メイン > 日経新聞日曜版『読書』 > 2007年7月22日~7月29日
| リトビネンコ暗殺 | |
![]() | アレックス・ゴールドファーブ; マリーナ・リトビネンコ 加賀山 卓朗 早川書房 2007-06-23 売り上げランキング : 1631 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ロンドンで昨年十一月起きた極めて特異な殺人事件に世界中が驚いた。殺害されたのは英国に亡命した元ロシア特殊情報機関要員のリトビネンコ氏。放射性物質ポロニウム210による毒殺だった。飲んだ緑茶に盛られていたとみられる。
リトビネンコ氏が死の直前、事件の黒幕はプーチン大統領であると示唆していたことも衝撃を与えた。
リトビネンコ氏の身近にいた二人が事件の謎に迫った。
著者は「プーチンとベレゾフスキーの果てしない神経戦の裏にこの殺人がある」と事件の本質を説明、プーチン大統領関与説を展開する。
ベレゾフスキー氏とは一九九〇年代、エリツィン政権内部に深く食い込んでいた大物財界人で、プーチン政権下で汚職容疑などで捜査対象となり、英国に亡命した。
ロンドンにはベレゾフスキー氏を中心にした反プーチン・グループが活動しており、リトビネンコ氏はその仲間だった。
ポロニウム210はロシアで最も多く製造されているが、政府が製造から流通まで厳格に管理しており政府要人以外の一般の人は入手できない――著者はこう指摘してプーチン大統領や当局の関与説を支える。
では動機は何か。リトビネンコ氏は反プーチン・グループの一員として特にロシアの特殊情報機関をおとしめる活動にかかわっていた。だから事件はロシア当局による裏切り者への報復だったと示唆する。
英国政府はリトビネンコ氏の知人のルゴボイ氏を容疑者と断定、ロシアに身柄の引き渡しを求めた。だがロシアは拒否、両国の対立はついに外交官追放合戦に発展した。前代未聞の殺人事件は英ロ関係に暗い影を投げかけている。
ロシア側はルゴボイ容疑者は犯人ではないと主張する。そうであるならなおさら、ロシアは率先して事件の真相解明に協力すべきだろう。
著者のゴールドファーブ氏はクレムリンそして特殊情報機関の世界に詳しい。一九九〇年代のエリツィン政権内部の抗争、プーチン大統領誕生の経緯も詳述している。プーチン大統領とベレゾフスキー氏が一時期親しい関係にあり、時々接触していたという指摘は興味深い。
| まさかの墜落 | |
![]() | 加藤 寛一郎 大和書房 2007-06 売り上げランキング : 4855 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
五百二十人の死者を出した日航ジャンボ機墜落事故から二十二年。今年も「8・12」が巡ってくる。金属疲労による圧力隔壁破壊から機体が操縦不能に陥る――。事故のメカニズムは衝撃的だった。
この惨事を大きな教訓に、航空界はハード、ソフト両面の見直しを進め、安全を徹底的に追求してきたはずだ。ところが、事故は繰り返されている。先日もブラジルでエアバスA320型機が着陸に失敗、滑走路を越えて建物に突っ込んで炎上した。
本書は、そうした「まさか」の航空機災害のうち、一九九〇年代後半以降に発生した十八件を取り上げ、細かなデータや設計図、関係者の証言などを使って事故原因の核心に迫ろうとしている。
著者は航空力学の権威。内容にはやや専門的な部分もあり、記述ぶりは公的な報告書のように淡々としている。しかし主観を排した原因分析ゆえに、「まさか」の事故が決して「まさか」ではない恐ろしさが、逆にじわじわと浮かび上がってくる。
たとえば、七年前にエールフランスの超音速旅客機コンコルドが離陸直後に墜落した事故は、タイヤが滑走路上の金属片を踏んだのが引き金だった。滑走路の検査というごく基本的な作業を怠ったことがあの惨事につながった。著者の告発は静かだが重い。
御巣鷹の記憶がよみがえる夏に、手に取りたい一冊だ。
| 21世紀の国富論 | |
![]() | 原 丈人 平凡社 2007-06-21 売り上げランキング : 583 おすすめ平均 ![]() 現代の資本主義に対する鋭い分析 経営における呪文の正体とは? きっと日本を変える一冊になるでしょう。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
パソコンを中心とするIT(情報技術)はこれから一変し、新しい産業が生まれる。それを日本企業が担うチャンスは十分にある。逆にいま優位にある米国式経営は株価偏重のために行き詰まる。本書の予測は大胆である。
著者はベンチャーキャピタリストとしてシリコンバレーで仕事をしてきた経験を踏まえて書いている。従って単なる絵空事とは思えない。
確かに今のパソコンは「おかしな工業製品」である。スイッチを入れてもすぐには使えず、よく止まる。コミュニケーションの道具として不可欠だが、融通が利かない。著者は、パソコンに代わって人間の都合に合わせた新しいネットワーク技術が、近い将来実用化すると予言する。
