メイン > 週刊エコノミスト書評『ブックレビュー』(2005年) > 2005年6月28日~7月19日
| 会社はだれのものか | |
![]() | 岩井 克人 平凡社 2005-06-25 売り上げランキング : 381 おすすめ平均 ![]() 真面目な質の高い本 資本の質の変化!? 前作のインパクトに比べるといまいち。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
『会社はこれからどうなるのか』(2003年、平凡社)で大当たりした著者が、ライブドアとフジテレビのニッポン放送買収合戦に触発されて出版したのがこの本。
会社はヒトであると同時にモノであるというのが著者の特異な主張だが、会社買収時代になると、このことがより鮮明になるという。なにやらギリシャの哲学者が町の商人の争いごとにご託宣を与えるような話だが、果たしてこの哲学でライブドア騒動をうまく説明できるのか。
著者によると、産業資本主義の時代にはおカネの力が強いが、ポスト産業資本主義ではおカネの値打ちが下がり、代わってヒトの値打ちが上がるという。
かつてレーニンは共産主義になったら金で公衆便所を作ると言ったが、ポスト産業資本主義はそういう時代なのか、それとも古代の共同体社会に帰るとでも言うのだろうか。ポスト産業資本主義というのはビル・ゲイツや孫正義、そして堀江貴文の時代だと著者は言うのだが、「カネですべてが買える」という堀江貴文はどうなるのだろうか。
この本の後半には、小林陽太郎、原丈人、糸井重里の3氏と著者との対談が載っているが、その対談の中で原氏の「(アメリカ留学組)の学者センセイなどが、コーポレート・ガバナンスだの商法改正だの、米国流のスタンダードを強制輸入して混乱に輪をかける」と批判している言葉が胸に響く。ライブドア騒動に触発されて「会社の買収」という視点から前著の論点を整理したと著者は言うのだが、会社買収について著者がどう考えているのか、もうひとつ見えてこない。
産業資本主義時代はカネ万能だから会社買収が盛んだったが、ポスト産業資本主義の時代にはカネの値打ちがなくなるので会社の買収などなくなるとでも言うのだろうか。終身雇用、年功序列賃金、会社別組合という日本的経営はカネよりもヒトを大事にする経営で、ポスト産業資本主義を先取りしたものだというのだが、はたして日本の会社がヒトを大事にしてきたといえるのか、これは『虚妄の成果主義』(高橋伸夫著)と同じ復古調の議論ではないか。
今度の本では会社の社会的責任についても触れているが、会社は利益の追求を超えた何かを追求すべきであるというのは、まるで修身の教科書のような話で、株式会社の本質からは出てこない話ではないか。ともあれ、いろいろ考えさせてくれる本ではある。【評者 奥村 宏(株式会社研究家)】
| 靖国問題 | |
![]() | 高橋 哲哉 筑摩書房 2005-04 売り上げランキング : 157 おすすめ平均 ![]() 靖国問題の近代性を明確化 ロジカルな靖国論 私達は靖国神社について知らないで討論しているのでは?Amazonで詳しく見る by G-Tools |
靖国神社が話題になっているが、それが何か、多くの人が知らない。本書は、靖国神社とは、戦没者を追悼する施設ではなく、明治になって戦死者を顕彰するために作られた施設だと、まず靖国神社の本質を明らかにする。
これで、靖国神社に祀られた死者は追悼されるべきではなく顕彰されるべき死者なのだから、A級戦犯は罪びとであってはならないという靖国神社の理屈が分かる。靖国神社としては首尾一貫しているわけだ。
では、なぜ戦死者を顕彰する施設が必要だったのか。古代ギリシャのポリスでは戦争は市民の義務であった。義務を履行し、死んだ市民には国家として栄誉を与えなければならない。しかし中世になると、戦争は国王と家臣と傭兵たちがするもので、国民がするものではなくなった。だが、近代国民国家が成立し、徴兵制が敷かれたとき、戦死者には再び国家として栄誉を与えることになった。靖国神社とは、そのような近代国民国家の装置に伝統の衣を着せて作られたものだ。
古代民主制国家アテナイの政治家ペリクレスは、戦死者の埋葬演説で述べる。「われらの父は古き領土に加えて、営々辛苦して今日の支配圏を獲得し、これを今日のわれらに残していった」と。ペリクレスは自由と民主政治のための戦死者をたたえるのだが、靖国が戦死者を顕彰することとの違いは小さいように見える。父祖の命であがなった領土は守らなければならないと靖国は言う。他のアジア諸国が近代国民国家を作れなかったときに、日本は作れた。それゆえに、日清日露の戦争で勝利し、植民地を得た。それがなぜ悪いのかというのが靖国の思想なのであろう。
