メイン > 週刊エコノミスト書評『ブックレビュー』(2005年) > 2005年12月13日~12月20日
| 胡錦濤 日本戦略の本音 ナショナリズムの苦悩 | |
![]() | 朱 建栄 角川学芸出版 2005-10-29 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
本書によれば、中国は「混乱回避の術に長けている」。例えば「文化大革命の終結に際し、中国の指導者たちは四人組にすべての責任を負わせ、混乱を回避した」。対日政策でも、中国側は日本の対中侵略の責任を、「ごく一部の軍国主義者」、つまり極東裁判のA級戦犯に集中した。「A級戦犯はすでに死亡している。すなわち、亡くなった人にすべての責任を負わせ、現在生きている日本国民の責任を追及せず、『未来志向』で友好を図っていく」。ところが、この中国政府の国民説得の論理は、2001年以来の小泉首相の靖国参拝で崩れてしまった、というのだ。
しかしながら、首相の参拝で簡単に崩れてしまう論理に頼ってきたことが問題であるかもしれない。中国側でも物言う中間層が出現し、IT革命で物言えるチャンネルも増えており、安易な「混乱回避の術」だけでは国民説得が難しくなっているからだ。いまや毛沢東を含め建国以来の共産党の失政さえも、真正面から論じられかねなくなっているのである。
本書は、「中国で日本がどのように理解されているのか、また、戦後以来の中国国民の対日認識の流れなどを踏まえ、中国の変化を日本がどう受け止め、どう対処していくべきか」などについて検討・提言を試みている。日中間の歴史観の違い、愛国主義教育は決して反日教育ではないことを検証するとともに、東シナ海問題を国際社会に仲裁を求めて解決する提案、あるいは対中ODAについて「卒業」ではなく、世界貢献に向けた日中共同基金の創設による「進学」の提案などが試みられている。
特に興味深いのは「流動化しており、日本への理解も深まりつつある中国の対日観」の紹介である。エリート層の対日観は「感情的な対日警戒論から脱却し、日中関係改善の道を模索すべきだ」との合意がすでにあり、こうした合意を背景に胡錦濤政権は「対日政策調整」に取り組んできたことを紹介している。江沢民政権が歴史問題の解決を優先する「入り口論」であるとすれば、胡錦濤政権は関係発展の過程で歴史問題の解決も模索する「出口論」であるというのである。こうした点を含め、本書は今後の日本の対中政策を考える際に忘れてはならない視点を提供している。
ただし、中国側が1998年の共同宣言で「戦後の日本を評価する」と明記したと本書はいうが、この文言は明記されなかった。明記されなかったことこそが、以後の日中関係を歪んだものにした要因の一つである。【評者 小島朋之(慶応義塾大学教授)】
| なぜ企業不祥事は起こるのか―会社の社会的責任 | |
![]() | ローレンス・E. ミッチェル Lawrence E. Mitchell 斎藤 裕一 麗澤大学出版会 2005-11 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
この本の原題は「株式会社の無責任」で、いかにアメリカの株式会社が無責任になっているかということを、コカコーラ、ユノカル、GMなどを例に挙げて厳しく批判している。本が書かれた後にエンロンやワールドコムの事件が起こり、著者の指摘はズバリ当たっている。
にもかかわらず、この無責任なアメリカ型の会社システムをロシアなどの旧社会主義国、そしてヨーロッパ、日本にまで普及させようとしているのが、いわゆる株主資本主議論である。
では、なぜ株式会社が無責任になったのか。それは機関投資家の圧力によって、経営者が自社の株価を高くするため、短期の利益だけを追求するようになったからである。株主価値重視の経営がそうさせたのである。
しかし、それ以上にもっと根本的な問題がある。それは、株式会社では株主全員が有限責任であるということになっているが、有限責任とは、自らが負うべきリスクを他の誰かに押し付けるものである。経済学の言葉でいえば、それはコストを外部化することで、公害などの環境破壊や人員削減、人権無視などのリスクを外部化して、株主は責任を負わないということである。
このように、株式会社の無責任の原因を株主有限責任に求めるという議論は、これまであまりなかっただけに注目される。
これは株式会社の原理にかかわる根本問題だが、これをいかに変えていくのか、ということが問題になる。そこで著者がこれにどう答えるかを期待して読んだのだが、著者の改革案は、会社が長期の利益を重視した経営をするために、取締役の任期をなくして無期限にせよとか、会社の決算報告書の期間を延長せよとか、従業員に対する人件費をコストではなく、資本の項目に入れよ、などというもので、これでは経営者がますます無責任になるのではないか。
分析は素晴らしいが、改革案は期待はずれである。それというのも、株式会社を変えていくということが、いかに難しいかということの表れかもしれない。
