メイン > 週刊エコノミスト書評『ブックレビュー』(2005年) > 2005年6月7日~6月28日
| 伊勢丹な人々 | |
![]() | 川島 蓉子 日本経済新聞社 2005-05-14 売り上げランキング : 3,765 おすすめ平均 ![]() 「それでどうなった?」が皆無! 伊勢丹に愛をこめて 内容が浅いようなAmazonで詳しく見る by G-Tools |
■著者インタビュー 川島蓉子(伊藤忠ファッションシステム・トレンドPR室長)
―― 川島さんはファッションという視点から、消費者や市場の動向を分析してこられたわけですが、本書で、伊勢丹の強さの秘密はバイヤーにあると言っています。
■ 百貨店の目玉になるオリジナリティーの高い売り場を作るには、仕入れから売り場の構成まで、重要な部分を担当するバイヤーの力量が問われます。他の百貨店がブランドの場所貸しに生き残りを賭けるなか、伊勢丹は「解放区」「リ・スタイル」「メンズ館」「BPQC」という、独自に複数のブランドを選んで作り上げる自主編集の売り場を成功させ、「ファッションの伊勢丹」の地位を確立しました。取材などで伊勢丹のバイヤーに会い、「なぜ彼らはこんなに元気なのだろう」と不思議に思ったのが、この本のきっかけでした。
――「解放区」をはじめ新しい売り場を立ち上げる中心となったのが、藤巻幸夫(のちに福助社長に就任、現在はIYG生活デザイン研究所社長)という強烈なエネルギーの持ち主だった。
■ 彼と初めて会ったのは、彼がバーニーズ・ニューヨークのバイヤーを辞めて伊勢丹に戻り、百貨店の最重要フロアとされる1階で、「絶対に何かをやってやる」と考えていた時期でした。彼は無名の若者ブランド「A.P.C.」を1階に引っ張ってきて驚きを与えた後、「解放区」を立ち上げました。
失敗を恐れず挑戦する風土が伊勢丹にはあったのです。メンズ館を立ち上げた大西洋さんや、「リ・スタイル」売り場で育った中北晋史さん、三根弘毅さんなど、「いい売り場を作りたい」という熱い思いを持つバイヤーが、伊勢丹の土壌で育った。
――「解放区」は、資金力に欠ける若手デザイナーのために、あえて在庫リスクを抱えて完全買い取りをし、若手を育てる環境を作ったそうですね。
■ バブル崩壊後、ファッション業界にデザイナーを育てる余裕が失われてきていました。伊勢丹自身も、思い切った企画を打ち上げないと、なかなか集客が図れない時代で、新しい消費志向を持つ団塊ジュニアを取り込む必要もありました。そこにこの企画が通るチャンスがあったのです。
―― 休日もアイデアを求めて街を歩き回る女性バイヤーの話が出てきます。
■ 伊勢丹のバイヤーはよく勉強しています。例えば年間400人もの海外出張。会社が費用を出してくれなければ自腹でパリコレを見に行く。広い視野を持ち、一流のものを見る。その結果、取引先のアパレルと知識・経験で対等になり、効果的な提案ができるのです。
―― ファッション業界には、もっと熱意と遊び心が必要だと書いています。
■「何をやるか分からない、自由な発想を持った奴」を、どれだけ企業内に抱えられるかが重要なのです。伊勢丹には、成功する可能性が55%あると思ったら、自分で判断し、勇気を持って実行せよという「55%攻撃論」があります。「私の企画は絶対成功する」という強い思い入れがあれば、あとは熱意とプレゼンテーション次第なのです。
| ケースブック日本のスタートアップ企業 | |
![]() | 米倉 誠一郎 有斐閣 2005-05 売り上げランキング : 38,714 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ベンチャー・キャピタルなどの、スタートアップ企業(新規開業企業)を支援する制度が、日本ではまだ十分でない時代にも、新たな産業を切り開いていった企業があった。ソニーやホンダなど戦後を代表する大企業から、ドン・キホーテ、スクウェアといった80年代に誕生した新企業まで、11の企業の創業期をケーススタディーし、事業創造のダイナミズムを検証する。
| 裁かれる三菱自動車 | |
