メイン > 週刊エコノミスト書評『ブックレビュー』(2005年) > 2005年5月24日~5月31日

そんな言い方ないだろう
4106101165梶原 しげる

新潮社 2005-04-15
売り上げランキング : 1,505

おすすめ平均 star
starそんな言い方ないんじゃない・・・
star人に勧めてもいい!!
star前作同様読みやすかった。

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口のきき方
4106100339梶原 しげる

新潮社 2003-09
売り上げランキング : 16,971

おすすめ平均 star
star新潮新書らしい
star話し言葉
starうんうん!!

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頭がいい人、悪い人の話し方
4569635458樋口 裕一

PHP研究所 2004-06
売り上げランキング : 8,536

おすすめ平均 star
star悲しいベストセラー
star単なる話し方の本ではない
starお勧めできませんね。

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私の尊敬する話し手に、梶原しげるさんがいる(私はラジオのパーソナリティーとしての梶原さんがいちばん好きなので、そう呼ばせていただきたい)。

アナウンサー出身だからといって、日本語があてにならないことが多いのがこの国の悲しさなのだが、彼の場合は、滑舌がいいだけでなく、日本語の使い方が正確で、私も大変勉強になる。

そのうえ、50歳になってから心理学の大学院に入りなおしてカウンセリングの勉強をされている。知性以上に、相手の気持ちを慮った話し方はますます参考になる。というわけで、前著『口のきき方』という本は、なるべくしてベストセラーになったのだが、第2弾の『そんな言い方ないだろう』(新潮新書、714円)も、それにもまして実用的で、しかも前書きにも書かれているような日ごろのストレス解消にも役立つ名著だ。

冒頭で、正しいと思い込んで使う間違った言い方や相手をカチンとさせるものの言い方は、使い続けることで頭の悪い人と思われるようになっていくが、ときどきセルフチェックをしていれば、悪い結果にならないですむという点で、「ことばの生活習慣病」といえると書かれているが、これは至言だ。

この手のことに触れた大ベストセラーに樋口裕一さんの『頭がいい人、悪い人の話し方』があるが、梶原しげるさんの本はカウンセリングを学んできただけに、心理学的な裏づけがあっていい。相手を不愉快にさせる→相手の自分に対する認知が変わって、こちらの悪い点がよけい気になるようになる→よけいバカにみられる。こういう悪循環が怖いのだ。

敬語の使い方にしても、あれこれ難しいことを論じたり、悪い例ばかり挙げて読者を不安にさせるより、「かかってきた電話に出る時は、『もしもし』ではなく、『お待たせしました』」など、覚えておくと極めて役立つ七つの原則を明快に紹介しているところがいい。

ところで、最近のJR西日本の事故報道を見て感じるが、自分が被害者でもないのに、相手の自己愛をずたずたにするような口のきき方をするジャーナリストが目立つ。これは質問といえない。せめて自分の名前を名乗って言えといいたくなる。まさに「そんな言い方ないだろう」は至言である。【評者 和田英樹(精神科医)】

■2005/05/31, 毎日エコノミスト

持続可能な都市―欧米の試みから何を学ぶか
4000234099福川 裕一 矢作 弘 岡部 明子

岩波書店 2005-04
売り上げランキング : 4,503

おすすめ平均 star
star「東京の高層ビル群はあれでいいのか」を考え直す本

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日本各地で都市再開発が活発だが、超高層ビルの乱立する開発に都市の再生はあるのか。ロンドンの超高層ビル論争をはじめ、世界的に注目された「バルセロナ・モデル」、アメリカの「スマートグロース法」など、欧米の都市がどのような試行錯誤を繰り返してきたのかを検証し、この四半世紀の日本の都市の変貌を見つめ直す。不動産型都市開発ではない都市づくり、真の持続可能な世界都市へ向けた「都市再生」の道を探る。

