メイン > 日経新聞日曜版『読書』 > 2008年2月3日~2月10日
| 現代詩大事典 | |
![]() | 中村稔 大岡信 安藤元雄 三省堂 2008-02-01 売り上げランキング : 65899 おすすめ平均 ![]() 掲載基準が曖昧な事典Amazonで詳しく見る by G-Tools |
三省堂は明治期から現代までの日本の詩に関する事項を解説する『現代詩大事典』を刊行した。北村透谷以降の代表的な詩人・評論家ら約千人と、「比喩と象徴」「新即物主義」「昭和戦後期の詩論争」といった事項約五百項目を収録。代表的な約百編の詩も掲載している。詩集、雑誌、参考文献については著者名、タイトル、刊行年月、出版社名を示した。詩人の安藤元雄、大岡信、中村稔の各氏が監修。
| 会社はどこへ行く | |
![]() | 奥村 宏 エヌティティ出版 2008-01 売り上げランキング : 9279 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
それでも「株式会社」は続くだろうというのが読後感である。本書は、現在の巨大株式会社は世界的に危機に陥っており、「会社のあり方を変えない限り人類に未来はない」と言い切る。しかし、どう変えるべきかについては、著者もつかみあぐねている。
株式会社批判は古くからある。高橋亀吉著『株式会社亡国論』(一九三〇年)は重役、株主の腐敗堕落を厳しく批判した。戦後では、経営学ブームを巻き起こした坂本藤良の『株式会社の死滅する日』(一九七五年)がある。
金をもうけたいという人間の利己心をうまく束ねて、事業を急速に拡大するシステムとして、株式会社はよくできている。それと裏腹に危うさを抱えている。
本書は、歴史的に様々な危機をどう乗り越えてきたかを跡付け、現在、大企業は最終的に解体の過程に入っているとみる。最近、台頭してきた投資ファンドは、会社を買って売りさばいて利益を上げる「解体屋」と規定する。
しかし「ハゲタカ」も市場原理によって非効率な企業を再生させる役割を結果的に果たしている面がある。
著者は株式持ち合いを構造的に分析して「法人資本主義」の概念を提起したことで知られる。では今も変わり続ける株式会社をどうとらえるか。果たして代わるものがあるのか。議論を喚起するところで本書は終わっている。
| 雲を掴め―富士通・IBM秘密交渉 | |
![]() | 伊集院 丈 日本経済新聞出版社 2007-11 売り上げランキング : 528 おすすめ平均 ![]() 50代以上の富士通関係者向けに送った経緯報告書 狭隘な利害を超えた、迫力満点の“交渉術”実践編 クローズvsオープン戦略、、Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ネット社会の到来とともにソフトやコンテンツの著作権が重視されるようになった。経営も知的財産戦略抜きには考えられない。今では当たり前のことだが、日本企業にそれを思い知らせたのが四半世紀前の「IBM産業スパイ事件」である。次第に風化していく著作権論争を経済小説に再現し、改めて企業の自覚を促したのが本書だ。
著者はペンネームで執筆しているが、実は問題が起きた一九八二年から十五年間にわたり、富士通でその解決にあたってきた本人である。事件は日立製作所や富士通などがIBMの基本ソフトを無断でまねたというものだが、富士通は互換ソフトの正当性を争い、IBMと秘密協約を結ぶ道を選んだ。論争は九七年に終結が合意され、守秘義務も消滅したが、フィクションという形を採ったのは、そうした事情があったからだ。
物語は問題発覚から秘密協約が結ばれるまでの一年余りの出来事を描いている。有事での初動の大切さ、問題解決に向けた手段の選択、実益を取る交渉方法など、小説ながら企業戦略に必要なポイントを網羅した。特に著作権や公正さに対する米国企業の考え方が随所に紹介され、日本企業が欧米企業と競争していく際に役立つ知恵が詰まっている。情報産業に働く人にはもちろん、一般ビジネスマンにとっても面白く読める一冊だ。
| 湖水地方 | |
![]() | 寺坂 小迪 文藝春秋 2008-01 売り上げランキング : 10192 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