![]() | 小林 秀之 日本評論社 2005-06 売り上げランキング : 16,915 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
走行中の大型車からはずれた巨大なタイヤが、2人の幼い子を連れて歩いていた母親の命を奪った――。「不運な事故」から、やがて空前の欠陥車事件へと発展していった三菱自動車事件の、民事裁判の展開を克明にたどる。クレーム隠しや欠陥隠しが、いかに企業イメージの失墜を招いたか。企業の責任とは何かを問う。
| スミソニアン現代の航空戦 | |
![]() | ロン・ノルディーン 高橋 赳彦 原書房 2005-04 売り上げランキング : 47,865 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
現代の戦争とは、まさに航空戦そのものと言ってよいだろう。ベトナム戦争、フォークランド紛争、イラン・イラク戦争、湾岸戦争、ユーゴスラビア内戦など、過去40年の間に起こった主要な戦争・紛争における航空戦の役割が詳述される。そこで何が起こっていたのか。作戦から兵器の詳細まで、戦争の現実が冷静な視線で分析される。
| はじめての海外暮らしをさっさとやろう | |
![]() | 中西 佐緒莉 自由国民社 2005-06 売り上げランキング : 15,453 おすすめ平均 ![]() 私も決断するときそろそろ来るかもしんない……Amazonで詳しく見る by G-Tools |
いまや海外暮らしも、さっさと決めて、さっさと実行する時代。マネープランから、医療・保険、住居の問題、エリアレッスンなど、海外暮らしの達人になるための「はじめの一歩」を、年金海外生活ラボを主宰する著者が自らの体験を交えて伝授する。
| 団塊が電車を降りる日―トランジットライフマーケティング白書 | |
![]() | 辻中 俊樹 東急エージェンシー 2005-05 売り上げランキング : 29,094 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
高度成長時代を黙々と働き、妻と2~3人の子供という「家族」を営んできた団塊の世代が定年を迎える。しかしそれは同時に、自分自身が主人公の新たな人生への乗り換え駅でもある。ローカル線の旅を楽しむような、トランジットライフの指標がここにある。
| 公教育の未来 | |
![]() | 藤原 和博 ベネッセコーポレーション 2005-05 売り上げランキング : 17,650 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
リクルートの名プロデューサーから転身、初の民間人校長として話題をまいた著者が、東京都杉並区立和田中学校での体験を踏まえ、日本の教育の現状と未来を語る。無力化した学校に再び力を与える処方箋は、「学校の中に再び世の中のダイナミズムを取り込むこと」だと結論づけ、地域住民と学校をダイナミックに結びつける[よのなか]科の試みを紹介する。
| 現代ベトナム入門―ドイモイが国を変えた | |
![]() | 松尾 康憲 日中出版 2005-05 売り上げランキング : 43,813 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ベトナム戦争終結から30年、1986年のドイモイ(刷新)宣言から20年のベトナムを、昨年末まで現地に駐在したジャーナリストが報告。米国、ロシア、中国、そして日本との関係、歴史的背景から、市場化する経済と人々の暮らし、SARS騒動、果てはベトナム僧体験入門まで、体当たりで描く「ベトナム丸かじり編」。
| 原爆を投下するまで日本を降伏させるな――トルーマンとバーンズの陰謀 | |
![]() | 鳥居 民 草思社 2005-06-01 売り上げランキング : 2,745 おすすめ平均 ![]() やはり原爆投下は壮大な実験だった...? アメリカでこの本の英訳がでることを期待する。 これはフィクション?ノンフィクション??Amazonで詳しく見る by G-Tools |