本書を読むと、明治国家とは維新の元勲たちが伝統の衣を被せて作った近代国民国家なのだということがよく分かる。神道が宗教ではなく、近代国家の信教の自由の原理となんら背馳しないという明治政府の説明は、唖然とする見事さである。
これに比べると、伝統主義者の説明のなんと説得力のないことか。説得力があるのは、心にもなく敵味方の死者を弔うという偽善を行う必要がどこにあるかという居直りだけだ。
本書は、近代国民国家の思想を否定している。しかし、国家間には、近代国民国家の思想を認めざるを得ないという状況があるのではないか。康煕・乾隆帝の最大版図が正当な領土なら、日清日露で得たものを守ってなぜ悪いのかという主張に、近代国民国家否定の思想は対抗できるだろうか。【評者 原田 泰(エコノミスト)】
| 仕事も暮らしも3で割るイギリスの習慣 | |
![]() | 井形 慶子 新潮社 2005-05-17 売り上げランキング : 2,041 おすすめ平均 ![]() 今までの中で1番 買ってきました! 自分を3に当てはめる楽しさAmazonで詳しく見る by G-Tools |
■著者インタビュー 井形慶子(『ミスター・パートナー』誌編集長・作家)
―― 自分の生き方を「仕事」「生活」「個人」に分ける発想はどこから。
■英国に行くと、若者はそれほどでもないのに、中高年の女性が魅力的なんですね。おしゃれだし、生き生きしている。なぜかと考えたときに、生活にバラエティーがあるからだと気づいた。「仕事」をする自分、「生活」をする自分、「個人」つまり女性であることという三つの「自分」を上手に使い分けることでバランスをとっている。
―― 日本人は仕事の割合が大きすぎるというんですね。
■ ええ。30代、40代と接していると、彼らは「短命」なんですね。短距離は得意でも長期的に情熱を持ち続けられる人は少ない。それは仕事以外の生き方を知らないからじゃないかと思うのです。先日も大手企業の退職予定者を集めた会合に行ったんですが、ある男性は「3年カレンダーを買ったが、この先は何を埋めたらいいかわからない」と戸惑っている。
―― 生活を楽しんだり、女や男として生きることに精力を注がない理由に、仕事を使っている?
■ そう、仕事のほうが楽なんですよ。日本の社会では社交があまりないので、語り合う楽しみが少ない。いま問題なのは、日本人が精神的な安定感がもてないこと。どんなに貯蓄しても不安が消えない。でも本当の安定感は自分の中から作らないといけない。だから三つに分けて、自分の中のリスクを分散させることだと思ったんです。
―― 日本全体が安定感を失っているようですが。
■英国では日本人ほどお金がなくても、貧乏なりに生活を楽しんでいる。その姿を現実に見てきた。だから私は月収10万円、15万円の生活になっても切り詰めてなんとかできる自信があります。
―― 英国をテーマにした著作は25冊目だそうですが。
■ 何度通ってもまったく飽きることがない国だったんです。行くたびに、私が求めていることへのヒントを与えてくれる。例えば、ここしばらく英国では不動産バブルなのですが、住宅が高騰すればするほど、法規制が厳しくなる。古い住居や町並みを残そうと努力していて古い敷石なども絶対壊させない。周辺の住民の一人でも反対すれば新しい建物は建てられない。日本のように古い家屋を根こそぎ壊して高層ビルを建てるなんて考えられないです。
英国病といわれた国が10年でこれだけ元気になったのは、やはり国民の力です。めげないという精神があったから。失業したら田舎で畑を作るとか、お金がないならボートで暮らしてもいいやといった柔軟な思考が大切なんです。でも環境や町並みのような重要なものは譲らない。
――『古くて豊かなイギリスの家 便利で貧しい日本の家』の中で、小さくても住みやすい英国の家について書いておられますね。
■平均的な住宅はほんとに小さくて15坪(約50平方メートル)くらいなんですよ。でも物も少なく、小さな裏庭もあってそこで夕ご飯を食べるとか、豊かさはそういうところにあるのですね。
| 滅びの遺伝子 山一證券興亡百年史 | |
![]() | 鈴木 隆 文藝春秋 2005-06-10 売り上げランキング : 4,791 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
日本経済は息づかい荒く再浮揚に向かっている。新興IT企業のホリエモンさんが大活躍するなど、産業界の選手交代はめまぐるしく、21世紀経済の舞台は騒々しいほどのにぎわいだ。