■2005/05/31, 毎日エコノミスト

人はみな「ビジネスの天才」として生まれる
4093566410アラン・グレジャーマン 福澤 善文 福澤 良美

小学館 2005-05-10
売り上げランキング : 1,375

おすすめ平均 star
star子供から学ぼう
star簡単にシンプルに
star特に40歳以上の人に読んでもらいたい

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どうしたらビジネスは成功するのか、経営者なら誰もがこの問題に悩む。問題解決のヒントは実は「子どもの頃」にあるのだと著者は語る。自分が子どもの頃を思い出してみよう。何にでも好奇心を持ち、興味のあることには時間を忘れて熱中していたはずだ。「好奇心」「率直さ」「正直さ」「不思議に思う心」「工夫する精神」――。そんな「子ども力」を取り戻すことに、成功への道標がある。

■2005/05/31, 毎日エコノミスト

サービス経営戦略―モノづくりからサービスづくりへ
4757121458小山 周三

NTT出版 2005-03
売り上げランキング : 59,295


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日本は「高サービス社会」と言われるが、本当にそうなのかと著者は問う。日本の「モノづくり力」に、改めて関心が寄せられているが、購入され、使用価値が発揮され、信頼されて反復利用されなくては、モノ本来の価値になり得ない。モノづくり経営を軌道に乗せるには、サービスづくり経営とセットで考える必要がある。「顧客満足」をキーワードに、サービス経営の理念や組織など21世紀型のサービス・ビジネスモデルを考察する。

■2005/05/31, 毎日エコノミスト

小説 盛田昭夫学校 (上)
4833418207江波戸 哲夫

プレジデント社 2005-04-21
売り上げランキング : 2,639

おすすめ平均 star
star展開の良さ・スピードが売り
star今、彼が生きていたなら・・・

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小説 盛田昭夫学校 (下)
4833418215江波戸 哲夫

プレジデント社 2005-04-21
売り上げランキング : 6,280

おすすめ平均 star
star本書は学校である。
star一緒に仕事が出来たら

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21世紀幕開け直前の1999年11月8日、ソニー名誉会長、盛田昭夫氏の葬儀が盛大に行われた。

物語はそこから始まり、戦後日本経済の復興と繁栄を築いた巨人の足跡を、延べ19章にわたって克明に追った。「小説」だが、登場人物は全員実名で出てくる。

「東京通信工業」で井深大氏と開発したテープレコーダー、ベータマックスの敗北、ウォークマンの大ヒットなど、もはやおなじみの〓ソニー物語〓ではあるが、読み物仕立ての面白さがある。書籍版「プロジェクトX」といったところだ。

2冊合わせて900ページ近い大作だが、この分野を得意とする著者の文体は、平易で読みやすい。自身のリハビリ中に井深氏の死去を妻に知らされ、体を震わせる場面は圧巻だ。

■2005/05/31, 毎日エコノミスト

起業バカ
4334933564渡辺 仁

光文社 2005-04-22
売り上げランキング : 5,669

おすすめ平均 star
star題名に期待して購入したものの?!
starかなり読みづらい
star漂流タイトル

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【著者インタビュー】
―― 何とも直截なタイトル。「成功するのは1500人に1人」というコピーもショッキングですね。起業にまつわる失敗例や残酷物語を、これでもかと詰め込んだ本です。「起業しましょう」「起業は楽しい」といった趣旨の新刊が並ぶなかで、異彩を放ち、しかも売れているようです。

■私自身驚くほどの反響で、すでに2回、増刷がかかりました。私は十数年前からベンチャーを追いかけてきたジャーナリストですが、第3次ベンチャーブームと言われるなかで、これまでネガティブな話は歓迎されなかった。それが、ここ1、2年で潮目が変わった感じですね。