父を亡くした姉妹が遺品のカメラを叔父に届けるため、湖のほとりにある小さな町を訪ねる。語り手である姉の香夏子は、幼いころから五歳年下の妹・夏実を守るように生きてきた。しかし夏実の恋人と密かに関係を持ってしまった時から、香夏子の心には微妙なひずみが生じる。
表面的には何か大きな事件が起こるわけではない。だが秘密を抱えた香夏子の心は千々に乱れ、抑えようのない葛藤をはらんで複雑にうねっている。妹といつも一緒だった少女時代、妹の恋人との逢瀬(おうせ)の記憶、死んだ父の思い出などが香夏子の心に明滅する。その心理の動きを、著者は顕微鏡で観察するかのような筆致で細密に描き出していく。先が読めない内面のドラマを、読者はかたずをのんで見守ることになる。
物語にサスペンスを与えているのは、隠喩(いんゆ)に満ちたモチーフの数々だ。厚い霧に閉ざされてどこまでも静かな湖面、葦(あし)をくわえた雁(がん)、奇形のニジマス、葦舟――。マルグリット・デュラスを思わせる暗示的な文体もあいまって、白昼夢のような雰囲気が作品全体にたちこめている。
著者は文学界新人賞を受賞した一九七八年生まれの新進作家。仏の国際空港で、二人の女性が飛行機を待ちながら遠い記憶をめぐるミステリアスな対話を展開する併録作「シャルル・ド・ゴールの雨女」も魅力的。
| Cherryblossoms チェリーブロッサムズ | |
![]() | 大森 克己 リトル・モア 2007-12-22 売り上げランキング : 5490 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
名木をめでる写真集はいくらもあるが、本書は違う。著者は桜という生命体の不思議さに、カメラを向けずにいられなかったのだろう。通常の外光用フィルムでの撮影より、あえて室内用フィルムを使った作品に心持ちが表れている。全体に青みがかり、色が抜けた画像で見ると、満開の枝や地面を埋める花びらが、何か尋常でない神秘な姿で浮かんでくる。確かなようでおぼろな夢の記憶を思い起こす。
| アジアの都市間競争―東京は生き残れるか | |
![]() | 小森 正彦 日本評論社 2008-01 売り上げランキング : 15110 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
経済力や情報発信力という点でアジアのナンバーワン都市といえば、つい最近まで文句なく東京だった。今はシンガポールや香港が肩を並べ上海なども台頭している。これら新興都市に東京がどう対抗し、競争に生き残るかを論じる。「職住遊学を混在させよ」「生活文化産業を興せ」「『よそ者』をうまく生かせ」などの提言を通じ、生活の場としての快適さが生産性の高い人々を引き付け、最終的に都市の力につながると説く。
| 父ボース―追憶のなかのアジアと日本 | |
![]() | 樋口 哲子 中島 岳志 白水社 2008-01 売り上げランキング : 165009 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
戦前の日本で祖国インドの独立に向けて活動したラース・ビハーリー・ボース。長女である著者が、娘の目で見た革命家の生涯を語る。英国人の追跡を逃れて一九一五年に来日し、東京の新宿中村屋にかくまわれる。地下生活の後、太平洋戦争時にはインド国民軍の指揮官に任じられるが、終戦前の四五年一月、インド独立を見届けることなく死去する。『中村屋のボース』の著者、中島岳志氏が著者へのインタビューをもとに編集した。
| なげださない | |
![]() | 鎌田 實 集英社 2008-01 売り上げランキング : 782 おすすめ平均 ![]() いのちの底力Amazonで詳しく見る by G-Tools |
アルコール依存症で仕事も家庭も失った男性は、立ち直って訪問カウンセラーとして奔走している。末期がんと闘っていた女性歌手は、夢をあきらめず歌い続けた。心の通う医療にこだわり『がんばらない』などの著書で知られる医師が、「なげださない」人たちの姿を描いた。足は海外にも向かい、チェルノブイリに近いベラルーシやイラクのバスラで人のために生きる地元民の姿なども紹介。命の尊さだけでなく、平和の大切さも訴えかけている。
| ヒット商品を創るデザインの力―「ハイテク&ハイセンス」が企業ブランドを築く | |