戦争終結に向け「やむを得ず投下」したのではなく、原爆の威力を実証するまで日本を降伏させまいとした――それがトルーマン大統領と最側近のバーンズ国務長官の真意だった。衝撃的な内容を、原爆投下に至る四つの日付を手がかりに読み解く。ポツダム宣言には、日本がこれを無視するよう巧妙な仕掛けがなされていたという。
| ニッポンテクノロジー―NEDOプロジェクト開拓者たちの100の挑戦 | |
![]() | 赤池 学 丸善 2005-06 売り上げランキング : 80,301 おすすめ平均 ![]() 研究者のみならず経営者にも 絶対お勧め!Amazonで詳しく見る by G-Tools |
多機能携帯電話、ヒューマノイドロボットなど、日本の産業技術は輝かしい成果を生みだしてきたが、この先、日本は何を、どこを目指すべきなのか。新エネルギー・産業技術総合開発機構の25年にわたるプロジェクト事例から日本型テクノロジーの未来を探る。
| これなら勝てる!株式投資の本―デイトレ、週トレ、中・長期投資 | |
![]() | 野尻 美江子 成美堂出版 2005-05 売り上げランキング : 137,787 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ネット証券の普及でぐんと身近になった株式投資。自分のお金にしっかり働いてもらうには、どうすればいいのか。株式投資の魅力からデイトレ・週トレ入門編、中長期投資、自動売買、おすすめ投資作戦など、初めてでもよく分かる「技とコツ」を伝授する。
| 精神科医の綴る幸福論―「あるがままの自分」から「あるべき自分」へ | |
![]() | 大原 健士郎 亜紀書房 2005-05 売り上げランキング : 54,287 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
病人や老人に幸せはないのか。森田療法の権威であり自殺研究の第一人者である著者が、長年の臨床経験、自らの大病などを交えながら、幸福とは何かを語る。どんなに絶望した人でも、幸せになることはできるのだという。
| 恩師の条件―あなたは「恩師」と呼ばれる自信がありますか? | |
![]() | 黒岩 祐治 リヨン社 2005-04 売り上げランキング : 22,280 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| 能力を高める 受験勉強の技術 | |
![]() | 和田 秀樹 講談社 2005-03-17 売り上げランキング : 25,133 おすすめ平均 ![]() 受験勉強を支持する根拠 「受験地獄」の神話を問い直すAmazonで詳しく見る by G-Tools |
私は実は、灘高校といういわゆる進学名門校を卒業している。私が卒業したころは、東大合格者数全国トップの学校だったのだが、日本の受験生の勉強のしすぎが声高に批判されていた当時は、随分、風当たりが強かった。詰め込み型の受験勉強ばかりしていると思考力が育たないだの、性格が悪くなるだのと受験勉強が悪者視され、その勝者である灘高生や東大生も肩身が狭かった。
現在の学力低下がこの手の価値観にも責任があることや、受験勉強が性格形成や思考力に悪影響を与えるというバイアスが嘘だと書くべく、3月に『受験勉強の技術』(講談社現代新書、735円)という本を出した(タイトルは受験技術書のようだが本来書きたかったのはそういう問題だ)のだが、その後、当時の灘高の教育が受験対応的なものではなく、むしろ自由で創造的な旧制中学の香りのする学校だったというドキュメントが出た。フジテレビ「報道2001」キャスターの黒岩祐治さんによる『恩師の条件』(リヨン社、1575円)という本だ。確かに私の在校時も、旧制中学時代からの教師も多く残り、6年一貫教育ともあいまって、そんな雰囲気は残っていた。
実は、黒岩氏は私の灘高の5年先輩に当たる。そして彼が人生で最も影響を受け、今でも交流を続けている橋本武先生(私が在校時に灘高の教頭を務めておられた)にスポットを当て、恩師の条件を考察している。故遠藤周作氏の恩師でもあるという伝説の教師だった人だ。
