メイン > 週刊エコノミスト書評 『ブックレビュー』 > 2006年8月22日~8月29日

仮想経験のデザイン―インターネット・マーケティングの新地平
仮想経験のデザイン―インターネット・マーケティングの新地平石井 淳蔵 水越 康介

有斐閣 2006-07
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おすすめ平均 star
starユーザーとして・・・
starネットコミュニティのどうしたら続くのか、儲かるのか
starミクシィの可能性

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ネットコミュニティーの最新事情と収益モデルを探る

マーケティングの視点からネットワーク上に生まれるコミュニティーを研究してきたグループが、最新の事例とその分析をまとめたものである。豊富な事例検討を通じて、2002年に出した前著に比して、ネットコミュニティーの運営者に「新しい工夫」があることや、ビジネスとして成立する可能性が増してきたと指摘している。工夫の中にはいわゆるウェブ2・0系のものが多く含まれていて、ウェブ2・0上でのコミュニティーの特質を研究者が分析した先駆的な本と言うこともできるだろう。

中心的テーマとなっているのは「意味(規範)の備給」による「秩序だってコミュニケーションを連接させる仕組み」の作り方である。地縁や血縁によって維持される伝統的なコミュニティーとは異なり、ネット上に形成されるコミュニティーは(時に遠く離れ、顔も知らない人間同士の)コミュニケーションの連鎖そのものが、存在意義であり、つながりの基盤となっている。ビジネスもそのコミュニケーションの連接が継続している間のみ成立する。ところがその連接はきわめて不安定なもので、誰も参加しなくなって途切れてしまったり、あるいは誹謗中傷の嵐が吹き荒れてつぶれてしまったりすることもある。

このあたりについて、11章で松井剛氏が「インターネットは制度的な圧力が弱い場であるために、偶有性のぶれがきわめて大きい。(中略)つまり、コミュニティーの短命化を避けるために、参加することで社会的欲求を満足させられるという誘因を与えると同時に、参加への義務感をほどよく設定する、すなわち意味の備給水準の『さじ加減』が重要な課題となる」と表現している。

少し耳慣れない言葉づかいが多く、とっつきにくさがあるが、メッセージははっきりしていると思う。階層化、価値の明示化など、コミュニケーションの場に仕組みを正しく設計して埋め込むことでコミュニケーションに持続性と秩序をもたらそうというものである。その方法論を具体的な事例を見ながら編み出そうとしている。

事例の選択がやや無原則で、結論の妥当性や一般性に若干の危うさがあり、また、現実に多くの企業を支えられる収益モデルが、主張されているほどは確立してきているとは思えない、といった弱点を考えても価値ある書だと思う。急速に展開し、多様に変化するネットコミュニティーの様相を実証的に捉え、法則性を見いだそうとする努力は貴重だし、勉強になる。【評者 國領二郎(慶応義塾大学総合政策学部教授)】

■2006/08/29, 毎日エコノミスト

外交敗北――日朝首脳会談の真実
外交敗北――日朝首脳会談の真実重村 智計

講談社 2006-07-04
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おすすめ平均 star
starアメリカ様がお怒りだ!
star日朝首脳会談のまとめとして
star日本の外交の危うさが見える。

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「国交正常化」の野心に走った日朝交渉の失敗を糾弾する

朝鮮半島専門家による最近数年の日朝交渉の実情を述べた非凡な本である。北朝鮮のような国と外交を行うには、北朝鮮の特殊な権力構造のあり方、そして北朝鮮の党、軍、外務省がおかれている権力構造を理解し、日本側は外交一元化の原則を堅持したうえで、対北朝鮮外交を進めなければならないというのが、著者の主張の中心である。

そのような観点から、第1回の日朝首脳会談を実現させるに際して、当時の外務省の田中均アジア大洋州局長が北朝鮮側の秘密警察である国家安全保衛部の幹部、いわゆるミスターXを外交交渉のカウンターパートとして、対北朝鮮外交を壟断したことを厳しく非難する。

外務省担当局長が、なぜそのような変則的な手段を選択したのか。日本の外交姿勢について著者の長年の半島情勢取材の経験、チャネル、ワシントン特派員時代の知識などを基礎として論述される。