―― その理由は何でしょう。

■パイ自体は広がっていない、もう「行け行けドンドン」ではダメだ、という認識が広がってきたのではないでしょうか。ニーズの多様化で、一般的な「成功の法則」は通用しない、という事情もある。失敗例のなかにこそ事業のタネを探そう、という気運が生まれてきたのでは。

―― 本書のなかで特に印象的だったのは、企業に長く勤めた後に起業する、いわゆる「シニア起業」「定年起業」の人たちの失敗の数々でした。

■彼らの敗因は、企業内での成功体験をそのまま引きずってしまうことです。企業のなかでの営業と、経営者として行う事業とはまるで違う、ということが分かっていない。

―― 会社で営々と勤めてきて、役員になれないと分かった時、人生の最後に「経営者」をやってみたい、と思う気持ちはよく分かるんですけどね。

■ お店の経営者になりたくて、コンビニ等のフランチャイズ・チェーンに加入する、というのが一つのパターンでしょう。この本に書いた通り、これは失敗例が多い。そもそも、フランチャイジーになるのは、私に言わせれば起業ではない。本部の「下請け」になるということです。それが分かってやるならいいのですが、甘く考えている人が実に多い。

―― 本書に描かれた、起業家志望者を食い物にする「起業コンサルタント」たちの横行も恐ろしい。

■起業家支援業は今、ブームなんです。起業のノウハウが、一つのパッケージ商品になっている。もちろん、それを売り込む人々がすべて詐欺師というわけではない。最終的には、無知につけ込まれて高いおカネを払う側にも責任はあります。

―― 団塊世代の大量退職期を迎えて、シニア起業の失敗例はさらにふえそうですね。

■その通りですが、私の本意は「起業はやめなさい」ではない。今後も起業は励まされ、支援されるべきです。しかし戦後世代は、平等主義教育によって、競争心や根性といった「起業力」が損なわれているように感じるから、心配です。

起業家の真の育成のためには、教育制度から考え直さなければならない。長期的視野に立った起業家教育が、次の私のテーマです。

■2005/05/31, 毎日エコノミスト

企業福祉の終焉 - 格差の時代にどう対応すべきか
4121017951橘木 俊詔

中央公論新社 2005-04-25
売り上げランキング : 8,448


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「企業福祉の役割は終わった」というのは、著者の長年の主張であるが、本書では、それがより明確な形で示されている。

日本の企業は、社宅や保養施設、退職金等、個々の企業で水準の異なる法定外福利費と、社会保険料の事業主負担など、社員にいろいろなベネフィットを与えてきた。しかし、企業福祉は企業規模により大きな格差がある。また、最近増加している非正規社員と正規社員との間では利用資格に差があるなど不平等な面が強まっている。

さらに長期経済停滞期には、企業福祉は正規社員の雇用コストを高め、非正規社員への代替を促すインセンティブを強めるなど、労働市場に撹乱的な影響を及ぼす。

著者は、これらの要因から、企業が福祉から撤退し、それに代わって、国民全員が充実した福祉を得る方向へ向かうべきとして、社会保険給付の財源を、保険料方式から税方式に転換することを提言している。

もっとも、アンケート調査によれば、法定外福利費について労使双方とも賃金化を支持していない。この要因は、税制上の優遇措置や、成果主義的な賃金に比べて、より平等性が大きいためとされる。しかし、この調査対象には、いうまでもなく非正規社員が含まれていない。

著者は、選別的な企業福祉に代わり、普遍的な福祉を提供するものとして、国家の役割を重視する。しかし、この点について、著者の主張はやや分かりにくい。まず著者は、現状の日本は「福祉国家」ではないとして、それへの転換を主張している。また、税や社会保険料負担率と経済パフォーマンスとの間には明確な負の関係はないとしているが、ここでは税負担と、明確な代替性がある日本の膨大な財政赤字は含まれていない。

