メイン > 週刊エコノミスト書評 『ブックレビュー』 > 2006年7月18日~7月25日
| アーニー・パイルが見た「戦争」 | |
![]() | ジェームズ トービン James Tobin 吉村 弘 芙蓉書房出版 2006-06 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
塹壕のなかから伝えた戦争沖縄戦に散った従軍記者の44年
太平洋戦争に際し、日本国内で唯一、地上戦が展開された沖縄。その伊江島で、1945(昭和20)年4月18日、アメリカの従軍記者アーニー・パイルは日本兵の狙撃を受けて即死した。
その前年、欧州戦線の報道でピュリツァー賞を受賞した彼の取材方法の特徴は、司令部発表に頼らず、下級の将兵らと塹壕のなかを這いずり回り、自らの目を通して戦争の実相に迫ろうと努めたところにあった。
眼前の敵と切り結ぶ最前線の兵士たちの肉声が立ち上ってくるルポルタージュは、戦場から遥か離れた故国で、多くの読者の共感を獲得した。一介の新聞記者にトルーマン大統領が弔意を寄せたのも、もはや彼が国民的英雄だったからである。
マイアミ大学のジャーナリズム学部準教授である著者は、残された記事・手紙や関係者の証言などから、その報道の影響や周囲の反応などを盛り込みつつ、アーニー・パイルの44年の生涯を丹念にたどっていく。
米国中西部インディアナ州の片田舎の農家に生まれたパイルは、町外れの州道を横切る幌馬車や自動車を丘の上から目で追う少年だった。閉塞的な精神的環境からの脱出願望は、記者となり、国内外の旅行記を書くことで果たした。彼のいま一つの趣味は飛行機で、ワシントン近在の飛行場に取材した連載コラムで読者を掴んだ。この「旅と飛行機」の延長線上に戦場があった、と著者は示唆する。
ドイツ軍による空爆に炎上するロンドンで戦争記者としての第一歩を踏み出し、北アフリカ、シチリア島、イタリア本土、ノルマンディー上陸と肉弾戦の修羅場を渡り歩きながら、ヒューマニズム溢れる筆致でコラム欄を埋めていった。そのなかから、「戦争は、地球に住むわれわれのような小さなありふれた人間から異様な巨大生物を創り出している」との妄想にも似た戦争観が芽生える。
イラク戦争では、邦字紙のワシントン特派員が「アーニー・パイルのような画期的な記事を書きたい」と意気に燃える米紙記者を紹介していたが、その彼もまた、米軍の庇護および情報提供の下、「エンベッド(埋め込み)取材」、即ち、米軍の発表を鵜呑みにする記事をものするしか術はなかった。
情報戦争の時代、新聞報道の質が問われている。しかし、それ以上に、記事の真贋を見極め、活字の背後に潜む為政者の意図を見抜く見識もまた、読者に求められている。いまなおパイルが、戦争報道の座標軸であり得る所以である。【評者 武田洋平(東海大学助教授)】
| ベッカー教授、ポズナー判事のブログで学ぶ経済学 | |
![]() | ゲーリー・S. ベッカー リチャード・A. ポズナー Gary S. Becker 東洋経済新報社 2006-06 売り上げランキング : 16346 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
中国経済、人口問題から性道徳まで世界の重要問題を語り尽くす
本書は、ベッカー教授とポズナー判事がインターネットのブログ上で書いたエッセーと、ベッカー教授が『ビジネス・ウィーク』誌に書いたエッセーを訳出したものである。ブログでは2人の著者が交代で、最初のエッセーとそれを受けたコメントを書く形式で進められる。ベッカー教授は経済学的方法で様々な社会問題を分析する分野を、ポズナー判事は法と経済学という分野を新しく開拓している。
著者の経歴を反映して、話題は政治的自由と経済的自由、中国経済の将来、移民政策、人口増加の良し悪し、保育サービス、性行動と性道徳にまで及ぶ。広範な事象を論じながら、紋切り型ではなく、深い洞察が詰まっている。
政治的自由と経済的自由との関係はそれほど単純ではない。著者はブッシュ政権の世界に政治的自由を推し進めようという戦略に賛意を示しているが、経済的自由がやがて政治的自由をもたらすとすれば(タイ、韓国、台湾という実例を持つ)、ブッシュ政権は、より経済的自由の重要性を強調すべきだと指摘する。