それなら日本経済は大丈夫なのか。財政、金融、環境、外交など多くの問題と向き合い、わけても企業の先天的体質の健診と改善という、いささか心細い病理学的課題を抱えている。バブル崩壊以降の相次ぐ企業破綻の原因に、合理性と倫理性を欠く遺伝形質(組織文化)の作用と思われるものが少なくない。
企業破綻・消滅の代表例は山一證券だろう。戦前は業界トップを占め、戦後も陽性な大企業として話題の中心にいた名門企業も、バブル崩壊にたえきれず自主廃業を決め、2005年1月、破産手続を終え消滅した。
本書は山一證券の創業から消滅にいたる顛末を克明に追跡し、「なぜ、滅びたのか」を調べ、表題の「滅びの遺伝子」、すなわち「世の大勢を無視して、株は必ず高くなると信じ、買いに突進し、値下がり株を抱え続ける遺伝子」を発見した。
株価が高下する経験則を無視し、無限の株高幻想にとりつかれて暴走した山一の遺伝子は、三代目社長の太田收に始まるという。鐘紡新株をめぐる大投機戦に破れた太田は1938年5月、社長の椅子を追われ、服毒自殺した。「トップの責任を明確にした」と一部で評価は高いが、部下の忠告を振り切り、禁じられた手張り(私的取引)にのめり込んでいった姿は異様である。
本書は戦前の太田と、戦後の第1次日銀特融事件を招き寄せた大神一、最終消滅へのレールを敷いた植谷久三の三代話を中心に、歴代社長の人間学を横糸にして編成された経営史である。「滅びの遺伝子」を産みだし、継承したのは東大卒の社長であったと強調している。
「株屋」と侮蔑された業界の近代化をめざし、東大卒を採用した山一證券は、株価の右肩上がりの発展をリードする使命感に燃えていた。そのグランドデザインは面白いが、現実の山一企業像は環境変化に適応する生理本能や経営倫理の方向感覚を失い、なんと株屋的旧体制に癒着して業界の覇道を追った。傲慢で、実は弱いインテリの落ち行く先のようにも思える。
本書は企業の哀愁を描いた現代版「平家物語」であると同時に、日本経済に潜伏する遺伝子リスクを指摘し、忌まわしい権威主義の撲滅と、公正で倫理的な経営を実現する知恵の開発と意志力の錬磨を呼びかけている。【鈴木 隆著(元格付投資情報センター社長)】
| 金正日と高英姫 平壌と大阪を結ぶ「隠された血脈」 | |
![]() | 鈴木 琢磨 イースト・プレス 2005-04-15 売り上げランキング : 85,668 おすすめ平均 ![]() なんとなく分かってきたAmazonで詳しく見る by G-Tools |
1921年、ワシントン軍縮会議が開かれた。このことは世界史年表にあり、誰もが知ることができる。しかしこの会議の裏で、ソ連が第1回極東被圧迫民族会議をモスクワに招集し、日本からは片山潜が出席していた……ことは誰も知らない。知らなくても誰も困らない。だが、共産主義運動史の研究をしている玄人の学者にとっては大事なことである。
本書は金正日の4番目の愛妻となった在日朝鮮人出身の舞姫・高英姫と、その父である高太文について、じつに執拗に調査をした、玄人はだしの書物である。そう、北朝鮮研究の玄人である、私が言うのだから間違いない。かつて素人が北朝鮮について書いたものでは、テリー伊藤の『お笑い北朝鮮』などがあり、我々の間でもけっこう受けた。だが本書はそれとは深みがちがう。『二十世紀文芸復興と金正日』第六巻「舞台芸術」などという、誰も知らないすごい原典資料が、これまた私の論文でも読んで勉強したとしか思えないような正確な日本語訳で、ふんだんに使われているのである。真に北朝鮮研究者が息をのみ、公安がにやにや笑うような、類い希なる奇書である。引用の書籍は二重カギ括弧、論文はただのカギ括弧にいれるのが学者の常識だが、本書はそういう轍もちゃんと踏んでいる。たいしたものだと、一人感心する。
著者の鈴木琢磨氏は、毎日新聞夕刊編集部編集委員である。いい新聞社だ、こんな学者のような本を書くには、まず暇がなければできないからである。出身は大阪外国語大学の朝鮮語科だという。うーん、えらい、と感動する。ここまで朝鮮について教養を深めるには、役に立たないどうでもよいことをたくさん習ったのであろう。最近では大学で役に立つことを教えろという、大学を専門学校と間違えているような人が多くて困るのだが、それでは知識に深みが出ないのである。たとえば、本書で高英姫の別名に「柳日淑」とあり、「平壌の古名である柳京にいる、金正日に貞淑な女」とこれを解き、「日本風にいえば〓○○さん命〓みたいなノリ」と説明しているのなんか、まことに深い読みである。