この新技術はソフトとハードが一体化した「知的工業製品」として現れる。ものにするには長期的な視点から開発する必要があり、「モノづくりに長(た)けた日本企業の優位性が相対的に高まる」と読む。投資家の圧力が強い米国企業は、新産業を創出するには短期志向に過ぎるという。
起業家の夢に共感して投資してきた米国のベンチャーキャピタルが、肥大化に伴い安全運転に変質した問題も指摘する。著者の立脚点は、国を富ますのは「新しい技術」だという原理原則である。日本の現状をそのまま肯定しているわけではなく、最終章で耳の痛い提言もしている。
| オイル・ジレンマ | |
![]() | 山下 真一 日本経済新聞出版社 2007-06 売り上げランキング : 689 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
なぜ近年、原油や石油製品の相場がこれほど上がったのか。中国やインドなどの需要増という要因も確かにある。だが、需給も含め石油に関するファンダメンタルズをいくら詳細に論じても、それだけでは高騰の理由は説明できない。より重要なポイントは、石油市場の変質だろう。
ヘッジファンドや米国の年金基金など石油と直接関係ない巨額のマネーが、株式や債券、外為と同じように原油などの先物を投資の対象にするようになった。その結果、石油の価格形成の力学は大きく変わった。仮想の先物取引がいつの間にか実体経済を振り回し始めている――。本書は石油市場の“金融市場化”にまず焦点を合わせ、今日の相場変動メカニズムを説く。
商品指数連動型の資金運用が多いため、原油、金属、穀物の相場が互いに連関性を増し、商品相場全体の変動を増幅する傾向もあるという。ファンドを動かす投資家の視点や石油会社の経営姿勢などにも言及しており、従来の石油に関する解説書とはひと味違う新鮮さを感じさせる。
投資マネーの影響のほか、原油生産、輸送、石油精製の各分野での能力の余裕の乏しさという構造問題も指摘。エタノール・ブームの表裏や地球温暖化への対応など、最近のトピックスも取り上げている。エネルギーの問題を幅広い視点から考えるうえで、一読に値する本だ。
| EXPOSED―東海村感光録 | |
![]() | 金瀬 胖 新宿書房 2007-07 売り上げランキング : おすすめ平均 ![]() 当たり前の事を衝撃的にAmazonで詳しく見る by G-Tools |
副題は東海村感光録。日本で最も古い原発城下町、茨城県東海村を撮影した写真集だ。長年、原子力のある風景を追う著者は「東海村へ行くことは目で核に触る体験」と言う。原発前の砂浜で遊ぶ子ども、排水が注ぐ海で遊ぶサーファー、咲き誇るハイビスカス。フィルムに危険な「何か」が写るわけではない。ただ人々に流れる時間が、核と生きる意味を問いかける。写真は「原発護岸壁。2006年夏」。
| ウォールストリートのスノーマン―トップアナリストが見た虚像と現実 | |
![]() | {*vectorlength*=2 v_0="ダン・レインゴールド" v_1="ジェニファー・レインゴールド"} {*vectorlength*=0} {*vectorlength*=1 v_0="坂元 美智子"} オープンナレッジ 2007-06-12 売り上げランキング : 36015 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
一九九〇年代末のハイテク株バブル期、米証券会社のアナリストは「チアリーダー」といわれた。実態を超える評価をして企業の歓心を買い、株の引き受けなど投資銀行業務を獲得したのだ。本来の顧客である投資家は高値で株を買うはめになる。そんな時代を花形通信アナリストとして過ごした著者によるウォール街の内幕。証券会社がアナリストを極限まで活用した様子が浮かぶ。坂元美智子訳。
| コモディティ化市場のマーケティング論理 | |
![]() | 恩蔵 直人 有斐閣 2007-07-02 売り上げランキング : 946 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
企業間の技術水準に差がなくなり、供給される商品の違いが消費者の目に見えにくくなることを「コモディティー(一般商品)化」と呼ぶ。規制緩和や経済のグローバル化により、あらゆる産業分野でコモディティー化が進む中、企業は伝統的なマーケティング手法からどう脱却し、発想を転換すべきか。具体的な成功例をまじえつつ、ブランド構築や社会的責任への戦略的対応など、新時代のマーケティングの体系化、理論化を試みる。
| 大冒険時代―世界が驚異に満ちていたころ50の傑作探検記 | |