灘校では、中学高校の6年間を同じ教師がずっと数学も英語も国語も教えるので、私自身は、先生のお話を聞くことはあっても、先生の授業を受けたことはないのだが、確かに、まさにユニークというしかない。教科書を使わずに、岩波文庫の『銀の匙』という本を読ませ、見出しごとのタイトルを生徒につけさせる。本の中に、今では見なくなった駄菓子の話が出てくると、その駄菓子を用意して生徒みんなで食べさせる。
私自身、国語嫌いでいまだに小説はろくに読まない朴念仁だが、教師に恵まれていれば違っていたかもしれない。カリキュラムうんぬんより、教師をどう育てるかのほうが、学力向上のために重要かもしれないことを教えてくれる本だ。 【評者 和田英樹(精神科医)】
| 時代に先駆けた19人 外食産業を創った人びと | |
![]() | 「外食産業を創った人びと」編集委員会 商業界 2005-05-14 売り上げランキング : 14,658 おすすめ平均 ![]() 若い人々を鼓舞激励する書Amazonで詳しく見る by G-Tools |
外食をファッションにした男、日本マクドナルドの藤田田をはじめ、ファミリーレストランの仕掛け人、すかいらーくの茅野亮ら4兄弟、ロイヤルの江頭匡一など、日本の外食産業をリードしてきた19人の足跡をたどる。
| 不機嫌なメアリー・ポピンズ―イギリス小説と映画から読む「階級」 | |
![]() | 新井 潤美 平凡社 2005-05 売り上げランキング : 2,865 おすすめ平均 ![]() 階級を超えて iconoclastAmazonで詳しく見る by G-Tools |
映画の陽気なイメージと違って、原作のメアリー・ポピンズはなぜ無愛想で不機嫌なのか。スノッブで意地悪で階級にとらわれたイギリス人――小説や映画の中で、独特の毒をもって揶揄されるイギリスの階級意識とは。イギリス社会と人々の心理の奥底を読む。
| 日本経済にいま何が起きているのか | |
![]() | 岩田 規久男 東洋経済新報社 2005-05-27 売り上げランキング : 7,360 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
景気は本当に良くなっているのか。人々の間に定着してしまったデフレ予想を払拭しなければ、構造改革も功を奏さないと著者は語る。日本経済の現状をデフレというキーワードで読み解き、長期的に2~3%のインフレ目標政策を採用すべきだと提言する。
| お金の現実 | |
![]() | 岡本 吏郎 ダイヤモンド社 2005-04-15 売り上げランキング : 1,331 おすすめ平均 ![]() 当たり前ではあっても、こういう考え方は好き 禅的実用書 真理はいつもシンプルなのだAmazonで詳しく見る by G-Tools |
私たちは奇跡的に完成した貨幣システムの上で生きていると著者は言う。流通しなければ誰も豊かにならないし、しっかり貯めなければ自分の人生の質が高まることはない。この不思議なお金の本質を見つめ直し、現実的なお金とのつき合い方を探る。与えられた情報や与えられた価値観ではなく、自分で考えることが肝要だという。
| 図解P2Pビジネス | |
![]() | 徳力 基彦 翔泳社 2005-05-24 売り上げランキング : 11,753 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ナップスターなどに代表されるファイル交換ソフトはかつて社会から問題視されていたが、その基盤技術であるP2Pは現在、世界で数千万人が利用するIP電話サービス「スカイプ」に応用されている。ネットの世界で新たなビジネスの可能性を秘めるP2Pについて、その正体とビジネスモデルなどを分かりやすく解説。
| 孤将 | |
![]() | 金 薫 新潮社 2005-05 売り上げランキング : 1,831 おすすめ平均 ![]() 蓮池さんの自立への意志と勇気に敬意Amazonで詳しく見る by G-Tools |
豊臣秀吉の朝鮮出兵、文禄・慶長の役で日本軍をうち破った伝説の英雄、李舜臣の壮絶な死までを描く。前には日本軍、背後には、不正がはびこり無気力な朝鮮王朝。ついには君主からも命を狙われるという不条理のなかで、孤独な戦いをしいられた李将軍の内面の苦悩が浮き彫りにされる。韓国のベストセラー小説を、北朝鮮拉致被害者の蓮池薫さんが訳した話題の書。