無責任経営はアメリカの会社だけでなく、日本の場合は、もっと深刻である。この本でのアメリカの株式会社の分析を参考にしながら、日本の株式会社について考えることが必要だが、それには格好の本である。
なお、訳文で「企業」とされているのはすべてコーポレーションで、株式会社か、せめて会社と訳すべきである。【評者 奥村 宏(株式会社研究家)】
| メディアの支配者 上 | |
![]() | 中川 一徳 講談社 2005-07-01 売り上げランキング : おすすめ平均 ![]() 暗闘 おもしろい 宏明氏には取材したのか?Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| メディアの支配者 下 | |
![]() | 中川 一徳 講談社 2005-07-01 売り上げランキング : 2,720 おすすめ平均 ![]() 華やかさの影に 建築家ピンポイントレビュー 鹿内信隆の育てた花は「あだ花」として咲いた。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
■著者インタビュー 中川一徳(フリージャーナリスト)
――人気、収益とも日本一のフジテレビを中心としたフジサンケイグループの内幕を、グループの誕生からライブドア騒動までを通して描いた上下2巻の大作です。長期の取材が「記録的価値が高い」と評価され、新潮ドキュメント賞と講談社ノンフィクション賞を受賞しました。信隆、春雄、宏明という鹿内家のメディア支配の過程と、日枝久フジテレビ現会長を中心とする権力奪取の描写は迫力があります。取材のきっかけは何だったんですか。
■月刊『文藝春秋』の記者だった1992年に、内紛で揺れ始めたフジサンケイグループの取材を手がけたことです。取材を始めて1カ月ぐらいたった同年7月に、グループの鹿内宏明議長解任のクーデターが起きました。
――それから13年に及ぶ取材を続けられた。そのねばり強さには、記者として頭が下がります。
■これにかかり切りになったわけではないですけどね。ただクーデター後も水面下では鹿内、反鹿内両派の駆け引きは続いていて、また何か起きそうな予感がありました。いい情報源もできたので定期的に話を聞いていたし、両派から経営などの内部文書も手に入れていました。故人も含め100人以上に取材しました。沈黙する人も多かったですが、何度も通ううちに話してくれるようになりました。特に信隆氏の側近から話が聞けたのが大きかったですね。鹿内支配が続いていたら口は開かなかったでしょうが。
――だからこそ、ほとんど実名で書けたんですね。フジサンケイグループの主な会社には社史が存在せず、メディアとして異様ではないかと書かれていますが、鹿内家による支配の過程をはじめ、触れたくない暗闘の過去を読むと納得できます。まるで「裏の社史」のようですが、グループからのクレームはなかったんですか。
■基本的には1次情報だと信ずるに足るもので構成しましたし、間違えないように万全を期しました。クレームはありません。
――昨年暮れに、フジの日枝会長にも話を聞いています。日枝さんは春雄氏に引き立てられたので、悪口は言えない立場ですよね。一番聞きたかったのは何だったんですか。
■春雄氏の下で実質的に鹿内支配が強まった時、日枝さんはフジの常務だった。鹿内家によるグループの私物化という批判は、クーデター派の掲げたものですが、春雄氏ならよくて、宏明氏なら悪いというのは分かりにくい。春雄時代の評価を聞いたのですが、日枝さんは、鹿内支配が強まったことに「深い意味は感じなかった」と答えました。
日枝さんが、批判されることもたぶん承知で取材に応じたのは、鹿内家に対する勝利を確信していた余裕からではないでしょうか。
しかし、その直後のライブドアの攻勢は、その余裕を吹き飛ばしました。ドラマとして面白い展開で、書くほうとしては助かりましたよ。
| 石油をめぐる世界紛争地図 | |
![]() | トビー シェリー Toby Shelley 酒井 泰介 東洋経済新報社 2005-12 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
世界経済を揺り動かす石油高騰を背景に、石油と天然ガスをめぐる国際情勢を分析する。埋蔵資源はどこにあるのか、誰が何を生産しているのか、取引パターン、消費といった情報から、紛争や貧困、不平等を巻き起こす石油の功罪、石油確保のグローバル戦略、中国の動きなど、世界のエネルギー供給構造と国際政治の行方を占う。
| 教養として知っておきたい「昭和」の名経営者―ビジネスの糧になる知恵、才覚、器量 | |
![]() | 松崎 隆司 三笠書房 2005-11 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
経営の神様・松下幸之助、町工場からグローバル企業を築いたソニーの井深大と盛田昭夫、トヨタの創始者・豊田喜一郎、ホンダの本田宗一郎、阪急グループの小林一三、東急・五島慶太、サントリーの佐治敬三など、昭和を代表する経営者を取り上げる。敗戦の焦土から立ち上がり、経済大国日本への牽引力となった彼らの、時代を築くパワーと経営哲学を探る。
| チャイナリスク ある邦銀の挑戦 | |