![]() | マーク・ジェンキンズ 早川書房 2007-07 売り上げランキング : 3356 おすすめ平均 ![]() 圧倒的な内容。積ん読もよろし。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
五十―百年前の「ナショナル・ジオグラフィック」に掲載された冒険旅行記を、当時の写真や地図とともに収めた。ヒラリー、ヘイエルダールら著名探検家よりも、観光客、流刑者ら「素人」の貢献が大きい。アフリカ、アマゾンなどおなじみの辺境に加え、一八九六年、日本の東北地方を襲った大津波など興味深い記述も拾われ、グローバリゼーション以前の世界の記憶を今に伝えている。
「女性を活かす」会社の法則
植田 寿乃 (著)
少子化による人材不足とダイバーシティー(多様性)の大切さがいわれ、企業の女性活用機運は高まっている。しかし、男性中心に回ってきた職場は一朝一夕に変わらない。本書は多くの企業で研修、講演を手掛けるキャリアコンサルタントが、だめな組織の実例やチェックリストをあげて女性活用法を指南する。女性たちが抱える悩みや意識改革の手法なども書かれており、女性部下を持つ管理職にも参考になりそうだ。
| 純愛小説 | |
![]() | 篠田 節子 角川書店 2007-06 売り上げランキング : 1631 おすすめ平均 ![]() 恋愛ものというよりは…Amazonで詳しく見る by G-Tools |
直木賞作家の短編四編を収める。表題作は実績を上げてきたにもかかわらず、名目だけの管理職に甘んじている四十代の女性編集者が主人公。遊び人の男友達が珍しく陥った「本気の恋」に巻き込まれる。「鞍馬」は東京都内の実家を相続した六十代の未婚女性が、書道教室で知り合った男にのめりこむ姿を、「優秀な」妹との関係の中で描く。他者からみれば愚かしく見える大人の抑えきれない衝動を、冷静な筆致で巧みに浮き彫りにしている。
| 北方領土交渉秘録―失われた五度の機会 | |
![]() | 東郷 和彦 新潮社 2007-05 売り上げランキング : 71848 おすすめ平均 ![]() 歴史の分岐点 広く読まれて欲しい本。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
日本の北方領土返還交渉を当事者の一人であった元外交官が詳細に記した回顧録である。一九八五年のゴルバチョフ登場から二〇〇一年の小泉内閣成立までの時期がその中心をなしている。
著者によれば、この間日ソ関係(のちには日ロ関係)を改善させ領土交渉を進める「機会の窓」が五度も開いた。一度目はゴルバチョフ登場直後、二度目は九一年四月のゴルバチョフ来日に至る過程、三度目は九二年三月のコズイレフ外相来日時(ロシア側から領土問題で「思い切った提案」があったとされる)、四度目は九八年四月の橋本首相とエリツィン大統領による川奈会談、最後は二〇〇一年三月の森首相とプーチン大統領によるイルクーツク会談である。
だが、いずれの場合も、日本側の対応が遅かったり、ロシアの国内情勢が悪化したりして、双方の関係者の努力や熱意にもかかわらず、「機会の窓」を押し開くことはできなかった。領土問題の平和的解決はかくも困難である。戦後日本が解決しえた領土問題は、実にアメリカ相手のものだけなのである。「いざ児らよ 戦うなかれ 戦はば 勝つべきものぞ ゆめな忘れそ」という東郷茂徳元外相(著者の祖父)の歌は重い。
交渉担当者は相手側の内情に理解を示し柔軟に対応しようとし、しばしば原理原則論と衝突する。具体的には「二島先行返還論」と「四島一括返還論」である。領土問題の平和的解決という志は同じなのだが、この対立のために日本外交は交渉に必要な柔軟性と一貫性の双方を犠牲にすることになった。程度の差こそあれ、これは他の外交交渉にも当てはまろう。
この間の鈴木宗男氏による「風圧」については、著者の口は重い。その分、関係者の名前をやたらに引いて主観的に論断する暴露本とは一線を画し、本書は外交官に必要な慎みと品位を失っていない。外交をめぐる守秘と公開のバランスもあろう。だが、外交と政治との民主主義的な関係に照らして、著者が十分な責任を果たしているかどうかは、疑問である。
今や日ロ関係は停滞したままである。ここにも華やかだった小泉外交の負の遺産がある。
| 新聞資本と経営の昭和史―朝日新聞筆政・緒方竹虎の苦悩 (朝日選書 824) | |
![]() | 今西 光男 朝日新聞社出版局 2007-06 売り上げランキング : 3966 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「日本の代表的な新聞は?」と聞かれれば、歴史家として『朝日新聞』と即答する。たとえ発行部数で『讀賣新聞』に及ばず、読者のクオリティで『日本経済新聞』に劣っているとしても。
それは日本の新聞史が、『朝日新聞』の歴史として書かれることが多いからである。実際、戦時中の新聞報道を確認しようとして、簡単に利用できる縮刷版が整っているのは『朝日新聞』だけである。その結果、現代史はもっぱら『朝日新聞』に依拠して記述されてきたといって過言ではない。
