メイン > 日経新聞日曜版『読書』 > 2008年1月20日~1月27日

事典世界音楽の本
事典世界音楽の本徳丸 吉彦

岩波書店 2007-12
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岩波書店はクラシックやジャズ、民族音楽、Jポップまで幅広い音楽ジャンルの百二十六項目を解説した『事典 世界音楽の本』(八千円)を刊行した。リズム、音色、制度、二十世紀音楽史、日本音楽の二十世紀、グローバリズムと現代の問題の六章で構成する。編者はピアニスト・作曲家の高橋悠治氏ら。ヒトの二足歩行とリズムの関係から、ファイル交換まで多彩な項目を網羅した。

■2008/01/27, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

合衆国再生―大いなる希望を抱いて
合衆国再生―大いなる希望を抱いてバラク・オバマ 棚橋 志行

ダイヤモンド社 2007-12-14
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おすすめ平均 star
star初の黒人大統領誕生なるか?
starオバマ氏の人柄と主張がよくわかり、ファンになります。
starオバマ氏が出てきた。

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本書の原題は「大胆な希望」である。彼が何を大胆な希望と考えているかといえば、人種的、文化的(宗教的)、経済的、社会的に深く分裂したアメリカの一体感を回復することができるという希望であり、個人レベルで言えば、自らの運命を引き受けた上で希望を胸に苦難に果敢に挑戦するアメリカ的な生き方への深い共感と断固たる確信である。この個人レベルの観点は、アフリカ系アメリカ人である著者自身の自伝的作品『マイ・ドリーム』(ダイヤモンド社)において、他の候補者には期待できないような形で深く掘り下げられている。他の候補者にとってアメリカは自明のものであったとすれば、著者にとってそれは一定の距離を置いた検討と吟味の対象でもあったからである。

大胆不敵な希望の政治的な焦点は『合衆国再生』が「二大政党制の弊害」から始まっているところに極めて特徴的に現れている。この十数年指摘されてきたところであるが、アメリカ政治が多くのアメリカ人の利害関心から遊離し、極端な立場の衝突とレッテルの張り合いの不毛な舞台になってしまっている点、これがここでの著者の批判の対象である。六〇年代に源を持つある種イデオロギー的な激しい党派のぶつかり合い、それを激化させる容赦のないネガティブキャンペーン、現実離れした狭い絶対主義が甚だしくなる中で、連帯や信頼感は政治の世界から失われ、国民の抱える深刻な現実的課題は放置されたままになっている。この党派主義の弊害を打破するためにアメリカ人の現実の共通の価値観にまで立ち返って政治の有効性を回復し、アメリカの一体感を回復するというのがオバマの基本姿勢である。アメリカ人の生き方に対する彼の共感がこの企てを支えている。

現在のところオバマと他の候補者との差異は個々の政策にあるよりも、他の候補者たちが多かれ少なかれワシントンの不毛な党派型政治に否応なしに染まっているのに対して、オバマがそれから自由であり、その「変革」の旗手たり得ると見なされたことにあった。それだけに次の展開が注目されるところである。

■2008/01/27, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

鑑賞女性俳句の世界 第1巻 (1)
鑑賞女性俳句の世界 第1巻 (1)角川学芸出版

角川学芸出版 2008-01
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角川学芸出版は江戸時代から平成までの女性俳人を体系的に紹介するシリーズ「鑑賞 女性俳句の世界」(全六巻)の刊行を始めた。第一巻『女性俳句の出発』(二千六百六十七円)は元禄期の俳人から大正・昭和期に活躍した杉田久女まで、約三十人の作品などを収めた。

シリーズ全体では約百六十人の女性俳人を収録する。それぞれの人物像や作品を現代の第一線で活躍する俳人・歌人が新しい視点から読み解いていく。各俳人を代表する百の句も掲載しており、選集としても楽しめる。各巻末に女性俳句の年表が付き、時系列の整理や研究に役立つ。

第二巻『個性派の登場』は中村汀女らを収録。第三巻『激動の時代を詠う』は生活俳句が広がっていった時代を対象にした。二月以降六月まで、毎月一巻ずつ二十五日ごろに刊行する。各巻平均三百五十二ページで、八ページの月報が付く。巻頭では女性俳人の肖像などの資料も紹介する。

同社によると、創生期からの多種多様な女性俳句を体系的にまとめたシリーズは初めて。

■2008/01/27, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

極楽の日本語
極楽の日本語足立 紀尚

河出書房新社 2007-12
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「風ひとつ湖畔に泳ぐ彼岸花」。これは著者が初めて句会に出たときに提出した句。選にも入り、内心ほくそ笑んだ。だが同じ兼題でほかの参加者が作った「形而下(けいじか)の野や一面の曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」という句に仰天する。意味がわからないが、味わいはある。こはいかに、と。

