メイン > 朝日新聞日曜版『書評』 > 2006年12月24日

池上冬樹 書評委員お薦め「今年の3点」

(1)

あなたに不利な証拠として
あなたに不利な証拠としてローリー・リン ドラモンド Laurie Lynn Drummond 駒月 雅子

早川書房 2006-02
売り上げランキング : 277

おすすめ平均 star
starあなたに不利な証拠として
star警察小説を超えた人間ドラマ
star”死臭”あなたには想像つきますか?

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(2)

銀色の翼
銀色の翼佐川 光晴

文藝春秋 2006-06
売り上げランキング : 27403

おすすめ平均 star
star手にしたら端麗な小説だった
star痛み

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(3)

アメリカ新進作家傑作選〈2005〉
アメリカ新進作家傑作選〈2005〉フランシン プローズ Francine Prose 馬場 敏紀

DHC 2006-07
売り上げランキング : 17718


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(1)は本紙で書評した中から一冊。無名の新人のデビュー作なのに多くの人に読まれ、支持され、久々に書評家としての喜びを味わうことができた。女性警官たちの苦悩を徹底したリアリズムで描ききった大傑作です。書評にも書いたが、これほど“心が震える”小説は滅多にないでしょう。

(2)は書評したかった本から一冊。カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』(早川書房)も忘れがたいが、いささか注目度の低い佐川作品を。イシグロ同様、生きることの困難さを正面からしかと見据えている。“生きる手触り”を読者の内面に刻み込むような文章と感覚も素晴らしい。

(3)は解説を担当した本から一冊。(3)は毎年担当しているシリーズの新作だが、驚くほど多様な個性と技巧をもつ新人が多く、読んでいて圧倒される。日本の純文学の新人よりもずっとレベルが高い。注目!

■2006/12/24, 朝日新聞 朝刊, 11ページ

赤澤史朗 書評委員お薦め「今年の3点」

(1)

兵士と軍夫の日清戦争
兵士と軍夫の日清戦争大谷 正

有志舎 2006-05-30
売り上げランキング : 411988


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(2)

近代天皇制と古都
近代天皇制と古都高木 博志

岩波書店 2006-07
売り上げランキング : 44559


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(3)

ポーランドのユダヤ人―歴史・文化・ホロコースト
ポーランドのユダヤ人―歴史・文化・ホロコーストフェリクス ティフ Feliks Tych 阪東 宏

みすず書房 2006-07
売り上げランキング : 32403


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書評で取り上げるべきであったが、取り上げられずに終わった本3点である。

(1)は、東北の地方新聞での日清戦争記事を扱って、戦争と地元出身の兵士や軍夫、そして地域との関わりを描いた研究である。軍の検閲が十分にされていない前線からの手紙や日記が、日清戦争時にはこれほど多く地方紙に掲載されていたとは知らなかった。

(2)は、日本の文化的伝統の中心としての天皇論を、具体的に検討したものである。伝統の証しである文化財の保存される場として、「古都奈良」「古都京都」の像(イメージ)がつくられ、実際に陵墓なども整備されていった過程を論証している。

(3)は、第2次世界大戦中のポーランドのゲットーや強制収容所における迫害の全体像を、ユダヤ人側から描こうとしたもの。さらに戦後のポーランドにおいてまで、大量殺戮や迫害があったことも描かれている。

■2006/12/24, 朝日新聞 朝刊, 11ページ

角田光代 書評委員お薦め「今年の3点」

(1)

ネオンと絵具箱
ネオンと絵具箱大竹 伸朗

月曜社 2006-10
売り上げランキング : 75628


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(2)

昼の学校 夜の学校
昼の学校 夜の学校森山 大道

平凡社 2006-08-26
売り上げランキング : 24405

おすすめ平均 star
star含蓄に富む言葉

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(3)

わたしを離さないで
わたしを離さないでカズオ イシグロ

早川書房 2006-04-22
売り上げランキング : 256

おすすめ平均 star
starこの物語に出会えたことに感謝
star現代科学文明への批判ではなく、生きることに真摯であるかどうかを問いかける小説として読む
star主人公の視点の背景を考えさせられる

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今年、東京都現代美術館で行われた「全景展」に行き、何かを作りたいという、まったく飾り気のない気持ちが、剥き出しのまま塊になって展示されている、という印象を受けた。

(1)では、その剥き出しの塊が、ほろほろと言葉で解きほぐされる。著者が何を見て心を動かされるかが直接的にわかり、こちらも心を等しく強く動かされる。

(2)は、学生と写真家の一問一答式で構成されている。どんな質問でもできる空気、どんな質問にも本気で答える写真家の誠実さが伝わってくる。自分で選んだ何かに本気で関(かか)わるということを教えられた。

(3)は、驚愕の事実を根底に置きつつ、それに揺さぶられることのない静かな筆致で、運命と人の関係性を描き出している。抗いようのない運命のなかで、どれだけ人は自由を獲得できるのか。そんなことを考えさせる小説だった。

