわけ商人の活動があったからである。

亀長洋子『中世ジェノヴァ商人の「家」』(刀水書房、1万2600円)は公証人登録簿や遺言の分析を通して商人の親族の絆を描く。一見すれば大きな「家」という形の結集のなかに「直系」を重視する意識と活動が息づいていた。まぎれもない専門書だが、商家出身の著者ならではの作品である。【本村凌二 東京大学教授】

■2007/10/09, 毎日エコノミスト

格差社会ニッポンで働くということ―雇用と労働のゆくえをみつめて
格差社会ニッポンで働くということ―雇用と労働のゆくえをみつめて熊沢 誠

岩波書店 2007-06
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労働世界をパノラマで展望し組合の責任も鋭く指摘

ここ2年余り、格差社会の進行とホワイトカラー・エグゼンプションの導入をめぐる政治状況が重なって、ワーキングプアと過労死を焦点に、働き方をめぐる議論が空前の規模で巻き起こってきた。

経済誌はもちろん、新聞やテレビも、正社員と非正規労働者の二極分化と、両者の労働環境の悪化について競うように報道してきた。またこの間にはフリーターや派遣その他の雇用・労働問題を扱った単行本がかつてなく多数出版され、ブームの観さえ呈してきた。

本書は数ある類書に単に新たな1冊を付け加えたものではない。従来の類書の多くは雇用と労働の現場に取材し、あるいは賃金や労働時間の統計に語らせ、格差や働きすぎの実態を抉っている点で有益であるが、それらはジグソーパズルの嵌め絵の断片を描いていて、全体像が見えない恨みがあった。

しかし、本書は格差社会の構造をいくつもの断片に切り分けて分析しているだけでなく、それぞれの断片をしかるべき位置に置いて、今日の労働世界の全容を「パノラマ」として浮かび上がらせることに成功している。これは多年にわたって日本の社会政策論と労使関係論の第一線で活躍してきた著者にしてなしえたことである。

本書は労働所得格差の諸相を、女性および若年者において著しい正規雇用と非正規雇用の間の賃金格差にとどまらず、支払い能力格差を背景にした大企業と中小企業の間の賃金格差、また能力主義管理や成果主義賃金によって拡大された個人別賃金格差にも立ち入って考察している。その分析を貫くのは、「恵まれた仕事」と単純労働の間の階層形成を踏まえ、雇用形態別、性別、職業別、所得階級別に格差の全体構造を捉える視点である。

その際、新自由主義に立つ小泉構造改革の影響という短期の視点と、1970代半ば以降の人事・労務管理の変容と雇用形態の多様化の影響という長期の視点をうまく接合しているのも、本書の特色である。

類書に欠け、本書が重視する論点の1つは、労働組合の責任である。格差の拡大には労使関係が深くかかわっているが、80年代以降、日本の労働組合は無力化してきた。その結果、ワーキングプアや過労死をめぐる新聞の投書をみても労働組合の存在そのものが視界から消えてしまっている。格差の是正を進めるうえで期待されているのは、政治の役割とともに労働組合の役割である。それを考えるためにも一読を薦めたい。【評者 森岡孝二 関西大学経済学部教授】

■2007/10/02, 毎日エコノミスト

地方分権改革 (行政学叢書 5)
地方分権改革 (行政学叢書 5)西尾 勝

東京大学出版会 2007-07-20
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地方分権化の推進役が障害と克服戦略を「熱く」語る

参議院選挙での自民党の大敗を受けて、都市と地方との格差が改めて注目されている。しかし、地方重視といっても多分に選択の余地があり、早々に破綻したとはいえ、安倍内閣が増田寛也前岩手県知事を総務相に抜擢したのは、「地方の改革」を重視する方針に立っていたことを示している。この地方の改革重視は地方の自主性を尊重するものであり、「国のかたち」という憲法上の問題にも深くかかわっている。

本書では1995年に政府の諮問委員に就任して以来、地方分権化の推進に取り組んできた著者が、この問題を正面から取り上げている。本書の特徴は、何といっても自らの体験を踏まえて、地方分権化にどのような障害があるのかを明快に分析し、克服するにはいかなる戦略を取るべきかを、著者自身が「熱く」語っている点にある。