さらに、高い国民負担率の北欧諸国は豊かな国民生活を享受しているという表現からは、それが著者の福祉国家のモデルのように受け取れる。

他方で著者は、福祉サービスの水準は「誰も生活苦を感じないような最低の水準で十分」としており、具体的には、公的年金は(現行水準よりもやや高い)基礎年金だけで、ミーンズテスト(資産調査)をつける。また、2階部分は民営化でよいとしている。

しかし、企業福祉に代わる国家の役割を基礎的保障に限定する考え方は、北欧諸国の制度とは相容れず、むしろ著者の批判する市場原理派に近いのではないだろうか。いずれにしても、多くの論点を含んだ含蓄の深い内容の本といえる。【評者 八代尚宏(日本経済研究センター理事長)】

■2005/05/31, 毎日エコノミスト

日本型「成果主義」の可能性
4492260749城 繁幸

東洋経済新報社 2005-04-15
売り上げランキング : 1,522

おすすめ平均 star
star成果主義と年功序列制度の違いとは
star成果主義、目標管理、人事考課の混同が。。。
star前作より大幅改善も。。。

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成果主義への批判や不満が高まっている。本書は成果主義のどこに問題があり、日本で成果主義を機能させるためには、どうしたらよいのかを論じたものである。

年功序列制では組織を拡大することがすべてであると、著者はまず指摘する。組織を拡大すれば、部課長クラスのポストは、たいていの社員に手が届くようになる。誰を部課長にするかの評価に真剣に悩む必要はなくなるという。

しかしバブル崩壊後、組織は拡大せず、ポストは不足している。しかも、バブル期にあまりにもたくさんの人員を採用してしまった。昇給の資金も配るポストも、もうどこにもない。企業に初めて、人材を選抜する必要性が生まれた。これが成果主義導入の本質だと著者は言う。こういう事情であれば、成果主義は誤っている、年功制が優れていると言っても、何ら解決策にならないことがよく分かる。

著者は、成長中のベンチャー企業のなかには意外と年功序列型の人事制度をとっている企業が多いと指摘している。なるほど、孫正義氏は新入社員の前で、これから数千の会社を立ち上げるとアジっていた。働けば偉くなれるという期待が人々を動かすことをよく知っているというべきだ。

だが、停滞する日本でそんな急成長の会社はめったにない。全員を部課長にできないから成果主義が必要になってくる。

では、どんな成果主義ならよいのか。著者は成果主義を機能させることがいかに難しいかを詳細に論じている。これだけ難しければ成果主義が機能するはずはないという気がしてくるが、諦めるわけにはいかない。なぜなら、評価し、選抜しなければ組織がもたないからだ。

著者は重要なのは管理職を評価することだと言う。すでに管理職になってしまった世代は部下の成果を問うが、管理職自体の成果はたいして問われない。年金と同じ、成果主義の世代間ギャップがあると指摘する。

成果主義が成功するために必要なのは、管理職以上の成果主義の徹底と一般従業員の目標管理制度の緩和ないし廃止だというのが本書の結論である。成果主義についてまっとうに考えるうえで必読の書と言えよう。

残念なのは目標管理主義の成果主義のみが議論され、歩合方式の成果主義が議論されていないことだ。企業において、ある利益に対する社員の貢献が、おおよそは分かる場合も多い。選抜ではなく、利益貢献へのインセンティブ(意欲の喚起)を考える成果主義もある。これについての著者の考えも聞きたかった。 【評者 原田 泰(大和総研チーフエコノミスト)】

■2005/05/31, 毎日エコノミスト

フリーターとニート
4326653043小杉 礼子

勁草書房 2005-04
売り上げランキング : 3,589

おすすめ平均 star
starただの報告書?
star事例がたくさんあるのがよいが、議論の根本が間違っている
star参考にはなるが、何か違うと思う。

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若年雇用問題は現在、社会的にも、また政策的にも、もっとも大きな関心事のひとつである。本書編著者の小杉礼子氏はこの分野で多くの業績をあげている研究者の一人だ。本書は、同氏が共同研究者である堀有喜衣氏と宮本みち子氏とともに行った調査研究をもとにした著作で、期待に違わず、質の高さと面白さを兼ね備えた、一級の「啓蒙的研究書」となっている。