■2006/12/24, 朝日新聞 朝刊, 11ページ

北田暁大 書評委員お薦め「今年の3点」

(1)

所有と国家のゆくえ
所有と国家のゆくえ稲葉 振一郎 立岩 真也

日本放送出版協会 2006-08
売り上げランキング : 6374

おすすめ平均 star
star壮大な無駄話に終わっている
star道徳と人間の本性

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(2)

徹底討論 私たちが住みたい都市 身体・プライバシー・住宅・国家 工学院大学連続シンポジウム全記録
徹底討論 私たちが住みたい都市 身体・プライバシー・住宅・国家 工学院大学連続シンポジウム全記録山本 理顕

平凡社 2006-02-02
売り上げランキング : 38456

おすすめ平均 star
star私たちが住みたい都市とは

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(3)

検証・若者の変貌―失われた10年の後に
検証・若者の変貌―失われた10年の後に浅野 智彦

勁草書房 2006-02
売り上げランキング : 5841

おすすめ平均 star
star題名に期待しましたが・・。
star若者に偏見を持つなかれ
star冷静な現代若者像を知るために。

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あくまで「自分限定ルール」なのだが、基本的に、対談本や論文集を書評の対象から外してきた。そこで、印象に残った三つの対談本、論文集を紹介したい。

(1)は、社会哲学に造詣が深い経済学者と、現実を理論的に掘り下げていくさいの粘り強さで知られる社会学者との対談。「所有」「国家」「不平等」といった問題にかんして、緊張感溢れる議論が展開されている。

(2)では、それぞれの世界の一線で活躍する建築家、哲学者、社会学者たちが、「身体」「プライバシー」「住宅」「国家」といった論点について、濃度の高い「異種格闘技」を繰り広げている。

(3)は、紋切り型の俗流若者論を批判すべく編まれた論文集。気鋭の社会学者たちによる実証的かつ理論的な若者研究が収められている。「最近の若者は……」と愚痴る前に、まずは読んでおいてもらいたい一冊である。

■2006/12/24, 朝日新聞 朝刊, 12ページ

柄谷行人 書評委員お薦め「今年の3点」

(1)

法と掟と―頼りにできるのは、「俺」と「俺たち」だけだ!
法と掟と―頼りにできるのは、「俺」と「俺たち」だけだ!宮崎 学

洋泉社 2005-12
売り上げランキング : 5516


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(2)

アメリカ憲法の呪縛
アメリカ憲法の呪縛シェルドン・S. ウォリン Sheldon S. Wolin 千葉 眞

みすず書房 2006-07
売り上げランキング : 38649


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(3)

思索日記〈1〉1950-1953 叢書・ウニベルシタス
思索日記〈1〉1950-1953     叢書・ウニベルシタスハンナ アーレント ウルズラ ルッツ インゲボルク ノルトマン

法政大学出版局 2006-03
売り上げランキング : 36314

おすすめ平均 star
starスルメのように噛みくだきたい本

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書評したのちに気づいたのだが、私が挙げた三冊の本には共通した主題がある。第一に宮崎学は、掟(おきて)をもったさまざまな「個別社会」と、法的規範にもとづく「全体社会」を区別する。日本では明治維新以来、さまざまな個別社会を解体し、すべてを全体社会に吸収することによって、急速な近代化をとげた。ゆえに、自治的な個別社会が弱い。

つぎに、ウォリンは米国に関して宮崎とほぼ同じことを述べている。十八世紀アメリカの民主主義はさまざまな「中間団体」の連合にあったが、一七八八年に成立した憲法はそれを破壊し、人民という名の下に、国家主権の無制約な拡張をもたらすものであった。それが今日に及ぶ。ウォリンはそれに対抗する鍵を、宮崎と同様に中間団体=個別社会の回復に求めている。最後に、アーレントはこのような問題について哲学的なレベルで思索している。

■2006/12/24, 朝日新聞 朝刊, 12ページ

斎藤美奈子 書評委員お薦め「今年の3点」

(1)

快適生活研究
快適生活研究金井 美恵子

朝日新聞社 2006-10
売り上げランキング : 2892

おすすめ平均 star
star金井ワールド内小説

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(2)

青猫家族輾転録
青猫家族輾転録伊井 直行

新潮社 2006-04-27
売り上げランキング : 25996

おすすめ平均 star
star主人公と娘の関係にリアル感がない
star昔好きだった人と再会したみたいな、複雑な読後感
star「愛の原理」よりも「公正・公平の原理」

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(3)

消える男
消える男イッセー尾形

文藝春秋 2006-07
売り上げランキング : 11765

おすすめ平均 star
starフラフラ男

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今年は小説を取り上げる機会が少なかったので、極上のユーモアに富んだ大人のための小説を3点。

(1)は団塊世代の老後をふと連想させる連作短編集。60歳を目前に結婚し、旧友に長い手紙を書き続ける女性。60歳を機に「よゆう通信」なる個人通信を発行する建築家。自己愛の強い中高年の表現欲求に、はてさて周囲の反応は。

