メイン > 日経新聞日曜版『読書』 > 2007年6月24日~7月1日
| リアル・リーダーシップ―成功のための五原則 | |
![]() | ピーター・ジョージェスク デイヴィッド・ドーシー 伊藤 綺 中央公論新社 2007-05 売り上げランキング : 738 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「正直で善良な人間は報われる」という「古くからある教訓こそが、新しいビジネス界に必要とされている」。
きれいごとのように思えるが、著者の体験に根ざした主張である。
ピーター・ジョージェスク氏は米国の大手広告会社ヤング&ルビカム社の元会長兼最高経営責任者(CEO)である。輝かしいキャリアもさることながら、ふるさとのルーマニアから米国に脱出した経緯にまず引き込まれる。
米系石油会社の社員だった父親は母親とともに米国出張中に、共産主義国となった祖国から追放された。残された著者ら子供たちを人質にしてスパイになるように強要されながら、父親は悩んだあげく事実を公表する。
これが大反響を呼び解放につながった。「両親の誠実さ、勇気、正直さ」が、著者の一生を貫く価値観となり、現在の過酷なグローバル競争で成功を収めるうえでも重要な意味を持つと確信する。
課題は、従業員が顧客のために心を合わせて、様々な問題に創造的な解決策を生み出せる生き生きとした組織をいかにつくるかである。それには威圧感を与える「タフガイ型リーダーシップ」は時代遅れだという。
今こそ人間性の豊かな「知的で、柔軟で、責任感のあるリーダー」の出番だと説く。「人格」の力を信じる独特の経営論である。伊藤綺訳。
| 英国機密ファイルの昭和天皇 | |
![]() | 徳本 栄一郎 新潮社 2007-05 売り上げランキング : 36539 おすすめ平均 ![]() タイトルに偽りありAmazonで詳しく見る by G-Tools |
ロンドンの英国公文書館に残る駐日大使から本国外務省への公電などの資料をもとに、第二次大戦前後の日本を描いた。英国が日本の何に関心を持ち、対日外交をどう組み立てていったかを分析することで、当時の日本や昭和天皇の姿をあぶり出している。
英国が重視したのは皇室との関係だった。天皇の皇太子時代の訪英(一九二一年)や、その後の秩父宮留学で培った親近感が双方にあったのだろう。日中戦争ぼっ発直後の三七年十月、新任駐日大使は天皇に会った後「皇室が抱く英国への友好心は、われわれにとって重要な資産となるだろう」と本国に報告した。
この時天皇は「日英関係が急速に悪化している事に、私は深い懸念を持っている」「かつての良好な日英関係に戻すのを、自分は心から願っている。その事を、日夜考え続けている」と語ったと記録されている。対日政策の主導権を米国に奪われた戦後も、日本との政体の類似性を武器に皇室との関係を通じて巻き返しを図ろうとする英国の姿が、公文書から浮かび上がる。
著者は資料の引用に加え、周辺取材の成果を盛り込む一方で、しばしば想像力を駆使して人物の心情にまで踏み入っている。そのことが、どこまでが歴史的事実なのかをあいまいにしてしまっているが、英国と縁が深い吉田茂、白洲次郎らの素顔に触れた部分も面白い。
江戸城・大奥の秘密
安藤 優一郎 (著)
大奥が隠然たる政治力を持っていたことは知られているが、その理由や政治にどのように反映されたかについては漠然とした印象が強い。本書は史料の綿密な分析と縁者への取材を通じて、大奥の実力をエピソードで示した快作である。幕府の政治家にとって最大の抵抗勢力であり、改革を挫折させた勢力に利用された点など、現代の視点からみても興味深い。
注目は寛政の改革を主導した老中首座、松平定信と大奥の年寄衆とのやりとり。年寄による人事介入を定信は拒絶し、年寄が上様の上意を盾に取ると、定信は「上意とは将軍が表向きの役人に言う言葉であって、大奥で言うのは御話であろう」と介入を封殺した。定信は大奥の予算を三分の一まで削減したといわれ、金と人事をとられた大奥は定信を数年で失脚させる抵抗勢力の一つとなる。
大奥の人事介入の背景には勢力の拡大をもくろむ諸大名や寺社、御用商人からの賄賂(わいろ)攻勢があり、大奥は俸給で足りない衣装代や先輩、同僚との交際費を賄賂で賄っていた。大奥に上がった娘が実家に金を無心する手紙も残っており、宮仕えの気苦労だけでなく、経済的にも大変だった。
冒頭に登場する中臈(ちゅうろう)(将軍・御台所の世話役)の桂川てやが宿下がりで実家に帰ったときに漏らした言葉「なかなか、つらいよ」など、人臭い描写も随所にあり、読みやすい。
| 美徳の経営 | |
![]() | 野中 郁次郎 紺野 登 エヌティティ出版 2007-05 売り上げランキング : 1044 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
