メイン > 日経新聞日曜版『読書』 > 2008年4月13日~4月20日

ゴールデンスランバー
ゴールデンスランバー伊坂 幸太郎

新潮社 2007-11-29
売り上げランキング : 39

おすすめ平均 star
starビートルズの曲に乗せて・・・
star一気読み確実
star最高ではないと思う

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思考の整理学 (ちくま文庫) (ちくま文庫)
思考の整理学 (ちくま文庫) (ちくま文庫)外山 滋比古

筑摩書房 1986-04-24
売り上げランキング : 208

おすすめ平均 star
starこんな本があったのか。
star思考の熟成
starアイディアの台所

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全国の書店員が投票して「いま最も売りたい本」を選ぶ「本屋大賞」が五年目を迎えた。今回の受賞作は伊坂幸太郎の『ゴールデンスランバー』(新潮社)。八日に開かれた同賞の発表会には、書店員はもちろん編集者や作家も数多く参加し、会場にいると汗ばむほどの盛会だった。

「本音をいうと、直木賞よりこっちの方がよっぽど欲しいですよ」。立ち話で出版社の人がこう言ったので驚いた。本屋大賞で一位に選ばれた本はプラス二十万部の増刷は堅いという。少なくとも営業面では、本屋大賞は直木賞よりも影響力が強いらしい。

本屋大賞は「売り場からベストセラーを」という理念を掲げ二〇〇四年に始まった。『博士の愛した数式』『夜のピクニック』『東京タワー』『一瞬の風になれ』と過去の受賞作の名前を挙げれば、いずれもその年の指折りの話題作だったことがわかるだろう。『ゴールデンスランバー』も受賞後わずか一週間で十二万部上乗せし、現在二十三万部にまで伸びている。

直木賞と本屋大賞の受賞作の平均発行部数(〇四年以降、単行本ベース)を計算してみた。すると直木賞の二十二万部に対して、本屋大賞は八十三万部と圧勝している。

出版に詳しい長谷川一・明治学院大学准教授は「書店員が薦める本を読むのは、ブログで紹介された本を読むのと似ている。従来型の文学賞の『権威づけ』が機能しにくくなった」とみる。偉い先生の「ご推薦」より等身大の「オススメ」にはるかに魅力を感じるのが今の読者なのだ。

『思考の整理学』など “書店発”のベストセラーが最近目につく。書店員の薦めが必ず売れるわけではもちろんないが、その力を出版界も軽視できなくなってきた。トーハンは今月、作家の山崎ナオコーラが首都圏の書店を巡回して書店員に自作をアピールするという販促活動を展開。また本屋大賞に追随し、「読ませ大賞」など人気投票型の賞も相次いで登場している。

膨大な出版物から「はずれを引きたくない」との思いが読者を「オススメ」に引きつけるのか。「出版界もマーケット至上主義がいよいよ強まってきた」(長谷川准教授)のが現実のようだ。回り道をしながら「自分だけの一冊」を見つけるところに真の楽しさがあるなどと考える読書好きにとって、書店さえ安住の地ではなくなっていくのだろうか。

■2008/04/20, 日本経済新聞 朝刊, 21ページ

新たなる資本主義の正体 ニューキャピタリストが社会を変える (HARVARD BUSINESS SCHOOL PRESS)
新たなる資本主義の正体 ニューキャピタリストが社会を変える (HARVARD BUSINESS SCHOOL PRESS)デイビッド ピット‐ワトソン スティーブン デイビス ジョン ルコムニク

ランダムハウス講談社 2008-02-28
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ファンド経由の企業保有を考察

一昔前であれば、会社の株式を持つのは少数の大資本家だったが、現代では何百万人、何千万人という個人が保有している。このことを強調したのが、この本の出発点である。年金や貯蓄といった形で個人が膨大な資金を機関投資家に拠出し、機関投資家が集めた資金の運用先として企業の株式を保有している。

各種のファンドを通じて企業の株式を間接的に保有している個人を著者たちは「新資本家」と呼ぶ。従来の資本家と役割が異なるので、それを「市民経済の誕生」としてとらえ、新しい資本主義のすすめを説いている。米国では企業の株式全体の過半数、英国では七割を機関投資家が保有している現状に注目するからである。日本をはじめ他の資本主義国ではまだこの域まで達していないが、世界はいずれアングロサクソン諸国の道を歩むだろうとみている。

経営者のみならず、機関投資家、新資本家、政府・規制当局、市民団体までを含めたすべての市場参加者が自らの行動指針を大きく変えない限り、そこでは市場がうまく機能しないだろうと分析しているのが本書の白眉(はくび)である。

例えば、企業経営者であれば利益追求は当然として、徹底した説明責任が要求されるし、機関投資家であれば完璧(かんぺき)な情報確保による明確な業務責任の遂行が求められる。監視機構や格付け機関のレベルアップや複式簿記からの離脱なども必要だという。