これは著者の朝鮮に対する教養が尋常でないことを物語っている。また全編、朝鮮への愛情とこだわりが溢れている。それでいて筆は学者のように堅くなく、一般読者が楽しんで読めるようにおもしろいエピソードが盛りだくさんでもある。じつに贅沢な本である。普通の人が知らなくてもいいことかもしれないが……。【評者 古田博司(筑波大学社会科学系教授)】
| 細野真宏の世界一わかりやすい株の本 | |
![]() | 細野 真宏 文藝春秋 2005-06-10 売り上げランキング : 8 おすすめ平均 ![]() これで今日から個人投資家です 生まれて初めて本で感動した!! どの株を買うべきかAmazonで詳しく見る by G-Tools |
■著者インタビュー 細野真宏
―― 100万部を超える『経済のニュースがよくわかる本』に続く、投資の入門書。初版5万部で、発売3日でさらに5万部増刷したそうですね。そもそも数学専門の「カリスマ予備校教師」が経済分野の本を続けて書くようになったのはなぜでしょう。
■ もう国には頼れない、「自己責任」の時代になったわけですが、その時代の流れに教育がついていけていない。経済・金融教育についても同様です。「国民の経済・金融に関する自己判断力を養わねばならない」という問題意識は国の上層部にもあって、私もそのための専門会議に呼ばれたりしました。でも、結論はいつも「教えるためのソフトがない」で終わってしまう。それなら自分自身でソフトをつくってみようというのが執筆の動機です。
『経済のニュース~』を書いていた頃から、次は投資の本を、と考えてはいました。あの本は、それこそ100万人を超える人たちに読んでいただきましたが、いまだに「経済の勉強をしてなんになるの?」という醒めた声も根強くありますから。
―― 投資の入門書としてもとてもユニークで、よくある専門用語の解説などより、経済情報の「読み方」や「考え方」の話が中心になっている。
■ 通常の株の入門書は、表面的な内容のものが多いと思いますが、断片的な知識だけでは実戦に向かうことができません。そこで、私自身の投資経験にもとづき、知識を駆使して考える「情報判断力」を中心に解説しました。幸い「はじめて投資をする気になった」という声が多く寄せられているので支持を得られたんだと思います。
―― 我々もわかりやすい記事を心掛けているのですが、細野さんのようにはなかなか書けません。
■キーワードは「思考の歩幅」です。マスコミの人は優秀だから、その「歩幅」が長く、いわば階段を1段飛ばし、2段飛ばしで上がって行くような説明をする。だから普通の人がついていけない。私は普通の人と同じ「歩幅」で考えるから、どこで理解がつまずくのかよくわかる。
さらに言えば、「思考の歩幅」の長い人は、世間的には「理解の早い優秀な人」なのでしょうが、実はその説明にはしばしば論理の飛躍やごまかしがある。本人たちはそれに気づいていないことが多く、それが説明のわかりにくさにつながってもいます。
―― そうなんですよ。私のように優秀でないのにマスコミのなかにいると、わからないことばかり聞かされてつらい(笑)。でも、バカだと思われたくないから、つい知ったかぶりをする。
■ いや、本当はみんな知ったかぶりをしているだけなのかも(笑)。私の場合はわからないことを人に聞くのは恥ずかしいと思わない。それも強みでしょうね(笑)。いずれにせよ、本当に記事をわかりやすくしたいなら、同じ「歩幅」の同僚同士で評価し合ってはダメです。たとえば家族に記事を読ませてチェックしてもらうことなどが必要でしょう。
| 企業倫理とは何か 石田梅岩に学ぶCSRの精神 | |
![]() | 平田 雅彦 PHP研究所 2005-04-16 売り上げランキング : 5,444 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
松下電器産業の副社長だった著者は退任後、企業社会責任フォーラム理事などとして企業の社会的責任(CSR)の普及にかかわる。キリスト教をベースに欧米で発達したCSRは日本人に理解しにくい。そこで著者は、江戸時代に倫理観としての「商売とは何か」を考えていた学者・石田梅岩に出会う。梅岩は「富の主は天下の人々なり」、利益は私欲のためであってはならないと説く。
「奢り」があれば主人といえども改めさすべきである――など、昨今の不祥事にまみれた経営者には耳の痛い教えが、梅岩から多数の江戸商人に伝えられていた。梅岩門下は飢饉や災害の時にボランティア活動もしていたという。
| 会社はだれのものか | |