一年間にわたって句会に参加したノンフィクションライターが、そこから見えてきた日本語表現の奥深さと不思議をつづった。文筆をなりわいとして「日本語の腕に覚えあり」と自負していた著者。だが無手勝流で悪戦苦闘するうちに、句作とは「日常で使っている日本語の別の魅力を発見して楽しむための、このうえない方法」だと思い至る。

作者を伏せたまま俳句を合評する句会の様子が実にスリリングだ。参加者一人一人の横顔がいきいきと描かれる。著者が親近感を覚える「可楽さん」という参加者は、肌寒という兼題で「焼き肉を食ひし夜道のハダサムニダ」などという句を作って悪びれるふうもない。わびさびとは別物だが、これもまた俳句である。

名人が必ず秀作をつくり、初心者の句が常にまずいというものでもない。「初心の心たのもしけれ」であり、「巧者に病あり」というのが表現の世界。よしあしを理屈で説明できない不可解さこそが、日本語という言葉の豊かさにほかならないと本書は教えてくれる。

■2008/01/27, 日本経済新聞 朝刊, 24ページ

21世紀のエネルギー地政学
21世紀のエネルギー地政学十市 勉

産経新聞出版 2007-12-22
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エネルギー問題が世界の焦点になっている。原油高騰の背景には、先物市場の金融市場化という構造変化や、追加供給余力が乏しい石油産業の構造問題のほかに、資源ナショナリズムの高まり、新興国の需要急増と資源囲い込みの動きなど、エネルギーを巡る世界地図の激変がある。

資源高騰と同時に地球温暖化への対応が重要命題になり、エネルギーと環境は分けて考えることができなくなった。二酸化炭素の排出抑制を進める手段として原子力は重要性を増すが、石油や天然ガスだけでなく、ウランも特定の地域に偏って存在する。エネルギー問題が世界経済を左右する時代は、資源確保や供給路を巡る戦略と思惑が国際政治を動かす時代でもある。

本書はエネルギー問題専門家として知られる著者が、資源を巡る世界の政治力学の変化、主要国のエネルギー戦略や資源外交などについて、わかりやすく説明した本だ。

陰謀論シナリオに陥らず、事実に即した客観的記述に徹しているのが好ましい。

需要が急増している中国やインド、供給国として影響力を増すロシアの政策の変化にも紙幅を割き、化石燃料以外のエネルギー資源の動向にも目配りをしている。そのうえで日本の経済安全保障政策に言及しており、エネルギーと国際政治の関係に関心を持つ多くの人々にとって、格好の入門書といえるだろう。

■2008/01/27, 日本経済新聞 朝刊, 24ページ

日本の人形劇―1867-2007
日本の人形劇―1867-2007加藤 暁子

法政大学出版局 2007-12
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幕末の一八六七年(慶応三年)、パリで開かれた万国博覧会に日本からの曲芸団が出演し、人気を博した。紙の蝶(ちょう)を扇の風で操る「蝶の舞」、コマや人形を使った芸の優美さが、当時の西洋人の興味を引いたらしい。

この曲芸団を出発点に、現在まで百四十年に及ぶ日本の近現代の人形劇の歴史をたどるのが本書である。五十年以上前から人形劇の制作に携わる著者は、「無生命のものが表現主体となる」舞台を広く人形劇ととらえている。

一八九四年(明治二十七年)に英国から来日した糸あやつり人形の「ダアク一座」によって、日本人は初めて伝統的な人形浄瑠璃とは異なる西洋の人形劇を目にした。この後、大正期にかけて、常設の劇場や子供向け人形劇の制作、各地を巡回公演する人形劇団など、現在まで続く人形劇の形ができあがった。

太平洋戦争中には戦時体制への協力を前提に国の手厚い保護を受け、戦後はテレビで大量の人形劇番組が放映されるようになる。人形劇が、その時々の国や社会の状況と密接にかかわり合いながら続いてきたことがよくわかる。

老舗人形劇団「プーク」を率いた故・川尻泰司は、人形劇が演劇の「支流」と見なされていることに強く反発していたという。だが著者は「支流こそが本流をゆたかにする」と書く。著者の思いが凝縮された一文であろう。

■2008/01/27, 日本経済新聞 朝刊, 24ページ

眷族
眷族玄月

講談社 2007-11-27
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十二歳になる夏子は、ある日祖父から「この土地の山はおまえにあげる」と言われる。その瞬間に、夏子は急がないと自分の取り分がなくなるかもしれないと思い、身内の子供たちの顔が次々に浮かぶ。祖父は、笑いながらそれはまだ将来のことだと言い、「おまえの曾祖母の、生まれ変わりのような気がどうしてもするからなんや」と本音を語る。

その曾祖母のトメは、済州島から渡って来た朝鮮人男性と結婚し、大阪で十数人の子供を産み育てた。満州事変後の不況の直中であったが、夫は零細ゴム工場で働き会社を起こし、苦しい生活のなかでも巫女(ムーダン)に示された土地をトメのすすめで買って、一族の基盤となったのだった。こうして在日朝鮮人の「高光」一族のドラマがはじまる。