当然、新資本家も株主として合理的かつ毅然(きぜん)と行動することが求められるが、多くの人がどこまで株主としての意識を持って行動しうるのか、詳細な検討が必要だろう。さらに、国民の多くがいまだに銀行で預金している日本であれば、今すぐには著者たちのいうグローバル化した新しい資本主義に移行するのは難しいのではないか。とはいえ、英米を中心とする機関投資家が日本企業の株式を投資の対象とし始めている以上、私たちもこの新しい流れと無縁ではいられない。それならば、せめて日本企業が弱くなって、日本株が無視されることのないことを望みたい。

■2008/04/20, 日本経済新聞 朝刊, 21ページ

Story Seller (ストーリーセラー) 2008年 05月号 [雑誌]
Story Seller (ストーリーセラー) 2008年 05月号 [雑誌]
新潮社 2008-04-10
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おすすめ平均 star
starいい物語 買いました
star伊坂小説目当てだったが、嬉しい誤算

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一人の編集者の「独断と偏愛によって」編集された小説誌「ストーリー・セラー」(新潮社、写真)が出版された。「小説新潮」の別冊として刊行されたもので、伊坂幸太郎、近藤史恵、有川浩、佐藤友哉、本多孝好、道尾秀介、米澤穂信という作家七人の読み切り中編を掲載している。

編集を担当したのは、主にエンターテインメント小説を担当する第二編集部の新井久幸氏。「文芸誌・小説誌は幕の内弁当のように、様々な作風の小説が載っているケースが一般的。それはそれで意味があるが、読みたい作品はちょっとしかないと感じる読者もいると思う。一人で編集することで明確なカラーを打ち出したら、全部読んでみたいと思うような雑誌ができるのではないかと考えた」と期待する。

七人は新井氏がいっしょに仕事をしたことがある作家の中から、二十―三十代の「これから長く活躍が期待される人々」を選んだという。それぞれの作家ごとに略歴、筆者コメント、著作リストも載せている。

■2008/04/20, 日本経済新聞 朝刊, 21ページ

価値を創る都市へ―文化戦略と創造都市
価値を創る都市へ―文化戦略と創造都市中牧 弘允 佐々木雅幸 総合研究開発機構(NIRA)

エヌティティ出版 2008-03-31
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かねて都市の再生が議論されてきた。昨今は、そのひとつの方向として、価値を創造する都市、すなわち「創造都市」が注目されている。

本書は都市問題に長くかかわってきた総合研究開発機構(NIRA)の研究会の議論をもとにしている。創造都市論の最近の成果の集大成と言ってよいかもしれない。

文化こそが基本であり、その政策・戦略が都市の今後を決める可能性がある。それが本書の第一のメッセージだ。

第二のメッセージは、文化とは生活にもかかわることでもあり、どの都市も持っている価値であるということだ。都市は自らの価値に目覚め、生かすことが大事なのである。それは物的、人的な「潜在力」と置き換えてもよいであろう。重要なのは、潜在力を顕在化する過程で、住民が自らの都市の価値を再発見し、地域に生きがいを見いだすことである。

本書が展開する都市の価値創造論は応用が可能であろう。地域はもちろん、町や学校、そして家族にも適用できそうである。潜在力を引き出し、活用することの大事さは都市だけに限らない。

具体的な事例が豊富であり、読みやすい。地域の活性化に取り組む多くの人々に参考になりそうだ。個々のケースについては今後の著作で、どのような問題が起きたのかを含め、より突っ込んだ分析を期待したい。

■2008/04/20, 日本経済新聞 朝刊, 22ページ

昭和後期10人の首相―日経の政治記者が目撃した「派閥の時代」
昭和後期10人の首相―日経の政治記者が目撃した「派閥の時代」山岸 一平

日本経済新聞出版社 2008-03
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新聞社の政治部に配属されると、まず総理番の仕事につく。一日中、首相の動静を追う若手記者の仕事である。安保騒動で揺れた一九六〇年(昭和三十五年)に日本経済新聞社に入社した著者は「岸(信介首相)番」から、政治記者のキャリアを始めた。

退陣直前の岸氏が首相官邸で刺された場面や、社会党の浅沼稲次郎委員長が刺殺された瞬間を目撃した。鮮血が流れた岸氏は軽傷で済み、浅沼氏は血が流れなかった。「内出血の方が危険だということが実感としてわかった」という述懐は、現場にいた記者ならではのものだろう。

自らが取材、紙面編集にかかわった岸氏から竹下登氏までを取り上げ、体験を交えながら政治の動きを振り返っている。自民党の一党支配が続いた五五年体制のさなかであり、副題にある「派閥の時代」だった。著者は池田勇人元首相が創設した宏池会を長年担当した。政局の節目節目で大平正芳元首相らに取材した思い出を率直につづっている。

第二部の政治家寸評では、平成に入ってからの歴代首相や、記憶に残る十五人の政治家を俎上(そじょう)に載せた。森喜朗元首相を「首相官邸より党本部や派閥事務所が似合う政治家」と評するあたり、言い得て妙である。川島正次郎、前尾繁三郎、保利茂……。懐かしい名前が並ぶが、昔は味のある政治家がいたと痛感する。