著者の結論は、「日本側も北朝鮮側も双方の担当者が、『正常な外交』への復帰より、『国交正常化』を実現して『出世』する野心に燃えていた、というべきであろう」となっている。

日本側外務省に言わせれば、「国交正常化」こそ「正常な外交」への復帰ではないかという論理となろう。しかし、著者は、日朝間の外交はそのような単純なものでなく、日米、日朝、日韓、米韓などの朝鮮半島情勢を巡る複雑な外交交渉のバランスがあり、そのバランスを無視して、さらに「拉致問題」という日朝間に横たわる最大の問題への徹底的な取り組みのない「国交正常化」は外交ではないと、舌鋒鋭く糾弾する。

さらに、日朝間の外交に深刻な悪影響を与えたものとして、金丸訪朝団などを挙げ、利権がらみの「国会対策的手法」の議員の政治行動が日本外交を混乱させ、その品位と質を落としているという。また「国際関係」の知識に欠ける政治部記者が首脳外交に同行し、首脳外交の深層を読み切れない記事を書くことの弊害についても著者の筆は厳しい。

著者のこれら批判の多くに評者は同感だが、外交大権は外交事務を司る外務省にあるのでなく、その内閣にある。その点で小泉総理への一部辛口の言葉はあるが、著者は小泉内閣に相対的に高い評価を与え、そして当時の内閣官房副長官、現在の安倍官房長官に対しての言及は少ない。

評者としては、外交、すなわち各国といかなる外交関係を持つのかを決定する内閣、特に総理大臣、官房長官への著者の分析・評価を今後期待したい。【評者 小池政行(日本赤十字看護大学教授・国際人道法)】

■2006/08/29, 毎日エコノミスト

ブログがジャーナリズムを変える
ブログがジャーナリズムを変える湯川 鶴章

NTT出版 2006-06-24
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おすすめ平均 star
star参加型ジャーナリズムが既存のメディアを変えていく

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著者インタビュー 湯川鶴章 (時事通信社編集委員)『ブログがジャーナリズムを変える』

危機感深まる新聞経営ネットと共存の道探る

――ネットの隆盛で新聞はなくなるのか。「なくなる」という可能性を昨年秋あたりから新聞経営者も本気で心配しはじめた、と本書にありますね。

■社長直属のネット研究組織などが急にできはじめました。まだ部数が急激に落ち込んでいるわけではないから、広告収入減がきっかけではないかと思います。数年前まで「景気が回復すれば」という楽観論を言う人もいましたが、今はもういないですね。もっとも社によって対応に違いがあって、全国紙も地方紙も、やはり業績の悪いところほど危機感が強い。

――あなたが青木日照氏と書いた前著『ネットは新聞を殺すのか』の影響もあると思いますよ。一方、「新聞がなくなる」という話は昔からあるから、今度も「狼少年」ではないかと高をくくる社員も多いでしょう。

■一般に40代以上の社員は関心が薄いですね。30代以下は以前から危機感があるのですが。たとえば30代以下の7割はYouTube(ユーチューブ・動画共有サイト)を知っていると思いますが、40代以上でこれを知っているのは数パーセントでしょう。ネットの知識でそのくらい差がありますから、これから業界内で世代間の軋轢が激化していくでしょうね。

それはともかく、「電子メディアの発達で紙がなくなる」といった話なら私もあまり意味がないと思う。いつかはそうなるでしょうが、我々が生きている間に紙がなくなるとは思えない。我々に意味があるのは、今の新聞業のビジネスモデルがいよいよ崩壊するかどうか、そして、それでジャーナリズムや民主主義がどうなるか、ということでしょう。前者については『新聞がなくなる日』を書いた歌川令三さんが「あと4、5年」と予想しています。私は判断材料をもっていないのでそれを肯定も否定もできない。それが私の本来の関心でもないですし。

――新聞が力を失った時、ジャーナリズムはどうなるか。本書では「市民参加」をキーワードにして論じていますね。前著に比べて、湯川さんは将来に楽観的になったように感じました。

