メイン > 日経新聞日曜版『読書』 > 2008年3月30日~4月6日
| クラシック名曲初演&初録音事典 | |
![]() | 平林 直哉 大和書房 2008-03-19 売り上げランキング : 85809 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
クラシックの名曲の初演や初録音をエピソードとともに紹介した事典『クラシック名曲初演&初録音事典』(大和書房)が刊行された。著者は音楽評論家の平林直哉氏。モーツァルト、ベートーベンをはじめ作曲家七十四人の三百七十四曲について、初演奏とレコード化を目的にした録音を作曲家の五十音順に配列している。
| 日常の疑問を経済学で考える | |
![]() | ロバート H.フランク 月沢 李歌子 日本経済新聞出版社 2008-02 売り上げランキング : 12 おすすめ平均 ![]() あまり深みがないのでは? おもしろいが、ちがうんじゃないかというネタ多し。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| ヤバい経済学 [増補改訂版] | |
![]() | スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー 望月衛 東洋経済新報社 2007-04-27 売り上げランキング : 284 おすすめ平均 ![]() これはスタンダードな応用経済学の副読本です 統計で物事の常識を覆す 経済学:複雑な世の中の見通しをよくする素敵な手段Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| まっとうな経済学 | |
![]() | ティム・ハーフォード 遠藤 真美 ランダムハウス講談社 2006-09-14 売り上げランキング : 3209 おすすめ平均 ![]() 良識ある経済学者の、理解の最大公約数 希少性から経済学を読み解く (^^♪ 経済学における「希少性」Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| アメリカの高校生が読んでいる経済の教科書 | |
![]() | 山岡 道男 淺野 忠克 アスペクト 2008-03-27 売り上げランキング : 7 おすすめ平均 ![]() イラストもわかりやすい。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| 国富論 上 国の豊かさの本質と原因についての研究 | |
![]() | アダム・スミス 山岡 洋一 日本経済新聞社出版局 2007-03-24 売り上げランキング : 803 おすすめ平均 ![]() 一度は読みたかった 高価です 現在も未来も通用する経済の話Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| 国富論 下?国の豊かさの本質と原因についての研究 (下) | |
![]() | アダム・スミス 山岡 洋一 日本経済新聞社出版局 2007-03-24 売り上げランキング : 1288 おすすめ平均 ![]() すばらしい日本語 驚いた 読みやすいけれどAmazonで詳しく見る by G-Tools |
| 雇用、利子および貨幣の一般理論 上 (1) (岩波文庫 白 145-1) | |
![]() | ケインズ 間宮 陽介 岩波書店 2008-01-16 売り上げランキング : 326 おすすめ平均 ![]() 岩波文庫に拍手するとともに、強く強く推奨 ケインズを超えたケインズの一般理論です やっと出た新訳Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| 雇用、利子および貨幣の一般理論 下 (3) (岩波文庫 白 145-2) | |
![]() | ケインズ 間宮 陽介 岩波書店 2008-03-14 売り上げランキング : 305 おすすめ平均 ![]() これぞ、名著! 原著を対比させたら間宮訳になるAmazonで詳しく見る by G-Tools |
経済学で解く日常の疑問―基本おさえセンス磨く