■2008/04/20, 日本経済新聞 朝刊, 22ページ

左手のピアニスト―ゲザ・ズィチから舘野泉へ
左手のピアニスト―ゲザ・ズィチから舘野泉へシュミット 村木眞寿美

河出書房新社 2008-03
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副題は「ゲザ・ズィチから舘野泉へ」。戦傷や病気などで右腕の機能を失い「左手のピアニスト」となった音楽家の数は予想外に多い。ドイツ在住の著者は脳溢血(いっけつ)で右半身不随となったピアニストの舘野と親しくなって以降、かつて執筆対象としたクーデンホーフ光子の手記に登場していたハンガリー貴族の左手ピアニスト、ズィチ(一八四九―一九二四年)の生涯へと、急速に引き込まれていった。

ズィチは少年時代、猟銃の暴発で右腕を失ったにもかかわらず文武両道の青春時代を謳歌(おうか)、大ピアニストで作曲家のフランツ・リストに師事して後は欧州各地を訪れ、ピアノの慈善演奏を続けた。史上初の左手のためのピアノ協奏曲もズィチが作曲したという。本書にはリストだけでなく、ロシアやドイツの皇帝も登場、音楽の角度から眺めた十九世紀欧州史の趣がある。

さらに十八世紀以来の左手作品の流れ、他の左手ピアニストに触れ、高名な哲学者の兄で、第一次世界大戦で右腕を失ったピアニスト、パウル・ヴィトゲンシュタイン(一八八七―一九六一年)も登場する。財力に物を言わせ、ラヴェル、プロコフィエフ、ブリテンら名だたる作曲家に新作を委嘱した功績は認めつつも他者に弾かせなかった不寛容を批判、「ズィチなしにはヴィトゲンシュタインもあり得ない」との視点で過大評価を戒めたのは見識だ。

■2008/04/20, 日本経済新聞 朝刊, 22ページ

情報通信革命と日本企業
情報通信革命と日本企業池田 信夫

NTT出版 1997-04
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抜け出すには完全電子化?

大学院生の頃までは、蔵書に関してはかなり徹底して管理していた。定期的に書架の整理を行い、本の配列を見直していた。それゆえ、自分がどんな本をもっていて、それがどこにあるかをほぼ把握していた。

そんなことができたのは、もっている本の数が所詮(しょせん)たかがしれていたからである。大学の教職に就いた後、所蔵する本の数は爆発的に増加するようになった。本の置き場も、下宿だけの状態から、大学の研究室と自宅に分散するようになった。結果として、蔵書の管理は著しく困難化した。

蔵書がある程度以上の数を超えると、その管理に要する時間も無視しがたくなり、片手間では無理になる。司書の資格のあるような人を雇用できれば理想的なのだろうが、その経済的余裕もないし、研究室の分はよくても、他人に自宅の本まで管理してもらうというのは現実的ではない。

その結果、無管理状態に陥ることになってしまった。適当に本を詰めた紙袋がいくつも床に置かれたままといったことが常態化した。どんな本が入っているのかは直(す)ぐに忘れてしまう。たまに紙袋をひっくり返してみてこんな本があったのかと驚くこともある。

というのも、自分で購入する以外に、近年は本をもらうことも多くなったからである。著者間の相互交換というのもあるし、書評を書くようになってからは、出版社から書評候補作という趣旨で送られてくることも増えた。これらは非自発的な蔵書であるから、所蔵しているという自覚が乏しくなる傾向がある。

二度と読みっこない古い本とか、もらったものの関心の対象外の本は捨ててしまえば、少しは状態が改善するとは思うのだが、本というのはなかなか捨てることができない。これも、行動経済学的バイアスの一つだというべきだろう。

もっとも電子ジャーナルの出現によって(主として英文の)学術誌は、心理的抵抗感なしに捨てられるようになった。いつでもインターネット経由で検索し、必要な論文だけをダウンロードして読むことができるようになったからである。書籍についても、同様の環境が提供されることになったら、捨ててしまえるようになるのではないか。

例えば、池田信夫著『情報通信革命と日本企業』(NTT出版・一九九七年)は、契約理論の入門書としても役立つ好著だが、絶版になっていた。それが、いまは著者自身によって電子化されインターネット上で公開されている。ほとんどの書籍が同様の状態で利用可能になったときが、私が蔵書管理の混沌(こんとん)から解放される日だと夢想している。【経済学者 池尾和人】

■2008/04/20, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

軍艦アパート
軍艦アパート山下 豊

冬青社 2008-04
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昭和初期、鉄筋3階建てで屋上から何本も煙突を突き立てた大阪市営住宅を、人々は「軍艦アパート」とあだ名した。水洗トイレを備えたモダンな住宅は、あこがれの的だったという。今も入居者が暮らすアパートに著者は17年通った。時代に取り残された古風な建物と、自動販売機、パソコンといった現代の利器にはさまれて、いつの世も変わらない営みがある。時間の断層を見るような不思議な写真集だ。

■2008/04/20, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

政局から政策へ―日本政治の成熟と転換 (日本の〈現代〉 3)
政局から政策へ―日本政治の成熟と転換 (日本の〈現代〉 3)飯尾 潤

エヌティティ出版 2008-03
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自民党が圧勝した一九八六年の衆参同日選から二十年強の日本政治の動きを追った。中曽根、竹下両内閣を自民党体制の一つの到達点と位置づけ、政権運営の実態は「官僚内閣制」「省庁代表制」だったと指摘。官邸主導が定着した小泉内閣に至る政策決定の潮流変化を出来事に沿って丁寧に解説した。著者は政策研究大学院大学の教授。「ねじれ国会」で政治のきしみが目立つだけに、今後の構造変化への言及がやや物足りない。