“眷族(けんぞく)”とは、親族、一族のことであるが、ここでは血族の流れを大切なものとする朝鮮のウリ(身内)にたいする、強い家族意識のことである。作中に、三十七歳のトメが夫を説き伏せて土地を買ったときに登記簿に朝鮮名「高光」が記されたが、それは日本の朝鮮人同化国政「創氏改名」の行われる数年前のことであるとの記述がある。ケンゾクとは、つまり姓氏を同じくする家系の連続性へのアイデンティティに他ならないのであり、それが断ち切られることは、朝鮮人にとっていかに危機的なことであったかがわかる。

しかし、この作品では、このケンゾクにトメという「古い日本の女の名前」が介入することで、その「血が穢(けが)れ」ていき、男系の家系図だけで形成される連続性が、幾重にも折り曲がり錯綜(さくそう)していくのである。血の絆(きずな)はそのとき世代を超えた、人々の愛憎と欲望と性の地獄をあらわにする。「高光」一族の親子・兄弟関係は、したがって混沌(こんとん)とした図を呈する。そこには、「在日」という民族的宿命とともに、ほとんど無数に広がる血縁関係が、家族・一族・民族という“族”の共同体の根拠を解体するという現実が浮かびあがる。ケンゾクの血の系図の誇りは、裏側に破滅の闇の物語をいだいているのであり、作家の自在で圧倒的な筆力がその深淵へ読者を誘う。

■2008/01/27, 日本経済新聞 朝刊, 24ページ

SNOWY
萩原 義弘 (著)

全国の炭坑や鉱山跡を訪ねる著者が、真冬のヤマの跡を撮った。窓から入りこむ雪に、屋根だけでなく床まで覆われたコンクリートの建物。ずっしりと積もる白い堆積(たいせき)物が、柔らかい曲線を描いて廃虚を包む。人間の営みから自然の営みへと返された物たちが、ひっそりと不思議な姿で静まっている。春になればまた一段と朽ちた姿をさらすだろう。にもかかわらず写真には再生の気配がある。

■2008/01/27, 日本経済新聞 朝刊, 24ページ

株式会社の原点
株式会社の原点久保利 英明

日経BP社 2007-12-13
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おすすめ平均 star
star03年から07年の企業法に係る司法事件の整理に
starやみやすさ抜群 内容も深い

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コーポレートガバナンス(企業統治)の在り方や新しい会社法が企業経営に及ぼす影響、司法制度改革の成否――などについて、企業法務の弁護士として著名な著者が執筆したネットコラムをテーマごとに整理した。執筆時期に広がりがあるため、統一感にはいく分欠けるきらいはあるものの、この間のトピックスが幅広く取り上げられており、さほど専門知識のない読者にとっても取っつきやすい一冊になっている。

■2008/01/27, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

エコノミック・ヒットマン 途上国を食い物にするアメリカ
エコノミック・ヒットマン 途上国を食い物にするアメリカジョン パーキンス 古草 秀子

東洋経済新報社 2007-12-14
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おすすめ平均 star
starものの見方の問題。全てのビジネスに当てはまる
star同じ手口。
starユニットの経済版です

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米国で「エコノミック・ヒットマン」と呼ばれる秘密の仕事に携わった人物による「告白」の書である。発展途上国の指導者に国際金融機関の融資によるインフラ整備を持ちかけ、建設事業を米国の企業に請け負わせて資金を還流させる。そして融資先の国を経済的に破綻させ、国連での投票や軍事基地の設置などで米国に有利な行動をとらせる。つまり米国による途上国支配の裏工作を担う職業だ。著者の十年に及ぶ体験が詳細に語られる。古草秀子訳。

■2008/01/27, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

おとなの味
おとなの味平松 洋子

平凡社 2008-01
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立ち飲みで品書きをああでもないこうでもないと眺めながら飲むコップ酒の「ひとりの味」、わざわざすり下ろしたワサビで食べるお茶漬けの「奢った味」、一口の味見のはずがひと瓶全部平らげてしまったイチゴジャムの「残る味」……。フードジャーナリストが味覚をめぐるおかしくもいとおしい記憶をつづるエッセー集。レストランの星の数に大騒ぎしなくても、おいしいものはすぐそばにあると教えてくれる。

■2008/01/27, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

カザフスタン―草原と資源と豊かな歴史の国
カザフスタン―草原と資源と豊かな歴史の国角崎 利夫

早稲田出版 2007-12
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副題にある「草原と資源と豊かな歴史の国」がカザフスタンだ。ソ連邦が崩壊して独立した共和国だが、最近ようやく石油産出国として日本のマスコミでも取り上げられるようになった。近年は、石油資源のみならず、中国とロシアに挟まれ、中東にも近いという戦略的位置の観点からも注目されている。二〇〇二年から三年間余り、大使を務めた著者が詳細なデータとともに政治・経済や歴史に言及。出張するビジネスマンにとって格好のガイドブックになる。

