メイン > 日経新聞日曜版『読書』 > 2007年9月30日~10月14日
| 自民党の終焉―民主党が政権をとる日 (角川SSC新書 1) | |
![]() | 森田 実 角川・エス・エス・コミュニケーションズ 2007-10 売り上げランキング : 982 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| メタボの罠―「病人」にされる健康な人々 (角川SSC新書 2) | |
![]() | 大櫛 陽一 角川・エス・エス・コミュニケーションズ 2007-10 売り上げランキング : 5941 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| わが青春のロック黄金狂時代―ビートルズからボン・ジョヴィまで (角川SSC新書 4) | |
![]() | 東郷 かおる子 角川・エス・エス・コミュニケーションズ 2007-10 売り上げランキング : 66237 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| 天職力と転職力 (角川SSC新書 7) | |
![]() | 小島 貴子 角川・エス・エス・コミュニケーションズ 2007-10 売り上げランキング : 10711 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| 年収崩壊―格差時代に生き残るための「お金サバイバル術」 (角川SSC新書 10) | |
![]() | 森永 卓郎 角川・エス・エス・コミュニケーションズ 2007-10 売り上げランキング : 488 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
角川SSコミュニケーションズは四十代の読者を中心に想定した「角川SSC新書」を創刊した。経済、生活、芸能などの分野でニュース性の高いテーマを取り上げる。初回は森田実『自民党の終焉』、大櫛陽一『メタボの罠』、東郷かおる子『わが青春のロック黄金狂時代』、小島貴子『天職力と転職力』、森永卓郎『年収崩壊』など十点。七百二十―七百六十円。
図書館の可能性 (図書館の最前線 1)
大串 夏身 (著)
| つくる図書館をつくる―伊東豊雄と多摩美術大学の実験 | |
![]() | 鈴木 明 港 千尋 多摩美術大学図書館ブックプロジェクト 鹿島出版会 2007-07 売り上げランキング : 139203 おすすめ平均 ![]() 図書館に行ってみたくなりますAmazonで詳しく見る by G-Tools |
調べものをする際、まずはインターネットで検索してみるという人は多いだろう。パソコンが普及するまでは、調べものの主たる舞台は図書館だった。情報を得る手段が様変わりするなかで、図書館はどうあるべきか。その可能性について考えようとする著作が相次いで登場している。
青弓社から刊行が始まった全五巻のシリーズ「図書館の最前線」。東京都立中央図書館に司書として勤務した経験のある昭和女子大学教授の大串夏身氏を編者に、現場で働く司書や研究者ら数十人が図書館の現状と今後をテーマに様々な角度から執筆する。「転換点にある図書館の存在理由を問い直したい」と同社編集部の木村素明氏は話す。
既刊の第一巻『図書館の可能性』は大串氏による総論。図書館の歴史に始まり、公共図書館におけるサービスの重要性、大学図書館のあり方、映像資料の扱い、職員の育成方法まで幅広く論じる。
印象的なのは、調べものをしようとする利用者に対し、司書がテーマに応じて基本資料と調査方法を教える「調べ方の案内」を今後の図書館サービスの柱の一つとして位置づけている点だ。ネットの検索では膨大な情報が得られる半面、その価値判断に迷うことも少なくない。知識と経験の豊富な司書こそが図書館の可能性を開く、という本書の主張には説得力がある。
今年四月、東京都八王子市の多摩美術大学八王子キャンパスに新しい同大学図書館が完成した。鈴木明・港千尋・多摩美術大学図書館ブックプロジェクト編『つくる図書館をつくる』(鹿島出版会)は、設計開始から完成まで三年に及んだ建築計画の内容を写真とともに紹介している。
本書では主に、建築物としての構造の面から図書館を考えようとする。設計を手がけた同大学客員教授の建築家、伊東豊雄氏と港氏の対談では「柔らかいアーチ」「分節から連続へ」「生活空間としての図書館」といったキーワードを軸に考察がなされる。
同大学図書館の特徴の一つは、蔵書のほとんどを開架式の書庫に収蔵し、閉架式書庫もガラス越しに見えるようにしたこと。港氏は「本が見えるということ、図書館にとってパースペクティブがとても大切なことなんだと知らされます」と述べている。
人と建物。図書館を構成する二つの大きな要素それぞれに可能性の鍵はあるようだ。
| 捨てられるホワイトカラー―格差社会アメリカで仕事を探すということ | |
![]() | バーバラ・エーレンライク 曽田 和子 東洋経済新報社 2007-09 売り上げランキング : 4840 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
身につけた知識と経験を武器に、企業社会を渡り歩く――。米国のビジネスエリートといえばこんなイメージが強い。だが、現実はそんなに甘くない。米国の下流社会の現実を描いたミリオンセラー『ニッケル・アンド・ダイムド』の著者が、今度はホワイトカラーの苦悩と職探しの難しさを告発した。
手法は前回同様の体験ルポ。自らが失業者となって就職活動に挑んだ。転職コンサルタントに大金を払い、履歴書の添削にまた費用をつぎこむ。コネを求めてネットワーキングの会場にでかけ、インターネットで何百通と履歴書を送るが受け取りの返事が来るものさえまれだ。
決して若くはないハンディはあるにしても、一年かけてみつけた仕事は保険の販売代理店と化粧品の委託販売。求職中に出会った仲間で目指す職に就いたのは皆無。リストラや解雇で突然に職場を追われ、半年、一年の失業期間を経て生活のために単純労働に従事し、下流社会に落ちていく人も少なくないという。