| 考える脳 考えるコンピューター | |
![]() | ジェフ・ホーキンス サンドラ・ブレイクスリー 伊藤 文英 ランダムハウス講談社 2005-03-24 売り上げランキング : 2,352 おすすめ平均 ![]() 脳は計算ではなく、記憶によって処理している 『ターミネーター』はホントに起きるか? 言われてみればもっともAmazonで詳しく見る by G-Tools |
コンピューターが発明されるや直ちに、知能を持った機械を作ろうと人々は励んできた。人工知能(AI)の開発であり、近年ではニューラルネットワークの研究である。そのために、知能という言葉で表現された、意識、感情、創造性、想像力などが脳のどこに由来し、どのような機構で発現するのかも並行して調べられてきた。脳の仕組みを模倣しようというものである。
本書の著者は、その路線は正しいけれど、これまでのコンピューターを延長するだけでは知能を持つ機械は作ることができないと言う。いくら記憶容量を増やしニューラルネットを真似ても、デジタル式に細分化した情報を積み上げるだけでは、意識が発生する余地がないと断言するのだ。チェスの試合でコンピューターのディープ・ブルーは、世界チャンピオンを破ったが、直感によって勝負を理解していたわけでも、過去の手を考慮していたわけでもない。ただ、ものすごい速さで可能な手を計算したにすぎないからだ。
そこで著者は、脳の新皮質で行われている情報処理の方法を学ぶべきだと強調する。六つの階層構造をとる新皮質の働きこそが知能の根源を探る鍵と考えるのだ。それを簡単に要約すると、刺激を信号として受け取る新皮質の最下層の部分から上の階層へと情報が流れる過程で徐々に整理され、最上層に達すると記憶と照合して情報の意味を判別し、今度は最下層に向かって刺激への反応命令が下される、ということになる。
この新皮質で行われている情報の流れを、仮説を交えて(仮説ばかり?)徹底的に論じたのが本書の圧巻である。そして、この上下方向の情報の流れと過去の記憶との照合・調節が意識を形作るキーポイントであると主張する。著者は、そのプロセスを模倣できれば、知能を持つ機械を作ることができると楽観的である。
私には、彼の新皮質に関する仮説がどこまで妥当なのか判断できないが、魅力ある説のように思われた。意識の根源を新皮質の構造と情報の流れに結びつける単純さが気に入ったからだ(物理学者は単純さを好む)。しかし、その働きを半導体でいかに再現できるかについては何も書かれていない。そこに最大の難関がありそうである。
脳のことを考えると頭がくすぐったくなるのだが、興味のある説に出会って、少し癒やされた気がする。【評者 池内了(早稲田大学国際教養学部教授)】
| 虚構の景気回復 - 「統合と分断」の時代をいかに生きるか | |
![]() | 水野 和夫 中央公論新社 2005-05-11 売り上げランキング : 5,110 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
いまわれわれは、どのような時代を生きているのだろうか。景気循環や成長率といった経済指標を眺め、金融財政政策等々をはじめとする小手先の技術に景気回復策への解を求めるといったことでは、もはや安寧は得られない。これらの景気診断や処方箋は虚構にすぎないというのが、本書のタイトルに込めた著者の含意だろう。多くの者が展望を見失いつつある今日、歴史的視点を踏まえた図太い思想が求められているのである。
本著の魅力は、民間のエコノミストである著者が、歴史の検証に立ち戻って、こういった難問に答えようとするところにある。米経常収支赤字が膨張しても、対米投資によってファイナンスされるという米ドルのブラックホール化には限界がある。アメリカの対外資産を時価評価することによる含み益によって、対外純債務比率の悪化を相殺するには、かなりの程度の米ドル下落が必要だという。