■商業ジャーナリズムでは経営難が情報の質の低下に結びつくでしょうから、その点で私は悲観的でした。しかし、ブログなどを使った市民ジャーナリズムが、意外に早くそれを補う存在に成長するかもしれない、と思うようになりました。一方、商業新聞も、部数を絞って質の高い紙面を保つ方向に変身できるかもしれないと思いはじめた。

ネットと新聞のそういう共存共栄がすぐに、あるいは簡単に実現できるとは思っていません。ただ、本書は自分のブログでネット住民に発信しながら書いたものですが、その経験から、商業マスコミは今後ネット上の市民と対話しながらやっていくしかない、と確信できました。ネットには既成マスコミへの不平不満が渦巻いていて、私のブログも「炎上」しましたし、対話は楽ではない。しかし、その方向にしかメディアの未来はないでしょう。

■2006/08/29, 毎日エコノミスト

もう一つの鎖国―日本は世界で孤立する
もう一つの鎖国―日本は世界で孤立するカレル・ヴァン ウォルフレン Karel van Wolferen 井上 実

角川書店 2006-08
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このままでは日本は世界で孤立すると警告する。アメリカの庇護下の日本という図式はすでに終わりを迎え、従来の日本流政治は通用しないという。対北朝鮮外交の失敗、対中国、対アジア外交の失敗。そしてブレーキをかけるべき外務省は正常に機能していない。今こそ真に独立国家として、中国をはじめ近隣諸国との建設的・友好的な外交関係を築くべきだとする。

■2006/08/29, 毎日エコノミスト

日本の電機産業再編へのシナリオ―グローバル・トップワンへの道
日本の電機産業再編へのシナリオ―グローバル・トップワンへの道佐藤 文昭

かんき出版 2006-08
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日本の大手電機が世界で生き残るための唯一の策は、ソニー、松下電器産業、日立製作所といった現在の横型コングロマリットを再編し、事業部門ごとに統合した、世界有数規模の縦型企業組織へと変えることだと、著者は主張する。本書では、この縦型再編でどこまで競争力が向上するのかを分析し、薄型テレビ、半導体といった部門ごとの未来図を描く。

■2006/08/29, 毎日エコノミスト

職人ことばの「技と粋」
職人ことばの「技と粋」小関 智弘

東京書籍 2006-08
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旋盤工であり作家である著者が長年の職人生活のなかで出会った粋な「職人ことば」をまとめた。手が枯れる、木殺し、鉄が泣く、ひとり親方、ギターを寝かせる、キサゲ紋様……。技術を伝え、修業を積むうえでのポイントを、豊かな表現で語り継いできた職人たちの心意気が伝わってくる。

■2006/08/29, 毎日エコノミスト

知識ゼロから始める究極のマンション選び──DVDで個人レッスン
知識ゼロから始める究極のマンション選び──DVDで個人レッスン長嶋 修

講談社 2006-07-26
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マンションの買い時は? 理想のマンションに出会うには? モデルルームのチェック法、建設予定地では何を見るか、資金計画の立て方など、マンション選びで後悔しないノウハウを不動産の達人が伝授する。DVD付きでチェックポイントも分かりやすい。

■2006/08/29, 毎日エコノミスト

MBAが会社を滅ぼす マネジャーの正しい育て方
MBAが会社を滅ぼす マネジャーの正しい育て方ヘンリー・ミンツバーグ 池村 千秋

日経BP社 2006-07-20
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おすすめ平均 star
star「社会人がいかに学習するか」
starビジネスに関わる全ての人が読むべき本です!

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アメリカではこの10年で100万人近くのMBA(経営学修士)取得者が経済界に送り出されているというが、分析至上主義で現場の知識のないMBA取得者が企業のリーダーシップを握ることの間違いを検証する。真の企業マネジャー育成とは何かを語る。

■2006/08/29, 毎日エコノミスト

幻の東京赤煉瓦駅 新橋・東京・万世橋
幻の東京赤煉瓦駅 新橋・東京・万世橋中西 隆紀

平凡社 2006-08-10
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赤煉瓦の東京駅は大正3年の建設だが、実はそれ以前の明治44年、東京駅に酷似した赤煉瓦の駅が東京に存在した。かつて新橋駅・東京駅・万世橋駅を結んでいた赤煉瓦アーチの謎をはじめ、日本の鉄道計画の変遷を探る。

■2006/08/29, 毎日エコノミスト

現代に生きるケインズ―モラル・サイエンスとしての経済理論
現代に生きるケインズ―モラル・サイエンスとしての経済理論伊東 光晴

岩波書店 2006-05
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おすすめ平均 star
starケインズ、いまだ死なず
star現代におけるケインズ理解に最高の大力作
star伊東先生,ご健在!