言うまでもなく地方自治は、民主主義の基本として日本国憲法の主要な構成原理になっている。しかし、「3割自治」ともいわれたように、実際には十分機能してこなかった。それに対して、著者は、地方自治体が公務員数や総歳出でそれぞれ4分の3と3分の2を占めており、国際的に見ても決して見劣りしていなかったと指摘する。にもかかわらず、機能しなかったのは、自治体が国の業務の下請け機関に貶められてきたからであった。

著者が参加した委員会は、この点を改善するために地方自治体への機関委任事務を全面的に廃止し、自治体と国との関係を通達や指導でなく、法律に基づいたものにする法治主義の導入などを提言した。99年に制定された地方分権一括法でこの点は実現したが、それと同時に自治体の財政基盤を確立するために期待していた「歳入の自治」のほうは、中央省庁、特に財務省の頑強な反対にあっていまだに日の目を見るに至っていない。

著者は、分権化の審議過程で地方6団体が積極的に取り組み、結束して活動するようになった点を評価する一方、中央省庁の反対を克服するために政治主導の重要性を説いている。現に小泉首相の介入で、一時は財務省の反対を抑えて突破する展望が開けたものの、首相が郵政民営化の実現を優先したことによって立ち消えになってしまったのであった。

本書は分権化の改革が、複雑な中央―地方関係を総合的に取り上げて、体系的に問題点を洗い出したことも詳細に明らかにしている。それだけに自治体の側に、改革の成果を活用する意欲が弱いと苦言も呈されている。【評者 五十嵐武士 東京大学法学部教授】

■2007/10/02, 毎日エコノミスト

新潟樽きぬた ~明和義人口伝~
新潟樽きぬた ~明和義人口伝~火坂 雅志

小学館 2007-08-29
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おすすめ平均 star
star江戸時代・新潟であった住民自治の体験に感銘

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町人が自治を獲得した「新潟騒動」の顛末

火坂雅志『新潟樽きぬた』は、権力者が抹殺した「新潟明和騒動」を掘り起こした異色の歴史小説である。

長岡藩は北前船の航路変更で構造的な不況に苦しむ新潟湊に、多額の御用金(臨時税)を課す。しかも町政を任された検断(町役人)は藩の重臣と癒着し、御用金を横領していたのだ。この事実を知った町民は、ついに決起する。

一揆を描いた作品は珍しくないが、新潟騒動は、騒乱を起こして役人を追い出した町人が、代表者を選び、自分たちの力で町を運営するという特異な経緯をたどる。

リーダーに選ばれた湧井藤四郎は、藩が切り捨ててきた貧しい人々を救済し、治安の回復に努めるなど町民の側に立った政治を行う。だが町民自治を認めない長岡藩との対立は深まり、藤四郎は難しい決断を迫られていく。

日本人は納税者意識が薄いといわれるが、最近は行政を監視するオンブズマンなども増えている。命を懸けて藩の不正と戦った藤四郎たちは、市民が声を上げることの重要性を現代に示しているのである。

西條奈加『烏金』(光文社、1470円)は、因業な金貸しのお吟に弟子入りした浅吉の奮闘を描いている。浅吉は強引に金を回収するのではなく、貸手に助言を与えて生活を立て直していくので、まさに時代小説版『ナニワ金融道』。さらに浅吉は、貧困層に事業を興す資金を融資する新たな商売を思い付く。

浅吉の弱者救済策は成功したグラミン銀行がモデルなので、格差社会で弱者とどのように向き合うべきかを考えさせられる。浅吉の計画が順調すぎるのはご愛嬌だが、現実が厳しいだけに、これくらい痛快な方が楽しめる。【末國善己 文芸評論家】

■2007/10/02, 毎日エコノミスト

日本カジノ戦略 (新潮新書 226)
日本カジノ戦略 (新潮新書 226)中條 辰哉

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著者インタビュー 中條辰哉(CASICON社長)

ラスベガスのまねでなく日本のカジノを作りたい

――米ネバダ州立大学の大学院でカジノ経営学を専攻されていますが、十数年前になぜカジノを?