(2)は51歳の「僕」が語る仕事と家族の物語。商社をやめて起こした会社も順風満帆とはいかず、高校生の娘は何か変。庄司薫や村上春樹の主人公が不惑をすぎて人生に直面したら……。そんな感覚にとらわれる中年のための「僕小説」。

(3)の主役はパソコンの個人指導を生業とする42歳の独身男。依頼に応じて彼が各地に赴くと、待っているのは風変わりな人ばかり。とぼけたキャラクターとシュールな展開が、虚実の皮膜へと読者を誘い出す。

■2006/12/24, 朝日新聞 朝刊, 12ページ

重松清 書評委員お薦め「今年の3点」

(1)

黄泉の犬
黄泉の犬藤原 新也

文藝春秋 2006-10
売り上げランキング : 350

おすすめ平均 star
star思考プロセスの記号化
starオフィシャルサイトのほうも合わせて・・・
star世紀末航海録の行方

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(2)

戦後戦記 中内ダイエーと高度経済成長の時代
戦後戦記 中内ダイエーと高度経済成長の時代佐野 眞一

平凡社 2006-06-13
売り上げランキング : 70489

おすすめ平均 star
starダイエーを通して戦後日本を識る
star佐野眞一による中内ダイエーの総括

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(3)

東京番外地
東京番外地森 達也

新潮社 2006-11-16
売り上げランキング : 10175

おすすめ平均 star
star読んでみると意外と重い・・・

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「戦後」という時代について深い示唆を与えてくれた三冊を選んだ。麻原彰晃をめぐる「証言」が衝撃的な(1)だが、読み込む射程を長くとれば、それは「戦後」の陰画/因果にもなるだろう。そして、藤原新也氏は一貫して「戦後」を問いつづけてきたのではないか、とも気づくのだ。

(2)は、多彩な執筆陣による「戦後=スーパーマーケットの時代」の論考も興味深いが、なにより編著者の佐野眞一氏と堤清二氏の対論に惹かれた。本書ではまだプロローグの段階だが、ぜひ対話をつづけて一冊にまとめてほしい。

(3)の森達也氏もまた、現在の東京の中にある欠落や過剰を巡りながら、「戦後・後」の時代に息づく「戦後」をもたどっていたのではないか。さらに、藤原新也氏の『東京漂流』と(3)を引き比べて読むことで、この四半世紀の「戦後」の変容も見えてくるはずだ。

■2006/12/24, 朝日新聞 朝刊, 12ページ

小林良彰 書評委員お薦め「今年の3点」

(1)

検証 国家戦略なき日本
検証 国家戦略なき日本読売新聞政治部

新潮社 2006-11-22
売り上げランキング : 1836


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(2)

小泉の勝利 メディアの敗北
小泉の勝利 メディアの敗北上杉 隆

草思社 2006-11-25
売り上げランキング : 1597

おすすめ平均 star
star一国のリーダーとはどうあるべきか
star掛け値なしに面白い
star小泉政権の検証とは

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(3)

「脱日」する韓国―隣国が日本を捨てる日
「脱日」する韓国―隣国が日本を捨てる日澤田 克己

ユビキタスタジオ 2006-07
売り上げランキング : 55015

おすすめ平均 star
star売らんかな、の類の『なんちゃって主観本』にサヨウナラ
star新たな韓国論の登場
star存在感を喪失する日本

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現実政治に関する今年のベスト3(順不同)を紹介したい。

(1)資源のない日本が生き残るためには科学技術とその製品化のための産学連携が不可欠だが、そのことに驚くほど無関心な政治家が多い。本書は、マス・メディアの「政治部」の目線で日本の技術戦略や海洋戦略などの問題点を描き、将来、アジアの他国の後塵を拝することにならぬよう現状に警鐘を鳴らした力作。

(2)小泉政権の五年間に書いた記事を自ら点検、小泉政権を再検証したもの。権力を監視するためには自分も正直であらねばならぬとのフリージャーナリストの著者の姿勢に敬服したい。

(3)韓国では、「反日」は時代遅れであり、日本は外国の一つに過ぎない。今は日本を理解してもらう努力が必要だ、と韓国勤務が長かったジャーナリストは本書で説く。現代韓国の深層を解明した好書。

■2006/12/24, 朝日新聞 朝刊, 12ページ

酒井啓子 書評委員お薦め「今年の3点」

(1)

ジハード―イスラム主義の発展と衰退
ジハード―イスラム主義の発展と衰退ジル ケペル Gilles Kepel 丸岡 高弘

産業図書 2006-04
売り上げランキング : 242581

おすすめ平均 star
starイスラム主義の比較政治学

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(2)

イスラーム―社会生活・思想・歴史
イスラーム―社会生活・思想・歴史小杉 泰 江川 ひかり

新曜社 2006-07
売り上げランキング : 156384

おすすめ平均 star
starイスラーム理解をぐんぐん鍛える

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(3)