逆に言えば、現代史を批判的に考察するためには、『朝日新聞』という資料の理解が不可欠である。しかし、二段組三千ページ、重量五キロを超える『朝日新聞社史』全四巻(一九九五年)を通読する余裕がある人は少ない。それゆえ、朝日新聞社の昭和戦前史を「内側」から分析した本書刊行の意義は大きい。また、主筆・緒方竹虎の評伝としても読み応えがある。特に、緒方の媒酌人・頭山満など右翼人士との交流、新聞販売の暗部たる暴力的拡販団の実態など、新聞通史で「省略」されるエピソードも赤裸々に盛り込まれている。朝日新聞の「編集・印刷発行人」は右翼団体・玄洋社幹部の藤本尚則であり、皇室関係記事の責任者として校閲部長を務めていた。
大正デモクラシーを鼓舞した『朝日新聞』も満州事変以降は急速に国策新聞化するが、もちろん軍部による圧迫や世論の暴走だけが原因ではない。日中戦争勃発(ぼっぱつ)時千二百紙あった日刊紙を「一県一紙」に統廃合した護送船団方式は、今日まで続く安定した新聞経営システムを確立した。朝日新聞社も敗戦まで黒字決算で高配当を続けていた。
戦争末期、経営改革をめぐり村山社主家との社内抗争に敗れた緒方は、小磯内閣の情報局総裁に就任する。緒方の後任総裁として、玉音放送を仕切った下村宏も朝日新聞社副社長、日本放送協会会長を歴任した「朝日人」である。戦後、第四次吉田茂内閣副総理として内閣調査室(現・内閣情報調査室)設立に尽力した緒方の歩みから、「第四権力」成立の軌跡が浮かび上がってくる。
| 眠りの悩み相談室 | |
![]() | 粂 和彦 筑摩書房 2007-06 売り上げランキング : 51446 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
日本人の五人に一人は眠りに関する悩みを持っている、と睡眠医学を専門とする著者はいう。自分の悩みを分析し、対処する方法を平易な言葉でつづる。眠りの仕組みに始まり、「眠れない」「眠る時間がずれる」「寝ぼける」といった症状ごとの解説と工夫の仕方まで。眠りの基礎知識を得るのに役立つ。
| プロフェッショナルな修理 | |
![]() | 足立 紀尚 中央公論新社 2007-03 売り上げランキング : 21613 おすすめ平均 ![]() もうちょっと職人技を見せてほしかったAmazonで詳しく見る by G-Tools |
メガネや靴、はては赤レンガ建築から路面電車まで。中古品を丁寧に修理してよみがえらせる人びとの技に密着した。長年の使用に堪えた品物を慈しみ、ねぎらうように扱う職人たちの姿は、物をあっさりと使い捨てる時代への静かな異議申し立てをしているように見える。二〇〇四年刊行の単行本に加筆。
マヤ文明を掘る―コパン王国の物語
中村 誠一 (著)
考古学者の著者は、日本人では珍しいマヤ文明研究家の一人だ。一九九九年からマヤ最大級のホンジュラス・コパン遺跡保存事業を指揮し、二〇〇〇年九月には王墓とみられる巨大遺跡を掘り当てた。同遺跡発掘の物語を軸に、マヤ文明を解説したのが本書だ。
マヤ文明の歴史は古い。紀元前四〇〇―一〇〇年ごろ成立し、十六世紀のスペイン侵攻まで続いた。不思議なことに、最後に至るまで統一王朝が生まれず、複数の王国が競り合いながら共存し続けたという。
その理由はマヤ文明の特徴にあるという。「マヤ文明は典型的な石器文明で、攻撃力に優れる金属武器がなかった。馬や牛など実用的な家畜がいなかったので物資輸送は人手が頼りで、大規模な征服には色々と障害が多かったのではないか」とみる。
マヤの発掘にかかわり始めたのは一九八三年。「当時は日本人の研究者が珍しく、煙たがられた」と苦笑する。コパン遺跡保存の指揮者に選ばれた時には、経験の浅い日本人の下につくことを嫌がる欧米研究者も多かったという。勤労に対する現地スタッフとの意識の差に悩んだこともしばしば。本書では、そんな苦笑交じりのエピソードも明かされる。「考古学というのは地道で、時に非常に生々しい問題に悩まされる。そういう一面を知ってもらいたかった」と話す。
高校生のころ、テレビでマヤ文明のドキュメンタリーを見て考古学を志した。「文献が充実した文明の歴史と違い、マヤ文明の歴史は発掘とともにリアルタイムで作られている。その面白さを伝えたい」と力説する。
ホンジュラスに国境を接するグアテマラに、ホンジュラス人の妻、息子二人と暮らす。「一人くらいはマヤ考古学をやってくれたら面白いのですが」と父の顔を見せた。
| 萌えるアメリカ 米国人はいかにしてMANGAを読むようになったか | |
![]() | 堀淵 清治 日経BP社 2006-08-14 売り上げランキング : 9480 おすすめ平均 ![]() 実はサクセスストーリー ニューエイジ文化とマンガ文化のリンケージ アメリカにマンガをもたらした男の自伝Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| クリエイター・スピリットとは何か? | |