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没後60年の現代に問うケインズ理論とは何か

40年以上も前に書かれた伊東光晴氏の名著『ケインズ―“新しい経済学”の誕生』(岩波新書)は、かつて経済学を学んだことがあれば、ほとんど知らない人はいないと言ってもよいだろう。実際、高校や予備校時代にこの本を読んで経済学を志すようになった例は数多ある。

しかし、一時代を築いたケインズ経済学も、いまやその勢力が衰え、ケインズが批判の対象にした「古典派」の流れを汲む新古典派経済学が再び学界の覇権を握るようになった。

このような世の中の動きをどのように見るべきか、ケインズ研究の碩学に尋ねてみたくなるのは、ごく自然なことである。本書はまさにその期待に応えるために書かれた。

前著『ケインズ』が書かれて以来、ケインズ関係の文献は飛躍的に増えてきた。『ケインズ全集』の刊行は言うに及ばず、最近では、ケインズが在籍したケンブリッジ大学のキングズ・カレッジが所蔵する「ケインズ・ペーパーズ」を利用した研究も少なくない。本書もそれらの存在には十分に配慮しているが、評者にとってより興味深かったのは、伊東氏が前著『ケインズ』のなかで誤解を招きやすい解釈を示した個所を率直に認め、それを修正しようとしている真摯な学問的姿勢である。

例えば、『全集』を読めば、ケインズは本当は利子率の決定に貯蓄は何の関係もないと考えていたが、『ケインズ』では、ハロッドの解釈を受け入れて、例えば、完全雇用が実現し、所得水準に変化がなくなれば、利子率に応じて貯蓄が変化することを示す貯蓄曲線を引くことができると説明されている。だが、本書では、そのような考えは、ケインズの消費性向の理論と矛盾すると正されている。

また、ケインズの片腕であったリチャード・カーンが、新古典派と同じように、競争市場と収穫逓減の仮定から価格=限界費用という短期の利潤極大条件を採用するように提言したのは、寡占理論の未発達という当時の事情を勘案しても、のちに新古典派の反革命に好都合なマイナスの遺産を残したと厳しく批判されている。

ほかにも、サムエルソンの波及論的乗数とは違うケインズの即時的乗数の真の意味、ケインズの標準的解釈であったヒックスのIS/LM分析の欠陥の指摘など、実に盛りだくさんの内容である。最近の岩波新書は軽い読み物が多い印象があるが、心ある読者は、本書こそ岩波新書のあるべき姿だと思っているのではないだろうか。【評者 根井雅弘(京都大学大学院経済学研究科教授)】

■2006/08/22, 毎日エコノミスト

財政投融資
財政投融資新藤 宗幸

東京大学出版会 2006-05
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「市場化=私企業化」ではなく「分権型民主化」改革を提起

本書は行政学の視点から財政投融資の歴史を評価し、あるべき改革を論じた意欲作である。

戦後の歴史について著者は、郵便貯金・年金積立金が強制預託された資金運用部資金等の受動的原資を背景として財投機関が濫設され、それが「拡張主義的財政運営」と「巨額の長期債務の累積」を支えたと述べ、その目的は政治的資源の増大と官僚の権限増殖だったと批判する。

ただし財政の国際比較の視点でみると、財政投融資を含めたとしても、日本が例外的に「拡張主義的財政運営」を行ったために「巨額の長期債務」を抱えたという統計的証拠を示すことは困難である。「巨額の長期債務」の主要因は税負担が他の先進国と比べて軽いことである。