再チャレンジの国といわれる米国でさえ、敗者復活はそれほど簡単ではないという実態はショックだ。カネもうけ主義丸出しの転職ビジネスなど日本と比較できない部分も多いが、解雇規制の緩和も議論されている折、メリットだけでなくこうした負の側面も頭の隅に置く必要はありそうだ。曽田和子訳。
| 外国人犯罪者―彼らは何を考えているのか (中公新書 1911) | |
![]() | 岩男 寿美子 中央公論新社 2007-08 売り上げランキング : 32858 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
日本には今、約二百万人の外国人が暮らしている。正式な就労ビザを持たず、いわゆる単純労働に就いている人も少なくない。その力なしには立ちゆかない産業もある。
そうした実態を受け、「多文化共生社会」づくりが最近は外国人労働者問題のキーワードになっている。極めて意味深い合言葉だが、そこには大きな課題がある。増え続ける外国人の犯罪に日本社会がどう対処するかである。
本書は国家公安委員も務めた著者が、法務省と共同で二千人以上の外国人受刑者を対象に実施した調査を核に、この問題を考えるための基本的なデータを提示している。
来日目的や犯行動機、取り調べや服役の実情、さらには人生観まで、聞き取りは多岐にわたる。多くの受刑者が、「日本は犯罪をしやすいとのうわさを聞いた」「日本での犯罪でもうけた人を見た」などと答えているとの調査結果は、日本への世界の視線を物語っているようでもある。
少子高齢化が進む日本は多様な外国人を生活者として受け入れる道を歩まざるを得ない。しかしそれは「国際交流イベントに代表されるきれいごとの国際化」では実現しない。著者はこう強調する。
本書の大半を占める調査報告には、「国際交流イベント」とは対極の殺伐たる現実がつまっている。それを直視することこそが「多文化共生社会」構築の始まりなのだろう。
| リタイア・モラトリアム―すぐに退職しない団塊世代は何を変えるか | |
![]() | 村田 裕之 日本経済新聞出版社 2007-08 売り上げランキング : 110031 おすすめ平均 ![]() 団塊の世代の解説者 高齢化社会におけるビジネスヒントが満載 リタイア・モラトリアムのゴール=パーソナルミッションの追求Amazonで詳しく見る by G-Tools |
再雇用制度などで定年を過ぎても職場にとどまるシニアが増えた。定年から実際に職場を去るまでの数年間を、内外のシニア事情に詳しい著者は「リタイア・モラトリアム」と名付け、この時期の過ごし方で残りの人生の充実度が決まると提言する。
モラトリアムとは本来、執行猶予の意味。心理学では青年から大人への助走期間を指す。家族や地元という束縛から解放され、生き方を探し始めるのが第一のモラトリアム。著者が描く六十代は、どこかこの青年期と似ている。
嘱託やパートタイマーとなり、時間のゆとりが増えると「今までと違うこと」がしたくなる。スポーツ、ネット株取引、旅行、映画などだ。世間体や立場から控えてきた文章、写真、音楽による自己表現にも目が向く。次に始まるのが残りの人生の目的を模索する自分探し。文化体験や人脈づくりも盛んになる。こうした試行錯誤の結果、会社から与えられた使命に代わる個人的使命を見つけ、社会と無理なくかかわり続ける「半働半遊」生活を手にするのが第二のモラトリアムからの幸せな卒業になると予測する。
米国では一時、社会から離れ、日々遊び暮らすシニア村開発が流行したが、すでに人気は下火だという。日本にも同じ変化が起こると著者はみる。今年六十歳に達し始めた団塊世代の今後を予測するうえでも有益な本。
| NEW DIMENSION | |
![]() | 石川 直樹 赤々舎 2007-10-01 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
岩に押しつけられた無数の手の跡。写真は南米・パタゴニアにある洞窟(どうくつ)の「ネガティブ・ハンド」と呼ばれる壁画だ。手に顔料を吹き付けて作った鮮やかな像は、太古の人間の姿をよみがえらせ、幽霊を見たような衝撃を受ける。人は壁画に何を託したのか。日本、ノルウェー、フランス、アルジェリアなど世界の壁画を写した本書は、時空を超え表現することの根源的な意味を問いかける。
| ある韓国外交官の戦後史―旧満州「新京」からオスロまで | |
![]() | 梁 世勳 梁 秀智 すずさわ書店 2007-09 売り上げランキング : 13343 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
今も冷戦構造が残る朝鮮半島、百七十万を超える兵力が休戦ラインを挟んで対峙(たいじ)する。韓国にとって外交は国家の存続を左右する重みを持つ。
著者の梁世勳氏は題名通り韓国の外交官出身。その半生をつづったこの本は、日本の植民地支配から独立した韓国の「外交履歴書」であり、驚異の発展をとげた韓国の戦後史とも重なる。
梁氏は日本の敗戦とともに、家族で住んでいた旧満州(現中国東北部)を脱出し、北朝鮮を通ってソウルにたどり着く。それもつかの間、一九五〇年六月には朝鮮戦争がぼっ発、今度は釜山へ逃げる。小説のような体験が読者を引き込んでいく。
休戦後も韓国は揺れ動いた。李(イ)承晩(スンマン)大統領を倒した学生革命、六一年の朴正熙(パクチョンヒ)将軍による軍事クーデター、朴大統領が側近の銃弾に倒れた後、七九年の全斗煥(チョンドファン)将軍によるクーデター。さらにはソ連による大韓航空機撃墜事件、北朝鮮による全大統領一行の爆殺を狙ったラングーン爆破事件、大韓航空機爆破事件……。激動の韓国現代史とともに梁氏の筆は進む。駐日大使館の政務参事官時代に苦労した六十億ドル借款問題をめぐる裏話も興味深い。
最大の読みどころは八三年に韓国に飛来した中国民航機ハイジャック事件をきっかけに始まった中韓国交樹立に向けた水面下の交渉だ。神戸総領事でありながら「入院する」を暗号に極秘に訪中、ソウルでのアジア大会、ソウル五輪への中国チーム派遣をテコに中韓の橋渡しをした。