■2008/01/27, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

ぬりえを旅する
金子 マサ (著), 山本 紀久雄 (著)

東京にある「ぬりえ美術館」の館長らが、米国、チリ、ロシア、イタリア、ベトナムの塗り絵の実態を調査してまとめた。幼稚園や出版社、教育関連施設への訪問取材と、子供をもつ親へのインタビューやアンケート調査を実施。この五カ国では、塗り絵には子供の色彩感覚や集中力を養う効果があるとされ、幼稚園や学校の教育プログラムに取り入れられているという。遊びの要素が強い日本との違いがわかって興味深い。

■2008/01/27, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

カラオケ化する世界
カラオケ化する世界ジョウ・シュン フランチェスカ・タロッコ 松田 和也

青土社 2007-12
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日本の文化輸出の代表を研究

マンガ、アニメとともに日本文化の世界への輸出品の代表が「カラオケ」だ。アニメの研究書は多いが、本書は数少ない「カラオケ」についての本格的な研究であり、しかも日本人ではなく、イギリスの文化史と仏教学の二人の研究者によるものである。

著者たちは、最初に、カラオケの起源が通説通り日本なのかどうか検討する。兵庫県に住む井上大佑氏が一九七一年に「エイトジューク」という機械を開発したというのが通説だが、井上氏は特許をとらなかったので、カラオケの発明者であると断定することはできなかった。本書でも、結局その本質的な真偽は残される。

ともあれ日本から発信されたカラオケ・マシーンは、東アジアは言うに及ばず東南アジアから欧米にまで広く拡大している。だが、それが日本での様式そのままに受け入れられたのではなく、各国で生活や宗教の違いから、微妙に異なった形で定着していく。本書では、その各国別の状況が詳細にレポートされる。カラオケが、アニメや漫画のようなコンテンツではなく、さまざまな音楽を乗せるメディアであるので、その国の文化に多様に適応していったのだ。

それゆえ、政治的、宗教的に、ある国では利用され、ある国では弾圧される。カラオケがグローバル化の尖兵(せんぺい)となってその民族の文化を破壊してしまうこともあれば、ユダヤ人のように世界に散在する国民に自民族の文化を継承する新たな手段になる場合もある。もともと歌の好きな遊牧民であったウイグル人には、中国最西端のカシュガルで遊牧を放棄した今もモスク以上の連帯の場になっているという。ウェブに搭載された各国のカラオケ音楽は、インターネットによって世界に配信され、北朝鮮を自由化するかもしれない。

本書は、このようなカラオケを巡る世界の現状について、まだあまり知られていない情報を豊富にもたらしてくれる。だが、では「カラオケ」が人類の文化として、どのような意味をもつのかという考察にまでは至っていない。あくまで各国のカラオケの状況のレポートに徹するというのが、著者たちの意図だからであろう。

■2008/01/27, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

アニキの時代―Vシネマから見たアニキ考 (角川SSC新書 23)
アニキの時代―Vシネマから見たアニキ考 (角川SSC新書 23)谷岡 雅樹

角川マガジンズ 2008-01
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オヤジではなく「アニキ」の時代だという。かつてのオヤジは共同体の中心として、若者をしかりもすれば、面倒も見た。しかし「面倒を見る部分がなくなって、権力だけ残ったのが現代」と見る。そんな時代に求められる「アニキ」について、「Vシネマ」などビデオオリジナル映画の世界を中心に読み解いた。

ヤクザや職人のような、強固な上下関係のある世界の兄弟子や兄貴分とは違う。下の世代が自由勝手にカタカナで「アニキ」と呼び慕う。哀川翔をはじめとする俳優、阪神タイガースの金本選手……。ケンカの強い肉体派ばかりではなく、今や多様な世界に「アニキ」がいる。「昔と違って、インターネット上でつながるなど一対一の個別の関係が多い」という。

Vシネマが誕生した一九八九年が、時代の分かれ目だと見る。かつてのヤクザ映画とは違い、情けないチンピラが主役を張るようになった。それが同時に増え始めたフリーターたちの共感を得る。そんな時代史が記されている。

現代の「アニキ」の中心は六〇年代生まれ。自身も元フリーターである場合が多いという。特にVシネマの場合、俳優が役柄の上だけでなく、製作者としても、限られた資金の中で皆の面倒をみる「アニキ」となる。そんな苦心の実態も本書は明かす。自身も同じ世代で、大学受験に失敗後、さまざまな職を経てビデオ販売会社で働き、映画の批評を書き始めた。

Vシネマには「金融問題もオレオレ詐欺も、最近のニュースがすぐに取り入れられる面白さがある」という。現実にはファン層は製作者と共に“高齢化”していて、しかも圧倒的に男性が多いが「最近、一般の会社員の女性からもファンだという声を聞くようになった」。「アニキ」が、幅広い人々に求められている証左かもしれない。

■2008/01/27, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

熱湯経営―「大組織病」に勝つ (文春新書 586)
熱湯経営―「大組織病」に勝つ (文春新書 586)樋口 武男

文藝春秋 2007-08
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おすすめ平均 star
star経営の本質は情熱なのだ
star気合が入ります
starトップに立って欲しい方だが、直属の上司だと困るかな...