著者によれば、7000億ドル台半ばの経常赤字は米ドルが11%強下落することで相殺できるが、そうした行為は、米ドルへの不信感を醸成する。なぜならば、たとえば、巨大な経常収支黒字が続く日本では、在外資産が累積するにもかかわらず、その対外純債権が米ドル安によって雲散霧消するからである。
そのようなアメリカ経済や米ドルの退潮は、中世から近世への歴史的大転換期に似ている。まさに時代は「ポスト近代」に向かって動き出した、と著者は見る。さらに、経済覇権国のシステム機能不全に、歴史的超低金利と物価下落を重ねる。そこに、マネーサプライを操作してインフレやデフレを操作する小手先手法の限界を著者は見る。
数々のアメリカ帝国論が示すように、国際通貨・米ドルは巨大なパワーを持つ。だが、得てして絶頂は転落と紙一重である。時代は、そうしたシステム大転換期にあることが、ちょうど中世から近世への歴史ドラマとの対比で開陳される。その構想たるや雄大である。
ただ、注文を付ければ、著者の言う、ポスト近代経済圏の積極的イメージが弱い。中世から近世への推移と対比しながら、どういった展望が開かれるのかは漠としたままである。アジア共同体構想への賛意にしても、この4月に起きた中国の反日暴動を踏まえても、なおそうした認識は変わっていないのかどうか、著者のコメントを聞いてみたい気がする。
とはいえ、ビジネスと歴史を興味深く融合させた好著であることは間違いない。 【評者 水野和夫著(三菱証券理事・リサーチ本部チーフエコノミスト)】
| ニート脱出―不安なままでもまずやれる事とは | |
![]() | 和田 秀樹 扶桑社 2005-04 売り上げランキング : 23,683 おすすめ平均 ![]() この本ではニートを脱出できない 自然でまともで常識的。でも…。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
今や52万人にも達すると言われるニート。しかし「学べない、働けない、訓練も受けられない」ニートの状況を脱出したいと望んでいるのはニート自身であるという。精神科医である著者が、心の視点から脱出法を語る。
| 2分以内で仕事は決断しなさい―スピード重視でデキる人になる! | |
![]() | 吉越 浩一郎 かんき出版 2005-04 売り上げランキング : 487 おすすめ平均 ![]() 主張が明確で説得力があります マネジメントの理想形 ◆「早朝会議」の主に学ぶAmazonで詳しく見る by G-Tools |
川があるならとにかく飛び込め、立ち止まって橋を探しているようでは仕事としては遅すぎる――18年、増収・増益を続けるトリンプの秘密は、スピード経営、一つの議題に2分以上かけない早朝会議にあった。同社社長で早朝会議の発案者である著者が語る。
| 地域からの経済再生―産業集積・イノベーション・雇用創出 | |
![]() | 橘川 武郎 有斐閣 2005-04 売り上げランキング : 74,573 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
日本経済の真の再生は、産業競争力の強化と雇用創出にあるとして、「地域」と「雇用」に重点を置いて論ずる。地域の産業集積、イノベーション、雇用創出の現状を多彩なケーススタディから分析し、方策を探る。中小企業ネットワークの日中英比較なども。
| 考える脳 考えるコンピューター | |
![]() | ジェフ・ホーキンス サンドラ・ブレイクスリー 伊藤 文英 ランダムハウス講談社 2005-03-24 売り上げランキング : 2,352 おすすめ平均 ![]() 脳は計算ではなく、記憶によって処理している 『ターミネーター』はホントに起きるか? 言われてみればもっともAmazonで詳しく見る by G-Tools |
人間のように考えるコンピュータは実現できるのか。パーム社の生みの親であるジェフ・ホーキンスが、人間の脳の働きとコンピュータについて語る。従来の人工知能、知識工学の延長では「考えるコンピューター」は実現できず、「考える」とは何か、大脳皮質上で何が起こっているのかをつきとめることが必要だと説く。
| イギリスではなぜ散歩が楽しいのか? | |