本書も指摘するように、若年雇用問題のうち、いわゆるフリーターや若年失業の問題については、少なくともその解決の大筋は見えてきた。すなわちフリーターや若年失業者の多くは、実はしっかりとした正規従業員の仕事を求めており、必要なのは彼らができるだけ正規の雇用機会に就職できるような政策だ、ということである。

問題は、仕事を全くしていない、求職意欲さえ喪失してしまったような若者をどうするかだ。いわゆるニートとよばれる若者たちの問題である。

本書はこれを、学校から職場への移行の問題(小杉氏)、学校の役割(堀氏)、そして家庭環境(宮本氏)という三つの視点から実証的に分析している。

本書は、首都圏、関西、東北に住む51人の若者に対する詳細かつ濃密なインタビュー調査をもとに書かれている。悩める若者一人一人のドラマが、彼らの肉声によって伝わってくるようなインタビュー調査である。その密度濃いインタビューを上述の三つの切り口から縦横に分析しているところが、本書の魅力となっている。

とくに、これまで見過ごされがちだった地方経済と若年雇用の関係に焦点の一つをあてていることは、本書の大きな貢献であろう。

なんら問題のない家庭に育ち、ごく真面目に学校教育をうけてきた、昔であれば学校から安定した雇用機会に直行して平穏無事な職業人生を歩んでいたはずの若者たちが、大きな経済環境の変化によって地方の経済社会に良好な職場が無くなってしまったために、職を得られず戸惑っている状況が浮き彫りにされている。

このほかにも、学校は若者の拠り所として重要な役割を果たしうること、家庭環境が与える影響といっても、それは様々な側面をもっていることなど、本書は随所に貴重な分析を含んでいる。

そうした分析にもとづく提言も、地に足が着いたものとなっていて説得的だ。若年雇用問題に関心のある方々にはぜひ一読をおすすめしたい好著である。【評者 清家 篤(慶応義塾大学商学部教授)】

■2005/05/24, 毎日エコノミスト

ソニー本社六階
4901868268竹内 慎司

アンドリュース・プレス 2005-03
売り上げランキング : 8,629

おすすめ平均 star
star凋落企業に共通の大問題を見事に指摘
star勇気ある問題提起の書
star著者の自伝として読むなら面白い

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「1991年度には8000億円近くあった余剰金が94年度末には2700億円を切る水準にまで落ち込み」「95年に新社長に経営が引き継がれた時には1兆5000億円近い借入金を抱える大借金会社になっていた」のはソニーである。都合2兆円を超える費消だ。日本の国家予算が約1兆円に達したのが1955(昭和30)年。60年が2兆4000億円である。

このような国家予算にも匹敵する途方もない浪費がなぜ起きたのだろう。本書によれば原因は単純だ。独裁者のような社長と、その顔色をうかがうだけのイエスマンの無責任な経営が続いたからである。

「89年に資産の市場価格に当時の為替レートで5000億円ものプレミアを上乗せした金額で映画会社を買収した。その後、この映画会社は」無軌道な浪費で「毎年のように数百億円単位の赤字を出し続けていた」。

この映画会社、コロンビア・ピクチャーズの社長が92年に「ソニーの子会社で良かったことは彼ら(ソニー)がお金をたくさんもっていることだ」とハーバード・ビジネススクールで講演したとのこと。ハーバードでは後にこの買収を「ソニーの企業価値をいかに破壊したか」のケーススタディーとして書いているそうである。