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大和ハウス工業会長兼最高経営責任者(CEO)の著者が経営難の子会社を再建し、本体の業績V字回復を果たした体験を語った。ぬるま湯体質に「熱湯」をそそげば会社にぶら下がっていた社員は去り、残った者のやる気は高まる。モーレツ主義と短絡するかもしれないが、著者の経営手腕はもっと奥深い。

■2008/01/27, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

裸者と裸者 上 (1) (角川文庫 う 15-3)
裸者と裸者 上 (1) (角川文庫 う 15-3)打海 文三

角川書店 2007-12
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おすすめ平均 star
star広義のハードボイルド?
starバイオレントでリリカルで疾走感あふれる作品です

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裸者と裸者 下 (3) (角川文庫 う 15-4)
裸者と裸者 下 (3) (角川文庫 う 15-4)打海 文三

角川書店 2007-12
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内戦状態にある近未来の日本が舞台の長編小説。八歳を前にして親を失った少年は弟や妹を守るため孤児部隊でのし上がるすべを学び、十四歳の双子の姉妹は女性だけの武装組織を結成し戦争終結を目指す。戦争の醜さや人間のたくましさを生々しく描いた力作で、著者の代表作である。

■2008/01/27, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

ほしのはじまり―決定版星新一ショートショート
ほしのはじまり―決定版星新一ショートショート星 新一 新井 素子

角川書店 2007-12
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作家の星新一が残したショートショート作品から五十四編を選んでまとめた『ほしのはじまり』が角川書店から刊行された。星が選考委員を務めたSF新人賞で佳作を受賞してデビューした作家の新井素子が作品を選定。「スタイリッシュ!」「スラップスティック!?」など七部に分けて掲載している。単行本初収録となるエッセー十八編も収録。

■2008/01/20, 日本経済新聞 朝刊, 19ページ

「情況への発言」全集成 1 1962~1975 (1) (Modern Classics新書 24)
「情況への発言」全集成 1 1962~1975 (1) (Modern Classics新書 24)吉本 隆明

洋泉社 2008-01
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洋泉社は、詩人で評論家の吉本隆明が一九六〇年代から九〇年代にかけて発行した思想誌「試行」に執筆した時評「情況への発言」をすべて収録する全三巻の新書シリーズ『「情況への発言」全集成』の刊行を始めた。既刊の第一巻(写真)には六二年から七五年までの二十五本を収める。価格は千九百円。

「試行」は六〇年安保闘争後の六一年九月、吉本と評論家の村上一郎、詩人の谷川雁の三人を同人として創刊。六四年以降は九七年の終刊まで吉本が単独で編集にあたった。

「情況への発言」は四号以降、同誌に掲載された時評文。吉本は六二年十月の六号から執筆している。一回目は「“終焉”以後」と題し、「安保闘争の敗退後、わたしたちは抜本的な課題を強いられた」として闘争後の思想状況を論じる内容だ。

七一年二月には三島由紀夫の自決をめぐり「かれの〈死〉は重い暗いしこり(、、、)をわたしの心においていった」と書き、七二年六月には連合赤軍事件を受けた週刊誌記事を検証している。

三月刊行の第二巻には七六年から八三年まで、五月刊行の第三巻には八四年から九七年までの掲載分を収録する。

■2008/01/20, 日本経済新聞 朝刊, 19ページ

日本版シャーロック・ホームズの災難
日本版シャーロック・ホームズの災難柴田 錬三郎 北原 尚彦

論創社 2007-12
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おすすめ平均 star
star山本周五郎の作品があればもっと最高!

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山本周五郎探偵小説全集 第二巻 シャーロック・ホームズ異聞
山本周五郎探偵小説全集 第二巻 シャーロック・ホームズ異聞山本周五郎 末國善己

作品社 2007-10-25
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シャーロック・ホームズと賢者の石 (カッパ・ノベルス)
シャーロック・ホームズと賢者の石 (カッパ・ノベルス)五十嵐 貴久

光文社 2007-06
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英国の作家コナン・ドイルが生んだ探偵シャーロック・ホームズの物語は、愛好家の熱狂ぶりもさることながら、後の作家による模倣作品やパロディーの多さでも随一とされる。日本でも多くの作家が短編や長編を発表してきた。その多彩さを伝える書籍が相次いで刊行されている。