経済学とは何か。「今になって去年何を買えば良かったかを教えてくれる学問」である。ネット上でこんな定義を下すエコノミストがいる。そういえば、一年前に七カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議が「世界経済は過去三十年余りで最も好調」とうたった際も、異を唱えたエコノミストは少なかった。今は? いうまでもあるまい。
景気見通しもさることながら、日常生活に役立てる道具としても、大学で学んだ経済学が身に付いていない人が多い。授業で誰もが習う機会費用という概念はどうだろう。「あるモノを手に入れるためにあきらめた別の次善のモノ」の価値だ。
●専門家も低正解率
歌手Aのコンサート・チケットを無料で入手したとしよう。転売は不可。同じ夜に歌手Bのコンサートもあり、チケットは四十ドル。入手するには五十ドルまで出して良いと思っている。AかBのどちらかに行きたい。このとき、Aのコンサートに行くことの機会費用はいくらか。
(1)ゼロドル(2)十ドル(3)四十ドル(4)五十ドル。正解を知りたければ、ロバート・フランク著『日常の疑問を経済学で考える』(月沢李歌子訳、日本経済新聞出版社・二〇〇八年)にあたるべし。正解率は経済学を履修した学生でわずか七・四%。鉛筆を転がしても二五%の正解率となるはずなのに、などということなかれ。〇五年のアメリカ経済学会の年次総会で、百九十九人の専門家に問うたところ、正解率は何と二一・六%にとどまった。
肝心なのはグラフや数式にもまして、経済を見るセンスなのである。フランク氏はコーネル大学教授で、学生に日常生活の出来事を経済学の原則を用いて分析したリポートを書かせる。
「ソフトドリンクの容器が円筒形なのに、牛乳の容器が直方体なのはなぜ?」「女性モデルが男性モデルよりはるかにたくさん稼ぐのはなぜ?」。こじつけめいた答えもあるものの、ヒザを打つ回答が多い。問いと答えを簡潔に一―二ページに収めた本書は、センスを磨く時間を省けるという意味で経済的だ。
この種の本の先駆けは、シカゴ大学のスティーヴン・レヴィットとジャーナリストのスティーヴン・ダブナー両氏による『ヤバい経済学』(望月衛訳、東洋経済新報社)。増補改訂版(〇七年)は「経済学的には投票しに行っていい理由なんてひとつもありゃしない」など挑発的な小文集を加えたが、その部分はちと散漫だ。
コラムニスト、ティム・ハーフォード氏による『まっとうな経済学』(遠藤真美訳、ランダムハウス講談社・〇六年)のテーストも似ている。日本でも同工異曲の本が量産されている。追加一単位当たりの書物の限界効用が低下すまいか。気をもむが、書店に平積みされているところをみると、やさしい経済書への需要は旺盛なようだ。
●実践に役立てよう
もっとも、ある程度は体系立った見方を身につけないと、酒場でウンチクを傾けたとき馬脚を現すのでご用心。今さら教科書は荷が重い。そんな人には、山岡道男、浅野忠克著の『アメリカの高校生が読んでいる経済の教科書』(アスペクト・〇八年)を、そっと薦めたい。
米国経済教育協議会(NCEE)が作成した学習内容基準に基づいて編んだ入門書だ。家計で賢明にお金をやり繰りするには、どうしたらいいか。Tシャツを製造・販売するビジネスを始めたとして、どう軌道に乗せるのか。人間の選択は損得に左右されると割り切って、インセンティブ(経済的誘因)という切り口を基に、経済学の基本を具体的に解説している。
アダム・スミス、マルクス、ケインズ――暗記物めいた日本の高校教科書との違いは歴然としている。大学生や社会人がざっと目を通して損はない。
経済学の古典が読まれないのは、訳文が障壁になっている面もある。英語で読む際の機会費用を考えれば、良質な翻訳書の新規参入は朗報だ。翻訳家の山岡洋一氏による『国富論(上・下)』(日本経済新聞出版社・〇七年)と経済学者の間宮陽介氏の手になる『雇用、利子および貨幣の一般理論(上・下)』(岩波文庫・〇八年)である。スミス語やケインズ語から解き放たれた古典は、想像以上にみずみずしい。新人よ、経済の本を持って街にでよう。
| 文明の接近―「イスラームvs西洋」の虚構 | |
![]() | エマニュエル・トッド ユセフ・クルバージュ 藤原書店 2008-02 売り上げランキング : 3971 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