社会学入門―人間と社会の未来
社会学入門―人間と社会の未来見田 宗介

岩波書店 2006-04
売り上げランキング : 938

おすすめ平均 star
starひとつの学問の門をくぐるということ。
star魂に届く学術書
star見田社会学の「交響圏」

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(1)は、フランスのイスラーム研究第一人者が、9・11に至る現代のイスラーム主義運動の興隆と衰退を論じた大著。イスラーム主義の現在を「袋小路」と評する点には違和感があるが、9・11以降の運動を、袋小路に追い詰められた過激化とみなして分析した次作『ジハードとフィトナ』は、本書に先立ち邦訳刊行済みである。

(2)は、日常生活に組み込まれたイスラームのありようを若手研究者たちが解説。クルアーン(コーラン)を学ぶムスリムの姿などがビビッドに描かれる。

(3)評者が数十年前に社会科学に触れた頃、著者のゼミは人気授業だった。専攻する国際政治への関心と、見田氏が紡ぐ人間解放論の魅力の間で、評者はそれを融合する国際社会研究ができないものかと夢想する学生だったが、時を経てその夢の実現に到達できていない自分の不勉強を、改めて痛感させられる。

■2006/12/24, 朝日新聞 朝刊, 12ページ

陣内秀信 書評委員お薦め「今年の3点」

(1)

母の声、川の匂い―ある幼時と未生以前をめぐる断想
母の声、川の匂い―ある幼時と未生以前をめぐる断想川田 順造

筑摩書房 2006-01
売り上げランキング : 55498

おすすめ平均 star
star人類学者、故郷に帰る

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(2)

江戸の橋
江戸の橋鈴木 理生

三省堂 2006-04
売り上げランキング : 77549


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(3)

壊れゆく景観―消えてゆく日本の名所
壊れゆく景観―消えてゆく日本の名所川村 晃生 浅見 和彦

慶應義塾大学出版会 2006-10
売り上げランキング : 58157


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(1)は、東京・深川生まれの文化人類学者が、パリ留学、長いアフリカでの調査研究の後に故郷を再発見し、思いを込めて叙述した水の町の場所論、文化論。記憶をつむぎ、自分史と重ね、下町とは何かを深層から問う筆致は文学にも近い。

(2)は、名著『江戸の川・東京の川』の著者が橋について歴史の立場から徹底検証。埋め立て、水路整備、架橋の関係を論じ、橋の構造、材料、施工、維持管理を詳細に示して、水都建設の実態解明に新たな光を当てた。

(3)は、文学の立場から海浜や川等の名所に注目。古典に謳われた多数の歌を通して風景の価値と日本人の美意識を論ずる。同時に、その豊かな資産を経済と技術の力で破壊する現状を鋭く批判。筆に力がこもる。

■2006/12/24, 朝日新聞 朝刊, 12ページ

酒井啓子 書評委員お薦め「今年の3点」

(1)

ジハード―イスラム主義の発展と衰退
ジハード―イスラム主義の発展と衰退ジル ケペル Gilles Kepel 丸岡 高弘

産業図書 2006-04
売り上げランキング : 242581

おすすめ平均 star
starイスラム主義の比較政治学

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(2)

イスラーム―社会生活・思想・歴史
イスラーム―社会生活・思想・歴史小杉 泰 江川 ひかり

新曜社 2006-07
売り上げランキング : 156384

おすすめ平均 star
starイスラーム理解をぐんぐん鍛える

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(3)

社会学入門―人間と社会の未来
社会学入門―人間と社会の未来見田 宗介

岩波書店 2006-04
売り上げランキング : 938

おすすめ平均 star
starひとつの学問の門をくぐるということ。
star魂に届く学術書
star見田社会学の「交響圏」

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(1)は、フランスのイスラーム研究第一人者が、9・11に至る現代のイスラーム主義運動の興隆と衰退を論じた大著。イスラーム主義の現在を「袋小路」と評する点には違和感があるが、9・11以降の運動を、袋小路に追い詰められた過激化とみなして分析した次作『ジハードとフィトナ』は、本書に先立ち邦訳刊行済みである。

(2)は、日常生活に組み込まれたイスラームのありようを若手研究者たちが解説。クルアーン(コーラン)を学ぶムスリムの姿などがビビッドに描かれる。

(3)。評者が数十年前に社会科学に触れた頃、著者のゼミは人気授業だった。専攻する国際政治への関心と、見田氏が紡ぐ人間解放論の魅力の間で、評者はそれを融合する国際社会研究ができないものかと夢想する学生だったが、時を経てその夢の実現に到達できていない自分の不勉強を、改めて痛感させられる。

■2006/12/24, 朝日新聞 朝刊, 12ページ

小池昌代 書評委員お薦め「今年の3点」

(1)

秋の四重奏
秋の四重奏バーバラ ピム Barbara Pym 小野寺 健

みすず書房 2006-05
売り上げランキング : 3975


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(2)