ただし梁氏は中枢を歩き続けた超エリートではない。中国との国交樹立交渉も最終段階で外された。むしろ上司との人間関係に悩み、出世街道から一歩引いたところで見ているからこそ面白い。実力以上に出身地と学閥など人脈がものを言う韓国社会の一面も包み隠さない。
理屈や自慢話の半生記とは違う。「今、あなたは祖国のために何をしているのか」と自問し続ける梁氏。一外交官としての理想と組織の論理のはざまで葛藤し続けた姿がそこにはある。
グリニッジ・タイム―世界の時間の始点をめぐる物語
デレク・ハウス (著), 橋爪 若子 (翻訳)
ロンドンのグリニッジ天文台が設立されたのは一六七五年。グリニッジ標準時(GMT)は世界の基準時刻として知られてきたが、三百年ほど前までは地元の二百―三百人にしか適用されていない時間だった。交通や通信手段の発展に伴って各地で採用されるようになったのは百年ほど前のことだ。古代ギリシャの緯度と経度の概念から始まり、大航海時代の天体観測の発展など、人々が標準時の制定に傾けた情熱を追った。橋爪若子訳。
| 遭難者を救助せよ! | |
![]() | 細井 勝 PHP研究所 2007-09-21 売り上げランキング : 13328 おすすめ平均 ![]() 職業とは何かを考えた1冊 納得のいく生き方 命の流儀?Amazonで詳しく見る by G-Tools |
三千メートル級の山々が連なる立山連峰で遭難者の救助にあたる富山県警山岳警備隊。死と隣り合わせの危険な任務に就く隊員たちの素顔を元新聞記者がインタビューをもとに描く。二人の先輩隊員の殉職に直面したのを機に、自ら危険を買って出るようになった副隊長。神の奇跡を信じて現場に駆けつけるクリスチャンの隊員。「世界に一つの尊い命を助けない訳にはいきません」という分隊長の言葉が彼らの心情を伝える。
転成期の世界経済―資源依存型市場主義の克服
唐沢 敬 (著)
エネルギー問題の専門家がこれまでの研究成果を踏まえ、一般にも分かりやすく書き下ろした世界経済論である。原油の高騰など「石油異変」をキーワードに世界経済の構造変化を分析した。今日のトピックが満載され、読みやすい。圧巻は石油と金融の構造分析である。その関係の進化・拡大が今日の世界経済を読み解く鍵の一つである。タイトルに「転換」ではなく「転成」を充てたのは新たなパラダイムの必要性を訴えるためであろう。
| 十五億人を味方にする 中国一の百貨店 天津伊勢丹の秘密 | |
![]() | 稲葉 利彦 光文社 2007-09-22 売り上げランキング : 9414 おすすめ平均 ![]() 異文化コミュニケーションの必読書。 天津で出会った「笑顔」の秘密がココに! 中国駐在員・中国担当者必携!Amazonで詳しく見る by G-Tools |
中国に駐在する日本人ビジネスマンは日々、様々な困難に直面する。著者は天津伊勢丹の社長として今年四月まで六年間、政府直轄市の一つである天津に駐在し、中国一といわれる百貨店に育て上げた経験談をユーモアも交えてつづる。いわばアウェーでの環境で遭遇するこの国特有の難題を「TIC(THIS IS CHINA)問題」と呼び、多くの実例を紹介しながら対処法や中国人との“間合い”の極意を説く。中国勤務を控えた人に参考になるだろう。
| 文字の都市―世界の文学・文化の現在10講 | |
![]() | 柴田 元幸 東京大学出版会 2007-08 売り上げランキング : 68529 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
編著者の米文学者も含む東大の「多分野交流演習」の講師らが寄稿した論考集。『源氏物語』と十七世紀仏の小説『クレーヴの奥方』の比較研究、古典文学を換骨奪胎して新しい言葉を紡ぐ現代詩人の創作論、「愚痴」を手掛かりに読むロシア小説……。既存の学問分野の枠組みを外し、文学・文化の新たな読み方を示す手際の鮮やかなこと。多文化が混交する東京の街を「文章」に見立て、その文体論を展開する表題作「もじのとし」が楽しい。
| 江戸の歌舞伎スキャンダル [朝日新書067] (朝日新書 67) | |
![]() | 赤坂 治績 朝日新聞社 2007-09-13 売り上げランキング : 62281 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
歌舞伎は江戸時代の流行の発信源であり、弾圧も激しかった。演劇評論家の著者はそんな歌舞伎界に起きた事件を出発点に、当時の社会状況や役者の人間模様、芸能の歴史を解き明かす。大奥女中と役者の醜聞「絵島(江島)生島事件」から見える武士社会の乱れなど、広がりのある視点が面白い。
| 無頼の点鬼簿 (ちくま文庫 た 20-7) | |
![]() | 竹中 労 筑摩書房 2007-09-10 売り上げランキング : 5914 おすすめ平均 ![]() 初心者向けでないので、あえて・・・Amazonで詳しく見る by G-Tools |
無頼の物書きとして知られた著者が、生前、同じく無頼と認めた知人、同時代人にささげた文を集めた。登場するのは三島由紀夫、大藪春彦、五所平之助、嵐寛寿郎、美空ひばり、父である画家の竹中英太郎など。彼らとの交遊や決別を赤裸々につづった文章から、著者が生きた昭和という時代が見えてくる。
世界遺産時代の村の踊り―無形の文化財を伝え遺す
星野 紘 (著)
「洗練された古典芸能に比べると粗削りだが、生活者の息吹が伝わってくるのが魅力」と民俗芸能にとりつかれた。京大で美学を専攻、「新劇だ、アングラだ」と騒いだ演劇青年が、興味を持ったのは文化庁の無形文化課で仕事をしてからだった。そのときからの足跡をまとめたのが本書だ。
民俗芸能の保護を目的に国の重要無形民俗文化財制度が一九七五年に始まった。高度経済成長で農山村の過疎化が進み、民俗芸能に携わる人が激減したのが背景だ。「現地調査に行く機会が増え、最後の元気な姿をぎりぎり見られて幸せだった」と回顧する。