作家で翻訳家の北原尚彦が編集した『日本版 シャーロック・ホームズの災難』(論創社)は、大正期から現在までに書かれた短編二十一編を収める。北原氏は日本人作家のホームズものについて「そのバラエティ豊かさ加減は日本人でなければ味わえない」と指摘している。

日本人がホームズものを手がける際の代表的な手法は「ホームズが来日していた」との設定。ミステリーの創作や翻訳で知られる中田耕治が一九七二年に発表した「日本海軍の秘密」では、第一次大戦中の日本で海軍中尉が容疑者となった殺人事件を来日中のホームズが調べる。西園寺公望や山本五十六も登場、作者の遊び心が伝わる作品だ。

逆に日本の有名な人物を渡英させ、ホームズと「共演」させるのも典型的な手法。北杜夫の八六年の短編「銭形平次ロンドン捕物帖」では銭形平次が、荒俣宏が九〇年に発表した「盗まれたカキエモンの謎」では南方熊楠が、それぞれホームズと渡り合う。

同書にはほかに林望、稲垣足穂、夢枕獏、柴田錬三郎らの作品もある。推理作家に限らない顔ぶれの多彩さも知ることができて興味深い。

山本周五郎が三五年に少年雑誌の別冊付録として発表した長編「シャーロック・ホームズ」。東京に滞在するホームズが警視庁の依頼で殺人事件の捜査に乗り出し、悪の組織と戦うという「来日もの」の冒険活劇だ。文芸評論家の末國善己が編集する「山本周五郎探偵小説全集」(作品社)の第二巻『シャーロック・ホームズ異聞』に、単行本として初めて収録された。

最近の作品では、二〇〇六年から〇七年にかけての四編をまとめた作家、五十嵐貴久の『シャーロック・ホームズと賢者の石』(光文社)が趣向の多様さで目を引く。

日本でのホームズものの多彩さについて、末國氏は「明治期から紹介されて長く親しまれ、チャンバラ活劇に通じる特異なキャラクターの魅力がある。作家にとっては作品にしやすい」と語る。今後の展開にも期待できそうだ。

■2008/01/20, 日本経済新聞 朝刊, 19ページ

旗本夫人が見た江戸のたそがれ―井関隆子のエスプリ日記 (文春新書 606)
旗本夫人が見た江戸のたそがれ―井関隆子のエスプリ日記 (文春新書 606)深沢 秋男

文藝春秋 2007-11
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おすすめ平均 star
star旗本夫人の日記が歴史の定説を覆す!

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良書との出合いは時に読者の人生を変える。それが日記だと人物そのものにほれ込んでしまう。著者は江戸時代の天保期に日記を残した一人の女性の魅力にとりつかれ研究書まで書いた。そして一般向けに改めて紹介したのが本書である。

日記の筆者は旗本夫人の井関隆子。老中、水野忠邦による天保の改革が行われた天保十一(一八四〇)年から十五(一八四四)年までの約五年間の記述で、全十二冊、二千ページ近くからなる。内容は改革への大胆で公平な批判から猫の習性観察まで政治、経済、生活、文化の多岐にわたる。

著者がほれたのは、豊富な読書量に支えられた知性と何事にも興味を持つ旺盛な好奇心、そして正確な情報に基づく善悪や美醜に対する合理的な判断力だ。倹約令などで民衆の悪評を買った水野へは、人を動かすのは金銀ではなく思いやる心だと諭す一方、火の取り締まりが厳しくなり火事が減ったと功績もたたえる。法要などで形式だけに陥り信心を失った宗教への批判は辛らつだ。迷信など信じない。

嫌な話題でも延々と書き続けながら、下品に流れない。秋の草花の中では白い穂をなびかせて人々を野原に招く薄(すすき)を第一に掲げるなど美的センスもいい。人物や力量に優れ尊敬できる女性は昔からいたと改めて納得させてくれる良書である。

■2008/01/20, 日本経済新聞 朝刊, 20ページ

イギリス経済再生の真実―なにが15年景気を生み出したのか
イギリス経済再生の真実―なにが15年景気を生み出したのか日本経済新聞社

日本経済新聞出版社 2007-11
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おすすめ平均 star
star英国の特異なポジションの再確認(大雑把な「つかみ」としては有効)

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日本は戦後最長の景気拡大が続いているが、英国はそれをはるかに上回り、十五年にわたる長寿景気を続けている。主要七カ国(G7)で成長率が一番高く、ロンドンは世界で最も活気のある都市の一つである。

英国の成功は規制緩和、サービス化とグローバル化という三つの言葉で形容できる。まずはサッチャー首相時代の一九八〇年代に規制緩和で国丸抱えの制度を「ぶっ壊し」、製造業から金融サービスへと産業構造を変え、世界のカネ、人、企業を引きつけた。