また、独裁者は、経済的自由が経済成長をもたらし、経済成長が独裁政治の土台を崩すことを知りながら、なぜ経済的自由を許すのだろうかという疑問を提示し、その疑問に自ら、独裁者はその政治権力が衰退している時のみ、経済的自由を認めるのではないかと答える。それによって国民のエネルギーを政治活動から吸い上げ、経済活動に向かわせることによって、一時的であっても国民を抱き込もうとするという。中国の現状について、これほど洞察に満ちた言葉を私は知らない。
人口が減少している日本の読者にとって、人口問題についての議論は特に関心のあるところだろう。
人口増加は規模の経済を生み、また、才能のある人間が生まれる可能性を高めて、人々をより豊かにするという議論について賛否の有益な議論がある。人口増加に対して政府は何をなすべきかについても有益な議論と実例がある。
日本ではフランスやスウェーデンばかりが紹介されているが、いずれの国も人口は増えていない。先進国で人口が増加しているのはアメリカだけだ。アメリカで何が起きているのか、真面目に見ようとしないのは知的怠惰だ。本書を読めば、わずかな時間で、限りない事象について、自分を知的怠惰から救ってくれる。【評者 原田泰(大和総研チーフエコノミスト)】
| 殿様の通信簿 | |
![]() | 磯田 道史 朝日新聞社 2006-06 売り上げランキング : 36 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
著者インタビュー 磯田道史(歴史家、茨城大学人文学部助教授)
元禄の殿様群像に平成日本の未来を探る
――黄門様こと徳川光圀公は実は女ぐせが悪く、密かに遊郭通いをしていた、などという話が最初から飛びだしてきて驚かされます。諸大名の素行調査をまとめた「殿様の通信簿」ともいうべき本が残されているそうですね。
■元禄3(1690)年頃に書かれた『土芥寇讎記』という書物で、公儀隠密が探索した情報を幕府高官がまとめたもののようです。「土芥寇讎」というのは『孟子』の言葉で、「殿様が家来をゴミのように扱えば、家来は殿様を親の仇のように見る」という意味です。
――殿様のふところ具合から庶民の評判、あけすけな噂話の類までが報告されていて、よくそんな史料が残されていたものだと驚きました。
■私も最初はびっくりしました。『土芥寇讎記』の存在を知ったのは高校2年の時で、実は私は岡山の出身なのですが、地元の郷土史家の講演録に、岡山藩2代目藩主の池田綱政公は、公家好き、女好きで評判が悪いと書かれているというのを見つけて、いつかぜひ読んで見たいと思っていました。
――確かに、「生まれつき馬鹿」と、ひどい書かれようですね。
■一つには名君と言われた父・光政公への反発もあったと思います。殿様の評価はどの藩も概ね厳しいんですが、そこには元禄という時代の自由さもあると思います。言論の自由というか、人間が生き生きしていた時代だった。
隠密が殿様の評判を調べるのにも理由があって、江戸時代も最初の100年はまだ戦国時代の気風を引きずっていて、殿様の個性がそのまま藩政に影響してくる。これが時代が下って藩の官僚機構が出来上がってくると、殿様抜きでも政治は回っていくようになります。企業でも、創業者から代替わりしていくと、社風が社長に体現されなくなるということがありますよね。
――日本という国の「組織」や日本人の「習性」のルーツは江戸時代にあるのでは、とも書いています。
■例えば会議をとってみても、重要なものは数人の家老たちが密室で決めるわけです。人事などは火鉢の灰の上に人名を書いて、すぐに消すとか……。公の場で大勢が議論して物事を理性的に決めていくということが、この国には数百年なかった可能性があります。その積み重ねが、株主総会などの姿に表れているのではないでしょうか。
この本では殿様の評判記を題材にしていますが、私はそこに今の日本との比較を見てみたかった。高齢化、人口減少、格差社会が言われ、日本は今、大きな転換点に立っています。私は格差には階層の格差だけではなく、世代と地域の格差があると思いますが、この本ではその世代格差の視点を盛り込んだつもりです。