指定をしても、瞽女(ごぜ)唄(うた)などのような放浪芸が姿を消し、田楽など世襲制で受け継ぐ芸能が先細りになっているのが実情。昔は男優先社会だった民俗芸能も、子供や女性の手を借りないとできなくなっている。
著者が本書で、民俗芸能、郷土芸能、地域伝統芸能でなく「村の踊り」という言い方をしたのも、地域共同体のアイデンティティーを確認するための芸能として、古典芸能や都会の劇場で上演される芸能などと一線を画するためである。
一九八一年から中国、中央アジアなどの少数民族を訪ねての調査もするようになった。歌垣、熊(くま)祭りなど共通のものも多いが、実は違うところが問題で、どこがなぜ違うかを考えることで日本の芸能の意味もわかってくるという。民俗芸能の分野で比較学はこれまでなく、「これを試行として本格的な研究につながればいい」と今後、東南アジア、インド、太平洋諸島などの民俗芸能へ関心を向ける。
ユネスコが二〇〇三年に採択した「無形文化遺産の保護に関する条約」に基づく保護政策が現在実施されようとしている。「『村の踊り』を世界的視点で語らなければいけない」との思いは執筆を通じて日に日に強くなっているようだ。
(ほしの・ひろし)1940年新潟県生まれ。文化庁主任文化財調査官などを経て東京文化財研究所名誉研究員。著書に『芸能の古層ユーラシア』など。
| 句読点、記号・符号活用辞典。 | |
![]() | 小学館辞典編集部 小学館 2007-09-13 売り上げランキング : 757 おすすめ平均 ![]() 手元に置いて記号を厳密に、多様に使いこなしたいAmazonで詳しく見る by G-Tools |
各種文章記号の正しい使い方などを解説する『句読点、記号・符号活用辞典。』(小学館辞典編集部編)が小学館から刊行された。句点・読点などに始まり、カッコ、目印・装飾類(「〓」「*」など)、数学・科学記号(「∵」「∈」など)、商用記号(「(C)」「TM」など)といった約二百種類の記号の意味を説明する。パソコンでの入力方法も解説しており、キーボードを使って文書を作成する人の便宜を図っている。
| ヒトデはクモよりなぜ強い 21世紀はリーダーなき組織が勝つ | |
![]() | オリ・ブラフマン/ロッド・A・ベックストローム 糸井 恵 日経BP社 2007-08-30 売り上げランキング : 1113 おすすめ平均 ![]() 会社の伸び悩んでる方必読 古い事象も新しい事象も新しい観点から インターネットビジネスに関心ある方は必読!Amazonで詳しく見る by G-Tools |
中央集権型組織をクモに、分権型組織をヒトデになぞらえた組織論である。クモは頭を切り離されたら死ぬが、ヒトデには急所がなく、切り離されても二つに分かれて生き続ける。
強力なリーダーが管理していないヒトデ型組織は、まとまりがないように見えて実は強い。そう著者は主張する。十七世紀にスペイン軍を破ったアパッチ族や、米国が手を焼くアルカイダがヒトデ型に当たるという。
インターネットが普及した現代、ヒトデがクモを苦しめる構図が目立ってきた。例えばインターネット電話ソフトを開発したスカイプの登場で、ATTの収益が圧迫された。ヒトデ型組織は個々人が束縛されないので増殖しやすい。それだけに、多くがクモ型組織である企業にとってはユーザーを奪われやすく、脅威になる。
ただ企業の中にも中央集権型でありながら、一部に分権型を採り入れたハイブリッド型組織があるという。ジャック・ウェルチ氏が部門ごとの独立性を強めた米ゼネラル・エレクトリック(GE)や、工場で従業員の自主性を尊重するトヨタ自動車がその成功例として紹介されている。
著者の論法にはやや強引さも感じるが、文章は平易で読み物として面白い。読者がそれぞれの組織論を組み立てるうえで刺激になるだろう。糸井恵訳。
| 社会が変わるマーケティング――民間企業の知恵を公共サービスに活かす | |
![]() | フィリップ コトラー/ナンシー リー スカイライトコンサルティング 英治出版 2007-09-04 売り上げランキング : 266 おすすめ平均 ![]() 新鮮だった。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「お役所仕事」や「役人天国」などの言葉が示すように、公共部門の評判は総じて芳しくない。最近では社会保険庁が年金不信を引き起こして国民の怒りを買った。
本書は、民間企業のマーケティングの考え方や手法を応用すれば、公共サービスは見違えるように良くなると説く。著者の一人、コトラー氏はこの分野の著名な学者である。利潤を追求する企業と公益を使命とする公共部門は異なると強調するのは、言い訳にすぎないと退ける。
「民間企業でのマーケティングのスローガンは、顧客価値と顧客満足だ」。公共部門の場合は「市民価値と市民満足である」。目的に本質的な違いはないという。同感である。具体的には、各部門が対象とする市場を定めて、製品、サービスを作る。それに値を付けて、流通経路を開拓し販売促進策を講じてブランドを確立するまでを含む。
そのまま公務にも応用できると、米欧のケースを多数紹介している。そこまでやるのかと驚かせる消防署や学校給食の内容を一新した例など、興味深く説得力がある。
頭を柔らかくして仕事を改革すれば、成果が上がり、もっと頑張ろうと好循環になる。難問は、内向きの組織の意識をどう変えるかだ。その点には本書はあまり触れていないが、時代の変化が安住を許さないだろう。スカイライトコンサルティング訳。
| アジア・太平洋戦争 (岩波新書 新赤版 1047 シリーズ日本近現代史 6) | |
![]() | 吉田 裕 岩波書店 2007-08 売り上げランキング : 507 おすすめ平均 ![]() この間の歴史研究の成果を集大成 おさえておくべき基礎的な内容 よく読みも(読めも)しないくせに…Amazonで詳しく見る by G-Tools |