![]() | 立石 泰則 小学館 2005-12-06 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
新年には東京三菱銀行と経営統合し、新銀行に生まれ変わるUFJ銀行だが、その前身の三和銀行は「中国に強い、が強み」と言われてきた。40年前の香港、一人の銀行マンが空港に降り立つところから、物語は始まる。香港支店を足がかりに、中国本土へ事業展開をしていく様子が描かれる。チャイナリスクを乗り越えるノウハウとは。
| プリオン説はほんとうか?―タンパク質病原体説をめぐるミステリー | |
![]() | 福岡 伸一 講談社 2005-11 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
羊のスクレイピー病、牛の狂牛病、ヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病などを引き起こす原因として、タンパク質そのものが病原体だとするプリオン説が有力となっているが、著者はあえて、プリオン説は科学的に不完全な仮説であると異を唱える。異常型プリオンタンパク質の量と感染力の関係は必ずしも量的な対応関係にないことを示し、危険部位だけを除去すれば食べても安心という考え方に警鐘を鳴らす。
| 日本の国際貢献 | |
![]() | 小浜 裕久 勁草書房 2005-11 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
日本の国際貢献を考えるとき、日本の「貧しさ」と最貧国の「貧しさ」とは違うということからスタートすべきだと、著者は書く。餓死が目前にある状況で、「絶望」がテロを生む。「人道援助はいいが軍事介入はダメ」という発想にも、軍隊の監視がなければ援助物資だって略奪されてしまう現実から目を背けてはいけないと説く。そうした思いを下敷きに、グローバリゼーションと格差、開発援助、市場経済化などの問題を通して、日本は世界でどう生きていくのかを考える。
| 「満足社会」をデザインする第3のモノサシ―「持続可能な日本」へのシナリオ | |
![]() | 大橋 照枝 ダイヤモンド社 2005-10 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
本書は「持続可能性」をキーワードに、日本の国のありようや価値観を180度変換させるためのパラダイムシフトを提案し、そのための二つのモノサシを提言したものである。また著者は、知の荒廃とディベート下手を、日本が将来かかえる大きな危険であるとして警鐘を鳴らし、第2次大戦勃発の年に生まれた著者の後続世代を本書の主たるターゲットとし、賛否両論の論陣を張る一つのひな型としてのモノサシを提供している。
一つ目は、第2次世界大戦後の日本の高度成長を支えてきたGDP成長神話というモノサシに代わる新しい尺度「人間満足度尺度=HSM(Human Satisfaction Measure)」である。HSMは、人間の幸福や満足、社会の持続可能性にとって不可避な労働、健康、教育、ジェンダー、環境、所得のデータを用い、同一基準で多国間の満足度を時系列で比較できる、著者オリジナルのモデルといえる。
環境変数として、一国の経済活動の規模を土地と水域の面積で表した「エコロジカル・フットプリント」を用いると、環境容量の5・4倍もの経済活動をしている日本のHSM値は、15カ国中11位の「低HSM国」に位置づけられる。だから今、日本人の経済拡大というモノサシのパラダイムシフトが必要であると主張している。
それではどうしたら良いのか。その答えが二つ目のスウェーデンというモノサシである。スウェーデンはHSM値で世界1位に位置づけられる。そのスウェーデンに対する調査を実施し、「日本のようなGDPの規模拡大主義で男権社会、長老支配の〓動脈系の国〓と違って、女性、若者が活性化され、弱者、移民などを大切にする〓静脈系の国〓である」と結論づける。
GDP開発の経緯や批判、HSM開発とモデルに取り込む変数の選択と理由などが第3章で詳細に記述される。労働カテゴリーのデータは「失業率」、健康は「乳児死亡率」、教育は「初等教育の就学率」、ジェンダーは「女性の4年生大学進学率」、所得は「ジニ係数」、環境に関してのみ「上水道普及率」「CO2排出量」「エコロジカル・フットプリント」の3変数で算出しており、当然のことながら3変数間で結果は異なる。
モデル開発に当たり、6尺度と各変数を測定尺度として採用する妥当性については、やや疑問が残るものの、人口、経済力で縮小均衡が避けられない日本人が、今後の生き方を問い直すきっかけとして一石を投じている書物であろう。【評者 竹内淑恵(法政大学経営学部教授)】
| 日本の人事部・アメリカの人事部―日本企業のコーポレート・ガバナンスと雇用関係 | |
![]() | サンフォード・M. ジャコービィ Sanford M. Jacoby 鈴木 良始 東洋経済新報社 2005-10 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