![]() | 杉山 知之 筑摩書房 2007-04 売り上げランキング : 16212 おすすめ平均 ![]() 自己啓発書好きな人にとっては、新鮮な一冊だ。 是非、中学生、高校生諸君に読んで欲しい! とにかく読みやすい、わかりやすいAmazonで詳しく見る by G-Tools |
| ジャパナメリカ 日本発ポップカルチャー革命 | |
![]() | ローランド・ケルツ 永田医 ランダムハウス講談社 2007-05-24 売り上げランキング : 10596 おすすめ平均 ![]() 日本のアニメはクールらしいがAmazonで詳しく見る by G-Tools |
| 「ジャパニメーション」はなぜ敗れるか | |
![]() | 大塚 英志 大澤 信亮 角川書店 2005-11-10 売り上げランキング : 76031 おすすめ平均 ![]() 正論は通じるか!? 一部二部を分冊してもよかったかも 言葉が背後に担うものAmazonで詳しく見る by G-Tools |
| 日本のポップパワー―世界を変えるコンテンツの実像 | |
![]() | 中村 伊知哉 小野打 恵 日本経済新聞社 2006-05 売り上げランキング : 120462 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| ジャパンクールと江戸文化 | |
![]() | 奥野 卓司 岩波書店 2007-06 売り上げランキング : 64421 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
漫画やアニメなど日本発のポップカルチャーが、米国を含め、世界各地で愛好家を増やしている。政府はコンテンツ産業育成の柱にアニメなどを据える。漫画やアニメは日本の「顔」になりうるか。「なる」としたら、日本の「何を」代表するのか。様々な立場による著作が相次ぎ、議論が深まってきた。
男は強く、女も積極的に。そんな生き方を無言のうちに強いられる米国社会では、内気で他者と距離を置きたい若者、特に男子は、ストレスをためざるをえない。日本の漫画やアニメはそんな「非主流派」の若者の共感を呼んだと、米国で翻訳出版社を興し日本漫画の市場をゼロから開拓した堀淵清治はみる。はっきりしない態度、うじうじ悩む男女は恋愛話の定番。近著の『萌えるアメリカ』(日経BP社、二〇〇六年)でも「この国のおおらかさや曖昧(あいまい)さから生まれる美しい柔軟性」が「豊かな文化」を生み、海外で受け入れられたと主張する。
●規範の緩さで繁栄
クリエーター養成学校を経営する杉山知之が『クリエイター・スピリットとは何か?』(ちくまプリマー新書、二〇〇七年)で指摘するのは敗戦が生んだ自由。「伝統的な倫理観や道徳観を踏まえた教育」が「すべて否定され」た。そのため宗教などが社会規範として力を持つ国と違い特定のタブーをすり込まれることがなく、表現者が自由な発想を持つのに「こんなに恵まれた国はない」。ファッション、建築、料理など現代日本文化が世界で創作者、消費者の双方を引き付けるのも規範の緩さ、自由自在さが要因にある。ならば国を挙げてポップカルチャーを育成し日本追撃を試みる韓国、中国に対しても安心できそうだが、そうではない。海外が新たな日本の魅力を発見したのと入れ替わるかのように、日本の作り手の独創性は停滞期に入ったと、米国人の父と日本人の母を持つローランド・ケルツ著『ジャパナメリカ』(ランダムハウス講談社、二〇〇七年)はルポする。
原因は多岐にわたる。少子化による国内市場の縮小とマニア向け作品の増加。現場の作り手に利益が還元されにくい仕組み。ノウハウ不足による輸出時の利益の取りこぼし。さらに「合意を重視する日本的経営が作品の魂を吸い取る」(同書)ことも多い。
表現や規範の自由にも黄信号がともる。今後増加が見込まれるコンテンツファンドが「過去の実績」と「ファンドの利益」を重視した投資と回収を行えばアニメ業界はますます衰退すると、まんが原作者の大塚英志は『「ジャパニメーション」はなぜ敗れるか』(角川oneテーマ21、二〇〇五年)で指摘する。
●漫画留学受け皿も