![]() | 岩井 克人 平凡社 2005-06-25 売り上げランキング : 381 おすすめ平均 ![]() 真面目な質の高い本 資本の質の変化!? 前作のインパクトに比べるといまいち。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ベストセラーとなった『会社はこれからどうなるのか』に続く第2弾。ライブドアとフジテレビの買収劇を皮切りに、改めて「会社はだれのものか」という疑問がクローズアップされた恰好だが、この本では、企業買収という視点から、再び「会社とは何か」を問う。
株主主権論と会社の2階建て構造、産業資本主義と日本的経営、ポスト産業資本主義、信用供与論、会社の社会的責任論などを分かりやすく語る。後半部は、富士ゼロックス会長の小林陽太郎氏、デフタ・グループ会長の原丈人氏、コピーライターの糸井重里氏との対談を収録する。
| スクラップエコノミー なぜ、いつまでも経済規模に見合った豊かさを手に入れられないのだ! | |
![]() | 石渡 正佳 日経BP出版センター 2005-06-23 売り上げランキング : 47,746 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
産廃Gメンとして産業廃棄物の不法投棄を監視し続けてきた著者が、日本人が排出する最大のゴミとなった住宅や都市開発にスポットを当て、使い捨て経済の構造を切る。住宅や都市そのものが次々とスクラップになっていく「高回転社会」のトリックとは何か。
| 名医のわかりやすい狭心症・心筋梗塞 | |
![]() | 小船井 良夫 同文書院 2005-05 売り上げランキング : 271,602 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
心臓病予防には人間ドックや健康診断で異常の早期発見が肝要だが、これはあくまで2次予防。重要なのは日常生活の悪習慣を見直し、節制した生活を送る1次予防だ。「自分の心臓は自分で守る」ためのポイントを解説する。
| 観光都市 江戸の誕生 | |
![]() | 安藤 優一郎 新潮社 2005-06-16 売り上げランキング : 26,254 おすすめ平均 ![]() 成田山は「メディアミックス」を先取りしていた?Amazonで詳しく見る by G-Tools |
観光旅行が庶民にも身近になった江戸時代、人々が競って訪れた最大の観光都市は、実は江戸だった。吉宗の観光振興策、多角経営でイベント開催に走る寺社、ブランド戦略や派手なパフォーマンス、マーケティング戦略など、現代人顔負けの大江戸観光事情。
| 現場主義の人材育成法 | |
![]() | 関 満博 筑摩書房 2005-06-06 売り上げランキング : 6,533 おすすめ平均 ![]() 現場経験主義の危うさ 事例はおもしろい。でも、人材育成はこれで可能かと思える このまま人生終わっていいですか?Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「地域」や「産業」の現場を30年以上歩き続けている関満博氏の人材育成法の基本は、次の3点にあるようだ。
第一は常に相手に「関心」を抱き続けること。人は誰かに関心をもたれていることが実感できれば勇気がわく。また大学のゼミのように指導者を中心に何人かの仲間と全人格的に交流できれば、さらにエネルギーは上昇する。第二に、世の中の「先端」を実感させること。自分が先端にいることを実感して燃えない人は少ない。その先端は現場であることが望ましい。第三に、指導する側が常に「先端」の「現場」に身を置き続けること。全人格的に付き合ってくれる少し年配の友人が、必死に頑張っていれば、周囲も関心を抱き続ける。
ほんの少しだが、教育の場に身を置き、地域や産業の現場を歩いたことのある評者には、著者の指摘はよくわかる。そして共感するのは、地方は衰退していないということと、夢と希望をもつ若者がたくさんいるという本書の主張である。「空洞化」や「無気力な若者たち」といった通説・一般論はまったく無意味なのだ。
ニュービジネスを輩出させる三鷹市の現場。朝、工場の門の前に立ち続けるというような行動を通して180もの工場を誘致した北上市。それを追いかける花巻市や宮古市。子が親の仕事を継ぐ「家業」を大切にしている墨田区の工場経営者やその周辺。柏崎市や高岡市の「後継者塾」や「産業のまちネットワーク」のもつ熱気。県民所得や製造品出荷額で全国の下位に属する島根県で、きわだって人口が増加している町(斐川町)。あるいは、町づくりの気運が盛り上がり始めた東出雲町。深〓のテクノセンターで、中国の若者たちと一緒に働くという体験を通して劇的に成長する日本の若者たち。都心に開設された大学院に通う社会人たちの熱意。