■2008/04/20, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

分断時代の法廷―南北対立と独裁政権下の政治裁判
分断時代の法廷―南北対立と独裁政権下の政治裁判韓 勝憲 舘野 皙

岩波書店 2008-03
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韓国の朴正熙政権から盧武鉉政権までに起きた約五十件の政治裁判の概要を、著者である元人権弁護士の目から追った。金大中元大統領の内乱陰謀事件はそのひとつ。日本でもなじみの薄い事件も含めて数々の政治裁判が登場し、軍事政権下での民主化弾圧がいかに過酷かつ不当だったかが浮き彫りになる。いわば法廷からみた韓国の民主化闘争史だ。各政権の時代的背景を概略した「時代の素描」が理解を助ける。

■2008/04/20, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

耳と文章力―上手な文章を書く秘訣
耳と文章力―上手な文章を書く秘訣丸山 あかね

講談社 2008-03
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フリーライターなのに文章に自信がない著者は、絶対音感ならぬ「絶対文章感」というものがあるのではと思いつく。文章の上達法を求め達人たちに取材するうち、話は思わぬ方向に展開する。ある音楽家は、音楽家に名文家が多いのは耳が良いからという。では、耳の不自由な人はどうか。くも膜下出血で失語症となった人はどう言葉を取り戻したのか……。著者の経験、思考をたどりながら文章の不思議さを考えさせる。

■2008/04/20, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

戦争の映画史 恐怖と快楽のフィルム学 (朝日選書 841) (朝日選書 841)
戦争の映画史 恐怖と快楽のフィルム学 (朝日選書 841) (朝日選書 841)藤崎 康

朝日新聞出版 2008-04-10
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主に二十世紀において戦争と映画は互いにどんな影響を及ぼし、「共犯」関係を結んできたのか。古今東西の戦争映画を詳しく分析した戦争映画の入門書だ。演出、編集という映画技術が戦争と巧妙に結びつき、プロパガンダと反戦、ニュース映像と活劇などのジャンルの境界をいかに揺るがせているかを考察する一章は特にスリリング。スピルバーグの「宇宙戦争」と米同時テロなど比較的最近の作品と事件にまで目配りしていて読みやすい。

■2008/04/20, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

ラーニング・アロン 通信教育のメディア学
ラーニング・アロン 通信教育のメディア学佐藤卓己 井上義和

新曜社 2008-04-01
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通信教育など独学メディアを明治から現代の変化、英米との比較もまじえて包括的に描いた。学校卒業者だけでは急速な近代化に必要な人材を賄えないため始まった明治の講義録、勤労青年に学習の場を開いた通信教育など、メディアの発展は学習の機会を広げてきた。それらは教師と生徒をつなぐ役割を果たしてきた一方で、対面的なつながりの欠如に伴う困難さもある。eラーニングの可能性が語られる中、教育・学習のあり方を考える貴重なヒントを提示する。

■2008/04/20, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

一九六〇年、青年と拳銃
一九六〇年、青年と拳銃片岡 義男

毎日新聞社 2008-02-27
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日活アクション映画の若きヒーローとしてスターになった矢先の一九六一年、二十一歳の若さで事故死した赤木圭一郎の代表作「拳銃無頼帖」シリーズを論じる。

片岡義男氏はアメリカ文化論で定評のある人だが、近年、急速に昭和二、三十年代の古い日本映画に関心を持ち、原節子、吉永小百合、成瀬巳喜男についての本を次々に刊行している。

氏は同時代にはさほど日本映画を見ていなかったようだが、ビデオが普及するようになって改めて半世紀前の日本映画の面白さに目覚めたという。

ビデオで繰り返し同じ作品を見る(いわば学習する)ことで映画を論じる。当然、同時代の熱気はないが、距離を置いて冷静に作品を論じられる、遅れて来たファンの強味(つよみ)がある。

赤木圭一郎演じる抜き射ちの竜は拳銃の名手。決して相手を殺さず肩を狙って射つ。暴力組織のボスたちはその腕に目をつける。竜は拳銃稼業から足を洗いたいと思っているが、浮世のしがらみから組織と関(かか)わらざるを得ない。

拳銃を抜きたくないが、抜かざるを得ない。その苦悩が赤木圭一郎に孤独なかげりを与える。好敵手の宍戸錠演じる拳銃使いが、悩むことなく銃を撃つのと対照的。

片岡氏は、これまで荒唐無稽(こうとうむけい)の無国籍映画と論じられてきた日活アクションのなかにむしろヒーローの孤独を見ようとする。

とくに赤木圭一郎演じる竜が戦災孤児であることに注目する。一九六〇年代とはまだ戦争の傷が残っていた時代だとわかる。

一見、アメリカ映画の真似(まね)に見えるアクション映画に、戦争という重い過去がある。赤木圭一郎の孤独なアウトローぶりは戦争の記憶と無縁ではない。

この視点は面白い。赤木圭一郎とほぼ同じ年齢の片岡氏ならではの卓見といえるだろう。

語りの文体も独特。映画評論家の文章とまったく違う。作品をまるでノベライズするように、一場面一場面、微細に論じる。監督の名前も、ときには俳優の名前も記されない。片岡氏はみごとにまで見る人に徹している。