■華やかさに惹かれ、将来はカジノをやりたいと思い、日本の大学を出てラスベガスのディーラースクールに留学しました。さらに現地の大学で専門知識を学び、卒業後はベガスのカジノに勤めて、VIP担当の「カジノホスト」をしていました。カジノ業界で学んだビジネスモデルを、日本に導入するための会社を2年前に作りました。

――そういう方が書いた本ですので、とにかく「目から鱗」の話ばかりでした。例えばこれまでは、イカサマや犯罪組織とかかわりがあるのではというイメージをカジノに持っていましたが、まるで違いました。

■犯罪との決別のために厳しい規制と法律があります。またカジノは、確率論でいう大数の法則と期待値という数学で成り立っています。期待値とは寺銭と思えばいいでしょう。フロア全体で勝てばいいので、カジノ側がイカサマをする必要はないんです。個々のお客が勝つことはあるでしょうが、全体で見ればカジノは儲かるのです。

――コンプ(コンプリメンタリー)という言葉も初めて知りました。中條さんは、コンプこそカジノの魅力と言っておられますが。

■コンプの条件は細かな数字があるのですが、簡単に言えば、宿泊代や飲食代などを無料にしてくれることです。コンプは勝ち負けとは無関係で、使った賭け金の総額でコンプを受けられるかどうかが決まるのです。コンプを体験しない限り、カジノを堪能したことにはならないと思います。

――コンプの対象者のなかでも、1回の滞在で何億円も使う「鯨」と呼ばれる超VIPが、カジノの売り上げの大半を占めているんですね。

■鯨がすべてではありませんが、カジノは、多額の賭け金を使う2割の顧客に焦点を合わせ収益性を向上させるビジネスモデルです。日本では顧客を平等に扱う風潮がありますが、カジノは顧客を選別します。もちろん少額の賭け金で遊ぶ8割の人も拒みません。しかし、そういうお客のニーズに対して、カジノは巨額な投資を行いません。家族連れ向けのテーマパーク型カジノは破綻しました。賭けにお金を使わないからです。レストランもエンターテインメントも、そしてコンプも、すべてはギャンブルをする人に満足してもらうためにあるのです。

――日本でもカジノを合法化しようという動きがありますが。

■実情を知っているから楽観視はしていません。パチンコとの共存や税率など解決すべき課題は多い。ラスベガスのまねではダメです。最近マカオに世界最大級のカジノができ、韓国にもあります。そういうよそにない魅力を備える必要があります。花札とか、日本が得意なポータブルカジノゲーム機など日本独自のカジノを作らねば、お金を持った人は来てくれません。

■2007/10/02, 毎日エコノミスト

「小さな政府」の落とし穴―痛みなき財政再建路線は危険だ
「小さな政府」の落とし穴―痛みなき財政再建路線は危険だ井堀 利宏

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参院選の結果は小泉「小さな政府」路線への反対声明だったのか? そうだとしても「大きな政府」路線には戻れない。増税なき財政再建という甘言の矛盾を突き、相対的に税負担の低い日本では消費税10%の「中規模政府」が最低限必要と提言する。子孫へのつけまわしを避け、若い世代ほど損をする年金制度を改革し、国民は自助努力しようと説く。警世の書だ。

■2007/10/02, 毎日エコノミスト

本格保守宣言 (新潮新書 225)
本格保守宣言 (新潮新書 225)佐藤 健志

新潮社 2007-08
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star著者自身が偽物保守

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安倍首相の「保守」は本当の「保守」だったのか? 改憲や改革にばかりこだわるのはニセモノ保守で、「世の中はどこまでも良くなる」という近代的理性の限界を悟り、より深い叡智に目覚めることこそ本格保守だ、と主張する。憲法は解釈改憲せよ、あえて金正日体制を存続させよ、アメリカを相対化して中国の台頭に備えよ、と刺激的な提言が満載。頭の体操になる。

■2007/10/02, 毎日エコノミスト

グラミンフォンという奇跡 「つながり」から始まるグローバル経済の大転換
グラミンフォンという奇跡 「つながり」から始まるグローバル経済の大転換ニコラス サリバン 東方雅美/渡部典子