問題は、行財政の民主化、つまり分権化、情報公開等が遅れたため、財政支出増大が必要なときに、税負担増大について国民を説得できなかったことであろう。

さて、2001年の財政投融資改革は、郵便貯金・年金積立金の強制預託制度廃止、資金運用部資金から財政融資資金への転換と財投債の発行、そして政府保証のない財投機関債の発行を主な内容としていた。

著者は、財投機関債が市場経済を「隠れ蓑」とした財投機関生き残り策になりかねないこと、財政融資資金の繰り上げ償還が補償金なしで行われれば財政融資資金の損失が拡大すること等を指摘したうえで、財投機関からファミリー企業へ連なる「官製系列」の解体を主張する。

しかし、著者は「市場至上主義」にくみするわけではない。本書は、制度改革を税による無償資金供給への転換を含む政策制度の組み直しと捉えている。

中小・零細企業、住宅、教育等については、それぞれ補助金、減税、融資、そして地方分権推進を組み合わせることが必要とされる。また公共事業の地方分権も主張される。さらに郵便貯金銀行・郵便保険会社を地域分割し、政府系金融機関の機能をそこに統合する構想が示される。最後に会計検査院と国会による財投機関の厳正な評価に基づく組織構造改革が主張される。

あるべき改革の主軸が「市場化=私企業化」ではなく「分権型民主化」であることを示した点が、本書の最大の特長であると評価できる。

なお読者が政治・行政の論理に加え、経済の論理まで掘り下げて歴史を学ぶとすれば、財政学者が実証研究を積み重ねて執筆した大蔵省(財務省)財政史室編『昭和財政史』(東洋経済新報社、全4シリーズ)の財政投融資篇も参照すべきであろう。【評者 池上岳彦(立教大学経済学部教授)】

■2006/08/22, 毎日エコノミスト

国家再生―日本復活への4つの鍵
国家再生―日本復活への4つの鍵ジェフ キングストン Jeff Kingston 匝瑳 玲子

早川書房 2006-07
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著者インタビュー ジェフ・キングストン(テンプル大学日本校・アジア研究所所長)

静かで前向きな変化が起きていた「日本の10年」

――景気が低迷し、内外の評価が下落した日本の1990年代。しかし本書は「失われた10年」と決め付けるのは早計で、前向きな変化が起きていたと書いていますね。

■私も最初は「失われた10年」に目を向けていたのですが、調べるうちに間違いに気づいた。きっかけは草津で取材したあるハンセン病患者が、HIV訴訟での血友病患者たちの努力が励ましになったと語った言葉でした。ハンセン病訴訟では、謝罪も補償も不十分ながら、何十年も放っておかれた人権問題に風穴が空いた。長い間のタブーが白日の下にさらされ、議論の対象になった象徴的な出来事です。

日本は確かに「日本株式会社」としての秩序や富は失ったけれど、その一方でライフスタイルや多様性に対する許容範囲を広げ、これまでは未熟なままだった市民社会が広がったのです。

――再生の糸口として、情報公開法を挙げています。

■情報公開法が日本で初めて神奈川県で立法化された82年に、15年後には全国の主要都市のほとんどで法律化されるなどと誰が想像できたでしょう。実施上の障害は数えたらきりがないが、この法律が行政の過剰な接待や悪習慣を明るみに出し、説明責任を問う気運を作る強力な武器になったんです。

――ただ、情報公開法だけでは不十分だとも書いておられますね。

■不正に異議を唱える集団や個人、それを支持する市民層がいなければ、法律は絵に描いたモチにすぎません。メディアと裁判所が情報公開法を支持したことも大きい。情報公開法という新たな武器を手に非営利組織(NPO)が生まれ、市民社会が活性化したことも変革の大きな要素です。女性の役割の多様化も日本再生のカギになった。一連の日本の改革は、10~20年の長い期間に徐々に起こった静かな革命なのです。メディアはとかく目先に焦点を当てますが、そんなに簡単に社会は変わらない。この本では、大したことがないように見えるが実は重要で不可逆的な変化を一つずつ拾い、ジグゾーパズルのように再生の絵を描いたのです。

――90年代以降の変革を、幕末や戦後の日本と比較していますが。

■既存の権力機構が地位を保てなくなったという意味で、日本システムが信頼性を失った現代の日本と似ています。少なくとも、日本は変革しなければならないという点では幅広い支持がある。