![]() | 喜多 俊之 日本経済新聞出版社 2007-12 売り上げランキング : 4239 おすすめ平均 ![]() 物足りない もっと知りたい開発秘話Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ヒット商品を生み出す上でデザインの力が欠かせないのは常識だろう。本書はシャープの顔になった液晶テレビ「AQUOS(アクオス)」シリーズのデザインなどを手掛けた著者がこれまでの経験をもとに、日本企業のデザイン力を高めるにはどうしたらよいのか、デザイナーの力を引き出すにはどういう体制が望ましいのか、など日本がデザイン立国となるための様々な課題を論じている。
| M&A敵対的買収防衛完全マニュアル | |
![]() | 福谷 尚久 土橋 正和 中央経済社 2008-01 売り上げランキング : 22930 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ある日突然、自分の勤める会社が見知らぬ企業や投資家から買収を提案される――。そんなケースも人ごとではなくなってきた。本書は突然の、敵対的な買収から企業を守るために、公開会社があらかじめ考えるべきポイントとそうしたケースに直面した場合の対応方法について、M&Aのアドバイザリー業務を専門に行う著者が企業関係者向けにまとめた。本全体がひとつの実践的な「マニュアル」になっている。
| 逆境を乗り越える者 リーダーたちは失意のどん底からいかにして立ち直ったか [HBSP] | |
![]() | ジェフリー ソネンフェルド アンドリュー ウォード 久野郁子 ランダムハウス講談社 2007-12-20 売り上げランキング : 444 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
政治家でも経営者でもトップを極めたリーダーが権力抗争や不祥事などでキャリアの挫折を味わい失意のどん底に落ちた後、どう復活したか、あるいは復活できなかったのはなぜかというのは、洋の東西を問わず興味深い。本書は主に企業の最高経営責任者(CEO)を中心にしてその興味あるテーマを、丹念に実例を挙げて検証している。巻頭に実に二百五十七人もの多くに謝辞を述べているのには幾分辟易(へきえき)するが、二十年前に著した力作『トップ・リーダーの引退』と同様に、著者らが学識と共に足でも書いた労作である証拠だろう。
例示された復活劇はほとんど米国の話なのでiPodの成功で喝采を浴びたアップルのスティーブ・ジョブズはじめマーサ・スチュアート、ドナルド・トランプなどごく少数を除いて、日本ではあまり馴染(なじ)みのない人物が多い。経営者が企業を渡り歩くのは外資系を除いてごく限られていることもあり、一敗地にまみれた経営者の再起戦略がそのまま日本の場合に当てはまるわけではない。
それでも、あまたの実例から抽出した教訓は「挫折は始まりであって終わりではない」「使命を明確にする」「自分の言い分を整理する」「復活は運の問題ではない。選んだ道を進むことである」など納得させられる。
その中で経営者が復活できるカギはふたつの要件という。第一に意識して未来の可能性に目を向けるなど精神的に立ち直ること、第二に自身の名声や評判を回復すること。このうち名声や評価はトップの座の降り方に大きく左右される。業績問題か不祥事、不正行為かなどである。理由のいかんが経営者を次の企業に推薦するヘッドハンターの評価を変える。評価が落ちると復活の機会は限られるというわけだ。
多額の退職金との抱き合わせ条件で、離職事情の公表や関連業界への再就職・起業を禁止され、名声を回復できない元CEOも少なくないという。もともと金銭的には困らないCEOたちのはずだが、沈黙とひき換えにした選択の重みに悩む姿も透けて見える。
| アメリカ下層教育現場 (光文社新書) | |
![]() | 林 壮一 光文社 2008-01-17 売り上げランキング : 561 おすすめ平均 ![]() 本書の内容が日本の将来になるのもそう遠くない? 豊かさの代償 「あきらめない」生き方を強く訴えるAmazonで詳しく見る by G-Tools |