小説の読み書き
小説の読み書き佐藤 正午

岩波書店 2006-06
売り上げランキング : 1227

おすすめ平均 star
star文体にこだわってみると、新しい何かが見えてくるかもしれない気分になる一冊
star小説を益々好きにさせる一冊
star小説を読むとき、書き直すつもりで

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(3)

海に住む少女
海に住む少女シュペルヴィエル 永田 千奈

光文社 2006-10-12
売り上げランキング : 2708

おすすめ平均 star
star「異」なるものとの接触

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(1)の余韻は思いの外、深い。七〇年代のロンドンを背景に、定年前後の同僚男女四人が描かれる。恋人でも家族でもない、「同僚」という距離感が新鮮だった。英国的な成熟した関係の真髄は、もしかしたらこの言葉の内にある? もたれあわない冷ややかな距離を縮めることなく堪えて生きる彼ら。感情の荒波を沈め、現実を直視し、個を守り、ぎりぎりまで生きてばたりと死ぬ。その後の空虚は深いけれども、死にさえも謹厳なユーモアが漂う。センチメンタルのかけらもない。

(2)は、文体から読み解く小説案内。考える余白をたっぷり含んだ本書の文体こそ魅力的。旧知の作品が、めりめりと音をたてて新鮮な容貌で現れいでる。

(3)は、新訳で読む古典。美しい幻想譚の枠からはみだす、野性的な生命のほとばしり。宇宙の孤独に突き落とされる。シュペルヴィエルって仏教的だ。

■2006/12/24, 朝日新聞 朝刊, 12ページ

最相葉月 書評委員お薦め「今年の3点」

(1)

いのちの始まりの生命倫理―受精卵・クローン胚の作成・利用は認められるか
いのちの始まりの生命倫理―受精卵・クローン胚の作成・利用は認められるか島薗 進

春秋社 2006-01
売り上げランキング : 18139


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(2)

死ぬ権利
死ぬ権利香川 知晶

勁草書房 2006-10-10
売り上げランキング : 97001


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(3)

スローフードな日本!
スローフードな日本!島村 菜津

新潮社 2006-02-23
売り上げランキング : 10012

おすすめ平均 star
starお皿の外への想像力をいかに鍛えるか
star食で癒すのではなく、食と離れたかたちで癒す気持ち

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脳死臨調が「生命の終わり」について討議したとすれば、クローン羊誕生以降行われたクローンやES細胞などヒト胚の作成と使用をめぐる審議は、「生命の始まり」と科学技術に焦点をあてた日本初の議論となるはずだった。(1)は、生命倫理専門調査会の委員として審議に携わった宗教学者による報告書。「挫折」と評された調査会が置き去りにしたものを検証する。

(2)は、人工呼吸器装着の是非をめぐって争われた世界的に有名な「カレン」裁判の経緯と米国の生命倫理の展開を追う。死を権利として主張せねばならない社会の歪さを思う。早急に向き合わねばならない課題。

(3)は、日本にスローフード運動を紹介した著者が、食生活を立て直すべく努力する国内の農の現場を取材した力作。水俣で「地元学」を創始した吉本哲郎氏の「農家っちゃ、何ね」という問いにドキリとする。

■2006/12/24, 朝日新聞 朝刊, 12ページ

香山リカ 書評委員お薦め「今年の3点」

(1)

オサマ・ビン・ラディン発言
オサマ・ビン・ラディン発言ブルース・ローレンス

河出書房新社 2006-08-29
売り上げランキング : 15943


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(2)

ユダの福音書を追え
ユダの福音書を追えハーバート・クロスニー

日経ナショナル ジオグラフィック社/日経BP出版センター 2006-04-29
売り上げランキング : 7703

おすすめ平均 star
star翻訳の力不足
star史上最も有名な裏切り者を巡る物語
starスリリングなドキュメンタリー

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(3)

日本テレビとCIA 発掘された「正力ファイル」
日本テレビとCIA 発掘された「正力ファイル」有馬 哲夫

新潮社 2006-10-17
売り上げランキング : 105065

おすすめ平均 star
star放送と通信は軍事と密接な関係がある
star米国の反共活動の全貌を描く。
starジャパンロビーが面白い

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今年はノンフィクションの当たり年。すべての情報がネットやテレビなど「モニター優先」になりがちな今、渾身の調査、入念な取材を経て記された書物の迫力はときに映像を超える。

信じがたいエネルギーを注ぎビン・ラディンのすべての発言を網羅した(1)は、短い映像で切り取られたイメージがいかに不確かなものかを教えてくれる。テロの是非云々ではなく、文字でなければ伝えられないものがあるという例として、あえて選んだ。

1700年前のパピルス文書の発見と解読のドラマ(2)も、日本へのテレビ導入はアメリカの情報戦略だったことを探る(3)も極上のミステリー級の面白さ。ほかにもフランシス・フクヤマ『アメリカの終わり』、佐藤優『獄中記』など、“読みごたえのある本”が目立ったが、ベストセラーになるのは相変わらず「簡単に読めてお得で、すぐに忘れられる本」のようだ。