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star営利事業なのに社会貢献して社会を変えることができる
star援助に対する考え方を再提示
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バングラデシュで携帯電話の急速な普及を牽引したグラミンフォン。グラミン銀行と北欧通信事業者によるこの共同事業を陰で支えた1人の起業家を通して、その成功の軌跡を紹介し、アジア・アフリカ諸国における携帯電話サービスの広がりと経済社会的インパクトを分かりやすくまとめている。グローバル経済のあまり光を当てられることのない側面が活写されており、ビジネスストーリーとしても楽しめる。

■2007/10/02, 毎日エコノミスト

13歳からの「人を動かす」―人に好かれる女の子になる8つのルール
13歳からの「人を動かす」―人に好かれる女の子になる8つのルールドナ・デール・カーネギー 山岡 朋子

創元社 2007-09
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star自分も十代の頃にこれを読みたかった・・・

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自己啓発書の世界的ロングセラー『人を動かす』の著者デール・カーネギーの娘が、人から愛され、凛々しく生きるためのヒントを若い女の子向けに書いた。自分の生き方を決めるのは自分自身だとして、なりたい自分になるための方法を、父親の教えをもとに語りかける。言葉は優しいが内容は深く、親世代にも読みごたえがある。娘を持つ父親にすすめたい1冊。

■2007/10/02, 毎日エコノミスト

最初のヒト
最初のヒトアン・ギボンズ 河合 信和

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1990年代半ば、諏訪元・東大教授らは440万年前の最古のヒト科化石を発見したが、その後10年余の間に次々と新しい発見があり、いまやヒト科最古の化石の年代は600万~700万年前にさかのぼる。本書は、ジャワ原人に始まる、最古の化石の発見に名誉と命を賭けた化石ハンターたちの物語。それにしても最近の古人類学の日進月歩ぶりには驚かされる。

■2007/10/02, 毎日エコノミスト

超・格差社会アメリカの真実
超・格差社会アメリカの真実小林 由美

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starアメリカを知るためのバイブル
starNYにいる友人にも違和感のない内容だそうです。
starアメリカ「解体新書」―「他山の石」としてのアメリカ

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アメリカ社会の不平等感は中国と同じ

もう40年以上前、評者がまだ学生だったころは、W・ミルズのパワーエリート論や、K・ガルブレイスの軍産複合体論などがさかんに取り上げられ、アメリカ資本主義のゆがみがかなり注目されていた。しかし、その後のアメリカの繁栄、ソ連の崩壊などの展開のなかでこうした議論は全く目にしなくなった。昨今、アメリカに批判的な人たちもその矛先を帝国主義論に向けており、アメリカ社会の格差が拡大していることへの言及はあまりない。

その意味で小林由美著『超・格差社会アメリカの真実』(日経BP社、1785円)は新鮮である。アメリカに26年も暮らし、スタンフォード大学でMBAを取得した人だけに、その指摘は決してイデオロギー的ではない。むしろアメリカ社会の「心地よさ」に好意を持ち、日本社会の息苦しさに辟易としているようでもある。しかし、その分析は緻密で鋭い。

アメリカ社会は「特権階級」「プロフェッショナル階級」「貧困層」「落ちこぼれ」の4つに分かれた階級社会だという。しかも、特権階級とプロフェッショナル階級は全人口の5%未満で全米の富の60%を保有する。つまり、アメリカ世帯の95%は貧困層か落ちこぼれだというのだ。

よく中国やインドなどの格差が大変問題だという指摘がなされるが、ジニ係数(所得の均等度を示す数値)で見ると、アメリカは先進国中、最も不平等で、その不平等度は中国と同水準である。街に物乞いがあふれているインドでさえ、アメリカよりも平等である。これはショッキングな数字である。にもかかわらず、アメリカも中国もインドも社会崩壊の危機に瀕していないのは、階層社会を駆け上がって大金持ちになる人々が、全体から見るとごくわずかだが、そこそこの数いるからであろう。いわゆるアメリカン・ドリームである。

小林が本書で指摘している事実は、アメリカで極めて顕著だが、日本を含めて全世界で起こっていることでもある。つまり、中産階級が増加して平等化が進んだ20世紀に対し、21世紀はアメリカを先頭に格差が拡大する世紀になっているのである。その意味で本書の提起する問題は大変重要であると言えよう。【榊原英資 早稲田大学教授】

■2007/10/02, 毎日エコノミスト

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