突破口はどこにあるか。一つは人的交流の促進だ。スタンフォード日本センター研究所長の中村伊知哉らがまとめた『日本のポップパワー』(日本経済新 聞社、二〇〇六年)は、米国に数百の映画学校があり韓国でも大半の美大に漫画やアニメの学科があるのに対し、「マンガ、アニメ、ゲームを日本で学びたいという世界の若者たちの欲求はいまだほとんど満たされていない」とし、留学生受け入れを拡大したいならこうした分野を充実せよと提言する。ましてや日本のポップカルチャーが生まれた土壌は「融通むげ」ではないか。優秀な海外スタッフが日本に残り、海外向け作品を東京で作る未来もありうる。利益が作り手に還元されるようビジネスと創作双方に目配りできるプロデューサーの育成も必要だ。もう一つは時間と分野を超えた連携。奥野卓司著『ジャパンクールと江戸文化』(岩波書店、二〇〇七年)によれば今の日本ポップカルチャーの源流は江戸の町人文化。漫画を通じ日本の生活文化全般に関心を持つ海外の若者も多い。実写映画や人形、雑貨、インテリア、歴史物語などを連続したものととらえ直し、日本の生活文化全般のファンを増やしていくのだ。米国のソフトパワーとは映画やコーラ自体ではなく、それらが表現・象徴する米国社会の理想や文化そのものだったはず。「食」を起点にスローライフという生活スタイル全般を売り込み、地方観光の振興にまでつなげたイタリアの行き方も参考になる。
| 国史大系 尊卑分脉 第1篇 (新訂増補 新装版) | |
![]() | 黒板 勝美 国史大系編修会 吉川弘文館 2001-01 売り上げランキング : 396728 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
吉川弘文館は八月から、日本史研究の基礎資料となる古典籍を集めた『新訂増補 国史大系』(全六十六冊、写真は第一巻上「日本書紀 前篇」)のオンデマンド出版を始める。書店で一冊から注文を受け付け、二週間程度で製作して書店に届ける。研究者や図書館関係者のほか、日本史に関心を持つ一般読者からの注文を見込む。
『新訂増補 国史大系』は日本書紀や古事記、今昔物語集、吾妻鏡、徳川実紀といった史料を集大成したもの。一九二九年から三十五年かけて同社から刊行された。その後、要望に応じて九八年と二〇〇二年の二度、全巻を復刊したが、現在は在庫はほとんどないという。
これまでは全巻予約を販売の原則としていたため、一冊ずつの購入を希望する声が多数寄せられていた。オンデマンド版では読みやすさを考慮し、従来より一五―二四%ほど判型を大きくする。価格は一冊あたり七千五百―一万九千五百円。
同社は「吾妻鏡や徳川実紀などは特に日本史愛好家の関心が高い。いつでも誰でも入手できるようにしておくのが本来の姿と考えた」と話している。
| 明鏡ことわざ成句使い方辞典 | |
![]() | 加藤 博康 北原 保雄 大修館書店 2007-06 売り上げランキング : 2551 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ことわざや成句の正しい使い方を説明した『明鏡ことわざ成句使い方辞典』が大修館書店から刊行された。約二千三百のことわざ・成句を収録し、約九千の用例で具体的な使い方を説明している。約千の誤用例文も掲載しているのが特徴。巻末に正誤の一覧表を載せ、誤った使い方しか知らない人でも正しい見出しにたどり着けるよう配慮した。B6判、六百五十八ページで、価格は二千四百円。
| ホメイニ師の賓客 上―イラン米大使館占拠事件と果てなき相克 (1) | |
![]() | マーク・ボウデン 伏見 威蕃 早川書房 2007-05 売り上げランキング : 5326 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| ホメイニ師の賓客 下―イラン米大使館占拠事件と果てなき相克 (3) | |
![]() | マーク・ボウデン 伏見 威蕃 早川書房 2007-05 売り上げランキング : 5489 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
上下合わせて九百ページ近くに及ぶ大冊で、米カーター政権当時に起きた在イラン米国大使館占拠事件の経緯をくわしい取材に基づき描写している。
占拠事件は一九七九年から八〇年にかけ、イランでのパーレビ体制崩壊・ホメイニ師のイスラム体制誕生という歴史的政変劇のなかで起きた。カーター政権は人質救出作戦に失敗し、米国がイランとそのイスラム体制に対し今も抱え続けるトラウマの元となった。
核開発問題をめぐる米国とイランの対立が注目される現在、関係者に深く取材し提示し直したことは、現在のイラン問題を考えるうえでも参考になる。
ストーリーは主に現場の人質、ワシントンの米政権中枢、救出に向かう特殊部隊という三場面が入れ替わりながら展開される。人質と見張り人の間の緊張の中に同情もはらむ微妙なやりとりには、著者の取材力が発揮されている。軍事に詳しい著者だけに、米特殊部隊にかかわる部分は興味深く読める。
記録性を重視する余り冗長に感じられる部分もあるが、イラン国内に潜入した救出作戦の細部、ドイツを舞台とした人質解放のための秘密交渉などに関する記述は専門家にも資料として役立つ。前作の『ブラックホーク・ダウン』同様、映画化が決定されている。伏見威蕃訳。
| 言語学者が政治家を丸裸にする | |
![]() | 東 照二 文藝春秋 2007-06 売り上げランキング : 1455 おすすめ平均 ![]() 言葉のチカラはすごい。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