戦後60年がたって、戦争を経験した世代が今、高齢化でまさに退場していこうとしています。一方で元禄は、戦国時代を経験した世代から、泰平の世に生まれ育った世代へと、大きく変わっていく時代でした。そこに今という視点を重ねてみると、見えてくるものがあるのではないでしょうか。
| 遥かなるゲバラの大地 | |
![]() | 戸井 十月 新潮社 2006-06-29 売り上げランキング : 105089 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
56歳となった作家・戸井十月は、チェ・ゲバラに導かれ、バイクで南米大陸一周の旅に出た。ペルーの海岸から雪のアンデスを越え、熱帯アマゾンを行く3万キロ120日間の旅は、「五大陸走破行」第4弾となる。ルールのない行き当たりばったりの旅だが、今回密かに目指したのは、ゲバラが殺され、30年も秘密裡に埋められていたバージェ・グランデの町だった。
| ビジネススクール流「知的武装講座」 (Part3) | |
![]() | 伊丹 敬之 沼上 幹 関 満博 プレジデント社 2006-07 売り上げランキング : 14729 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
敵対的企業買収は支配し統治する正当な権力と言えるか、なぜ日本企業は「選択と集中」を実現できないのか、急増する中国の「民営中小企業」から学ぶものとは、環境変化に負けない「老舗企業」の戦略とは、など、日本と世界が抱えるビジネス・経済の問題4講座40課題を収録する。日本の現実に即して問題の本質を読み解く。
| 遺伝子戦争―世界の食糧を脅かしているのは誰か | |
![]() | クリスティン ドウキンズ Kristin Dawkins 浜田 徹 新評論 2006-07 売り上げランキング : 136655 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
脚光を浴びるバイオテクノロジーの陰で、食糧をめぐる「安全保障」が脅かされている。遺伝子組み換え生物と環境汚染、巨大多国籍企業による世界の資源・農業支配、利益追求に走るバイオテクノロジー産業を野放しにする政治システムなど、地球存亡の危機につながりかねない現状を警告する。
| 中国の頭脳 清華大学と北京大学 | |
![]() | 紺野 大介 朝日新聞社 2006-07 売り上げランキング : 17000 おすすめ平均 ![]() アジアの最高学府Amazonで詳しく見る by G-Tools |
1995年に中国の国家教育委員会が発表した大学ランキングによると、ダントツの1位は清華大学で、2位が北京大学だった。胡錦濤国家主席をはじめ「清華マフィア」と呼ばれるOBを政官界に輩出する清華大学がナンバーワンであることは、中国では周知の事実だという。近代中国の歴史にも深くかかわってきた北京大学とともに、中国の知力を体現する2校の実態を紹介。科学技術立国を目指す中国を背後から支える超頭脳集団の底力を探る。
| シャーロック・ホームズとお食事を―ベイカー街クックブック | |
![]() | ジュリア・カールスン ローゼンブラット フレドリック・H. ソネンシュミット Julia Carlson Rosenblatt 東京堂出版 2006-07 売り上げランキング : 39681 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「我々は考えた。ホームズとワトソンが1895年に食べていたようなグルメ料理を味わえたなら、なんと素晴らしいだろうかと」。筋金入りのシャーロキアンにしてヴァッサー大学心理学教授のローゼンブラット女史と、シャーロック・ホームズに造詣の深い超一流シェフのソネンシュミット氏による「ベイカー街クックブック」。「強盗に捧げる冷製の夕食」「消防署で朝食を」などのコラムも楽しい。
| フラット化する世界(上) | |