『移民の運命』『帝国以後』などの著作で知られるフランスの論客エマニュエル・トッドは、人口学、人類学、歴史の知識を駆使して世界の変化のトレンドを示してきた。シリア出身の人口学者との共著である本書は、米欧で強まるイスラム脅威論を、トッド的な手法で否定する本だ。
識字率向上が宗教の退潮と出生率低下、心性の近代化を導くのは歴史の法則であり、宗教の違いは関係ない――という論理が全編にわたって展開されている。宗教原理主義の広がりは、信仰が弱まる中で再確認を求める過渡的現象だとし、西欧もかつて経験した過程だと本書は説く。「イスラム社会は異質」という先入観を排そうとする意思は、十分に読者に伝わるだろう。
著者が指摘する通り、一人の女性が産む子供の数は中東でもかなり減り、それは女性の識字率向上と関係がある。ただし、この二つの指標にもっぱら依拠するイスラム世界の総括には違和感も残る。
出生率は下がったとはいえ相対的になお高く、子供の死亡率低下に伴って若年人口が膨らみ、失業率が高い現実もあるからだ。父系制・母系制など抽象的な説明が目立つ半面、湾岸諸国の初婚年齢の上昇など基本的事実の指摘が欠けているのも残念だ。実態を伝える書というよりも、「文明は衝突せず、いずれ世界は収れんする」というメッセージの書に近い。石崎晴己訳。
| 人口減少社会の家族と地域―ワークライフバランス社会の実現のために | |
![]() | 樋口 美雄 財務省財務総合政策研究所 日本評論社 2008-02 売り上げランキング : 1499 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
経済の成長、会社の先行き、コミュニティーの未来、教育、文化、科学、スポーツ――。何を語るにしても「人口減少の日本」「少子高齢化の時代」という枕ことばから始めて差し支えない時代にある。ただ、そんな時代の到来をヒヤリとした現実感を伴ってとらえるのはなかなか難しい。
本書は「人口減少社会の家族と地域」と題する。だが、家族や地域にとどまらず、人口減少という大きな波動が及ぼしうるさまざまな実像に焦点を当てる。たとえば人口減少の中で構造的に進む「現役世代」の減少。日本の人口減は若者が減り高齢者が増えるというゆがみ構造を伴って進む。二十―五十九歳人口はむこう十年で六百万人以上、二十年で九百万人近く減る。たんなる縮小ではないのだ。就業者の絶対数が減り、消費が落ち込み、経済活動が鈍る。
断面の一つひとつに入り込みながら、必要な政策対応を明示するという手法をとっている。足りない人手を外国人で代替する選択もあるが、最も合理的な処方せんは女性の活用ではないか ――。執筆しているのは、この世界で知られた専門家だ。十二章に分かれた記述は研究会の成果報告というやや硬質な論文の体裁をとっている。それでも全体を通してみれば様々な危機感を少しずつ我が身の未来に投影できるだろう。身につまされる日本のありようを実感できる内容である。
| ストレンジリ・ファミリアー | |
![]() | ミカル・シェルビン 赤々舎 2008-03-18 売り上げランキング : 14860 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
まだ幼さを残す細い体に、派手な衣装をまとう大人の目をした少女たち。王女様のように着飾った娘と貧しい父親。小さい男たち。被写体は昔ながらの見せ物小屋や小さなサーカスで、肉体を披露するダンサー、アクロバットなどの旅芸人たちだ。著者はイスラエル生まれ、撮影の舞台は主に東欧という。あやしく、エロティックで、残酷。幾重にも意味が重なった写真は、幻想的な演劇空間を作りだしている。
| 財投改革の虚と実 | |
![]() | 富田 俊基 東洋経済新報社 2008-01 売り上げランキング : 10520 おすすめ平均 ![]() どこかで、道を間違えた?Amazonで詳しく見る by G-Tools |
財政投融資は二〇〇一年の財投改革で大きく様相を変えた。だが、相変わらず行政改革では組織の形が変わっても結局看板の掛け替えにすぎないものも少なくない。著者は、個々の事業を見直し、その結果、財投規模を抑制することが本来の改革だと強調する。政治が自らの責任で切り込むのをためらい、財投機関や市場に判断を押しつけているという主張は説得力を持つ。