もう一つ。赤字を出し続けているフランスの電子部品工場が現地のフランス人工場長の提案で1フラン(つまり無料)で売られるとの案件があった。著者が担当になり現地に飛んだ。そして他の売却先を探し出すと、1フランで買うといっていた会社が7000万フラン(15億円)まで引き上げ、従業員の雇用継続まで持ち出してきた。売却条件が合意されると、そこにソニー欧州本社の財務責任者なる人物がしゃしゃり出て、合意になかった分割払いを認めてしまい、その後、ソニー本社は売却先の10億円以上の支払いの不履行まで認めてしまったのだ。

ソニー本社関係者の自己保身にのみ熱心で企業価値を損なうことへの無関心さには驚くべきものがある。評者の知る、ボーナスも出ないソニーの下請けの血のにじむようなコストダウンの日々が、このように無駄に使われていたことが気の毒でならない。

先にソニーの経営陣は入れ替わった。しかし前任者は「善良な管理者としての注意義務」違反を問われていない。評者の本書への不満は実名を避けているところにある。大赤字の元凶としている「自尊心」のかたまりの人物が大賀典雄であることや、取り巻きの名前も書くべきだった。事実ほど強いものはない。【評者 中沢孝夫(兵庫県立大学教授)】

■2005/05/24, 毎日エコノミスト

模倣される日本―映画、アニメから料理、ファッションまで
4396110022浜野 保樹

祥伝社 2005-02
売り上げランキング : 7,484

おすすめ平均 star
star文化ナショナリズム&文化帝国主義の傾向が気になります
star歴史を見ていないですね
star誇れる日本文化

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【著者インタビュー】
―― 明治の近代化以降、欧米を目標に「模倣する国」だった日本が、「模倣される国」に変貌している。第1章「模倣される映像」では、深作欣二作品の引用であることを堂々と表明したタランティーノ監督の映画「キル・ビル」を皮切りに、黒澤映画が世界に及ぼした影響、そして宮崎駿監督をはじめ注目の日本アニメを分析しています。

■模倣される背景には何があるのか。そこを探ってみたかった。例えばアニメには、平面的でありながら立体感を表現してきた日本画の伝統が生きている。日本人が意識してこなかった日本の良さが新鮮に映っていることがあります。

―― 映像に限らず、分析は料理やファッションなどにまで及んでいます。

■映画やアニメにしても、誰が何を真似したとか、そういう表面的なことで終わるのではなく、背景にある文化には衣食住などライフスタイル全般に深くかかわる部分があるわけです。

あまりにも日本人が気がつかない日本のチャーミングなところを、海外の人々が評価している。そのことを分かりやすい実例で挙げてみたかった。

―― 明治維新以降、日本人が努力してきたこととは別の部分で、評価されているものが多いと。

■ 日本人が古くは中国を、そして近代化以降は欧米を模倣してきたのは科学技術の遅れを自覚してのことでした。最新の科学技術のためにはどんな犠牲もいとわないという思想は宗教的にまで高まり、過去を古くさい因習として切り捨ててきた。そんななかで海外に評価されたのは、日本人が長い間培ってきた、自然との共生や「もったいない」という概念だったりしたのです。

本にも書きましたが、戦後、GHQによって廃止されかけた歌舞伎を守ったのは、マッカーサーの副官であり、日本文化の理解者であったフォービアン・バワーズでした。そしてバワーズはその理由を、「日本人がいつまでも僕のことを覚えてくれるから。それだけで十分だ」と語っているのです。

科学技術がもたらした思想は、未来こそが完成形で過去と現在は使い捨てなんですね。けれど過去からの継承なしに未来などあるのか。最後に島崎藤村の『夜明け前』と『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ! オトナ帝国の逆襲』を取り上げたのは、そうした過去や現在を犠牲にして未来だけを見つめる悲劇を見事に表現しているからなのです。

―― 真の日本の文化を私たちは意識せず、伝える努力をしてこなかった。

■これまで日本は、いい製品を安く作っていけば評価されるだろうということでやってこれたけれど、その機能が中国に移っている時代、経済的に見ても文化は最大のマーケティングになると思うのです。