たくさんの事例の中に身を置く著者のタフな行動力と、著者を利用して地域を活性化させようとする人々との熱気が伝わってくる。本書を読んでいると、この国の将来に希望をもてるのである。特に、本書に登場する都道府県や市町村といった公共部門で働く人々の熱い思いや、連携を強めつつある地域の若手経営者や後継者といった「有力な市民」の存在が心強い。
評者には人材が公共部門に集まりすぎる地方の現状に若干の憂慮があるが、その現実から出発する以外にないという思いもある。人材の育成というテーマを語りながら、地殻変動を起こしつつある日本の現在を伝えてくる好著である。【評者 中沢孝夫(兵庫県立大学教授)】
| 後藤新平伝―未来を見つめて生きた明治人 | |
![]() | 星 亮一 平凡社 2005-06 売り上げランキング : 11,902 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
一代の巨人、後藤新平にはさまざまな評価軸がある。内務相や外務相も歴任したが、政治家としての評価軸を重視しては、この巨人を見誤る。
北岡伸一氏は後藤の日本・中国・ソ連(現ロシア)提携論に着目して、外交指導者としての評価軸を見いだした。台湾総督府民政長官、南満州鉄道初代総裁の実績から日本で唯一の成功した植民地経営者という評価もある。もちろん帝国主義という歴史を前提にしてのことだが。東京市長、関東大震災後の帝都復興院総裁としての活躍から「都市計画の父」とも呼ばれる。台湾や満州に鉄道網を開き、鉄道院総裁として日本の鉄道の広軌化に執念を燃やした後藤を新幹線の祖父と考えることも可能だ。
しかし本書における新平は、長所も欠点も含めてもっと人間味に満ちている。戊辰戦争で朝敵とされた仙台藩水沢城主の留守家家臣の子である新平が、藩閥政治の中で薩長出身の有力な軍人や政治家をパトロンにしつつ、夢をかなえていく姿である。自身東北人である著者が、同郷の偉才を愛着をもって眺めている。
全10章の読みやすい記述のうち4章までが、新平が生まれてから内務省衛生局長にのし上がるまでに費やされる。現在の岩手県水沢市に生まれて悪がきとして名を響かせたが、東北列藩同盟の敗北で仙台藩全体が塗炭の苦しみに追いやられる。水沢が属する胆沢県の大参事として赴任してきた肥後出身の安場保和に見いだされ、医学校への道が開かれる。そこから才能と努力と魅力とで、わずか36歳で衛生局長まで駆け上がる。
と言って上司にゴマをするわけではない。例えば日清戦争後、23万人の将兵が戦地から帰還する。内地への病原菌の持ち込みを防がなければならない。検疫の責任者、児玉源太郎少将の下で、一気にこの大仕事をやり遂げたのが新平だった。
世に「大風呂敷」と呼ばれた新平は、医師として科学者であった。事業の合理的な遂行のために調査を重視した。そして有能な専門家を起用した。台湾時代に砂糖産業を近代産業に育てあげたのは、新平に三顧の礼で招かれた新渡戸稲造だった。満鉄調査部の基礎も築いた。有能な人間をさらに鍛えて育てる手法だった。
「金を残して死ぬ者は下だ。仕事を残して死ぬ者は中だ。人を残して死ぬ者は上だ。よく覚えておけ」 新平の遺言である。今では見当たらない、科学的な国策経営者の人間像が、東北人の心情を厚く重ねて描かれる。【評者 北村龍行(毎日新聞論説委員)】
| パイロットが空から学んだ一番大切なこと | |
![]() | 坂井 優基 インデックス・コミュニケーションズ 2005-05 売り上げランキング : 14,657 おすすめ平均 ![]() プロとしての職業的誠意のあり方Amazonで詳しく見る by G-Tools |
■著者インタビュー 坂井優基(国際線B747機長)
―― パイロットの経験から得るものは、ビジネスにも生かされると主張されています。
■今の日本人は、自分で物事を考えなくなったのではないかと感じていました。学校教育では、問題を出され、それに正解した人が優秀とされます。しかし、パイロットの仕事に正解はありません。例えば乱気流で揺れた時に高度を上げるべきなのか下げるべきなのか、目的地の空港が閉鎖された時、代わりの空港へどのルートで飛ぶか――。同じ問題は二度となく、あらゆることを限られた条件の中で自分で考えて判断します。しかも燃料には限りがあり、すべての決定は時間との戦いです。
会社の仕事も同じではないでしょうか。パイロットの仕事を一般の人に見てもらうと、何か役に立てることがあるのではないかと考えました。
―― 一つひとつのフライトにはテーマがあるそうですね。