| ヨーロッパ統合史 | |
![]() | 遠藤 乾 名古屋大学出版会 2008-04 売り上げランキング : 17705 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
欧州連合(EU)は、世界の政治・経済において極めて大きな存在感を持つにもかかわらず、歴史学の対象となっていなかったとの問題意識から構想された意欲的な本だ。古代・中世から「ヨーロッパ」が自身をどう規定してきたか、また、冷戦という外部要因による統合論議の進展、近年の通貨統合まで、公開が進みつつある史料や、最新の研究成果を盛り込みながら過不足なく描き出す。文章も比較的読みやすく、EUを知る格好の入門書といえる。
| コーヒーハンター―幻のブルボン・ポワントゥ復活 | |
![]() | 川島 良彰 平凡社 2008-02 売り上げランキング : 1448 おすすめ平均 ![]() コーヒー関係者必読 冒険物語のような人生 一杯のコーヒーから世界が見えるAmazonで詳しく見る by G-Tools |
ルイ十五世が愛飲したという幻のコーヒー「ブルボン・ポワントゥ」。本書はこのコーヒーを百年ぶりに復活させた著者の挑戦の記録だ。かつてはコーヒーの一大産地でありながら、生産が衰退してしまっていたインド洋上のレユニオン島で農家を束ね、絶滅寸前の種を再生し、商品化するまでを描く。良質なコーヒーへの深い愛と飽くなき執念を原動力にして、困難を乗り越えていく人々の迫真のドキュメントだ。生産地の状況を知る意味でも興味深い。
| 観音浄土に船出した人びと―熊野と補陀落渡海 (歴史文化ライブラリー 250) | |
![]() | 根井 浄 吉川弘文館 2008-02 売り上げランキング : 48302 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
観音菩薩(ぼさつ)が住む浄土を目指して南方海上に舟で独り乗り出す「補陀落(ふだらく)渡海」の歴史を追った。熊野の補陀洛山寺を筆頭に、全国で九世紀半ばから十八世紀初頭まで続いた宗教的実践行を、日本独特の死と再生観の表れとして丹念に読み解く。底に穴の開いた舟の構造についての解説や、平維盛が熊野参詣の後に入水した『平家物語』の挿話を補陀落信仰と結びつけるなど、単純な歴史叙述を越えた面白さがある。
| ジーン・ワルツ | |
![]() | 海堂 尊 新潮社 2008-03 売り上げランキング : 77 おすすめ平均 ![]() 全てが繋がり ついつい タイムリーなお話です!!Amazonで詳しく見る by G-Tools |
『チーム・バチスタの栄光』など医療ミステリーで注目される作家の最新長編である。三十二歳の産婦人科医・曾根崎理恵は顕微鏡下人工授精のエキスパート。帝華大学の助教として講義を持つとともに、外部のクリニックで様々な事情を抱えた五人の妊婦を担当していた。上司の清川准教授は理恵と親しくしているが、彼女が逸脱した医療行為をしていると聞き、調査に乗り出す。生殖医療のあり方を問いかける社会派エンターテインメントだ。
| 知識デザイン企業―ART COMPANY | |
![]() | 紺野 登 日本経済新聞出版社 2008-02 売り上げランキング : 67 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「知識」「デザイン」から「創造経営・創造経済」「アートカンパニー」「知識創造」「イノベーション」「真摯(しんし)さという資産」「美的企業」……。興味をそそる用語が本書を駆け巡る。内外の経営学・哲学などの文献からの引用と、アップル、ホンダ、GE、トヨタなど、世界の先進企業のケーススタディーや経営者の主張が、それらの言葉の意味する抽象的な概念に彩りを添える。まず、多彩な分野にわたる著者の博識・博学ぶりに圧倒される。
だが、本書の問題意識自体はシンプルで明確だ。現在、日本企業は大きな転換期を迎えるなか、これまでと違った経営を志向すべきではないかという点である。その点は評者も異論がない。日本を代表する大手企業、例えば世界の最先端を走ってきたエレクトロニクス企業や、身近にあって高品質の商品を開発してきた飲料や食品、日用雑貨品メーカー各社の収益性の変遷を調べたことがあるが、ほとんどの企業はここ数十年収益性の低下がとまらず、今や利益がなくなる寸前に立ち至っている。