米国在住のノンフィクションライターである著者は、恩師に頼まれ、米国の高校で「日本文化」を講じることになる。だが、そこは学力レベルが最底辺。貧困や崩壊した家庭にあって夢を見いだせない生徒たちの状態は絶望的だった。生徒たちに全力で向き合う著者の姿に、教育の原点をみる思いがする。
| 忘れえぬ落語家たち (河出文庫 お 16-1) | |
![]() | 興津 要 河出書房新社 2008-01-05 売り上げランキング : 28976 おすすめ平均 ![]() 著者しか書けなかった噺家思い出話のお徳なアンソロジーAmazonで詳しく見る by G-Tools |
早大教授で落語研究家であった著者が、昭和十八年に衝撃的出会いをした志ん生はじめ、文楽、金馬、円生、三木助ら昭和の名人二十人の魅力をつづる。人々の心をつかんで放さない芸とは、人間的魅力にほかならないことを痛感させられる。おごることなく、芸に打ち込む先人たちの姿は今も輝いている。
| フランク・ロイド・ライト入門―その空間づくり四十八手 | |
![]() | 三沢 浩 王国社 2008-01 売り上げランキング : 791 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
日本でも人気の高い建築家フランク・ロイド・ライト(一八六七―一九五九年)は生涯で五百余りの建物を設計した。しかも、一つとして同じものがないといわれるほど様々な表現を取り入れている。
この多作の巨匠の作品を相撲の四十八手になぞらえ解説したのが本書。バルコニーを大胆に張り出させた「つきだし」のゲール邸、借金返済と生活のため不本意な様式建築を建てさせられた「寄りきり」のムーア邸。そのほか「だきつき」「きのこ重ね」といったユニークなキーワードが並ぶだけで、建築が生き生き語りかけるように見えてくるから不思議だ。
三沢氏は一九五五年から計十年間、日本のモダニズム建築の礎を築いたアントニン・レーモンドの設計事務所に勤めた。帝国ホテルの設計を手伝うため、ライトとともに来日した建築家だ。しかし二人が日本で仲たがいしたため、師匠はライトの仕事について口をつぐんだ。六〇年代後半に米国のライト作品をめぐる機会を得るまでは「古くさい」と興味も抱かなかった。
「考え方に制約やきりがない建築家だった」と三沢氏はいまライトを評価する。一つの建物に鉄やコンクリート、大谷石などをとり混ぜて使う「混構造」。エジプトやマヤ文化を思わせる装飾を張り付けたこともある。あの有名な「落水荘」にはバルコニーの表面に金ぱくを張る予定だった。「コンクリートならコンクリートだけで建てるのが近代建築の基礎だと僕らは教わってきたが、それとはまるで違う。頭の中まで混構造のよう」と驚く。
どこの土地でも成立する普遍的で画一的な建築とは対極にあるライトの作品は「自由自在に作られたからこそ、長生きできるものになったのでは」。環境や自然を重視したライトの「有機的建築」の見直しを説いている。
| 日独関係史 1―一八九〇-一九四五 (1) | |
![]() | 工藤 章 田嶋 信雄 東京大学出版会 2008-01 売り上げランキング : 208497 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
十九世紀末から両大戦期の日独の政治・経済・社会的交流を検証する論文集「日独関係史 一八九〇―一九四五」(全三巻)の刊行が東京大学出版会で始まった。「日独関係の多様な相を提示しており、両国の経済史や国際関係論などの研究の参考にしてもらいたい」(担当編集者の佐藤一絵氏)という。
既刊の第一巻『総説/東アジアにおける邂逅(かいこう)』と今月刊行の第二巻『枢軸形成の多元的力学』では、第二次大戦期までを対象に独の外交戦略における東アジアの位置づけや戦時の経済協力などを分析。三月刊行の第三巻『体制変動の社会的衝撃』では独における日本の知識人の活動や技術交流など、個人や組織レベルでの関係史を論じる。
編者は工藤章・東京大学教授と田嶋信雄・成城大学教授。A5判で平均三百五十ページ。
| パリ五月革命と日本人留学生 | |
![]() | 船岡 末利 論創社 2008-01 売り上げランキング : 203052 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
