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週刊ダイヤモンド「経済学者・経営学者・エコノミスト160人が選んだ2006年『ベスト経済書』」
2006年12月23日, 週刊ダイヤモンド, 118~125ページ

経済学者・経営学者・エコノミストの投票を基に選定する『ベスト経済書』。今回で9回目を迎える恒例の企画である。2006年の「最も優れた経済書」は何か?

良書が並ぶ〇六年ランキング 経済学の新潮流をつくる作も出現

2006年は経済書“豊作”の一年だった。経済学の新しい流れをつくる著作も出てきている。

1位に輝いた『ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する』(スティーヴン・D・レヴィット、スティーヴン・J・ダブナー著、東洋経済新報社)は、一見、経済学とは無縁のテーマを、インセンティブなど経済学の切り口によって分析してみせる。

教師と相撲の力士、KKK(ク・クラックス・クラン)と不動産ブローカーの共通点、麻薬の売人はなぜ母親と住んでいることが多いか、といったテーマである。

10位の大竹文雄著『経済学的思考のセンス―お金がない人を助けるには』(中公新書)もまた、結婚、賃金など多くの人が直面する具体的な現象を、経済学的に説明してみせる。16位の中島隆信著『障害者の経済学』(東洋経済新報社)も同じく、経済学が取り扱ってこなかったテーマに切り込む。

本誌書評欄の評者を務める北村行伸・一橋大学経済研究所教授は、「これら3冊のように“身近でミクロなテーマに対して、経済学がどんな答えを出せるか”というアプローチは、今後の経済学の潮流となっていく」と評価する。

2位にランクインした橘木俊詔著『格差社会―何が問題なのか』(岩波新書)は、大きな関心を呼んでいる「格差」「不平等」といったテーマについて、著者の長年の研究成果を噛み砕いて解説したもの。問題の焦点が、単身高齢者、母子家庭の実態といったように、より細かで具体的な話に移ってきていることがわかる。

3位の植田和男著『ゼロ金利との闘い―日銀の金融政策を総括する』(日本経済新聞社)は、日本銀行審議委員を務めた著者が金融政策を総括し、書き下ろした貴重な記録である。

4位に入ったトーマス・フリードマン著『フラット化する世―経済の大転換と人間の未来界』(日本経済新聞社)と、5位の伊藤邦雄編著『無形資産の会計』(中央経済社)は、共通の問題意識を土台にしている。グローバリズムの進展でフラット化する世の中において大きな意味を持つ、ノウハウ、デザイン力といった財務諸表に載ってこない資産についてまとめた労作が『無形資産の会計』だ。

日本人研究者の手によって世界的な視点で描かれた、8位の富田俊基著『国債の歴史―金利に凝縮された過去と未来』(東洋経済新報社)と同様、今後、長く読み継がれる本となるだろう。

【1位】

ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する
ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検するスティーヴン・レヴィット スティーヴン・ダブナー 望月 衛

東洋経済新報社 2006-04-28
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star経済学の対極は、実は、「道徳」だった!!
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第1位 121点 ヤバい経済学 悪ガキ教授が世の裏側を探検する
東洋経済新報社・価格一八九〇円●スティーヴン・D・レヴィット スティーヴン・J・ダブナー著/望月 衛訳

Steven Levitt/1967年生まれ。ハーバード大学卒業後、94年にマサチューセッツ工科大学で博士号取得。現在はシカゴ大学教授。「ジャーナル・オブ・ポリティカル・エコノミー」のエディターを兼務している。4児の父。

■著者インタビュー

2005年4月に発表した『ヤバい経済学(原題:Freakonomics)』は、過去10年にわたって追究してきた研究内容を、ジャーナリストのスティーヴン・J・ダブナーとの共同作業でまとめたものだ。予想外の売れ行きに正直なところ驚いている。