理由はハッキリしている。経済の成熟化、商品のコモディティ化である。では、そうしたなか、企業はどう舵(かじ)取りをすべきか。本書の回答は単体製品志向や品質志向、シェア志向の経営をまずやめること。そして知識デザイン、つまり「知をまとめる力」をもつべきことである。
知識デザインというのは著者独自の概念だが、その要素には先見力(媒介する力)と革新力(創造言語を活用する力)、形成力(製品に多様な要素を総合する力)が含まれる。本書はその手法にも言及するが、そこが面白い。現代デザイン論の本家本元でもあるIDEOや認知心理学者ノーマン、アップル社のデザイン手法が紹介され、それぞれの限界も指摘される。野心的な研究レビューで、議論を呼びそうだ。
本書のアイデアは多彩で、その射程は現代企業論からデザイン論、そして科学方法論にも及ぶ。エビデンスがもう少し欲しい個所もあるが、それでも少々堅くなった評者の頭を揺さぶるには十分で、著者の言う「知の解放」を実感させてくれる。
| ブータンに魅せられて (岩波新書 新赤版 1120) | |
![]() | 今枝 由郎 岩波書店 2008-03 売り上げランキング : 729 おすすめ平均 ![]() 豊かさとは? 人間らしさとは?Amazonで詳しく見る by G-Tools |
東洋文化史の研究家が十年に及ぶ滞在を含め、出会いから三十年以上かかわることになったブータンについてまとめた。
「最初は研究対象としての興味だったのが、気が付くと毎年のように足を運び、大きな比重を占めていた。自分の歩みを振り返り、一冊にまとめたいと思うようになった」
浄土真宗東本願寺派の檀家に生まれ、日本仏教への疑問から研究者の道に。チベット研究が盛んな仏科学研究センターの研究員となり、ブータンとの出会いもパリだ。ブータンの学僧で国立図書館長のロポン・ペマラ氏に接し、「仏教の修行に全身全霊をささげた人からにじみ出る崇高さに驚き、師事したくなった」。 一九八一年、入国さえ難しかった“秘境”ブータンへ渡航。国立図書館顧問として資料収集に加え、ブータンの国語、ゾンカ語のシステム開発にも取り組んだ。折しも、ブータンがまだ二十代の第四代国王のもと、伝統文化を守りつつ独自の近代化を進めた時期。リアルタイムにその治世を経験し、「ブータン人が国民意識を持つようになった三十四年」と表現する。
その中心が前国王が提唱した国民総幸福(GNH)という理念だ。「目的を持って努力し、達成されたときの充足感、これをブータン国民一人ひとりが持てることが目標、と前国王自ら説明してくれた」と話す。
いざ書こうとしてうまくまとめられずにいたが、二〇〇六年十二月の国王譲位によって、第四代国王の治世という「視点が決まった」。再びブータンへ飛び、二週間で書き上げた。「譲位のおかげで本を書く決心ができました」と報告したら、前国王は静かにほほ笑んだという。
今後は古文書を正しく解釈できるよう古代チベット語の文法書作成などに取り組む。「後世に渡すのが自分の役割」と感じている。
| 幇間は死なず―落語に学ぶ仕事術 (ソニー・マガジンズ新書 6) | |
![]() | 京須 偕充 ソニー・マガジンズ 2008-03 売り上げランキング : 2698 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「百年目」の大商家の主人と番頭のやりとりから経営者の神髄を学ぶがごとく、落語を通してビジネスのヒントがつづられる。タイトルは、職業としては絶滅しつつも一流のたいこ持ちの「気配りと素養」は現代人にこそ必要という著者の提言から。円生・志ん朝・米朝の演出法の違いも読ませる。
| 街場の現代思想 | |
![]() | 内田 樹 NTT出版 2004-07 売り上げランキング : 44689 おすすめ平均 ![]() 買いです。 エッセイストとしては、いい腕してると思います 面白いAmazonで詳しく見る by G-Tools |
仏現代思想が専門の著者が結婚や転職、学歴など日本社会の諸相をなで切りにするエッセー集。「観(み)た映画の役名を覚えている」人と「観てない映画の監督名を知っている」人の違いから教養の「格差社会」を論じた一章は秀逸。常識の裏をかく論理を追ううちに、目から何枚もうろこが落ちること請け合いだ。