■2008/04/20, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

クリエイティブ資本論―新たな経済階級の台頭
クリエイティブ資本論―新たな経済階級の台頭リチャード・フロリダ 井口 典夫

ダイヤモンド社 2008-02-29
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現代社会の中心にクリエイティビティ(創造性)を据え、そうした創造性を持った人材、すなわちクリエイティブクラスを軸に、都市や地域社会の再生を展望した画期的な書物の翻訳である。二十世紀末から欧州では、創造都市論や創造産業論が地域再生の新理論として注目を集めてきたが、本書の登場によって一気に「クリエイティブ革命」が世界的現象となった。

工場労働者が集積した都市、ピッツバーグに生まれた著者は、相次いで大型の工場が撤退し、失業者が滞留していく深刻な状況を前に、産業の立地行動を分析し、成長著しいハイテク産業は創造的な人材を求めて立地することを突きとめた。その上で、地域再生の鍵は工場誘致ではなく、いかにしてそうした人材を地域が誘引できるかに懸かっていると主張した。

著者の理論が都市政策に大きな影響力を持ったのは、クリエイティブクラスのエートス(気風・慣習)と仕事、ライフスタイル、そして彼らが選択するコミュニティの特徴を分析し、彼らが好んで居住する都市や地域こそ、経済的パフォーマンスに優れていることを3つのT、Talent(人材)、Technology(技術)、Tolerance(寛容性)の分野の八つの指数によって構成される「創造性指数」を用いて分かりやすく示したことである。

ジェーン・ジェイコブスの都市論を再評価し、地域社会の強すぎる紐帯(ちゅうたい)よりも、多様性を認め合う、寛容性の高い地域社会ほど創造性が高いことを示し、社会関係資本よりもクリエイティブ資本を重視すべきであるという著者の主張は強い説得力を持っている。

だが、その一方で、フロリダのクリエイティブクラスという概念は専門サービス業まで含んでいるため、広すぎるのではないか? 創造都市の経済的エンジンとなる創造産業の発展のためには、独自のスキルを持った労働力やサポーティング産業の集積がなければならず、彼の議論には地域経済の独自の発展理論が欠如しているのではないか?――との批判もある。これらに対する著者の反論が『クリエイティブクラスの世紀』として先に翻訳されており、論点を理解するには格好の書となっている。

■2008/04/20, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

YouTube民主主義 ~メディア革命が変えるアメリカの近未来~ [マイコミ新書] (マイコミ新書)
YouTube民主主義 ~メディア革命が変えるアメリカの近未来~ [マイコミ新書] (マイコミ新書)河内 孝

毎日コミュニケーションズ 2008-03-25
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おすすめ平均 star
starニューヨークで見たアメリカの現在(いま)

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米大統領選挙を二度にわたり取材した経験を持つ元新聞記者が、二〇〇七年一月から三カ月間滞在したニューヨークでの体験をつづった。インターネットの関与する度合いが急速に増している大統領選や、コロンビア大学大学院での日米関係をめぐる討論など。米社会の様々な断面を切り取っている。

■2008/04/20, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい (ちくま文庫 も 19-1)
世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい (ちくま文庫 も 19-1)森 達也

筑摩書房 2008-03-10
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オウム真理教を扱った二本のドキュメンタリー映画の制作を通じ、著者は「オウム後」の日本社会の考察を始めた。マスコミに増幅される他者への憎悪や排斥ムード、いわれない恐怖。「九・一一後」には世界へと広まったこれらの風潮に対し、足元から言葉を積むように警鐘を鳴らす。

■2008/04/20, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

サイバーペット/ウェブ生命情報論
サイバーペット/ウェブ生命情報論西垣 通

千倉書房 2008-03-01
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小説でみせる情報社会の行方

情報学の専門家として東大で教壇に立ちながら小説を書いてきた。単行本として四作目となる本書は小説とその解説を兼ねた評論をセットにした異色の体裁。「現代社会で実際に起こりうる悲劇的な事件」をフィクションとして描いた前半部は肩ひじ張らずに楽しめる。後半は打って変わり、創作の背景にある情報技術や遺伝子工学の問題を該博な知識で論じてみせる。

主人公の塾講師は「どこにでもいる普通の青年」。平凡な生活を送っていたがブログ(日記風の簡易型ホームページ)などインターネットを通じた他人とのやりとりを契機に破滅へと向かう。「ウェブや遺伝子操作技術の発達でアイデンティティーが揺らいでいる。そんな現代の一面を照らしだしたかった」

もちろん安直な批判一辺倒ではない。「情報社会を否定したいわけではないし説教したいのでもない」という。娯楽で読める小説にしたのは「今がどういう時代なのか専門家以外の人にも自分の問題として考えてもらうため」。