小泉政治によって変わったものの一つに、政治家の言葉遣いがある。「自民党をぶっ壊す」などの分かりやすく、有権者を引き付ける発言ができるかどうか。政治の場で言葉が持つ重みは、ここ数年で極めて大きくなった。
本書は小泉純一郎前首相、安倍晋三首相、小沢一郎民主党代表らの言い回しを分析し、説得力の差がどうして生じるのかを、言語学の観点から解説した本だ。
小泉前首相の「ワンフレーズ・ポリティクス」を論じた本はすでにいくつかあるが、著者の徹底ぶりには驚かされる。
国会演説などを材料に、一つの文章がいくつの文節で構成されているか、語尾にはどのような表現を使っているかを数え上げ、それぞれの政治家の話し方の特徴を具体的に分からせてくれる。
小泉トークのもう一つの特徴は、情報中心のリポート・トークと情緒を伝えるラポート・トークを自由に行き来することで聞き手との距離を縮めることにあるという。大相撲の表彰式のようなフォーマルな場で、「感動した」と叫んだのが典型例だ。
著者は安倍首相の演説には小泉語を研究したあとがうかがえるとみる。文章が短く、紋切り型の「~であります」という語尾は前首相よりさらに少ないからだ。では、どこが異なるか。その分析も書かれている。
| 日本の経済―歴史・現状・論点 | |
![]() | 伊藤 修 中央公論新社 2007-05 売り上げランキング : 1000 おすすめ平均 ![]() いかにも官庁エコノミストが書いた本です。 新書としてはAmazonで詳しく見る by G-Tools |
明治以来の日本の経済発展の跡をたどるとともに、産業、企業経営、雇用、財政、金融の現状について一通りの解説を加える。日本経済の入門書でありながら、自らの問題意識を示す。約三百ページの本書は、こんな欲張った課題をほぼ満たしている。
日本経済の歩みについては米欧を物差しに遅れやゆがみを批判する本が多い。講座派マルクス主義から、海外のリビジョニスト(見直し派)、純粋な市場経済を想定する新古典派まで。日本特殊論という点でも、高見に立ちたがる点でもお仲間なのである。
政府主導の上からの近代化というあいさつ代わりの分析が横行するが、本当か。繊維も機械も自給化を進め、国内の厳しい競争で鍛え、やがて海外に打って出るという行き方には、十分な合理性があったのではないか。経済をまるごとひとつのシステムととらえた記述は、説得力に富む。
もう少し説明が欲しかった部分も残る。端的にいえば、バブル崩壊後の長期停滞からの脱却を論じた個所である。企業がなりふり構わずリストラに努めた結果というだけでなく、日本の企業システムがどう変容したのか、政府と企業の関係はどうなったのかなど、もっとメリハリの利いた記述が欲しかった。
むろん、一つの本ですべての問題を記すのは不可能である。現在の転機に力点を置いた次作を期待したい。
| 死の灰―細江英公人間写真集 | |
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噴火で壊滅したポンペイの遺跡を訪れたとき、著者は死者の声を聞いたという。天災の悲劇は避けられなかった。だが、核兵器による死は「決意と英知があれば避けることができる」。その声を胸にポンペイ、トリニティ・サイト、アウシュビッツ、広島と「死の灰」が降った場所を結んだ写真集だ。汚染された砂漠、鉄条網と義足、原爆忌。虐殺の記憶をとどめる風景から、死者のささやきと祈りが響いてくる。
| トランス・サイエンスの時代―科学技術と社会をつなぐ | |
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遺伝子組み換え食品や原子力発電など、科学技術と社会との間であつれきが生じる事例が目に付く。本書は科学技術が社会に深くかかわるときに問題が生じる事態を「トランス・サイエンス」的状況と呼び、これを乗り越える道を模索する。著者は科学者と市民のコミュニケーションはこれまで啓蒙(けいもう)的なものにとどまっていたと指摘。市民参加型の「コンセンサス会議」を通じた対話に問題克服の可能性を見ている。
地域を育てる普通の会社―ドメイン経営/地方小都市からのメッセージ
塩谷 未知 (著), 小原 昌美 (著)
長野県の南部、伊那盆地の中央部に位置する駒ケ根市。一見ごくありふれた地方都市だが、他の都市と異なるのは、十年前に立ち上げた異業種交流活動「テクノネット駒ケ根」を軸に、町をあげて地域の再生に取り組んでいる点だ。本書で紹介されているのは「小さなグローバル企業」のような特別な企業の話ではない。むしろごく普通の企業やお店ばかり。その分、同市の挑戦の記録は身近で、街づくりを考える多くの人にも参考になる。
| 溶ける街透ける路 | |