| 高校で教わりたかった化学 (シリーズ大人のための科学) | |
![]() | 渡辺 正 北條 博彦 日本評論社 2008-02 売り上げランキング : 8219 おすすめ平均 ![]() ありそうでなかなかない本 一味違う化学の入門書Amazonで詳しく見る by G-Tools |
科学をやり直したい人に向けた入門書「シリーズ大人のための科学」(全六巻、日本評論社)の刊行が始まった。既刊の渡辺正・北條博彦著『高校で教わりたかった化学』は身近な素材を使いながら高校化学の範囲に入る十四の「なぜ」「どうして」にわかりやすく答えている。瀬山士郎著『つきあってみると、数学!』も既刊で、今後天文学、物理学、生物学、地球科学を出して高校レベルの科学理解をひろげたいとしている。価格は化学が千九百円、数学が千六百円。
| 静かな爆弾 | |
![]() | 吉田 修一 中央公論新社 2008-02 売り上げランキング : 5511 おすすめ平均 ![]() シンミリせつないです。 「東京湾景」「7月24日通り」「春、バーニーズで」ファンにお薦めAmazonで詳しく見る by G-Tools |
大仏次郎賞、毎日出版文化賞を受賞した前作『悪人』は九州の殺人事件を描いた長編だったが、後半は恋愛小説とも読める。それに比べると、本書は純粋な恋愛小説。もっとも、テレビ局という声に満ちた世界に生きる男と、耳が不自由で音のない世界に暮らす女を対比させる点がたくらみを感じさせる。「伝える」ことの難しさ、そして大切さを問いかける物語である。
テレビ局に勤める俊平は、神宮外苑で聴覚を失った響子と出会う。二度目に会ったとき、指で石段に名前を書いて教え合った二人は、まもなく恋に落ちる。俊平は響子と付き合っていくうちに、「少なければ少ないほど、相手へ確実に届く言葉」を考えるようになる。
俊平は志望するドキュメンタリー番組の担当から、バラエティー番組を担当する部署に異動になっていた。そんなとき、アフガニスタンの仏像遺跡破壊の関係者にインタビューできるという話が持ち込まれる。特ダネ映像を狙い、海外取材に奔走する俊平。響子は独り、俊平のアパートに取り残される。
響子の存在感がやや希薄なのは、俊平との対比を考えてのことかもしれないが、もっと彼女の場面を読みたい気がした。とはいえ、特定の場所を舞台に男女関係の微妙な機微を描くワザは今回も健在。スタイリッシュで心が動く恋愛小説になっている。
| 農業再建―真価問われる日本の農政 | |
![]() | 生源寺 真一 岩波書店 2008-01 売り上げランキング : 2057 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
小麦の国際価格が上がり、原油も一バレル百ドル時代が到来した。世界中から食料を買いあさってきた日本は、急速に経済力をつけた中国などに食料市場で「買い負ける」事態も起きている。気が付けば食糧自給率は三九%。農業の再建を本気で考えなければ将来が危うい。日本農業を見続けてきた農業経済学者が、そんな思いで書いたのが本書だ。
昨年の参院選で民主党は、農家への個別所得保障を掲げ圧勝した。バラマキ批判をしていた政府・自民党は、備蓄米の買い増しで農家をなだめにかかるなど農政は迷走の度を深めている。著者は誤った情報や一時的な感情に引きずられた世論に警鐘を鳴らし、バランスのとれた知見の提供が必要と強調する。
その目的に沿って、食糧増産が至上命題だった戦後から飽食の現代まで、日本農業がたどった歴史を丁寧に解説。食生活の変化や食品産業の発展など農業を取り巻く環境の変化や、国際社会の動きにも目配りしながらあるべき農政の姿を描いていく。
政府の審議会委員を務めてきただけに従来の路線を大きく踏み越える斬新な発想には乏しいが、中立・公正な立場で論じようという姿勢は好感がもてる。担い手に支援を集中する経営安定対策と農業用水などの地域資源をバックアップする農地・水・環境保全対策の二つが農政の柱というのが著者の結論だ。
| グラウンド・ゼロから―災害都市再創造のケーススタディ | |
![]() | ジョアン・オクマン 鹿島出版会 2008-02 売り上げランキング : 43210 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