一九六八年、パリで起こった五月革命を肌で体験した著者の回想記。ソルボンヌ大学の留学生だった著者は五月三日、帰宅途中で学生のデモ隊と警官隊の衝突に巻き込まれる。逃げ遅れた著者は何人もの警官から警棒で殴られ、抱えていた教科書やノートを失い、必死の思いで宿舎に逃げ帰った。
深刻なけがではなかったが、カナダ人の同級生の助言に従いポンピドー首相や知日家のアンドレ・マルロー文化相、「ルモンド」編集長らに被害を訴える手紙を書く。この返事がちゃんと届くところが興味深い。マルローからはエッセーの献本まであった。
著者は五月革命を主導した学生たちのただ中にいながら、巻き込まれず、外国人留学生という立ち位置から運動の熱気を客観的に観察する。警官隊からは暴力を受けた立場だが、極左主義者や表面的な感情から大学教官を糾弾する学生らを批判。急進的な抗議活動への反発から、ドゴール政権を擁護する人々が少なくなかったことも指摘する。
「政治の季節」から距離を置いていた著者が尊重するのは、フランスの民衆に浸透する異議申し立ての意識だ。二〇〇六年に若者の雇用政策を巡って起きた抗議運動の例からも、フランス共和制の根底を成すものが見えてくる。日本での会社勤めや留学の経緯をつづった第3部はやや散漫だった。
| 東京裁判 (講談社現代新書 1924) | |
![]() | 日暮 吉延 講談社 2008-01-18 売り上げランキング : 1743 おすすめ平均 ![]() 「白か黒か」だけではない。 テーマで絞った裁判史Amazonで詳しく見る by G-Tools |
太平洋戦争の終結後、連合国が戦前期日本の指導者を裁いた極東国際軍事裁判(東京裁判)。判決が言い渡された一九四八年(昭和二十三年)から今年で六十年になる。節目の年に四十代の気鋭の研究者が著した本書は、東京裁判を「冷静かつ客観的に」とらえようとする意欲作だ。
本書の検証の対象は、四五年八月に日本がポツダム宣言を受諾してから、五八年十二月にすべての戦犯の刑期が終わるまでの期間が中心。裁判の枠組みの成立から説き起こし、連合国による告発と日本の対応、判決の言い渡し、戦犯の釈放までを、時系列に沿って丹念に追う。
著者は一貫して、東京裁判を「肯定」あるいは「否定」するいずれの立場とも距離を置く。裁判をあくまでも国際政治の問題としてとらえ、戦後の国際秩序の安定化という政策目標からみてどうだったかという評価を、連合国、日本それぞれの側から試みる。
連合国からみた場合、日本人に屈辱感を残し、日本国内で肯定論と否定論が衝突する状況を生んだという点で、東京裁判は外交政策として賢明ではなかった。一方の日本側からみれば、戦後の対米協調路線への移行をスムーズにした点で裁判の受け入れには意義があったと評価する。
特定の立場に立たずに歴史的事実として東京裁判をとらえ直したいというとき、本書の記述は示唆に富む。
| CIOのITマネジメント (NTTデータ経営研究所情報未来叢書 1) (NTTデータ経営研究所情報未来叢書 1) | |
![]() | NTTデータ経営研究所 エヌティティ出版 2007-12-25 売り上げランキング : 605 おすすめ平均 ![]() 気になるテーマがあればお薦め CIOとは誰のことか ミシュランの3つ星レストラン並みAmazonで詳しく見る by G-Tools |
IT(情報技術)の広がりを受け、企業や組織の情報戦略を担うCIO(情報統括責任者)の存在が注目されている。本書はCIOの役割やその任務について、NTTデータのコンサルティング部門が平易な言葉で解説したCIOのための指南書である。
CEO(最高経営責任者)に次いで、CIOの概念が米国で生まれたのは一九七〇年代だが、インターネットの普及で九〇年代から特に重視されるようになった。従来の情報システム部長と異なり、システムの開発・運用だけでなく、経営戦略にITを生かすことが求められている。
ところが日本では役職としてのCIOは増えたものの、職務が明確でなく、名前だけの場合が多いと指摘。CIOというのは情報システムについて、パフォーマンス(投資効果)、コスト(費用)、リスク(危機)の三つに責任を負う仕事だと定義する。
ITが重要だとされながら日本でIT投資が進まないのは効果が見えないからだと分析。CIOは投資効果を評価できる評価手法を導入し、ITの投資効果を可視化する必要があると説く。またCIOを支えるための組織「PMO」の設置も必要だという。