一方で「問題を理論的に分析して書くことも大切。両輪であるべきだ」と考えている。ただ「過去の作品はエンターテインメント小説としてだけ読まれる傾向が強かった」。そこで今回はヤボと承知の上で自己解説を同時に載せるという「冒険」に踏み切った。

「情報学や遺伝学、文芸など様々な領域にわたり、専門分化でこぼれ落ちることを書きたい」。興味は広く書棚には専門の研究書から古今東西の小説まで並ぶ。好きな作家を問うと、メルビルやボルヘス、埴谷雄高などと次々に挙がる。

「小説は古いといわれるが、捨てたものではない。思想を伝える独特の力がある」と力説。「現代の様々な問題を正面から考える骨太な作品がもっと出てきてほしい。若い人に期待したい」と笑顔を見せた。

■2008/04/20, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

わたしたちに許された特別な時間の終わり
わたしたちに許された特別な時間の終わり岡田 利規

新潮社 2007-02-24
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おすすめ平均 star
starこの表現は狙いすぎ
starよく似た誰かはたくさんいるけれど。
star思考を文章化するテクニックが好き

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ノーベル賞作家の大江健三郎が一人で選考する第二回大江健三郎賞(講談社主催)に、岡田利規の『わたしたちに許された特別な時間の終わり』(新潮社)が選ばれた。岡田は作家・演出家で劇団「チェルフィッチュ」を主宰。受賞作は外国語に翻訳され、海外で刊行される。大江は「群像」五月号掲載の選評で「良質の(新しい)小説を読んだ、という愉快な思いをあじわっています」と記している。

■2008/04/13, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

吉行淳之介 (昭和の短篇一人一冊集成)
吉行淳之介 (昭和の短篇一人一冊集成)吉行 淳之介 結城 信孝

未知谷 2008-04
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戸川昌子 (昭和の短篇一人一冊集成)
戸川昌子 (昭和の短篇一人一冊集成)戸川 昌子 結城 信孝

未知谷 2008-04
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中間小説全盛期に活躍した五人の作家の短編を集めた「昭和の短篇一人一冊集成」(全五巻、未知谷)の刊行が始まった。編・解説は文芸評論家の結城信孝氏。解説によれば、「小説雑誌掲載の短篇小説に勢いがあった時代、とりわけ短篇の名手とうたわれた作家たちのコレクション」だ。

刊行済みの『吉行淳之介』は、「猫踏んじゃった」「奇妙な関係」など、主に小説雑誌に掲載された短編十五編を収録している。中には「PLAYBOY日本版」創刊号掲載の作品「立っている肉」などもあり、「純文学と大衆小説の境界線を微妙なスタンスで歩み続けた一小説家による、いわば〈すれすれ〉感のある短篇小説」を集めている。編者による解説も小説誌全盛時代を伝えて読みごたえがある。

同時刊行は『戸川昌子』。こちらは九編を収める。現在ほとんど入手困難な作品が選ばれ、戸川自身が今回の出版に当たって手を入れている。

続刊は『源氏鶏太』『藤原審爾』『色川武大』。今後は毎月一冊刊行を予定している。四六判上製函(はこ)入りで価格は各三千円。

■2008/04/13, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

東京、きのう今日あした (NTT出版ライブラリーレゾナント (043))
東京、きのう今日あした (NTT出版ライブラリーレゾナント (043))伊藤 滋

NTT出版 2008-02
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ビジネス街の再開発や湾岸の高層マンション建設など、首都東京が大きく姿を変えつつある。このままでは東京が「硬い都市」になるのではないか。都市計画研究の専門家である著者はそんな危惧を抱く。住んで楽しく、経済的にも活気のある東京を作るための具体的な提言が柔らかい言葉でつづられる。

「独り者や小金持ちの人たちだけのマンション街ができたり、中小企業向けのつまらないオフィスビルだけの街が増えるのはおかしいこと」だと著者はみる。「当たり前の人が、お茶を飲んだり、立ち話をしたり、散歩がてら買い物をするという、社会的な意味での柔らかい街をつくりあげることが大事」だと説き、さまざまな人が混住し、多様な文化、職業、人間に触れる機会にあふれる「雑居都市」であり続けるよう勧める。

社会理論や国際比較というマクロな視点と、渋谷や高円寺など具体的な街に関するミクロな知識。複眼的考察とデータで描き出す東京は魅力に満ちている。「正統的な」芸術活動では欧米に負けても、食など小さいが多彩な文化の幅広さが生活を豊かに彩る。人数では世界一という学生と教員の集積は情報発信や若者文化の源となった。自然や歴史なども含め、こうした文化力を、経済力と並び大切に育てることが世界都市としての地位向上につながるという見方には素直に共感できる。

■2008/04/13, 日本経済新聞 朝刊, 24ページ

公会計改革―ディスクロージャーが「見える行政」をつくる
公会計改革―ディスクロージャーが「見える行政」をつくる公会計改革研究会

日本経済新聞出版社 2008-02
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公会計はその分かりにくさゆえ、住民の関心を遠ざけてきた。だが、地方自治体の財政が破綻すれば、夕張市の例を見るまでもなく、増税や行政サービスのカットで住民がツケを払わされる。そうした事態を避けるには日ごろの監視が欠かせず、監視の前提として、公会計制度改革と情報公開で行政を「見える」状態にすることが重要になる。