現地駐在の記者が中心に執筆した本書は、多くの取材やインタビューを通して長寿景気の断面を描いている。世界の富豪が一等地の高級住宅を買うロンドンの活況、サービス化経済への過程で成長したボーダフォン(携帯電話サービス)の企業戦略など具体性は豊富だ。金融街シティーがヘッジファンドの登場によって高級住宅地にも広がっている話は面白い。シティーに割いた分量はやや多いが、それは金融セクターが英国を引っ張っている証しでもある。

本書が最後で触れているように、格差の拡大、開放政策に伴う移民流入とテロの脅威という課題も見逃せない。英国から日本は学ぶべき点は多いが、サッチャー、ブレア首相という「信念の指導者」がいてこそ実現できたという事実を忘れてはならない。

■2008/01/20, 日本経済新聞 朝刊, 20ページ

世界最高額の切手「ブルー・モーリシャス」を探せ! コレクターが追い求める「幻の切手」の数奇な運命
世界最高額の切手「ブルー・モーリシャス」を探せ! コレクターが追い求める「幻の切手」の数奇な運命ヘレン・モーガン 藤井 留美

光文社 2007-12-14
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英国植民地だったアフリカのモーリシャス諸島で、一八四七年に発行された額面一ペニーと二ペンスの切手は通称「ポストオフィス」と呼ばれ、高額で取引されてきた。特に、青いインクでヴィクトリア女王の横顔が印刷された「ブルー・モーリシャス」は一枚約一億七千万円で売買された例がある。十九世紀から現代まで、希少切手を追い求める人々の姿を描いたロマンチックなノンフィクションだ。

ポストオフィスは現在、二十六―二十七枚しか、存在が確認されていない。高額なのは、希少性に加え、すぐに別の図版に切り替わるなど、収集家の望む要素がそろっているからだという。

十九世紀半ばから切手収集が趣味として認知され始め、ポストオフィスの価格は人の手を経るごとに高騰していく。名もないフランス人学生から英国皇太子まで、所有者は様々。日本人の金井宏之氏も現代の大物コレクターとして登場する。

二十世紀初頭までは、市井の人が古新聞や廃棄される書類の束の中から偶然見つけることもあった。その後は、収集家同士の売買が中心になり、ロマン性は薄れていくが、約三センチ四方の小さな紙片に魅せられた人々の情熱は衰えていない。巻末に一枚ごとの履歴が付いており、発見や所有者の移り変わりなど複雑な経緯が理解しやすくなっている。藤井留美訳。

■2008/01/20, 日本経済新聞 朝刊, 20ページ

経営の美学―日本企業の新しい型と理を求めて
経営の美学―日本企業の新しい型と理を求めて野中 郁次郎

日本経済新聞出版社 2007-11
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おすすめ平均 star
star改めて考える企業の社会的価値

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企業価値を単に財務的な面だけからとらえるのではなく、社会的あるいは文化的な面も含めた質的な価値を併せて考えようというのが本書の趣旨である。こうした問題意識を持つ企業が集まる価値創造フォーラム21の中心となる経営者や、研究者などの論文集である。企業のあるべき姿は何かという理念的な問いかけに、様々な実践や思索に基づいて答えている。題名に掲げる美学の要素があるだけに、結論は一様ではない。

■2008/01/20, 日本経済新聞 朝刊, 21ページ

世界自動車メーカー どこが一番強いのか?
世界自動車メーカー どこが一番強いのか?土屋 勉男

ダイヤモンド社 2007-11-16
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自動車の世界市場で大きな存在感を持つ日本メーカー各社だが、競争環境は甘くない。そうした中、日本メーカーは五年後も今と同様の、あるいはもっと大きな存在感を発揮し続けることができるのか、そのための課題は何か――等々は多くの読者にとって関心の深いテーマだろう。本書はエコカーの開発や低価格車での中進国市場争奪などを切り口に、自動車業界の現状と将来像に迫ろうとしている。

■2008/01/20, 日本経済新聞 朝刊, 21ページ

追いやられる日本
追いやられる日本潮田 道夫

毎日新聞社 2007-12-22
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一九八九年末には世界の企業の時価総額上位二十社のうち十四社が日本企業だった。だが二〇〇七年末はゼロ。八社と最多だったのは中国企業だ。世界における日本の存在感はどんどん薄れており、アジアの主役の座を中国に明け渡して「辺縁国家」への道を歩んでいる、と毎日新聞論説委員長の著者はいう。二十一世紀の日本に必要なのは「大人の分別」であるとし、中国、米国との関係を軸に日本の進むべき道を探る。毎日新聞経済面の連載コラムをまとめた。

■2008/01/20, 日本経済新聞 朝刊, 21ページ

マンガは変わる―“マンガ語り”から“マンガ論”へ
マンガは変わる―“マンガ語り”から“マンガ論”へ伊藤 剛

青土社 2007-12
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おすすめ平均 star
starそして「理屈語り」から「自分語り」へ
star共通記憶を担保しない読者共同体のなかで、マンガを論じるための処方
star自意識がみっともなく丸見えで読後感は最悪、得るところも無い