太平洋戦争を取り上げた歴史書は少なくないが、具体的にどの本を読んだらよいかとなると選択が難しい。歴史は、当然ながら語る人の歴史観に大きく左右される。しかも、戦争となると、採り上げる事実や書きぶりはもちろん、ある事実があったのかなかったのかどうかさえ解釈が変わってきてしまいかねない。それほどに扱いが難しい事象だけになおさらである。
本書も著者の歴史観抜きに成立しているわけではない。まず何よりも、表題の「アジア・太平洋戦争」という定義と呼称からして著者の歴史観の表出といえなくもない。もっとも、身構えて読みはじめると、読者は肩すかしを食った気分を味わうだろう。淡々とした叙述から伝わってくるのは、もっぱら約六十年前に総力戦として戦われた戦争を先入観なしに振り返りたいという著者の思いだからである。概説書なのだから「当然」という見方もできるが、筆致が抑えられ、誰にでも違和感なく読みやすくなっている点は、率直に評価したい。
本書によると、敗戦直前の時期に日本の証券市場はポツダム宣言に敏感に反応し、日本郵船株などが値上がりしたという。カバーする時代が短いのが難点だが、経済や社会生活に関する記述も多く、その射程の広さは一読に値する。雑音なしに振り返ることで何が見えてくるのか、多くの人に味わってほしい。
| ゾウ! | |
![]() | スティーヴ ブルーム 今泉吉晴 ランダムハウス講談社 2007-09-21 売り上げランキング : 67278 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
無類のゾウ好きである南アフリカ出身の著者が、世界50カ国を訪ねて撮影した写真集。牙をむきだした雄が激しくぶつかりあうアフリカ、両手両足を広げのびのびと泳ぐタイの海。心底この動物を称賛し、見つめてきた者ならではの、ユニークで迫力ある画像が続く。写真は水場を訪れた独身雄の群れにむらがるアフリカジュズカケバト。著者サイトはhttp://www.stevebloom.com。今泉吉晴訳。
| 虹の彼方に ──池澤夏樹の同時代コラム | |
![]() | 池澤 夏樹 講談社 2007-09-07 売り上げランキング : 10067 おすすめ平均 ![]() 当たりはずれはあろうが、予言者めいた言辞が頼もしい 虹の彼方に、はAmazonで詳しく見る by G-Tools |
平和時には機能維持以外にすることがない軍隊は湯沸かし器の口火のようなもの。市町村合併で本当に危惧されるのは、寒村に伝わる伝統芸能など経済効果を生みにくい文化の切り捨てではないか――。芥川賞作家が心のままに新聞や雑誌に書き連ねた短文をまとめた本書は、鋭利な刃物で政治にぐさりと切り込む論考集となった。様々な地で過ごした経験が、思考を地に足のついた内容にしている。
| 社会学入門一歩前 (NTT出版ライブラリーレゾナント 38) | |
![]() | 若林 幹夫 エヌティティ出版 2007-09 売り上げランキング : 4447 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
社会学の入門書である本書のタイトルの「一歩前」には、門に入る一歩手前という意味と、門をくぐってから一歩前へ、という二つの意味がある、と著者。まず社会を社会学的に考える感触をつかんでほしい、と述べる。その上で「なぜ社会について考えるのか?」という問いへの答えに始まり、主観と客観、メディアと技術、スターやカリスマ、欲望、大衆といったテーマについてつづる。
| 片岡義男 短編小説集「青年の完璧な幸福」 (SWITCH LIBRARY) | |
![]() | 片岡 義男 新井敏記 タダジュン スイッチパブリッシング 2007-07-12 売り上げランキング : 37945 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
『スローなブギにしてくれ』などで知られる著者の短編四編を収める。近所に住む年上の女性との恋愛をつづった「美しき他者」や映画女優だったバーの女性との出会いを描いた「かつて酒場にいた女」……。共通するのは舞台は一九六〇年代の東京、主人公はまもなく小説を書こうとしているフリーライターである点だ。巧みな会話が楽しめるだけではなく、作家が問い続けている「小説を書くとはどういうことか」ということも考えさせられる。
| 日本の古典芸能―名人に聞く究極の芸 | |
![]() | 河竹 登志夫 かまくら春秋社 2007-09 売り上げランキング : 3765 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
比較演劇学、歌舞伎研究の第一人者である著者が、能、文楽、歌舞伎、邦楽など古典芸能界を代表する名人十人に芸の神髄を聞いた貴重な対談集だ。「狂言とは役者のエネルギッシュな芸だと思う」(狂言の野村万作)、「基本に忠実に、素直に語ること、これしか手がない」(文楽の竹本住大夫)など数々の言葉からは、それぞれの分野で最高峰に立つ人が、厳しい修練の末に体得した奥義を次世代に受け継いでもらいたいという熱意が伝わってくる。
| 検証日本の敵対的買収―M&A市場の歪みを問う | |
![]() | 新井 富雄 日本経済研究センター 日本経済新聞出版社 2007-07 売り上げランキング : 72048 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
M&Aへの関心が急速に高まっている。しかし、ビジネスマンの関心はともすると自分たちの勤める会社が近い将来買収対象となりそうなのか、買収防衛策は十分なのかといった狭い領域に集中しがちだった。もっと中長期的な、戦略的な視点からその意義と活用法を研究してみる必要があるというのが本書の問題意識。様々な分野の人が集まった研究会の報告書が基になっているため、統一感には幾分乏しいものの、興味深い論点が数多く示されている。
| 人口学への招待―少子・高齢化はどこまで解明されたか (中公新書 1910) | |
![]() | 河野 稠果 中央公論新社 2007-08 売り上げランキング : 551 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