■2006/12/24, 朝日新聞 朝刊, 12ページ

山下範久 書評委員お薦め「今年の3点」

(1)

シェイクスピアの驚異の成功物語
シェイクスピアの驚異の成功物語スティーヴン グリーンブラット Stephen Greenblatt 河合 祥一郎

白水社 2006-09
売り上げランキング : 33593

おすすめ平均 star
star夢中になった
star演劇・映画好きには見逃せない必読の書
star人生

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(2)

民族と帝国
民族と帝国アンソニー・パグデン 立石 博高 猪原 えり子

ランダムハウス講談社 2006-10-12
売り上げランキング : 8631


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(3)

飛び道具の人類史―火を投げるサルが宇宙を飛ぶまで
飛び道具の人類史―火を投げるサルが宇宙を飛ぶまでアルフレッド・W. クロスビー Alfred W. Crosby 小沢 千重子

紀伊國屋書店 2006-05
売り上げランキング : 60736

おすすめ平均 star
starパズルがサーっと一枚の絵に再構成されていく爽快感

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書評するつもりで臨みながら、それぞれ異なる理由で果たせず、しかしそのまま年を越すに忍びない三点を選んだ。

(1)は、滅法面白いシェークスピアの伝記。しかし、新歴史主義の先鋭的理論家の手になる本書は、読み物としての面白さ以上の意義をじっくり読み込みたい。本格的な書評が待たれる一書。

(2)は、日本では紹介が遅れている大物歴史家の講演録。専門の近世ヨーロッパ史のフィールドで培われた、イデオロギーや世界観の側面を重視する独自の帝国論で、人の移動の世界史がダイナミックに描かれる。多くのひとに読みやすい良書。

(3)は、モノの次元から人類史を語らせたら当代随一の著者による作品。すでに邦訳のある前二著と比べると若干散漫な印象もあるが、「火を投げる」というコンセプトで、有史以前から現代まで筋を通し切る筆力はさすが。

■2006/12/24, 朝日新聞 朝刊, 13ページ

高橋伸彰 書評委員お薦め「今年の3点」

(1)

経済学の教養
経済学の教養根井 雅弘

NTT出版 2006-10-13
売り上げランキング : 7803

おすすめ平均 star
star経済学の「教養」とは何であろうか?

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(2)

持続可能な福祉社会―「もうひとつの日本」の構想
持続可能な福祉社会―「もうひとつの日本」の構想広井 良典

筑摩書房 2006-07
売り上げランキング : 2828

おすすめ平均 star
starオルタナティブな社会像の提案―もうひとつの社会モデル
star骨太の知的議論
star半端ではない学術書です

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(3)

世代間衡平性の論理と倫理
世代間衡平性の論理と倫理鈴村 興太郎

東洋経済新報社 2006-07
売り上げランキング : 41528


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書評の機会を逸した今年の良書から3冊。根井氏は(1)の冒頭で「知識の広さは必ずしも『教養』の深さに結びつかないのではないか」と問う。膨大な量の古典を「深く」読みこなし、優れた経済思想の論考を数多く公表してきた著者の言葉だけに重みがある。

社会保障や環境保護をめぐり政策提言から哲学的考察まで幅広い研究で定評がある広井氏は、(2)で経済成長に依存しない「もう一つ」のビジョンを提示する。しかし、そのキーワード「持続可能」を世代間の社会的選択問題として捉え直した場合、未だ誕生していない将来世代の生活や幸福を維持するために、現在生きている世代に「節約」を強いることが、公平や公正の観点から正しい選択かどうかは一概に判断できない。

(3)は、そうした規範の問題に挑戦する「新たな世代学の基礎を模索した共同研究の成果」である。

■2006/12/24, 朝日新聞 朝刊, 13ページ

中条省平 書評委員お薦め「今年の3点」

(1)

うらなり
うらなり小林 信彦

文藝春秋 2006-06
売り上げランキング : 3958

おすすめ平均 star
star思わず引き込まれて、一気に読んでしまった
star静かに生きたひと
starこれは面白い本です。

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(2)

トリュフォーの映画術
トリュフォーの映画術アンヌ ジラン Anne Gillain 和泉 涼一

水声社 2006-09
売り上げランキング : 98384


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(3)

西洋絵画の巨匠 カラヴァッジョ
西洋絵画の巨匠 カラヴァッジョ宮下 規久朗

小学館 2006-11
売り上げランキング : 2608

おすすめ平均 star
star美しい図版に丁寧な解説

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バルト『ラシーヌ論』、ヒューストン『王になろうとした男』、中島らも『何がおかしい』といったベスト級は本紙で書評したので、そこから漏れた三点を。

(1)今年の日本小説のベスト。もう一つの「坊っちゃん」という趣向から出発しながら、坊っちゃん以外の登場人物の人生の苦さと哀(かな)しみを凝視し、それを読むことの快楽に転ずる作者の腕前にただただ感服。

(2)トリュフォーの全インタビューを年代順に一つの流れにした編集も巧いが、それより何より、映画術をこえて自分の人生をある時は率直に、ある時は思わず語ってしまうトリュフォーの人間性に魅せられる。