今年施行された日本版SOX法やITの新潮流を表した「Web2・0」にも言及しており、現役のCIOやこれからCIOを目指す管理職にも参考になる本だ。
| 神々の杜 | |
![]() | 石橋 睦美 平凡社 2007-12 売り上げランキング : 8678 おすすめ平均 ![]() 古代日本の空気感を味わえますAmazonで詳しく見る by G-Tools |
神のいます場所を「杜(もり)」と呼んであがめた我々の祖先たち。その心の原風景を見つめる写真集だ。春日大社の鳥居や出雲大社の社といった建造物も美しいが、著者の目はむしろ背景にある原生林や岩、澄んだ空気といったものに向けられているように見える。聖なる土地を俗界から分かち、神々しい場所としてきた自然そのものに、原始の信仰の姿を感じ取っている。写真は山形県の羽黒山・出羽神社。
| 影響力の法則―現代組織を生き抜くバイブル | |
![]() | アラン R.コーエン デビッド L.ブラッドフォード 高嶋 薫 税務経理協会 2007-12-03 売り上げランキング : 858 おすすめ平均 ![]() 人生を大きく変える1冊に出会ってしまった! Influence Without Authorityの翻訳版発見! 仕事で人間関係に困ったときに役立ちそうAmazonで詳しく見る by G-Tools |
人は命令だけでは動かない。重要性を増している知的な仕事ほど、その傾向が強い。上意下達に頼らず、人に納得ずくで動いてもらうにはどうするか。これをテーマとする本書は「互恵性」の原則が鍵だという。相手に求めるものを与えて、こちらの期待に応えてもらうというわけだ。前提として自分本位の利益ではなく、全体の利益を目指すべきだという。人間操縦術に洋の東西で本質的な違いはないようだ。高嶋成豪、高嶋薫訳。
| 「元気村」はこう創る―実践・地域情報化戦略 | |
![]() | 國領 二郎 飯盛 義徳 日本経済新聞出版社 2007-12 売り上げランキング : 15709 おすすめ平均 ![]() 地域情報化の「サービス」化Amazonで詳しく見る by G-Tools |
地域を活性化するために最も必要なことは人材の育成とそのネットワーク化であろう。本書は熊本県山江村の「住民ディレクター活動」や富山の「インターネット市民塾」など各地の事例を紹介しながら、新たな段階を迎えた地域情報化が住民の意識改革や町おこしに役立っている様子とその背景を分析している。地域再生は国政の重要課題になっているが、住民の目線で考えた草の根型の活性化策の提案として新鮮だ。
| 日本映画と戦後の神話 | |
![]() | 四方田 犬彦 岩波書店 2007-12 売り上げランキング : 107141 おすすめ平均 ![]() 映画評論としては下の下Amazonで詳しく見る by G-Tools |
昭和天皇、ゴジラ、三島由紀夫、山口百恵。今や戦後日本の「神話」と化した存在を、映画はどう表現し、観客はそこに何を求めてきたのか。映画史を専門とする著者が縦横に論じた。中国や台湾の映画は、終戦の玉音放送をどう描いたか。「無法松」「寅さん」など社会の異端者に向ける、観客の目はどう変わってきたか。論文の集成なので、やや散漫な印象もあるが、戦後日本人の心性を浮き彫りにする鋭い視点に満ちている。
| 越境者松田優作 | |
![]() | 松田 美智子 新潮社 2008-01 売り上げランキング : 291 おすすめ平均 ![]() 筆者でなければ書けない人間、仕事人松田優作の軌跡。 ダークサイド。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
元妻で作家の著者が明かす俳優・松田優作の素顔。山口県下関で在日韓国人の母と母子家庭で育った幼少期から一九八九年の病死までをつづる。離婚後も優作と交流があったという著者はインタビュー記事や友人らの証言などを織り交ぜ、診断した医師にも二度取材した。「定住は停止と同意語」と変化と刺激を求めて走り続けた俳優の人生を客観的に描写していて読みやすい。親友の一人、女優の桃井かおりが語る松田優作像も興味深い。
| てれんぱれん | |