本書は米コロンビア大学が二〇〇二年春に行った連続講座の記録である。戦争、テロ、地震、大火、宗教対立などで大都市が突然、その中心部を失うことがある。そうした都市が歩んだ再建の形と、その背景にある思想を各国の研究者が語るという構成だ。
登場するのは広島、シカゴ、ベルリン、エルサレムなど八都市とバルカン半島の諸都市の計九地域。テロで崩壊したニューヨークのワールドトレードセンター跡はどう復興すべきか、という問題意識が企画の出発点にある。
私的空間で満たされた高密度な都市の心臓部に、期せずして生まれた空白。ここに市民を主役とする真の「公的」空間を生み出したいと企画者は願う。その意図は個別の事例解説より、総括にあたる最終章によく表れている。
市民社会学のベンジャミン・R・バーバーは災害復興という趣旨からやや逸脱し、郊外の大規模ショッピングセンター批判を始める。「公共性は、もっぱら個人の消費のために設計された建築には存在しえない」。従って多様性、開放性、刺激性、危険性が欠けた商業施設は「都市のものまねにすぎない」。かつて広場に集った市民と、シネコンやフードコートの消費者は質的に別物だというわけだ。
いま日本の都市で盛んな複合施設建設は都市再生か、ものまねか。数々の示唆に満ちた本。鈴木博之監訳。
| 蜷川妄想劇場 ~mika's daydreaming theater~ | |
![]() | 蜷川 実花 集英社 2008-03-22 売り上げランキング : 54 おすすめ平均 ![]() 妄想!って面白い! 待ってました!Amazonで詳しく見る by G-Tools |
妻夫木聡、松田龍平、森山未来に成宮寛貴……。16人の美形男子を著者の妄想世界に放り込み、奔放に遊ぶ姿をフィルムに刻んだ。青いチョウを捕らえて無心についばむ加瀬亮、刀を抜いた将校姿の松山ケンイチの表情には、この世とは別の次元に読者をいざなう磁力が宿る。写真は小栗旬。遊郭をイメージしたセットで不敵にほほ笑むアウトローの視線が、著者の意図を超えて動き始めているようだ。
| 中国株投資の王道 | |
![]() | バートン マルキール 日本経済新聞出版社 2008-03-14 売り上げランキング : 199 おすすめ平均 ![]() 中国株投資の先進国は日本だという事実が白日に マルキール流中国株入門書として悪くもないのだが・・ 中国株を歴史から紐解く一冊Amazonで詳しく見る by G-Tools |
株式の銘柄選定の不毛さを明快に説いた『ウォール街のランダム・ウォーカー』の著者らによる中国株の手引書。中国専門家と組んで「中国株を買わないことこそが最大のリスク」と超強気を説く。経済史に分量を割いたのは初心者にはありがたい。専門的な投資理論もわかりやすい形で分析に用いている。危うさにも言及しているが、バブル懸念が漂う今となってはより力点を置いても良かったか。井手正介訳。
後藤文夫―人格の統制から国家社会の統制へ
中村 宗悦 (著)
戦前、農村の疲弊や都市部の貧困層の拡大などを背景に、積極的に社会の改造を目指すべきだとする意識が官僚の間で高まり、「新官僚」と呼ばれる人々が登場した。本書はそのリーダーとされる後藤文夫の一生をたどり、新官僚が果たした役割と、彼らが「下からの国民運動」を目指しながら、結局「上からの官製運動」にとどまり、その改革が所期の成果を上げ得なかった経緯を浮き彫りにしようとしている。「評伝・日本の経済思想」シリーズの一冊。
| ロシアビジネス成功の法則 | |
![]() | 岡田 邦生 畦地 裕 芳地 隆之 税務経理協会 2008-03-01 売り上げランキング : 29323 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
世界的な石油価格の高騰などの後押しもあって、ロシア経済は九年間連続で高成長が続いた。その結果、家計所得も大幅に増え、数多くの個人資産家が新たに誕生することになった。すっかり様変わりしたロシア経済。そうしたなか、私たちがロシアでビジネスを成功に導くにはどういう点に特に注意が必要なのか。本書は豊富なデータを交えながら専門家が分かりやすく解説している。
| 不倫の惑星 | |