最近は、日本でも証券市場が企業売買の市場になってきた。ライブドア騒動以降、企業は誰のものかという問いは国民的問いともなった。経営者の行為や決定を誰がチェックするのか、それが不都合なら経営者を代えるのは誰か。経営者はどのように選ばれているのか。経営者にとって企業とは誰のものと映っているのか。これらの問いは、すべてその企業で働く人々に影響を与える。
CFO(財務担当役員)が人事責任者よりもパワーを持ち、企業を主として株主のものとみなす米国企業と、株主だけでなく従業員を含む複数のステークホールダーのものとみなす日本企業の対比ならこれまでにもあったが、本書はコーポレート・ガバナンスの問題を、財務ではなく人事の観点から捉え、アンケート調査とケース・スタディーの両面から日米比較分析を行った。
人事はキャリアの行き止まりと言われた時代もある米国と比べ、わが国では人事担当の役員や人事部長が力を持つ。他方で、最近は米国でもCEOに直属するCHO(人事担当役員)も現れつつあり、人事の職能は戦略や事業のパートナーとしての姿勢が追求されるようになった。このふたつの国に焦点を合わせて、企業のあり方を人事から眺めてみる材料を豊富に提供してくれるのがこの本だ。
日本企業は1990年代に、全体としては市場志向の株主主権モデルの方向に動いた。それにはいくつかの要因がある。たとえば、外圧、バンドワゴン(ある種、流行に乗り遅れたくないという焦り)、証券アナリストやコンサルタント、それに経済学者の声、国の指導、マスコミの取り上げ方、最終的には経営者の判断などだ。しかし、どの程度動いたかは業界によっても違うし、同じ業界でも経営者の考えによって違いがある。米国はこの間、わが国以上に市場志向に向かったものの、業界や企業ごとの多様性はかえって増大している。
本書は、もちろん経営者だけのために書かれているのではない。働く一人一人の立場で、読者は自社のありようを考えながら興味深く読み進むことができる。登場する日本企業7社は匿名だが、その気になれば識別できそうな身近な会社ばかりだ。人事の専門スタッフは人事という点から企業全体のあり方を点検しながら、変わるべき点、変えない点をしっかり議論し、戦略的人材マネジメントの行方を見極める素材としても活用してほしい書だ。【評者 金井壽宏(神戸大学大学院経営学研究科教授)】
| 文芸春秋編集長―菊池寛の心を生きた池島信平 | |
![]() | 塩沢 実信 展望社 2005-08 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
■著者インタビュー 塩澤実信(出版ジャーナリスト)
――大正12(1923)年に創刊された総合雑誌『文藝春秋』。本書では、創刊した作家の菊池寛と中興の祖である池島信平を中心に、雑誌ジャーナリズムの変遷を語っています。84年に刊行された『雑誌記者 池島信平』の復刻ですが、みどころは今回新たに加えられた約200人の直筆署名でしょうか。57年6月18日に開かれた「雑誌記者二十五年を励ます会」出席者の芳名録には小泉信三はじめ幸田文、丹羽文雄、吉川英冶、亀井勝一郎など、時代を代表する文化人が並んでいます。
■文は人なりといいますが、字もまさにそうです。大宅壮一の堂々とした書きっぷりといい、川端康成の繊細な字など、見事なものです。これだけの文化人が一出版人の会に集まるのも珍しいでしょうね。この中でどれだけ知っているか、ジャーナリストの関心の広さが試されるかもしれませんね。
――池島は菊池寛の代筆を務めるほど信頼され、その後、彼の後継者となるわけですが、菊池が狭心症の発作で急死したとき自宅に池島が居合わせたというのも、何か運命的です。
■文春は菊池寛が築いた土台を、池島が踏襲し発展させた。とはいっても雑誌は生き物です。菊池も「一人の人間は、本当の意味では、一つの時代にしか生きられない」と語ったように、池島も月刊誌の時代までの人だった。
――菊池寛が会社で毎日のように将棋を指したり、くしゃくしゃの紙幣をポケットから取り出して社員や知り合いに渡していた逸話を紹介されていますが、池島は対照的ですね。
■四国出身の親分肌だった菊池と比べて、池島は都会派でした。執筆者とは適度の距離を置き、仲間と飲みにいっても割り勘。大卒のエリートだったわけですが、その恵まれて育った池島が戦時中に海軍に入り、理由もなく殴られたり、上官の背中を流すといった生活を送ったことはかなりの衝撃だったでしょうね。同時に、庶民がどういう感情に動かされるかという現実を肌で知ることにもなる。これが戦後の雑誌編集で役立っています。
――池島の編集の特徴は何でしょう。
■米国の『リーダーズ・ダイジェスト』誌に学んだといっています。リーダイは科学記事でも事件物でも、初めの数行で読者の心をつかみ、最後まで読ませる。シュガーコーテッド、つまり砂糖でくるんだように非常に分かりやすく平易な表現を使っている。巻頭のエッセイも特徴ですが、主義主張を並べる他の総合誌に比べ、文春は敷居を低くして「さあどうぞ、お入りください」と誘っている。これが読者獲得につながっている。
――イデオロギーは追わない?