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気鋭のマンガ評論家が過去十年余にわたって展開した批評をまとめた。「美少女マンガ」の分析やマンガの描き方・表現方法をめぐる考察、諸星大二郎や高野文子らの作家論など内容は多岐にわたる。雑然とした印象も受けるが、そこに現代マンガをめぐる状況の複雑さがあるともいえる。日本のサブカルチャーの現在進行形を知るのに有益な一冊。

■2008/01/20, 日本経済新聞 朝刊, 21ページ

自動車爆弾の歴史
自動車爆弾の歴史マイク・デイヴィス 金田 智之 比嘉 徹徳

河出書房新社 2007-12
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米ウォール街を惨劇に陥れた一九二〇年の馬車爆弾事件から説きおこし、車両を使った爆弾テロに注目して現代史の暗部をえぐった異色のノンフィクションだ。レバノン、北アイルランド、イラク。車爆弾は現代のテロリズムにおいて中核的な破壊手段だったと著者は位置づける。圧倒的な国家の軍事力に対し、大量の爆薬を安価で簡単に運べる「貧者」の武器。テロの一部始終だけでなく、背景の社会構造にまで踏み込んだ筆がさえる。金田智之・比嘉徹徳訳。

■2008/01/20, 日本経済新聞 朝刊, 21ページ

近代論―危機の時代のアルシーヴ
近代論―危機の時代のアルシーヴ安藤 礼二

エヌティティ出版 2007-12
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おすすめ平均 star
star近代思想史の未知の世界

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冒頭の一文に「本書が主題とするのはただ一つ、『近代』とは一体なにか」とある。本人も「とんでもない本を作ってしまいました」と苦笑するほどの、気宇壮大なテーマだ。

学問が極度に細分化された今、こんな巨大な問いは現実的でないのでは、と尋ねると、「近代についての自分の解釈を押しつけたいのではない」との答え。「日本の近代が成立した時期に、時代と真正面から格闘した思想家の姿を見つめることで、今の自分たちが時代と向き合う際のヒントを探れるようにしたかった」

主な登場人物は南方熊楠、柳田国男、鈴木大拙、西田幾多郎。自然学、民俗学、宗教学、哲学の分野で独自の知の体系を築いた存在だ。一見バラバラだが、共通する点があるという。ひとつは時代。日本が韓国を併合し、後発の帝国主義国として世界史の舞台に地歩を固めた一九一〇年前後に、柳田の『遠野物語』、西田の『善の研究』など代表作が刊行されている。

彼らは「経済のグローバル化にともなう格差の拡大、戦争への不安などを感じながら、世界を自分の言葉で説明しようとした」と評価する。例えば紀州の自然観察を通じて独特の世界観を育てた南方についても、「性」を軸とした知識の体系化に取り組んだ人物として再評価を試みた。「あふれる情報の中で必要なものを拾い、残りは大胆に捨てることで、借り物でない自前の思想をつくる。現代人にこそ必要な能力なんじゃないだろうか」

国文学者、折口信夫の研究で知られる。高校時代に折口の小説『死者の書』を「ミステリー小説のように楽しんだ」のがきっかけだ。この本に収めた思想家の著作も「スリリングな物語を追っていくような感じでページをめくってきた。子供っぽい興味だけど、それが長続きしている理由かもしれない」。

■2008/01/20, 日本経済新聞 朝刊, 21ページ

わたしたち消費―カーニヴァル化する社会の巨大ビジネス (幻冬舎新書 す 1-1)
わたしたち消費―カーニヴァル化する社会の巨大ビジネス (幻冬舎新書 す 1-1)鈴木 謙介 電通消費者研究センター

幻冬舎 2007-11
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おすすめ平均 star
star知らないところで流行は起きています
star鈴木君の業績に傷がつくのでは?
star彼がこの本を書いた理由を考えるべきかもしれない。

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多くの人はヒットの実感を持てないのに大規模な市場が生まれている。ゲームソフトなどを例に、気鋭の社会学者らが現代の消費を分析。「わたし」が欲しいものがほかの人にも求められていることを実感する喜びと連帯感がヒットを支える「わたしたち消費」という概念を打ち出す。

■2008/01/20, 日本経済新聞 朝刊, 21ページ

八つの小鍋―村田喜代子傑作短篇集 (文春文庫 む 6-4)
八つの小鍋―村田喜代子傑作短篇集 (文春文庫 む 6-4)村田 喜代子

文藝春秋 2007-12-06
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デビュー三十周年を記念して編んだ短編名作集。黒沢明監督の映画「八月の狂詩曲(ラプソディー)」の原作「鍋の中」、老婆たちとの思い出に人生の機微を描く「白い山」、精神を病んだ女性の妄想をおおらかにつむぐ「蟹女」。日常の細やかな観察から生まれた奇妙でユーモラスな物語が味わい深い。

■2008/01/20, 日本経済新聞 朝刊, 21ページ

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