本書は神野直彦・東大大学院教授をはじめ、福嶋浩彦・前千葉県我孫子市長、上山信一・慶応大学教授ら財政、行政、会計など十人の専門家による「改革論」。十人の方向性は必ずしも一致していないが、それぞれの視点で自治体の進むべき道を提示する。

例えば、福嶋氏は「効率的な行政を実現するには徹底した情報公開と市民参加が不可欠」と述べ、我孫子市で実践した改革を紹介。既得権化していた補助金を見直すため、いったんすべてを廃止したうえで公募し、市民による検討委員会で審査して決めたという。大阪市の市政改革推進会議委員長を務めた上山氏は、改革のツールとして、行政評価やディスクロージャーをどう活用してきたかを示す。

総務省が昨年定めた新公会計基準の解説に加え、公会計改革研究会が普及を目指すアニュアルリポートに盛り込むべき内容も示されている。自治体職員のみならず、関心のある住民にとっても役立つ書になっている。

■2008/04/13, 日本経済新聞 朝刊, 24ページ

小説の設計図(メカニクス)
小説の設計図(メカニクス)前田 塁

青土社 2008-03
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小説の読者は常に物語の語り手(作者)に対して従属的な立場に置かれる。読者は語り手の視点からしか出来事を見られないし、物語の時間進行にあらがうこともできないからだ。では読者の「読みの自由」とはどこにあるのか。

本書は文芸誌の編集者でもある若手批評家が川上弘美から中原昌也まで六人の現代作家を論じた評論集だ。だが作品の良しあしをしたり顔で品定めするのではない。戦略的な「誤読」によって、作品の全く別の顔を暴いてみせる。

例えば川上の『センセイの鞄(かばん)』。中年男女の純愛を描いたとされる小説も、この批評家の手にかかると、行儀よいたたずまいの裏に隠された異様な姿を見せる。命令形を軸に進む会話、登場人物の名前、語り手が読者に突然話しかけてくる一節――。細部の精密な分析を通じ、この小説が「サディストとマゾヒストの権力関係の物語」に読み替え可能であることが示される。

こじつけと切り捨てるのは簡単だ。だが私たちが真に自由に読むとは、「作者を弑逆(しいぎゃく)するように、この小説を読み替え、あるいは別の小説として書き換えること」ではないのか。そう著者は挑発する。

アクロバットのような読み替えに、作家のファンはまゆをひそめそうだが、著者は確信犯。本書は「読む」という行為を通じて主体的に文芸作品にかかわっていくことの面白さを改めて教えてくれる。

■2008/04/13, 日本経済新聞 朝刊, 24ページ

骨から見る生物の進化
骨から見る生物の進化J・ド・パナフィユー(著) X・バラル(監修) P・グリ(写真)

河出書房新社 2008-02-20
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おすすめ平均 star
star観賞のための美術書としても
star圧倒的なボリューム

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まるで、生きたままの動物たちを、レントゲンで撮ったよう。フランス国立自然史博物館やモナコ海洋博物館などが所蔵する動物の骨格標本約200点を撮影したユニークな写真集だ。魚類から両生類、爬虫(はちゅう)類、鳥類、哺(ほ)乳(にゅう)類へと、骨の形は、脊椎(せきつい)動物がたどった何億年もの進化の歴史を明かすという。自然が作り出した精巧で美しいデザインは眺めるだけでも楽しい。小畠郁生監訳、吉田春美訳。

■2008/04/13, 日本経済新聞 朝刊, 24ページ

CFOの実務―企業価値向上のための役割と実践
CFOの実務―企業価値向上のための役割と実践あずさ監査法人 KPMG

東洋経済新報社 2008-03
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事業ポートフォリオの再構築、リスクマネジメント、IR活動……。グローバル化時代を迎え、企業の経理と財務を取り仕切る最高財務責任者(CFO)の役割がますます重要になってきた。企業が財務に軸足を置いた戦略経営を実現するうえで、CFOは今後どうあるべきか。そのためには何をどうするべきか。会計や税務、企業金融などの専門家が実務面の課題に即してCFOの具体的な業務と、そのあるべき姿について詳しくまとめた。

■2008/04/13, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

階層構造の科学―宇宙・地球・生命をつなぐ新しい視点
階層構造の科学―宇宙・地球・生命をつなぐ新しい視点阪口 秀

東京大学出版会 2008-03
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体は骨格や筋肉など組織からなり、組織は多くの細胞から、細胞は多くのたんぱく質から、たんぱく質は分子から、分子は原子からといった具合に、動物は階層構造で成り立つ。宇宙にも衛星系、惑星系という階層構造があり、気象現象にもある。多分野の研究者が分野を超えた共通現象を解説する本書は、タコツボから脱しようとする研究者たちの志を示すとともに、科学読み物としても楽しめる。