![]() | トーマス・フリードマン 伏見 威蕃 日本経済新聞社 2006-05-25 売り上げランキング : 114 おすすめ平均 ![]() 読めば得する 今の日本ではまだ実感がないかもしれないが・・・。 知ってた? 地球って平らなんだってAmazonで詳しく見る by G-Tools |
| フラット化する世界(下) | |
![]() | トーマス・フリードマン 伏見 威蕃 日本経済新聞社 2006-05-25 売り上げランキング : 130 おすすめ平均 ![]() 今の子供達が大人になったらの話 残念ながら 社会のフラット化Amazonで詳しく見る by G-Tools |
想像以上に刺激的かつ重要な本だった。ビジネスマンだけでなく政治家や官僚、特に教育にかかわる人たちにとっては絶対に読むべき1冊だと思う。本書は中国やインドといった新興諸国台頭の話でもIT革命の話でもない。優れて21世紀の教育論なのである。
実はタイトルも凝っている。IT技術によって世界が平たくなったという意味だけでなく、コロンブスがインドと間違えた西インド諸島から帰国して「地球は丸かった」と言ったのに対し、著者は現在のインドから帰って「地球は平たかった」といったところにミソがある。
著者は「われわれが眠っているあいだに」、地球には恐るべき大変化が生じ、世界は小さくしかも平らになっていたことを実証していく。フラット化を促進した10の要因解説は因果関係が明確で説得力がある。特にインドのIT技術や技術者の台頭がY2K(2000年のコンピュータ問題)に端を発していたという主張。中国へのオフショアリング(業務の海外委託)を加速したのは、中国のWTO加盟にあったという説明は大いに納得できる。
こうしたグローバリゼーションを、著者は3段階に分ける。コロンブスの大航海から1800年頃までの旧世界と新世界間の貿易交流をグローバリゼーション1・0、それから2000年まで続く時代を2・0、そしてインターネットを中心に進展する現在のフラット化を3・0と区別する。本書のポイントは1・0を担ったのは国家、2・0を担ったのは多国籍企業であったのに対し、3・0の担い手はまさに個人、しかも「無敵の民」にあるとしている点である。
「無敵の民」とは「自分の仕事がアウトソーシング、デジタル化、オートメーション化されることがない人」のことである。しかし本書ではそうした個人をスーパーエリートではなく、広範なミドルクラスの存在に求めている。「国民が希望を抱く国には中流階級がいる」。著者はヤフー創業者ジェリー・ヤンの言葉を引用しながら、国の繁栄と生活水準の維持には強いミドルクラスが必要だと説く。そのためには教育、しかも想像力と起業家精神を涵養する新しいタイプの教育が必要だという。
確かにグーグルを使えば、誰でも多くの知識を手にすることができる。重要なのは知識そのものではなく、それをどのように活用できるかなのである。著者はアメリカの教育体制の欠陥を「恥ずかしい秘密」と批判するが、その批判に背筋が寒くなるのはむしろ僕たち日本人だ。間に合うのだろうか、と。【評者 米倉誠一郎(一橋大学イノベーション研究センター教授)】
| 社長の椅子が泣いている | |
![]() | 加藤 仁 講談社 2006-06-16 売り上げランキング : 49793 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
本書は、河島博の経営者としての生き様を掘り下げた迫真のノンフィクションである。河島は46歳でヤマハ(日本楽器製造)の社長に抜擢され、好業績をあげながら、任期なかばで突然、解任された。その後、請われてダイエーに移り、同社の「V革」に成果をあげたが、やがて経営の中枢からはずされ、子会社化した倒産企業・リッカーの再生にあたることになった。波乱万丈と言える河島の経営者人生は、輝かしい業績に彩られたものであるとともに、川上源一(ヤマハ)、中内功(ダイエー)という二人の「王様」に翻弄されたものでもあった。
本書では、売り上げを急伸させたヤマハのアメリカ現地法人での活躍、史上最高の収益を実現したヤマハ社長としての奮闘、1980年代の中葉にダイエーの経営をいったんは立て直した「V革」の指揮など、経営者・河島博に関する光のストーリーが十分に書き込まれている。