■ ええ。東京―大阪間のフライトは、ビジネス客がほとんどなので、時間どおりに飛ぶことが重要です。逆にリゾート路線ですと、お客様はゆったりとした旅を楽しみたいので、揺れない飛び方を選びます。つまり、優先すべきは何かです。ビジネスのプロジェクトも、何を優先すべきかの決定が重要なのではないでしょうか。
―― 飛行機の運航には、いくつもの「デシジョン・ポイント」が設けてありますが……。
■気象など一定の条件をクリアできなければ、飛行機は出発地に引き返すこともあります。あらかじめ「デシジョン・ポイント」を決めておくと、例えば事業がうまくいかなかった時も、撤退するかどうかの判断が容易になります。いったん始めた事業を中止するのは難しいことですが、利益が出ないのにずるずるとやると、深みにハマってしまう。最初に「ここまで」と決めておけば、迷うことはありません。
―― コックピットではクルーが自由に発言できる雰囲気をつくることが大切と書かれています。
■これは極めて重要です。機長も神様ではありません。もしかしたら、管制とのやりとりを聞き間違えるかもしれない。副操縦士の一言で全員が助かることだってあるのです。
最終決定は機長が下しますが、そこに至るまでは副操縦士をはじめクルー全員の協力が必要です。ビジネスの世界も同じではないですか。副操縦士が何かを指摘した時に「うるさい。黙ってろ」なんて答えたら、次から言い出しにくくなる。だから、機長がまず言うべきは「ありがとう」です。どんな小さなことでも指摘してくれたことに感謝です。
―― 最後の章は、読者も機長になったつもりでトラブルに対処する問題集ですが、ご自身のアイデアですか。
■はい。ナポレオンはアレクサンダー大王の本を読む時に、自分ならどう戦うかを考えながら読んだそうです。私も読者にいろいろと考えてもらいたかったのです。何か問題が生じた時、自分ならどのような判断を下すのかと。
| 「にっぽん60年前」 カラーでよみがえる愛蔵版スティールコレクション | |
![]() | 毎日新聞社 2005-06-16 売り上げランキング : 4,858 おすすめ平均 ![]() 戦後は遠い昔じゃなかったAmazonで詳しく見る by G-Tools |
終戦直後の日本を、淡々とカメラに収め続けたアメリカ人たちがいた。焼け跡の瓦礫の中で、日々生きることに一生懸命だった日本人。貧しかったけれど、一枚一枚の写真が語りかけてくるものは、子どもたちの笑顔のようにどこか明るい。進駐軍として日本に滞在したスティール夫妻のコレクションから蘇る60年前。
| サイバー生活手帖―ネットの知恵と情報倫理 | |
![]() | 矢野 直明 日本評論社 2005-04 売り上げランキング : 159,102 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
インターネットが生みだしたサイバー空間の便利さの一方で、広がり続けるネット犯罪や事件。複雑なIT社会を生き抜くための、ネットの知恵、情報倫理など、情報とのつき合い方を、現実に起きている事件や出来事を取り上げながら考える。
| 脱カリスマ時代のリーダー論 | |
![]() | 米倉 誠一郎 NTT出版 2005-06-14 売り上げランキング : 3,722 おすすめ平均 ![]() 雑文の寄せ集め やはりイノヴェーションの本Amazonで詳しく見る by G-Tools |
今の日本は一人のスーパースターの力だけでは動かない、すべての人々がリーダーとして活躍しなければならない時代にある、と著者は宣言する。ふつうの人がリーダーとしていかに戦略を持つか。データベース・リーダーシップ、撤退学など独自の視点で切る。
| 実況LIVE マーケティング実践講座 | |
![]() | 須藤 実和 ダイヤモンド社 2005-06-10 売り上げランキング : 1,744 おすすめ平均 ![]() マーケティング戦略~戦術の一連のプロセスが理解しやすい 川の流れのように マーケター以外の方におすすめAmazonで詳しく見る by G-Tools |
顧客の気持ちをつかむマーケティングとは何か。ホンダのオデッセイやiPod、サントリーDAKARAなどの例を挙げ、マーケティングの発想の基本、顧客や競合相手、市場分析、戦略の立て方などを具体的に解説する。
| 魂萌え ! | |
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専業主婦の関口敏子は63歳の夫を59歳で失った。夫のいない老後を一人で生きていかなければならない。敏子は、安定した仕事を持つ男性と結婚し、二人の子供を生み育て、郊外に戸建て住宅を持った。