(3)カラヴァッジョの主な作品を極上のカラー印刷で1冊に封じこめ、過不足ない解説を付した本書は、この異端の画家の日本語で読める決定版画集といってよい。しかもこの廉価。美術ファンは黙って買うべし。

■2006/12/24, 朝日新聞 朝刊, 13ページ

巽孝之 書評委員お薦め「今年の3点」

(1)

テヘランでロリータを読む
テヘランでロリータを読むアーザル ナフィーシー Azar Nafisi 市川 恵里

白水社 2006-09
売り上げランキング : 22403

おすすめ平均 star
starこの本の本当の意図は?
starおもいやりの心を養うための想像力

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(2)

マンハッタンのKUROSAWA―英語の字幕版はありますか?
マンハッタンのKUROSAWA―英語の字幕版はありますか?平野 共余子

清流出版 2006-10
売り上げランキング : 25070

おすすめ平均 star
star裏方の苦労に感動しましたが……

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(3)

ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉
ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉飛 浩隆

早川書房 2006-10
売り上げランキング : 8430

おすすめ平均 star
starきました
starきたー!
star待ってましたよ

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種々の理由で書評しなかったものから選ぶ。

(1)は三年前に原著を読んだときの衝撃がいまも忘れられない。著者はふつう政治とは無縁とみなされるオースティンやフィッツジェラルドなど英米文学のヒロインに注目し、そこに全体主義のみならず文学抑圧の恐怖とそれを打開するための道筋を喝破する。あくまでイラン女性として「読む」ことで自身の物語を「書こう」とする蛮勇が凄い。

(2)はニューヨークで日米文化交流を促進するジャパン・ソサエティーで長く映画部門を指揮してきた著者が、作家ソンタグらとともに日本映画普及に奮闘した歩みを語る感動的自伝。

(3)は疑いなく今年度日本SF最高の収穫。ティプトリーらアメリカSFの精鋭のみならずファウルズなどイギリス文学の巨匠からも多くを吸収し、しかも独自の仮想現実世界を構築してみせた手腕に拍手!

■2006/12/24, 朝日新聞 朝刊, 13ページ

野口武彦 書評委員お薦め「今年の3点」

(1)

下流喰い―消費者金融の実態
下流喰い―消費者金融の実態須田 慎一郎

筑摩書房 2006-09
売り上げランキング : 151

おすすめ平均 star
star今も昔も借金地獄
starあっという間に読めました
star消費者金融パージだけでは問題は解決しない

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(2)

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来
若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来城 繁幸

光文社 2006-09-15
売り上げランキング : 152

おすすめ平均 star
starまったくその通りですね
star「解決策」以外は星5つ
star年功序列が奪う未来

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(3)

論争 格差社会
論争 格差社会文春新書編集部

文藝春秋 2006-08
売り上げランキング : 2070

おすすめ平均 star
star相対的視座
star議論に振り回されないために
star冒頭の大竹文雄だけ読む価値あり

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江戸の「その日暮らし」層は、幕末に徳川幕府を沈める最底層の軟泥になった。低所得層はしだいに不安定さを増して、いつかは国家の重心を傾ける。

(1)は、多重債務者をターゲットに、死ぬまで生き血を絞り続けるヤミ金融の実態を調べた迫真のルポルタージュである。貧困層に寄生して際限なく肥え太る金融業界の現段階がわかる。

(2)は、現在の「好況」の底辺で正社員の半分以下の賃金で働かされる派遣や請負、フリーターなど「使い捨てられる若者」の階層に注目。すぐ職場をやめる若者への非難ではなく、それを恒久化して未来を奪う雇用構造の批判である。

(3)は、「格差学入門」というべき手頃な一冊。今や流行語を越えて日常用語と化した「格差」をめぐる意見の対立を通して問題の輪郭を浮かび上がらせる。見方に論者の社会的地位が反映していて面白い。

■2006/12/24, 朝日新聞 朝刊, 13ページ

渡辺政隆 書評委員お薦め「今年の3点」

(1)

反・進化論講座―空飛ぶスパゲッティ・モンスターの福音書
反・進化論講座―空飛ぶスパゲッティ・モンスターの福音書ボビー ヘンダーソン Bobby Henderson 片岡 夏実

築地書館 2006-11
売り上げランキング : 951

おすすめ平均 star
star評価困難!
starラーメン
starすべてのパスタファリアンへ

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(2)

アメリカの原理主義
アメリカの原理主義河野 博子

集英社 2006-07
売り上げランキング : 19420

おすすめ平均 star
starBush政権の実態

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(3)

祖先の物語 ~ドーキンスの生命史~ 上
祖先の物語 ~ドーキンスの生命史~ 上リチャード・ドーキンス 垂水 雄二

小学館 2006-08-31
売り上げランキング : 1072

おすすめ平均 star
star生命を「まるごと」とらえる力業
star進化生物学への“巡礼”の旅
star倒叙の歴史は書きにくい

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祖先の物語 ~ドーキンスの生命史~ 下
祖先の物語 ~ドーキンスの生命史~ 下リチャード・ドーキンス 垂水 雄二