![]() | パメラ・ドラッカーマン 佐竹史子 早川書房 2008-01-23 売り上げランキング : 552 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ウォールストリート・ジャーナルの元記者が、世界十カ国を巡り、配偶者以外と関係を持つことについて、主に中流階級の人々がどんな意識を持つのか、その違いを探った。いわゆる「浮気」への反発心が極めて強い米国。それと正反対のようでいて実は違うフランス。調査は結婚観や恋愛観の違いにも及び、著者は日本の「お見合いパーティー」や、ユダヤ教の厳格な宗派のサロンにも潜入する。膨大な調査結果をユーモラスな文章でつづる。佐竹史子訳。
| 文学鶴亀 | |
![]() | 武藤 康史 国書刊行会 2008-02 売り上げランキング : 6799 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「瓦斯(ガス)は炭より経済だ」。昔はよくこんな言い方をしたという。今なら「経済的」というところだが、「『的』がないだけでたちまち古風に響く」。古い日本語の陰影に富んだ面白さを発見する「日本語探偵帖」など、書誌学者でもある文芸評論家が縦横につづったエッセーを集めた。作家論で取り上げるのは里見弴、野口冨士男、矢田津世子と実に渋い顔ぶれ。漢語をちりばめた古風な文体は老批評家の筆かとみえるが、著者は一九五八年生まれ。
| かまくら切通しストーリー | |
![]() | 堤 治郎 かまくら春秋社出版事業部 2008-01 売り上げランキング : 4728 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「切通し」とは山を切り開いて作った細い道のこと。明治時代半ばまで、三方を山に囲まれた古都・鎌倉に出入りするには、切通しを通る必要があった。その名残が鎌倉七口と呼ばれる七つの切通し。そこを通って鎌倉にやってきた源頼朝、西行法師、水戸光圀ら歴史上の人物に思いをはせたのが本書である。
「鎌倉には三十年以上住んでいるが、切通しを歩くようになったのは、会社退職後のここ十年ほど。普通の山道とはひと味違って歴史を感じさせるところがとても面白く感じた。そのうちに『吾妻鏡』などの史料にあたって、切通しを踏み越えてきた人を調べたいと思うようになった」
武士の都を初めて開いた頼朝は別として「鎌倉への訪問者を取り上げた」。西行法師には頼朝からもらった貴重な銀づくりの猫を、そのまま近くにいた子どもに与えたというエピソードが残っている。豊臣秀吉は頼朝の木像と対面して「互いに天下友達である」と語ったという。
秀吉の鎌倉入りのルートは三つ考えられるが、北側の化粧坂切通しから入った可能性が高いと推測する。「切通しをテーマにしている以上、それぞれの人物がどこから入ったかは、できるかぎり調べるようにした」と話す。
原稿を一通り書き上げたのは二年前。「できるだけやわらかい文章にしたい」と考えたため、書き直しに時間がかかった。そこで参考にしたのが、『銭形平次捕物控』で知られる野村胡堂の文体。「報知新聞の記者だった胡堂は鎌倉から東京・有楽町まで通っていた時期がある。私も同じように通勤していたので、勝手に親近感を持っていた」
切通しに続く関心の対象は、江ノ島にゆかりのある英国人貿易商。放送記者時代と変わらない旺盛な好奇心で、取材に取り組んでいる。
秀吉の接待―毛利輝元上洛日記を読み解く
二木 謙一 (著)
西国大名の雄、毛利輝元の上洛(じょうらく)日記を読み解き、人心掌握術にたけた豊臣秀吉の接待ぶりに光をあてる。武家の儀礼に詳しい著者は豊臣政権が官位を重んじ、秀吉が囲碁見物、月見、初鮭の到来などことあるごとに輝元を招待した事実を詳述していく。当時の桃山文化の一面を伝える一冊だ。
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一九五二年のデビュー作を英訳付きで文庫化。あわせて収録した自筆ノートや後年の自己解説が興味深い。「心から詩を信じるということが、私にはかつてなかったし、またこれからもないだろうと思う」と書き出す一文では「詩人は、詩を書きながら、常に詩を超えたものに渇いているものだ」と訴える。



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