では、新しいパラダイムは何か。違いは、明治維新や戦後の転換期では新しいリーダーがトップダウンで短期間に改革できただろうが、今は大きな混乱があること。効果が出なかったり、軌道修正されたり。改革とは、ゆっくりあちこちに寄り道しながら進むものなんです。

――「改革の指導者」を自任していた小泉首相の辞任でどうなるでしょう。

■先の総選挙で彼が大勝したのは、改革を望む選挙民の気持ちを酌み取ったから。でも、変革そのものはその前から始まっていた。たとえ首相が交代してもこの流れは変わらないでしょう。

■2006/08/22, 毎日エコノミスト

チャイナシンドローム―日中関係の全面的検証
チャイナシンドローム―日中関係の全面的検証朱 建栄 上村 幸治

駿河台出版社 2006-07
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上海出身の政治学者と元毎日新聞中国総局長が、悪化する日中関係に何が起きているのかを徹底検証する。靖国問題の落とし所と首脳会談の行方、国民感情の行き違い、大国化が加速する中国と現実のギャップ、東シナ海のガス田開発問題、アメリカの対中観、対中ODAなど、日本と中国の未来を語り尽くす。

■2006/08/22, 毎日エコノミスト

儲かる感性 企業を生かす、地域を活かす
儲かる感性 企業を生かす、地域を活かす嶌 信彦

小学館 2006-07-25
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高度成長期以降の時代を象徴する感性が「男と企業」なら、21世紀は「女性とシルバー」の時代。「失われた10年」を見事にくぐり抜けて再生・成長した企業や地域、人々に共通するのは、癒やし・くつろぎ・安らぎ・安全・安心といった時代の感性を早くから読み解いてきた力だという。500人以上の経営者やリーダー、地域の事例などから「儲かる感性」とは何かを読む。

■2006/08/22, 毎日エコノミスト

変わる社会、変わる会計―激動の時代をよむ
変わる社会、変わる会計―激動の時代をよむ石川 純治

日本評論社 2006-05
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おすすめ平均 star
starバランス感覚に優れた1冊
star「会計」という窓を通して現代社会を眺望する希有の本

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世間を騒がせたカネボウ巨額粉飾事件、ライブドアショックなどの事件を題材に、「会計」とは何か、社会のなかでどのように機能しているのかを探る。海外の事情についても、EUが国際会計基準の使用を義務づける2007年問題や、エンロン事件とアメリカ会計問題などを取り上げ、「会計」の視点から世界経済を読み解く。

■2006/08/22, 毎日エコノミスト

上流な私? 下流な私? いまどきの女性のココロと生活
上流な私? 下流な私? いまどきの女性のココロと生活三浦 展 読売広告社

PHP研究所 2006-07-21
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この30年で女性の生き方は実に多様化している。未婚・非婚男性に比べてシングル女性は華やかに見えるが、はたして彼女たちの「幸せ度」はどの程度なのか。『下流社会』の著者が、「人生エンジョイ系」「きちんとお嬢さん系」「インテリ自己実現系」など七つのタイプ別に検証する。

■2006/08/22, 毎日エコノミスト

新会社法実務相談
新会社法実務相談西村ときわ法律事務所

商事法務 2006-07
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「ゼロ円で会社は設立できるか」から株式実務、株主総会、コーポレート・ガバナンスと内部統制、役員の責任と株主訴訟、M&A、買収防衛、清算・解散など、新会社法をめぐる疑問や問題点に、最先端の実務家が答える。

■2006/08/22, 毎日エコノミスト

ニッケル・アンド・ダイムド -アメリカ下流社会の現実
ニッケル・アンド・ダイムド -アメリカ下流社会の現実B.エーレンライク 曽田 和子

東洋経済新報社 2006-07-28
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ニッケルは5セント、ダイムは10セント硬貨のことだ。働いていてもわずかな収入しかなく、貧困からはい上がることのできないアメリカのワーキング・プア(働く貧困層)の実態を、ジャーナリストの著者が潜入体験で探った。

■2006/08/22, 毎日エコノミスト

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