■菊池寛もいっていますが、「生活第一、芸術第二」であって、芸術第一ではない。菊池も池島も地に足のついた編集を大事にしたリアリストでした。池島は「田舎の駅長あたり」を読者層に考えていたようです。エリート官僚でもないが、一般の駅員よりやや上。そういう広い層を読者にしたことが大部数獲得に結びついたと思います。
| 人に言えない仕事はなぜ儲かるのか? | |
![]() | 門倉 貴史 角川書店 2005-11-10 売り上げランキング : おすすめ平均 ![]() 新鮮な驚きが満載の本 さおだけ屋のアングラバージョン もう少し、えげつない仕事の話があると思ったのですが…Amazonで詳しく見る by G-Tools |
合法な節税から違法な脱税まで、地下経済の研究で知られる著者が、世の中のお金のカラクリを語る。風俗ビジネスや違法ドラッグ、偽ブランドなど、あの手この手の地下ビジネスの手口から見えてくるのは、そもそも「税金とは何か」という根本の問題だ。迫り来る大増税時代に、私たちはどう対処すればよいのかを考えさせられる。
| ザ・サーチ グーグルが世界を変えた | |
![]() | ジョン・バッテル 中谷 和男 日経BP社 2005-11-17 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
インターネットの検索エンジンは、いかにビジネスを書き換え、文化を変容させたのか。株式上場から1年で時価総額11兆円を超えた成長神話を持つグーグルを中心に据え、検索エンジンの歴史や技術の進化、ライバル他社の動きなどを追う。その流れのなかで、サーチエコノミーとは何かを問い、メディアとの融合などネットビジネスの未来を占う。
| 「断る!」作法―もっと軽やかな人づきあいのための | |
![]() | 辰巳 渚 宝島社 2005-11 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
『「捨てる!」技術』の著者が提案する、豊かな人間関係のための断り方作法。贈り物やお返しの連鎖といった身の回りのことから仕事や公共の場、縁談や医療での断り方など幅広い。今の世の中は物や情報など何事にも過剰の時代だが、その過剰さを放置せず、具体的に行動して選び取る努力と、その選択を肯定する楽天性が重要という。
| 絵はがきにされた少年 | |
![]() | 藤原 章生 集英社 2005-11 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ルワンダ大虐殺で殺された母親の死体を毎日見に来る少女。アパルトヘイトが終わっても南アフリカに差別はなくならない――。一般的な日本人の生き方とはおそらく最も対極にあるアフリカで、著者は人々の生活、語られる人生の奥底に入り込んで問い続ける。「人間にとって本当に大切なものは何か」。見たままのアフリカと、彼らの言葉を細やかに描写することで、その答えを探す。埋もれたままにしてはならない言葉を伝えたいという気迫に満ちている。
| ケアのゆくえ 科学のゆくえ | |
![]() | 広井 良典 岩波書店 2005-11-23 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
高齢者ケアや心のケアなど、ケアの重要性が言われる。そうしたケアの問題と、医療や生命科学はどのようにかかわっているのか。医療政策や代替医療、コミュニティーなどの視点から見つめる。ケアを著者は人と人との間の「関係性」と捉える。そのうえで、成長・拡大なき時代の科学との関係、社会のあり方を問う。森林療法や遺伝医療、ソーシャルワークなどの分野で活躍する11人との対話も収録される。




暗闘
建築家ピンポイントレビュー
鹿内信隆の育てた花は「あだ花」として咲いた。