話をアニメに戻せば、世界が注目していると喜んでいるだけでは、かつてジャポニズムで浮世絵が世界的なブームになりながら、浮世絵自体は日本から消えていった二の舞いにならないとも限らない。そのことを心にとどめておくべきだと思います。

■2005/05/24, 毎日エコノミスト

ジャンケン文明論
4106101114李御寧

新潮社 2005-04-15
売り上げランキング : 1,756

おすすめ平均 star
star一人勝ちは許されない
star東アジアの共存のヴィジョン
star21世紀の東アジアが目指す文明

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表か裏かで決まる西洋型「コイン投げ文明」に対し、相手との関係で「グー・チョキ・パー」の意味が違ってくる循環型の文明を、著者は「ジャンケン文明」と呼ぶ。「衝突」を生み出す二者択一の思考を離れ、アジア的三つ巴の思考をキーワードに、日本、韓国、中国の新しい関係、そして東アジアの融和・共存・希望を考える。

■2005/05/24, 毎日エコノミスト

はじめての金融工学
4061497804真壁 昭夫

講談社 2005-04-19
売り上げランキング : 6,701

おすすめ平均 star
starはじめてでもわかる

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「金融工学のすべての基礎は、釣鐘型の正規分布図にある」「リスクの正体は標準偏差」と余計な飾り付けを排した表現で、金融工学を分かりやすく解き明かす目からウロコの解説本。天候デリバティブ、不動産の適正価格など具体例を入り口に、金融工学の限界も指摘して、行動ファイナンス、経済物理学にまで、視野を広げている。

■2005/05/24, 毎日エコノミスト

和紙とケータイ―ハイテクによみがえる伝統の技
4794214057共同通信社編集委員室

草思社 2005-04
売り上げランキング : 9,907

おすすめ平均 star
star楽しめます

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50の実例で読む、日本の伝統技術と現代技術のコラボレーション。ケータイの軽量化を支える和紙の紙漉きや金箔の箔打ち技術、木造建築のしなやかさと耐震ビル、酒造りとバイオテクノロジーなど、様々な場面で伝統技術が形を変えてよみがえっているという。伝統技術は、歴史的に見れば、それぞれの時代の最先端技術でもあったという言葉に納得させられる。

■2005/05/24, 毎日エコノミスト

金利危機
4758410496荒 和雄

角川春樹事務所 2005-04
売り上げランキング : 1,083,663


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迫り来る国家的経済危機を小説の形で描き出す。2005年4月のペイオフ解禁で、日銀は超低金利政策から一転、公定歩合引き上げを実施した。金利上昇リスク、国債暴落、銀行の経営危機、そして初のペイオフ発動……。残された選択肢に何があるのか。

■2005/05/24, 毎日エコノミスト

成功するビジネスプラン
4532110572伊藤 良二

日本経済新聞社 2005-04
売り上げランキング : 5,363

おすすめ平均 star
star平易でコンパクトですが、広範囲にわたる内容で良書

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起業がブームだが、新たに事業を立ち上げる場合、基本は、誰がどんな事業を、どこでどのように築くかというビジネスプランを、いかに構築するかだ。戦略的視点に立った、勝つためのプラン作りを分かりやすく解説する。

■2005/05/24, 毎日エコノミスト

旭山動物園の奇跡
4594049354SPA!編集部

扶桑社 2005-04-19
売り上げランキング : 3,310

おすすめ平均 star
star行った方。これから行く方必見!
star夢を追う大人たち

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日本最北の小さな動物園、旭川市営旭山動物園が今、熱い注目を浴びている。廃園の危機に晒されながらも、理想の動物園像を追い続けることをやめなかった人々と、動物の魅力的な生態をショーアップして見せる「行動展示」にたどりつくまでの闘いを描く。

■2005/05/24, 毎日エコノミスト

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