目下、日本人が直面する最大の試練は総人口の減少だ。福田康夫首相も初の所信表明演説で本格的な人口減少社会の到来を難題にあげた。足元の減少数はまだわずかだが、このままだといずれ百万都市が毎年ひとつずつ消滅するほどの衝撃に襲われる。その恐怖はいかほどだろうか。それを説き明かすのが現代の人口学である。
人口学と聞いてマルサスという名前ぐらいしか思い浮かばないというひとも多かろう。そうした門外漢には打って付けだ。著者の河野氏は旧厚生省の人口問題研究所(いまの国立社会保障・人口問題研究所)や国連で将来推計に携わった。
人口推計が外れやすいのはなぜ万国共通なのか。いくぶん言い訳めいた説明もあるが、人口学につきものの複雑な方程式を使わず、簡便な図表とやさしい言葉遣いによる解説は読みやすい。日本人の行動変化の分析にもページを割き、人口学の観点から経済や社会の構造問題を論じる。
たとえば「結婚の人口学」の章。晩婚や非婚の女性が増えたことで、結婚市場で二十―三十代の男性がより経済力の強い四十代以上の男性と競合するようになり、この状況が適齢男性の未婚化に拍車をかけているという。晩婚や非婚は日本的危機だと説く。
男女マッチングのしかけは戦後の見合い結婚から一九七〇年代に職場の恋愛結婚に変わったが、その後は新しいしかけが登場していない。これは企業社会の希薄化と無縁ではあるまい。では、IT(情報技術)は企業社会に取って代わるしかけになるだろうか。
総人口減を歓迎すべきか否かという論議が盛んだ。経済学者にも人口減は望ましいとの主張がある。著者は人口減待望論は幻想ではないかとの論に立つ。「将来への不安が横たわっているときは、人口減がさらに低出生スパイラルを生む可能性」があるからだ。
少子高齢化は大きな問題ではない、という趣旨の読み物を載せる高校「現代社会」の教科書もあるようだ。日本が人口減の罠(わな)から抜け出せなくなる前に、とくに若い人に一読を薦めたい。
▼こうの・しげみ 30年生まれ。米ブラウン大院修了。国連本部人口推計課長、厚生省人口問題研究所所長などを経て麗沢大教授、同名誉教授。著書に『世界の人口』など。
| 悪果 | |
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大阪府警の刑事二人が活躍するデビュー作『二度のお別れ』以来、警察を舞台とした数多くのハードボイルドを書いてきた。ここ数年はごぶさただったが、『悪果』は久々の警察小説。これまでの作品では殺人事件などを捜査する捜査一課の刑事が主役だったのに対して、今回は暴力団担当に焦点を当てた。
「退職した暴力団担当の刑事数人に取材した。賭場へのガサ入れ(家宅捜索)がやはり花形だと思い、特に押収品の中身など詳しく聞こうとしたが、相手は嫌がる。最初は話がかみ合わず、しんどかったです」。そうした「ややこしい」取材の成果が、この作品にリアリティーを与えている。
主人公は大阪今里署の刑事・堀内。暴力団がカラオケボックスで賭場を開いているとの情報をつかみ、開帳日に二十八人を現行犯逮捕する。その後で経済誌編集長を使い、素人の参加者をゆするのが堀内のもうひとつの顔。今度も学校経営者に狙いを定め、ゆすり始めるが、直後に編集長がひき逃げされ、堀内も暴力団員に襲われる。
「悪因悪果(悪いことをすれば悪い結果になる)というから、悪徳刑事である堀内には最後に落とし前をつけさせた。でも堀内は単に悪いヤツではない。プロ意識を持ち、標的に向かってまっしぐらに突き進んでいく。僕としては優秀な暴対(暴力団担当)の刑事を書いたつもりです」
「社会派」という冠は否定するが、「個人を捜査・検挙して、自由を奪う権限を持つ警察という権力の内側を描くことには興味がある」と話す。「一人ひとりの警察官の人間像を描きたい」。趣味はメダカの世話とDVDでの映画観賞。「近くのレンタルビデオ店に並んだ新作はほとんど見ている」。媒体こそ違っても、映画における人物の描き方は、小説執筆の刺激になっているのだろう。
(くろかわ・ひろゆき)1949年愛媛県生まれ、京都市立芸大卒。著書に『カウント・プラン』(日本推理作家協会賞)、『暗礁』など。
| 夢のもつれ (角川ソフィア文庫 357) | |
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副題に「人間国宝に話術を学ぶ」とあるように、当代随一の講談師が語りの極意を伝授する。よく言われる「場の空気を読む」には、普段から相手の身になって物事を考えているかどうかだという。義理と人情、伝統話芸の神髄が人を思いやる心を見直すきっかけになればと著者は念じている。
| 心を揺さぶる語り方―人間国宝に話術を学ぶ (生活人新書 228) | |
![]() | 一龍斎 貞水 日本放送出版協会 2007-08 売り上げランキング : 3232 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
副題に「人間国宝に話術を学ぶ」とあるように、当代随一の講談師が語りの極意を伝授する。よく言われる「場の空気を読む」には、普段から相手の身になって物事を考えているかどうかだという。義理と人情、伝統話芸の神髄が人を思いやる心を見直すきっかけになればと著者は念じている。
| 靖国戦後秘史―A級戦犯を合祀した男 | |
![]() | 毎日新聞「靖国」取材班 毎日新聞社 2007-08 売り上げランキング : 679 おすすめ平均 ![]() 「連載企画の毎日」の面目 松平宮司の個性 日本国においてA級戦犯は存在しませんAmazonで詳しく見る by G-Tools |
昭和天皇が靖国神社のA級戦犯合祀(ごうし)に不快感を示した「富田メモ」の言葉の中に筑波藤麿、松平永芳の二人の宮司の名が登場する。前者は天皇の意を汲み「慎重に対処して」A級合祀を見送り、後者はそれに反して合祀を「易々(やすやす)と」強行した。靖国問題は常にこの二人の個性を中心に語られてきた。