■2008/04/13, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

マーク・トウェインと日本―変貌するアメリカの象徴
マーク・トウェインと日本―変貌するアメリカの象徴石原 剛

彩流社 2008-04
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『トム・ソーヤーの冒険』など米国の国民作家マーク・トウェインの作品は、明治以来、日本に積極的に紹介されてきた。だが日本は決して「従順な受容者」ではなかったと著者はみる。日本独自の文化や社会背景にあわせて様々な改変や歪曲を施されてきたからだ。本書はそうした「翻案」の過程を分析することで異文化受容のダイナミズムを説き明かそうとする。一般の関心を呼びそうなテーマだが、文章はやや生硬だ。

■2008/04/13, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

アゲハ蝶の白地図
アゲハ蝶の白地図五十嵐 邁(いがらし すぐる)

世界文化社 2008-02-01
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インドでヒルに吸い付かれた傷は二年間治らず、インドネシアでは搭乗した飛行機が墜落して命からがら脱出。こんな数々の困難に見舞われながらもアゲハチョウを追い続けた波瀾(はらん)万丈の探検記だ。著者は大手建設会社の役員まで勤め上げながら、暇を見つけてはアジア各国へ足を運び、世界を驚かせる図鑑を完成させた。夢中で採集に明け暮れる様子は子どものよう。チョウにささげた生涯の幸福感がユーモアあふれる文章からにじみ出る。

■2008/04/13, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

公民連携の経営学
公民連携の経営学石井 晴夫

中央経済社 2008-03
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国、自治体の財政難を背景に公共サービスの民間委託で効率化を目指す公民連携が広がる。本書は公営企業の民営化、民間への業務委託、指定管理者制度、PFI(民間資金を活用した社会資本整備)などの手法を概説する。公務員との賃金格差によるコストダウン、民間の創意工夫に伴うサービス向上などの具体例を紹介。ただ、PFIで行き詰まるケースもあるし、大型案件の長期契約でコストが何十億円も下がるという点など詳細な説明がほしいところだ。

■2008/04/13, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

神田紅 女の独り立ち
神田紅 女の独り立ち神田紅

産経新聞出版 2008-01-18
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おすすめ平均 star
star講談に対する情念・情熱

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女優に見切りを付け講談師に転身して三十年。その修業の日々が「働く女性の参考になるのでは」と思い、まとめたのがこの本。

「セクハラ、パワハラ何のその。負けず嫌いと、何にでも興味をもって挑戦する博多っ子気性から男社会を駆け抜けてきた。とにもかくにも師匠の神田山陽(二〇〇〇年没)がいたから今の私があるんです」

入門当時の東京の講談界は二十数人中女性はたった三人。それが今や男性二十七人、女性三十三人と逆転している。「講談は確かに男の芸かもしれないが、女が語るものもあっていい。それで客が呼べれば、層も厚くなるという師匠の方針の下、十一人の女性弟子が巣立った」。講談は元禄ごろから三百有余年の歴史をもつが、記録に残っている女性講談師は天保年間の円山尼(えんざんに)のみ。つまり、昭和・平成の彼女たちこそ女性講談師の先駆けといえる。

上野・本牧亭でのデビュー高座は洋装でタップを踏みながらのミュージカル講談。それからも金髪のカツラをかぶっての「マリリン・モンロー」や「オードリー・ヘップバーン」など、自作自演の高座で度肝を抜いた。そうした台本も収録している。

「ピアノやギターをやっていたので、言葉を音楽的にとらえられたのは強みだった。メリ、ハリ、ツッコミ、謡い調子という講談独特の調子がすんなり体に入った。それで、基本を外さなければ歌っちゃってもいいかと。許してくれた師匠の度量の大きさもすごい」

「女性が演じても違和感のないものを」と、八百屋の娘から三代将軍家光の側室となった女性を題材にした江戸版シンデレラ「桂昌院」など古典の復活物にも取り組んでいる。「落語ブームといわれるが、日本の歴史や日本語の美しさを再確認する上からも講談を聞きに来てほしい」と話している。

■2008/04/13, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

松本清張への召集令状 (文春新書 624)
松本清張への召集令状 (文春新書 624)森 史朗

文藝春秋 2008-03
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おすすめ平均 star
star不可解な召集令状の裏に何があるのか?
star松本作品に対する興味を惹起する本として

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清張文学の原点にある軍隊経験のエピソードを、担当編集者だった著者が作家との豊富な対話をもとに描く。「妻子持ち、三十四歳の中年兵」を一枚の召集令状で戦争に送り出すような国家の大義とは何か。膨大な小説群の執筆を通じて清張はこの命題に答えようとした。生誕百年を翌年に控えた異色の評伝。

■2008/04/13, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

コーヒーに憑かれた男たち (中公文庫 し 40-1)
コーヒーに憑かれた男たち (中公文庫 し 40-1)嶋中 労

中央公論新社 2008-03-23
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銀座「カフェ・ド・ランブル」の関口一郎ら自家焙煎(ばいせん)コーヒーの抽出に半生をかけた三人の男をドキュメントした。コーヒー豆をかじって戦争を生き抜き、戦後カフェを開店した者、焼鳥屋のにおいに対抗して豆をいり始め、焙煎を究めた者――。エネルギッシュな人生からは昭和の歴史がにおい立つ。

■2008/04/13, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

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