しかし、読み終わって、それよりも強く印象に残るのは、ヤマハにおける川上王朝の崩壊、ダイエーにおける中内王朝の崩壊という、河島の経営者人生の背景で進行した陰のストーリーである。
二つの王朝崩壊には、「王様」の成功体験の絶対化による過信、ジュニア(川上浩・中内潤)への無理な世襲がもたらした功労者の離散、コンサルタント会社(いずれの場合もマッキンゼー)への安易な依存とその失敗など、驚くほどの共通性がある。河島博は、両王朝の「ナンバー2」として辣腕をふるったのであり、彼の活躍が顕著であればあるほど、彼を切り捨てたり閑職に追いやったりした「王様」とそのジュニアの「愚かさ」は、際立つのである。
本書の迫真性を生み出しているのは、著者の加藤仁氏による徹底的なインタビューの実行である。けっして多くを語るタイプではない河島自身にではなく、彼とかかわった広範囲の人々にインタビューを重ねることによって、加藤氏はこの優れたノンフィクションを書き上げた。
本書の全編を貫くのは川上源一に対する舌鋒鋭い批判である。その批判が「告発」と呼びうるほどに過酷であるのは、「サラリーマンにとって会社は、たんに生活の糧を得るだけの場所でなく、そのひとをそのひとたらしめる場所でもある」(447ページ)と考える加藤氏にとって、川上源一による会社の私物化は、ヤマハで働いた多くの人々(そのなかには河島博も含まれる)の人格そのものを蹂躙した、許しがたい行為と映ったからであろう。【評者 橘川武郎(東京大学社会科学研究所教授)】
| 漱石と不愉快なロンドン | |
![]() | 出口 保夫 柏書房 2006-04 売り上げランキング : 107409 おすすめ平均 ![]() イギリス留学時代の漱石への愛情Amazonで詳しく見る by G-Tools |
著者インタビュー 出口保夫(早稲田大名誉教授・英文学)
愉快なこともあった漱石の英国留学を実証的に
――夏目漱石が英国留学に発った1900年8月から、1902年12月に帰国の途につくまでの2年間を、食べたものから列車の時刻まで、たんねんに調べて書かれた労作ですね。漱石の英国留学についてはたくさんの本がありますが、なぜこれを。
■日本の近代文学の研究で、たびたび漱石が取り上げられますが、抽象的なとらえ方がされている。でも、英国で生活してみて、現実はどうだったんだろうという疑問をいつも持っていたのです。漱石が出合った近代というものの内実をはっきり検証したい。単なる近代という抽象概念でなく、その根底にある実態をはっきりとらえ直さないといけない。そういうことが、日本ではあまりやられていないということです。
――例えば1901年1月26日、漱石は日記に「女皇ノ遺骸市内ヲ通過ス」と、4日前に亡くなったビクトリア女王について触れていますが、本書では、遺骸は2月1日まで別の場所にあり、漱石の思い違いではないかと書いておられます。日記や手紙を当時の状況と照合し、まるで容疑者の足取りを追うように事実を積み上げていかれるところは、読んでいてスリリングでした。推測を避け、証拠があるものを事実に即して書かれたのですね。
■ええ。頼りにしたのは当時の新聞や雑誌ですが、漱石がいたのは2年間だけですから、700日分くくればいいわけです。どれも非常に具体的に記録しているので、大変参考になりました。たとえば、漱石が「文学趣味ヲ有スルイングランド人家庭」という条件をつけて、「下宿求ム」の広告を出した『デイリー・テレグラフ』紙もみつけることができました。また、気分に関わりのあるのが天気や気温なので、それもていねいに調べました。
――漱石の英国留学は悲惨だったというような固定観念がありますね。
■ロンドンの漱石については殉教者のようなイメージで偶像化されているところがあります。本人もロンドン留学を、不愉快な2年であったと書いている。しかし、普通の目で漱石を人間として見なければ、と気をつけました。
――たとえば、ビスケットをかじって昼食の代わりにしたことが出てきますね。知人への葉書にもその記述があって、漱石の食生活のみじめさを象徴してきたわけですが、出口さんはこういう経験がひんぱんに繰り返されたわけではないとクギをさされている。