本書も二人の人間性を軸に展開する。戦前の皇族としては珍しく軍籍に身を置かず平和主義者として評価された筑波。一方、皇国史観の洗礼を受けて軍人となり、東京裁判史観の否定に後半生を捧げた松平。
ポジとネガのような二人の人生と靖国の抱える矛盾を絡ませながら、合祀へと向かった「秘史」が明らかにされていく。
同時に、この問題を掘り下げるにあたっての障壁も感じさせる。昨今の騒動の前に二人が故人となり、直接取材が不可能だったことだ。とくに筑波については間接的な証言はあるものの、本人がA級戦犯に対する心情を語った資料が残されていない。
また、松平の強烈な個性だけが合祀の要因とするのも皮相な見方だろう。彼を靖国に送り込むことで合祀を画策した勢力が存在する。単純な善玉、悪玉論で割り切れない諸事情があり、本書はそれについても触れている。核心はむしろそちらにあるのかもしれない。
| 怪力乱神 | |
![]() | 加藤 徹 中央公論新社 2007-08 売り上げランキング : 726 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
死後埋葬されても心臓だけが腐らず、百年たつと人間の姿で再生した「無啓民」、姿形は美しい女性なのに男と女の二種類の性別がある「海人魚」、棺の中で死児を出産した妊婦の遺体――。よくこんなことを考えたものだとあきれるほどの奇想の数々。著者が採集した中国古来の怪異な物語は、無類の面白さで読む者を飽きさせない。
書名は「論語」の有名な一節、「子、怪力乱神を語らず」からとられている。合理主義者の孔子は怪異・暴力・乱倫・神秘を口にすることを戒めた。だがわざわざ戒めねばならぬほど中国には怪力乱神をめぐる言説があふれ、実は当の孔子自身もその手の話が結構好きだったらしい。
奔放でナンセンスな話ばかりではない。「列子」にある二千数百年前に行われた心臓移植手術の逸話では、心臓を取り換えられた二人の人物の人格が入れ替わる。そこには身体とアイデンティティーをめぐる、現代的ですらある問題も見てとれて興味深い。
「人類が大自然に対していだく原初的な恐怖心」が怪力乱神の本質と著者はいう。科学技術の時代にあってなお我々が「怪」に心引かれるのは、人間の本性がいつの時代も変わらないということか。
著者は京劇に関する著作で知られる中国文化研究の俊英。エロチックできわどい話題も多いが、とぼけたユーモアで上品にまとめている。
| 地球システムの崩壊 (新潮選書) | |
![]() | 松井 孝典 新潮社 2007-08 売り上げランキング : 3608 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
地球は太陽系の惑星の一つ、広大な宇宙では小さな天体の一つにすぎない。それを観念にとどまらずに実感するようになったのは、アポロ計画で人類が月から宇宙に浮かぶ地球を眺めてからだろう。宇宙からの視点は地球観を劇的に変えた。その視点をもとに地球と人間の営みを眺め、現代文明がもたらす地球の危機を論じたのが本書である。
惑星学者の著者は地球が物質圏や生物圏、そして人間圏などの構成要素から成るシステムだという。そして現代は構成要素の一つにすぎない人間圏が地球システム全体の挙動を変えている時代と断じ、人間の営みである文明のあり方に疑問を投げかけている。
特に問題視するのは右肩上がりの豊かさ追求だ。人間圏はこれまで制約条件なしに拡大してきた。だが、それは二十世紀が最後だという。右肩上がりの拡大路線は地球温暖化や人口爆発などの問題をもたらし、このままでは人間圏は百年ほどしか存続できないと警鐘を鳴らす。構造改革とは、地球システムと調和するよう人間圏を変えることとも主張する。
宇宙の成り立ちや地球、太陽系の惑星の解説は惑星学者ならではで、知的刺激をそそる。主テーマに据えた現代文明論は論理に粗さも残るし、構成も練られているわけではないが、熱っぽい持論展開からは地球の未来を案ずる著者の思いが伝わってくる。
| イルバルサミコ | |
![]() | 小野田 隆雄 十文字 美信 求龍堂 2007-09 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
イタリアの高級食材である「伝統的バルサミコ酢」は、北部のモデナ地方でしか作れないとされる。日本でよくみかける手ごろなバルサミコ酢とは別物。古代ローマにさかのぼる歴史や、昔ながらの製法を受け継ぐ人々を現地を訪ね紹介している。文章はコピーライター小野田隆雄、114点の写真は広告界の巨匠十文字美信。暮らしの中に美を求めるイタリア人の情熱と誇りが、一瓶の食酢に注がれている。
| 検証 現代中国の経済政策決定 | |
![]() | 田中 修 日本経済新聞出版社 2007-09-07 売り上げランキング : 64794 おすすめ平均 ![]() 読み応えある大著Amazonで詳しく見る by G-Tools |
農村や貧困層など弱者への配慮を強めながらも、改革継続を強調する胡錦濤政権。その政策は折衷的な面もあり、いまひとつ明確ではない。本書は一九九〇年代半ば以降の共産党・政府の重要会議での演説、コミュニケを紹介しながら、こうした経済政策の体系的分析に挑んでいる。新鮮な分析は多くはないが、その時々の政策の骨格が一目でわかるようになっている。税制や金融システムなどの基本点も丹念に解説されており、門外漢にも親切な内容。
| 世界の小国――ミニ国家の生き残り戦略 (講談社選書メチエ) | |
![]() | 田中 義晧 講談社 2007-09-11 売り上げランキング : 114713 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
人口約八十万人にすぎないカタールの政府投資機関が先日、ロンドン証券取引所の株式を取得した。海面上昇で水没危機にさらされる人口約一万人の小国、ツバルはインターネットのドメインを米国企業に売却して大きな収入を得た。グローバリゼーションで国際社会が画一化する中、存在感を増す人口百万人以下の「ミニ国家」の外交戦略や経済政策を紹介する。ツバルが示すように、地球規模の問題は大国より小国から先にあらわれる、との指摘は示唆に富む。