![]() | 多和田 葉子 日本経済新聞出版社 2007-05 売り上げランキング : 4332 おすすめ平均 ![]() 街を歩く。本屋に入る。人と知り合う。 詩的、水彩画的エッセーAmazonで詳しく見る by G-Tools |
ベルリン在住の芥川賞作家が自作を朗読し、読者と対話するために世界を駆けめぐった日々をつづったエッセー。「人間であれば誰でも知り合いになれば面白い」と語る著者だけに、国家、民族、言葉などの壁はものともしない。異文化に対して敬意と好奇心に満ちたまなざしを向けることで、様々な街に潜む地霊たちを呼び起こす。欧州、北米、中東とちょっぴり不思議な旅に同行するうちに、見慣れた周りの風景も変わって見えるはずだ。
| 主人公の誕生―中世禅から近世小説へ | |
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日本近世文学の主人公には共通性があると著者はいう。社会のただ中を旅しながら社会に受け入れられず、何かを背負っているはずなのにいつも身軽だと。彼らはどのように生まれてきたのか。著者は唐代の禅僧が毎日自分に向かって「おい主人公」と呼び掛け、自分で「はい、はい」と答えていた、との逸話に注目する。自分の中にいるもう一人の自分を指す「主人公」と近世文学の主人公とのつながりを著者独特の視点から説く。
| 夏の光 | |
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証券会社のアナリストである宮本修一は、高校時代の親友、有賀新太郎と二十数年ぶりに再会する。二人は当時の修一の恋人をめぐるある「事件」をきっかけに疎遠になっていた。財務省担当の新聞記者になっていた有賀は、修一の情報をもとに記事を書く。そしてある日、有賀から手紙が届く。そこには「事件」の真相がつづられていた……。遠い過去の記憶の苦さと四十代の男同士の友情の切なさに、胸が締めつけられるような小説だ。
| 沢村貞子という人 | |
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名脇役であり、名エッセイストとして知られた沢村貞子。三十年余、マネジャーを務めた著者が「せっかちで、おっちょこちょいで、おせっかいな」下町育ちの “おていちゃん”の潔い生き方をつづった佳品。美しく老いる“達人”の日々が活写されるとともに、二人の間の信頼感と情愛がしみじみと伝わる。
| 川を旅する (ちくまプリマー新書 63) | |
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雑誌に連載された紀行エッセーから、三十八の川を選んだ。自然の描写より川辺で生きる人々の暮らしに重点が置かれる。秋田県の雄物川では、精錬所跡の記述が鮮やかだ。江戸時代に港町から銀山まで精力剤のオットセイを売りにきた魚屋のくだりなど、市井の人々の暮らしぶりがイメージ豊かに浮かぶ。
| フリーダ・カーロ ~歌い聴いた音楽~ | |
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二十世紀前半のメキシコで、交通事故による体の不調に終生悩まされ、あるときはメキシコに移ってきたロシアの政治家トロツキーと恋に落ち、夫で画家のディエゴ・リベラに深い愛をささげて波乱の生涯を閉じた女性画家フリーダ・カーロ。生家が残るメキシコ市で七年間生活を続けた著者は、街角に響く民族音楽にフリーダのにおいをかぎつつ心の深層に踏み込んだ。
「政党の機関紙の記者からフリーに転じた後、中南米への関心からグアテマラに居を構えた」。六年後メキシコに移り、現地の音楽に日々接していると、それまでは絵でしか知らなかったフリーダがどんな思いを寄せて音楽を聴いていたかが気になり始めた。「私が住んだのは庶民の住む地域。誕生祝いなどに呼ばれたテンガロンハットのマリアッチ楽団のギターやバイオリンの音が、早朝だろうが深夜だろうが構わず聞こえてきた。半世紀以上前、フリーダの誕生日にも、夫ディエゴが楽団を呼んでいたと聞いた」
多くのメキシコの庶民と同じように、フリーダにとって音楽は生活の一部だった。だから、音楽という視点でフリーダをとらえ直すことに意味があった。一方でマリアッチ楽団の明るい印象とは裏腹なのが、フリーダには骸骨、血、自分の骨などを描いた不気味な作品が多いことだ。
「楽しそうな歌でも、民族の思いを秘めた深刻な内容であることがある。『ラ・クカラチャ』の日本語の歌詞は平和な内容だが、地元ではメキシコ革命の革命軍に同行する先住民の女のことを歌っていることが分かった」。先住民の血を引く母親を持つフリーダが革命に共感したり、民族衣装を着た自分の姿を作品に描いたりしたことに通底する。「高級住宅地に住んでいたらこの本は書けなかった。今後も現地の経験を生かした本を出していく」。




現代の資本主義に対する鋭い分析
経営における呪文の正体とは?

