![]() | 青来 有一 文藝春秋 2007-11 売り上げランキング : 35784 おすすめ平均 ![]() 父がてれんぱれんになった理由 確かに見えたあの頃Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「てれんぱれん」は、なまけている人を非難するときに使う方言という。この小説の主人公「わたし」の父は長崎で被爆したために体が弱く、てれんぱれんと短い一生を過ごした。それを支えたのはお好み焼き店を営む働き者の母。しかし、父は不思議な霊視力を持っていた。五十歳を過ぎた「わたし」はかつて住んでいた町に四十年ぶりに戻り、そこで初めて父の思いを知る。『爆心』で谷崎潤一郎賞などを受賞した作家の最新長編は、父と娘の心にしみる物語だ。
| 本の背表紙 | |
![]() | 長谷川 郁夫 河出書房新社 2007-12 売り上げランキング : 26619 おすすめ平均 ![]() 文壇通信ではない作家の消息Amazonで詳しく見る by G-Tools |
長谷川さんは伝説的な編集者だ。早大生時代に小沢書店を創立し、美しい装丁や丁寧な造本で二〇〇〇年に倒産するまで秋山駿、磯田光一、小川国夫、吉田健一らの七百点ほどの文芸書を世に送り出した。今は大阪芸大で編集について講義する傍ら、若い時から日曜大工のように続けてきた執筆を精力的に行う。
本書は静岡新聞日曜版の読書欄に三年間、百五十三回連載したエッセーを収録。串田孫一のユーモアを描く「啓蟄(けいちつ)」から山口瞳と吉野秀雄との師弟関係に触れた「早春賦」まで文学者や芸術家の「生きた言葉」を四季の移ろいの中につづる。登場するのは生前に言葉を交わしたことがある石川淳、白洲正子、中野重治、埴谷雄高らの物故者たち。
「三十歳ごろに同じ欄に『書国友遊』というエッセーを連載した。藤枝市に住む小川国夫さんの所に通ううちに新聞社の人と飲む機会があり、依頼されたのがきっかけ。三十年ぶりの再登板となる」
「回想記を書きたくないと最初に思った。回想が入るにせよ、それよりも、親しんできた作家や詩人の言葉を四季とからめながら紹介したいと考えた。連載を終えて痛感したのは、古い世代にあった季節感がいま現代文学から失われているということですね」
鋭い観察眼が魅力的だ。「すぐれた批評家とは、つまるところ、言葉と思考の運動神経が発達した人をいうのだろう」(小林秀雄)。「氏は、蕎麦(そば)屋で背筋を伸ばして杯を口に運ぶ姿が、見事に様(さま)になっているような人物」(永井龍男)。「半ズボンにTシャツ。不思議なことに、私の記憶のなかのコミさんは、いつも夏のスタイルなのである」(田中小実昌)。どの文章にも懐かしき文学の香りが漂い、熱き時代を共有した実感がこもっている。
| 相撲記 (講談社文芸文庫 ふH 2) | |
![]() | 舟橋 聖一 講談社 2007-12-10 売り上げランキング : 3314 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
幼少時からの相撲好きで横綱審議委員も務めた作家が、戦時中に著した相撲エッセー。相撲の歴史に関するウンチクもさることながら、呼吸をずらして立つ「ペテン立ち」など、往時の相撲の姿を記した文章が興味深い。物資節約の影響で稽古後に風呂も入れないなど、当時の世相を伺わせる話もある。
| 丹精で繁盛―物づくりの現場を見にゆく (ちくま新書 693) | |
![]() | 瀬戸山 玄 筑摩書房 2007-12 売り上げランキング : 4619 おすすめ平均 ![]() 「こだわり」ではなく「丹精」Amazonで詳しく見る by G-Tools |
受け取る相手のためにできる限りを尽くす様を示す「丹精」という言葉。干物の技術で雑魚を特産品にした水産業者、造船技術を建築に生かす鉄材加工業者など、独創的な仕事で新市場を切り開いた人々を紹介する。現代のものづくりにも丹精の美学は持ち込めるはずだと著者は強調する。





50代以上の富士通関係者向けに送った経緯報告書
狭隘な利害を超えた、迫力満点の“交渉術”実践編






![逆境を乗り越える者 リーダーたちは失意のどん底からいかにして立ち直ったか [HBSP]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/217vQIWLqEL.jpg)

