| 経営知能―リーダーは育てるより、探し出せ! | |
![]() | ジャスティン・メンクス 高遠 裕子 光文社 2007-08 売り上げランキング : 1900 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ビジネスリーダーとして企業などの組織を引っ張り、大きな業績をあげる一群の人々がいる。そうした人々は基礎的な知能指数のよさに加え、三つの点で特にすぐれているという。業務の遂行、対人関係、自己評価の三つである。著者はその三つの能力を「経営知能」と呼び、そうした能力にすぐれた人々を集めるとともに、そうした観点から能力開発に取り組むことこそ、多くの企業にとって成功の鍵となると述べている。高遠裕子訳。
ひきこもりの〈ゴール〉―「就労」でもなく「対人関係」でもなく
石川 良子 (著)
若者の「ひきこもり」は一九八〇年代末から社会問題として認識され始め、二〇〇〇年以降、よく言及されるようになった。七七年生まれの著者は、〇一年から続けてきた当事者への丹念な聞き取り調査を通じ、「社会参加したいのに、どうしてもできない」と訴える彼らとどう向き合うべきかを考える。「共感」したり「回復」させようとしたりするのではなく、彼らを「理解」することが必要だと主張する。
| さまよえる工藝―柳宗悦と近代 | |
![]() | 土田 眞紀 草風館 2007-08 売り上げランキング : 180545 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
芸術ジャンルのヒエラルキーにおいて、絵画を中心とする「美術」よりも下位に位置づけられてきた「工芸」。そもそもこの言葉自体が明治の初めに使われ始めた点からして、工芸が抱える齟齬(そご)と矛盾が表れていると著者は説く。富本憲吉や柳宗悦ら近代工芸の道を模索した人々の軌跡をたどりつつ、「近代という時代を映し出す一つの鏡」としての工芸のありようを分析する。芸術をめぐる概念の歴史性を工芸を通してあぶり出そうとしている。
| 幻の下宿人 (河出文庫 ト 7-1) | |
![]() | R.トポール 榊原 晃三 河出書房新社 2007-09-04 売り上げランキング : 213603 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
仏作家が少年時代のトラウマに着想を得て書いたサイコホラー小説。主人公トレルコフスキーは引っ越し先のアパートに住む得体のしれない隣人達に脅され、精神的に追いつめられていく。必死に抵抗を試みつつも、トレルコフスキーは次第に理性を失い、破局へと導かれていく。榊原晃三訳。
| すばる望遠鏡の宇宙 カラー版―ハワイからの挑戦 (岩波新書 1087) | |
![]() | 海部 宣男 宮下 暁彦 岩波書店 2007-07 売り上げランキング : 10337 おすすめ平均 ![]() 「すばる」のコンサイスなまとめAmazonで詳しく見る by G-Tools |
ハワイ島マウナケアに建設された「すばる望遠鏡」は、一九九八年の初観測以来、未知の宇宙をとらえ、世界に衝撃を与えてきた。立ち上げから携わった元国立天文台長がその歩みと観測状況を紹介。高山病と闘いながらの観測、「聖地」に建設されたことで生じた住民との摩擦と理解などの逸話が興味深い。
| 昭和平成ニッポン性風俗史―売買春の60年 | |
![]() | 白川 充 展望社 2007-09 売り上げランキング : 20301 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
政府関係者が占領軍兵士のための性の慰安所づくりに関与した敗戦直後から、援助交際までの売買春の戦後史を豊富な資料を使って丹念に検証した労作だ。著者は講談社の元編集者。
売買春や性風俗の現場に関心を持ち始めてから五十年。学生時代から神田の古書店に出入りするうち、敗戦直後に「特殊慰安施設協会」、のちにRAA(Recreation & Amusement Association)と呼ばれた組織があったことを知った。
RAAは政府関係者が占領軍の「性の暴力」を心配して民間業者につくらせた“国家的緊急施設”。旧遊郭や料亭などを利用し「進駐軍慰安の大事業に参加する新日本女性の率先協力を求む(中略)宿舎、被服、食料全部当方支給」との広告で女性たちを集めた。
「敗戦の年、私は広島の郊外にいて十歳でした。髪の毛が焼けこげ、眼から血を流した被爆者を目撃しました。病棟となった学校からは夜になると風に乗って被爆者たちのうめき声が聞こえてくる。恐ろしかった。こんな惨劇から十日前後しかたっていない時点で、アメリカ兵のための性の慰安所が企画されていた。戦争は一体何をもたらしたのか、ショックだった。国辱としか考えられない」
徳川家康の命で吉原が誕生したように、本書では性の慰安所が体制によって「必要悪」として形を変えながら部分的に容認されてきた事実を調べあげている。次々と新業態を開発する性風俗産業や国境を超えた「買春ツアー」「じゃぱゆき」などに目を向ける。
「拝金主義のいきつくところが性風俗産業ですね。しかしカネで買えないものがモラルです」と強調する。写真で手にするのはRAAの内部資料。「これをいただいた警視庁OBなどの先輩たちがみな亡くなり、この本を見せられないのが残念です」と振り返る。
(しらかわ・みつる)1935年東京生まれ。明治学院大卒。講談社で編集者生活をおくったのち退職。著書に『おもしろ好事苑』、共著に『ローカル線の旅』など。
















![江戸の歌舞伎スキャンダル [朝日新書067] (朝日新書 67)](http://ecx.images-amazon.com/images/I/117yF%2B%2BLuIL.jpg)



















日本国においてA級戦犯は存在しません