この本では、自らの知的好奇心に従って、これまでの経済学があまり取り扱ってこなかった疑問ばかりを取り上げ、データを検討することで、答えを探った。

現代社会を覆う倫理観を剥がし、経済学のツールを使って物事の裏側にある真実を探っていくと、驚くべき結論にたどり着くことが多い。この問題意識こそが、経済学の新分野である「フリーコノミクス」の土台をなしている。

特定の信条やイデオロギーを持たずに、看過されがちな問題に目を向けるという姿勢が、幅広い層に支持された理由だろう。

フリーコノミクスには、共通するテーマも目的もない。やろうとしたのはあくまで、現実の社会で人びとがどのように行動するかを理論的に考えることだ。この問題意識によって実社会で役立つ知識が得られる、ということでもない。

しかし、社会で広く信じられている通念を疑うことで、時には大多数が見落とす真実を発見することができる。そのことを本書を通じて学んでほしい。

現在、本書の続編に当たる本のための研究を始めたところだ。「なぜ、名医とそうでない医者がいるか」といった疑問や、「テロ」「売春」などのトピックスを取り上げたいと考えている。

■訳者インタビュー

読んでくださった皆様が本書の挑発的な部分にこちらの思ったまま乗ってくださり、感謝しています。本書が教えるのは、一見あいまいなことでも数量的な実証ができる場合が多いということです。伝聞にばかり頼っていると、そのうちデータに足元をすくわれます。

原書が150万部も売れた事実は、ウケるためには、ウケようとするよりも、自分がおもしろいと感じることを思ったようにやるのがいちばんだと示しているのでしょう。

■推薦の言葉

●奇をてらった題名だが、中身は経済学のおもしろさが詰まった良書。専門家も興味を引かれる(川崎一泰・東海大学助教授)

●実証経済学の新潮流をつくり出したベストセラー。通常、経済学の問題として扱える範囲を画期的に拡大した切り口の斬新さには脱帽(北村行伸・一橋大学教授)

●発想を変えれば、既存の経済学でここまでできることを示した快作。安易な経済学批判派に読ませたい作品(新美一正・日本総合研究所主席研究員)

●説教くさい話が苦手な人でも経済学のおもしろさに触れられる異色の本(武田浩一・法政大学助教授)

●類書に比べ、データ分析がしっかり行なわれている点が決定的に違う。相撲の八百長の経済分析について、米国人に先を越されてしまったのは日本の学者として恥ずべきこと(村澤康友・大阪府立大学教授)

●疑問の発見、仮説の設定、検証の方法、データの扱い方や解釈など、研究者として大変参考になる。久しぶりに「おもしろい」と実感した(淺羽 茂・学習院大学教授)

●経済学者の手によるなかで最もエキサイティングでおもしろい本。特に前半がよい。こういう人に経済学を習っていたらどうだっただろう?(湯本祐司・南山大学教授)

●教科書では扱われることがあまりない社会事象を経済学によって分析している。経済学に興味を持てない人にも経済学の魅力を伝えてくれる(乾 友彦・日本大学教授)

●経済学の話題の本といったら、やはりこれだろう。この本から経済学を学ぶことができる人は本当に幸せである(若田部昌澄・早稲田大学教授)

●「えっ、これも経済学?」というけれんが少し気になったが、それでも経済学のソリューションの広がりを知るのには格好の書(白石俊輔・富山大学教授)


【2位】

格差社会―何が問題なのか
格差社会―何が問題なのか橘木 俊詔

岩波書店 2006-09
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star何が問題なのか絞れません。
star「再配分」の道
star格差問題の論点と分析が分かりやすい

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第2位 76点 格差社会 何が問題なのか 岩波新書・価格七三五円●橘木俊詔著

たちばなき・としあき/1943年生まれ。経済企画庁客員主任研究員等を経て、京都大学大学院経済学研究科教授。

■著者インタビュー

格差や不平等の問題について、できるだけ多くの人に読んでもらいたいという思いで執筆したのが本書でした。大胆な政策提言も盛り込んでいます。それが高評価をいただいたのは望外の喜びです。

格差をどう受け止めるかは、その人の価値観、人生観によります。「何が悪いのか」「やむをえないのでは」と思う人もいるでしょう。しかし、私は「格差拡大は明らかに好ましくない現象」と考えます。特に対策を講じなければいけないのは、貧困層の増大です。

社会保障制度や公教育がどれほど弱体化しているか、ぜひ実態を見据えていただきたい。日本は、これらに対する支出面を考えてみると、すでに「小さな政府」となっています。これをさらに削っていって、この国は本当に大丈夫なのでしょうか?