![]() | 渡辺 幸一 河出書房新社 2005-05-17 売り上げランキング : 1,009 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
高層ホテルやオフィスビル中心の再開発に反対し、住民主導の再開発に成功したロンドンのコインストリートの住民運動をはじめ、敗者復活できる教育制度や、人にやさしい社会のネットワーク、多様な人生観など、イギリス社会の諸相が語られる。著者はロンドン在住14年の金融マン。豊かなのに、どこか窮屈で生きにくい日本の現状を見つめ直すヒントが見えてくる。
| 57歳のセカンドハローワーク | |
![]() | 布施 克彦 中経出版 2005-05-17 売り上げランキング : 46,429 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
2年前の『54歳引退論』で注目を浴びた著者の〓退職もの〓第3弾。団塊の世代の大量定年退職が始まる「2007年問題」を控え、この世代の一人である著者自身の体験を基に、「700万団塊世代のガイドブック」と題して定年後の人生選択をやさしく指南。タイトルは村上龍の『13歳のハローワーク』をもじったもの。
| 榊原 英資 インド巨大市場を読みとく | |
![]() | 榊原 英資 吉越 哲雄 東洋経済新報社 2005-05-20 売り上げランキング : 4,171 おすすめ平均 ![]() 多面的なインド理解に役立つ本 インド文化論 良質なインドビジネスのエントリー書籍Amazonで詳しく見る by G-Tools |
香港大学主催の「中印経済円卓会議」に出席したことがある。議論好きで話が長いので有名なインド人と中国人。おそるおそる会場に足を運ぶと、予想は良い意味で裏切られた。インド側が実際的で建設的な議論を展開したからである。インド側が経済発展の遅れを率直に認め、中国に対して経済成長の秘訣を伝授してほしいと教えを請う姿が印象的であった。中国側も傲慢になることなく、真摯にこれに答えようとしていた。
1970年代までは、両国の経済発展段階はほぼ同じだったが、過去四半世紀の間に大差がついた。しかし、21世紀に入ってからインドはIT先進国として脚光を浴び、成長率も高まっている。2050年にはGDP規模で、中国、米国に次ぐという予想もある。
本書の目新しい点は、インド市場を各論的に具体的に評価しているところにある。第2章「ITだけではないインド企業の実力」では、製薬や医療サービスでも世界的な競争力をもっていることが示される。自動車でもアジアで第4位の生産台数を誇る。第3章「インドに急接近するアジアの国々」では、インド市場の魅力が、周辺の国の経済政策に影響を与え、FTA(自由貿易協定)に走る姿が描かれる。第4章「熾烈な競争を勝ち抜く韓国企業」では、インドの自動車市場を席巻する韓国ヒュンダイの戦略と成功要因が紹介される。第5章「二〇二〇年のインド」では、今後の成長の起爆剤は製造業かサービス業かという重要な問題提起がなされる。言い換えれば、製造業中心で輸出主導の中国型発展経路とは別の成長パターンが可能かどうかという問題である。インドの産業構造の特徴は、工業部門のシェアが十分に高くならないうちに、経済のサービス化が進んでいることである。本書は、ITES(ITによって強化されたサービス業)こそがインドの比較優位の源泉であり、従来の開発経済学の常識を超えた発展パターンが可能であると主張する。
本書は、これまでITに偏る傾向があったインド経済論の視野を広げてくれる。文明史の観点からの考察や現在のインド社会を描写した柔らかいコラムも楽しい。ただ欲を言えば、日本企業のパフォーマンスがもう少し書き込んであれば、インド市場のイメージがより明確になったのではないだろうか。本書に触発された読者は、英『エコノミスト』誌3月5日号のインド特集などで勉強を深めてはいかがだろう。インド人記者の自国をみる冷徹な視線が参考になる。【評者 高橋克秀(神戸大学大学院経済学研究科助教授)】


「それでどうなった?」が皆無!
伊勢丹に愛をこめて
内容が浅いような








やはり原爆投下は壮大な実験だった...?














この本ではニートを脱出できない