■漱石には、ときどき事物を誇張して書くところがあり、いっていることをそのまま信用できないのです。不愉快な2年であった、というけれど、読んでもらえば、不愉快なことばかりでなかったことがわかるはずです。例えば、下宿の若い女性とピンポンをしたり、気分転換のために自転車乗りを習ってかなり乗りこなせるようになったり。また、留学の最後のころに、日本の絵画にも関心を持っていた親日家の弁護士、ヘンリー・ディクスンという人物の招待で、秋のスコットランドのハイランドを訪ねています。
| 「辺境」の抵抗―核廃棄物とアメリカ先住民の社会運動 | |
![]() | 鎌田 遵 御茶の水書房 2006-06 売り上げランキング : 124120 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「辺境」の地に追いやられてきたアメリカ先住民と、その「辺境」の地での核廃棄物処理場建設をめぐる闘いを描く。「核ユートピア」を目指し、地域経済復興の起爆剤にしようと積極的誘致を進める部族もあれば、一方で政府の押しつけと環境破壊に抵抗する部族もある。様々な先住民たちの社会運動をルポしながら、現代アメリカの側面を浮き彫りにする。
| 「強い会社」を作る―ホンダ連邦共和国の秘密 | |
![]() | 赤井 邦彦 文藝春秋 2006-06 売り上げランキング : 65170 おすすめ平均 ![]() 「秘密」までには至らない 金返せ! ホンダマインドなるものAmazonで詳しく見る by G-Tools |
ロボット、ジェットエンジン、燃料電池、バイオテクノロジー、バイク、自動車――ホンダが開発、または生産しているものである。トヨタ自動車に次ぐ規模を持ち、業績も好調なホンダだが、かつては三菱自動車との合併を取り沙汰されるほど経営不振に陥ったこともあった。なぜ「強い会社」になったのか。ホンダの秘密を探る。
| 極北の狩人 | |
![]() | 椎名 誠 講談社 2006-06-21 売り上げランキング : 3887 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
アラスカで犬ゾリをひき、カナダでイッカククジラに挑み、ロシアでアザラシを狩る……。北極海を囲む三つの極北の地に暮らす狩猟民族を、椎名誠が訪ねる。遥かなる「モンゴロイドの軌跡」を追う旅の果てに、極北の地で椎名が見たものは、国は違っても、人々の文化や価値観、生き方に共通する「遠い記憶」だった。
| ビール最終戦争 | |
![]() | 永井 隆 日本経済新聞社 2006-07 売り上げランキング : 1685 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
第3のビールに缶チューハイ、焼酎と競争の舞台が広がるなかで熾烈なシェア争いを演じるビールメーカー。メーカー間競争は団体戦であり、勝ったチームの実力以上に負けたチームの敵失が勝敗を分けるという。豊富な現場取材で、ビールメーカーの闘いを描く。
ヤフー・ジャパン完全活用本
創藝舎
ヤフー・ジャパンの80以上のサービスを徹底的に使いこなすための1冊。検索結果を効率よく絞り込む方法や、閉鎖されたサイトを見る方法などの基本的な使い方から、TOEICの英語ヒヤリングに挑戦するなどの意外な利用法、ウラ技テクニックを解説する。
| 商談の中国語 貿易と投資 | |
![]() | 杉田 欣ニ アスク 2006-06-16 売り上げランキング : 72517 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
電話アポイントの取り方からOEM生産の委託、企業のM&Aなどまで、対中貿易・投資に役立つ中国語会話。丸紅の中国チーム長が現場での経験をもとに分かりやすく解説する。例文の内容を吹き込んだ音声CD付き。











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