しかし、ここから始まるのは、そう生きることがもっとも安全で、幸福で、充実感を持てるという専業主婦モデルが崩壊しているということだ。夫には自分とほとんど変わらない年齢の愛人がいた。無口な夫は、愛人の前では饒舌だった。アメリカに行っていた息子は、仕事に成功せず、一度も会っていない妻と子供を連れて日本での生活に戻ろうとする。娘はフリーターだ。
生活に疲れた子供たちは、頼りになるどころか、夫の財産を目当てにする。自分が尽くしていたはずの夫と子供たちに人生を否定されたという感情はいらだたしい。 しかし、いかに専業主婦モデルが崩壊していようとも、敏子は長い老後を生きていかなければならない。
昼間にビールを飲んでみる。家を出て、カプセルホテルに泊まる。いつも遠慮がちの自分が自己主張をする。身勝手な子供たちに、自分の意思を表すことは、後味が悪くても、遠慮して後悔するよりいいと経験する。夫への腹いせから型どおりの手順で迫ってくる男に身を任す。
ここには、桐野夏生らしい異常な世界はほとんどない。働いている女であれば当然のような経験が描かれている。だが、日常生活のささいなやり取りが、多彩に、辛らつに描かれ、紛れもない冒険として読者をひきつける。敏子は必死に考える。自分の老後は自分で生きていくしかない。夫の残してくれたものは自分たち夫婦の築いたものだ。それは自分の生きていく基盤だ。子供たちは母親に頼らず自立するべきだ、と。
娘は、「今のおばさんたちは、安定した生活を楽しんでいる、あたしはお母さんにそうやって暮らしてもらいたいの」と語る。息子も、やり直すためにアメリカに戻る。息子は再び失敗して敏子を頼ってくるかもしれない。しかし、ともかく子供たちは自立を目指し、母親の幸福も願っているのだと分かる。
困惑と諦めの中から敏子は立ち上がる。まるでデフレに痛めつけられた日本経済のように。だが、立ち上がることができるのは、敏子が自ら生きようとするからだ。人間は新しいことを学び、やり直せ、和解できると認識することは快い。【評者 原田 泰(大和総研チーフエコノミスト)】
| 中国 経済革命最終章 | |
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中国の経済改革は、ロシアのそれが急進的であったのと対照的に漸進主義的であり、それがゆえに社会的安定性を保ちながら高成長を持続できた、という評価が一般的である。国有部門という旧体制を温存しながら、その周辺に新体制の急成長を図り、時の経過とともに後者の比率を高めて、最終的には新体制への全面的な移行を完成するという図式である。
しかし、ともすると旧体制は、既得権益層の抵抗によって、長期にわたって温存されてしまう。既得権益層が独裁的政治権力と深く癒着している中国のような国の場合には、その傾向が厳然として存在する。国有企業と国有商業銀行の改革が容易に進まず、二つが相まって中国のマクロ経済の順調な進行を妨げていることを主張する本書は、どうやらその立場に立っているといえよう。
国有企業改革は、さまざまな方法によって持続的に試行されてきたが、最後の所有権構造にまでは踏み込めないでいる。それゆえ「政企不分」と「コーポレート・ガバナンスの欠如」を払拭できず、収益性が上がらない。
むしろ、「国有企業の効率を高められなかったにもかかわらず、経営自主権を拡大させてしまったことは、かえって国有企業経営者の機会主義的な行為を助長させた」と著者は主張する。
中国の財政が、中央も地方も修復不能とも見える厳しい状況に置かれていることは、よく知られている。深刻な財政赤字の下で、なお国有企業という旧体制を支えるためには、国有商業銀行への政府支配をますます強化せざるを得ない。 しかし、銀行支配を通じて旧体制の破壊は避けられたものの、これによって国有銀行の金融仲介機能は麻痺状態におとしめられた。著しく高い不良債権比率がその帰結であり、金融メカニズムの効率性が大きく減殺された。
国有企業と国有銀行の二つの改革の遅滞が、因となり果となってマクロ経済の非効率性を相乗的に悪化させていく過程が、本書では誰にも理解できる平易さをもって語られる。国有銀行の改革は、不良債権処理や自己資本比率強化の段階を超えて、株式制導入の段階に入ったが、これとて成功の保証はない。
「結局、国有銀行改革の行き着くところは、株式上場にとどまらず、政府が所有と経営を完全に放棄する民営化であろう」というのが結論である。中国経済を見る関氏の目が、いつになく厳しい。【評者 渡辺利夫(拓殖大学学長)】


真面目な質の高い本
前作のインパクトに比べるといまいち。











現場経験主義の危うさ




雑文の寄せ集め