小学館 2006-08-31
売り上げランキング : 1506

おすすめ平均 star
star高校生・中学生にも是非勧めたい
star生物進化の概説

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米国の反進化論運動は叩いても叩いてもよみがえる。最近の流行はインテリジェント・デザイン(ID)論。名前は知的っぽいが、中身は単純である。神による天地創造という教義の「神」を、実体のわからない知的存在と言い換えただけなのだ。

しかし、モグラ叩きを怠ってはいけない。(1)はID論をパロディにした「空飛ぶスパゲッティ・モンスター教団」を起こし、敢然と反撃に打って出た人物によるユーモアの効いた作品。

いや、対岸の火事と安心していてはいけない。反進化論以外にも、怪しい言説は後を絶たないのだから。(2)にある通り、米国の反進化論は宗教活動であると同時に政治運動でもある。

一方、パロディの総本山英国で生真面目(きまじめ)に反進化論に立ち向かう騎士・ドーキンスは、満を持して現代進化学のバイブル(3)を送り出した。

■2006/12/24, 朝日新聞 朝刊, 13ページ

野村進 書評委員お薦め「今年の3点」

(1)

ザ・ペニンシュラ・クエスチョン―朝鮮半島第二次核危機
ザ・ペニンシュラ・クエスチョン―朝鮮半島第二次核危機船橋 洋一

朝日新聞社 2006-10
売り上げランキング : 613

おすすめ平均 star
star日本人ジャーナリストの到達点
star敏腕ジャーナリストによる渾身の一冊

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(2)

それでも家族を愛してる
それでも家族を愛してるポー・ブロンソン 桐谷 知未

アスペクト 2006-09-29
売り上げランキング : 9649

おすすめ平均 star
starいろいろ経てみて見える家族がある

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(3)

戦争大統領―CIAとブッシュ政権の秘密
戦争大統領―CIAとブッシュ政権の秘密ジェームズ ライゼン James Rissen 伏見 威蕃

毎日新聞社 2006-09
売り上げランキング : 6129

おすすめ平均 star
star衝撃的なファクト・ファインディングだが……
star知識と知性の総和と政策

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ノンフィクションの分野でも、「白」か「黒」かのわかりやすい物語や、お涙頂戴ものが持て囃(はや)されている。そんな流れに抗する3冊。いずれも、混沌を混沌のまま受け止めて表現する著者の“体力”を感じさせる。

(1)は、不穏な北朝鮮をめぐる、外交の舞台裏を緻密に再現した大作。日米だけでなく韓国、中国、ロシア、そして北朝鮮の当事者たちにインタビューを重ねているのは、アメリカの調査報道には見られない“全方位的”取材方法である。

(2)は、第三者の書き手が家族を描いて成功した稀なノンフィクション。19の多種多様な家族が登場するが、どれもすっきりとは終わらない。読者にその場限りのカタルシスを与えない姿勢を貫くには、よほどの“体力”が要る。

(3)は、アメリカの調査報道の底力を改めて感じさせる一冊。(1)と読み比べるとおもしろい。

■2006/12/24, 朝日新聞 朝刊, 13ページ

高原明生 書評委員お薦め「今年の3点」

(1)

「反日」以前―中国対日工作者たちの回想
「反日」以前―中国対日工作者たちの回想水谷 尚子

文藝春秋 2006-07
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おすすめ平均 star
star岩波は真実を語るべきである
star現状分析のみに満足する「専門家」への警鐘!
star歴史のパズルを解く楽しさ

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(2)

中国残留日本人―「棄民」の経過と、帰国後の苦難
中国残留日本人―「棄民」の経過と、帰国後の苦難大久保 真紀

高文研 2006-06
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(3)

壁を取り除きたい
壁を取り除きたい段 躍中

日本僑報社 2006-12
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(1)は戦中戦後に捕虜の教育や邦人送還などに従事した対日工作者たちとの貴重な面談記録。日本と日本人に深い理解と愛情を有した彼らに、日本人も強い敬愛の念を抱いたことが戦後の日中友好運動の牽引力だったと説く。日中関係の基本に光を当てる労作だ。

旧満州には150万人以上の日本人がいた。その中で中国に残留せざるをえなかった婦人や孤児は塗炭の苦しみを味わった。(2)は、長年の取材をもとに、その困難が帰国後も続くことを伝える。この人たちをこれ以上まだ苦しめるのか、日本社会の本質が問われる。

偏見の無い、心が通い合う社会を、そして世界をつくりたい。(3)は中国人学生による日本語作文コンクールの入賞作品集。これを読むと、日中間の「壁」に戸惑いつつ、理想を追う青年たちの明るく素直な思いが心に沁みる。若者は、いや人は皆、どこでも同じだ。

■2006/12/24, 朝日新聞 朝刊, 13ページ

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