現在、格差とも関連の深い教育や家族についての研究に取り組んでいます。次作ではこれらの問題を世に問いたいと思っています。

■推薦の言葉

●格差については実感があっても、実証的に説明せよと言われると戸惑うものである。本書は格差を実証し、何が問題で、何をどうすればよいのか読者に問いかける。説得力がある(山下壽文・佐賀大学教授)

●格差に関する議論を総括し、実証的な視点から格差問題の核心を整理している。最も関心の高い問題に切り込んでいることを評価(加藤久和・明治大学教授)

●日本の格差問題は「見せかけ」ではなく、きわめてシリアスな問題であることを説得的に論じる(〓橋克秀(たかはし・かつひで)・神戸大学助教授)

●現在の日本の所得格差の本質を明確にする画期的な書(大田英明・愛媛大学教授)

●今年の経済論壇で最大のテーマとなった格差問題について、多面的に分析しており、バランスが取れている(上野泰也・みずほ証券チーフマーケットエコノミスト)


【3位】

ゼロ金利との闘い―日銀の金融政策を総括する
ゼロ金利との闘い―日銀の金融政策を総括する植田 和男

日本経済新聞社 2005-12
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おすすめ平均 star
star日銀の金融政策を理解する上で十分とは言わないが、参考になる。但し、高名な学者の著書だからといって、鵜呑みにしないように。
starコンパクトな良書。惜しむらくは回顧録的要素の欠如か。
star量的緩和解除を考える

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第3位 68点 ゼロ金利との闘い 日銀の金融政策を総括する 日本経済新聞社・価格一七八五円●植田和男著

うえだ・かずお/1951年生まれ。日本銀行審議委員等を経て、東京大学大学院経済学研究科教授、経済学部長。

■著者インタビュー

思いがけず多くの方がたから高い評価をいただき光栄です。

本書は、二〇〇六年三月に解除された量的緩和政策、その前のゼロ金利政策の根幹をなしていた、いわゆる「時間軸政策」について経済理論的な解釈を試みたものです。政策を自ら担当していた者がそれについて語るということには禁欲的であるべきでしょうが、アカデミックなものなら許されるかなと思って執筆した次第です。

日本銀行にいたときには、学界の金融政策理解、批判等に強い不満を持っていました。しかし、日本銀行側の説明も不十分だったかもしれません。本書がそうしたギャップを少しでも埋めるのに役立てば幸いです。

現在は残念ながら学部長という毎日が雑用の職にあり、アカデミックなことを考える余裕がほとんどありません。ですが、しばらく充電の期間を経た後に、金融やマクロ経済学の分野で新たなテーマに取り組むことができればと思っています。

■推薦の言葉

●金融政策の基礎となる専門理論についてわかりやすくまとめられた本は今までなかった。理論だけでなく、政策効果の実証分析までも図表で示されている(永濱利廣・第一生命経済研究所主任エコノミスト)

●ゼロ金利政策、量的緩和の政策決定者だった著者がその功罪をクリアに解説する。将来のマクロ政策への示唆に富む(加藤 出・東短リサーチ・チーフエコノミスト)

●時間軸効果を中心に、量的緩和政策の効果を言論的、実証的に検証する視点が新鮮(建部正義・中央大学教授)

●未曾有の経済危機に立ち向かった金融政策決定の現場から、理論的な解釈を与えている(大野正智・福島大学助教授)

●ゼロ金利と量的緩和の政策効果について、理論と実証の両面から明快な分析がなされている(中里 透・上智大学助教授)


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