新しい日本型経営の勧めである。「日本企業には戦略がない」という米国の経営学に真っ向から反論する。ただの勤勉だけではトヨタ自動車やホンダは生まれない。分析的な論理的整合性を超えた「実践知」が強みである。これをさらに進めて、人間的に共感できる価値を追求する「美徳の経営」という概念を提起する。舌足らずで難解なところがあるが、目先の利益にとらわれない構想力豊かな経営を目指す思いは伝わってくる。
| 強さの秘密 勝てる理由 トップの条件 ~グランドデザインを描く~ | |
![]() | マイクロソフト経革広場 アスキー 2007-06-19 売り上げランキング : 2776 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
政財界やマスコミ界、スポーツ界などで活躍する「キーパーソン」が、強い組織のあり方や成功へと導く戦略の立て方を説く。サントリーラグビー部の清宮克幸監督はチームスローガンを掲げて浸透させることが不可欠と指摘。ユニークな経営手法で知られる自動車ディーラー、ネッツトヨタ南国の横田英毅社長は「従業員満足」が大切と話す。自民党幹事長代理時代の安倍晋三首相も登場しており、そこで語る「身近な政治」はまさに今実現が求められている。
| なぜ社員はやる気をなくしているのか | |
![]() | 柴田 昌治 日本経済新聞出版社 2007-05-16 売り上げランキング : 157 おすすめ平均 ![]() 「うんうん!」と思える内容でした オススメの一冊 その先が知りたいAmazonで詳しく見る by G-Tools |
組織にまん延しがちな閉塞(へいそく)感を打ち破り、働くことが喜びとなるような企業風土はどうつくればよいのか――。かつてNHKテレビのドイツ語講座の講師を務め、『なぜ会社は変われないのか』でベストセラーを出した著者が、具体的な方途を分かりやすく説いている。現状に安住して主体性を失った人々がする仕事は「考えることを省略した作業になりがち」という指摘には耳が痛い人が多いのではないだろうか。
| グーグル革命の衝撃 | |
![]() | NHK取材班 日本放送出版協会 2007-05 売り上げランキング : 298 おすすめ平均 ![]() 今後のネット社会の行方、課題も記載あり 濃い内容でお値段も安く グーグル幹部の声、現場、業界の実態を正確に記した本Amazonで詳しく見る by G-Tools |
一九九八年に設立された巨大企業本社への取材を通じて「情報をつかさどる現代の神」の実情に迫った。加速度的に変化する実体は容易にとらえがたく、検索順位の決定方法など同社の経営者さえ理解が及ばないブラックボックスが少なくない。「検索」が人々の日常生活にもたらした変化は計り知れないが、それは人間行動の退化につながりかねない、との警鐘が重い。
| マキァヴェッリの生涯―その微笑の謎 | |
![]() | マウリツィオ・ヴィローリ 武田 好 白水社 2007-06 売り上げランキング : 6049 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
『君主論』で知られるルネサンス期イタリアの政治思想家の生涯を、本人が書き残した報告書や書簡をもとに詳細にたどる。一四九八年に二十九歳の若さでフィレンツェ共和国の外交問題を扱う第二書記局の書記長となってから、一五二七年、後に「マキァヴェッリの夢」として知られることになる病床での夢の話を友人に語り、亡くなるまで。著者は激動の時代を生きた思想家の人生に寄り添うようにして筆を進め、人物像に迫る。武田好訳。
| リレーションシップバンキングと地域金融 | |
![]() | 筒井 義郎 植村 修一 日本経済新聞出版社 2007-05 売り上げランキング : 7089 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
今から振り返れば、一九八〇年代の中盤からつい最近まで、日本の金融は構造変化の激動を経験した。九〇年代に入って一気に深化し、経済全般に多大な影響をもたらした金融システム危機はそれ自体が、学問的な検証の対象であり続けている。
ただ、合併や破綻といったことがない限り、世間の耳目は地域金融機関になかなか集まらない現実もある。本書は、経済学者を中心とした専門家が幅広く問題点を分析した地道な労作である。
分析のキー概念が「リレーションシップバンキング(リレバン)」だ。平たく言えば、「特定地域で地元に密着せざるを得ない地域金融に求められるもの」という感じだろうか。国際金融市場で活動する大手金融機関は欧米流の経営手法を導入せざるを得ないが、地域金融機関は土着的特性を忘れるわけにはいかない。本書はそんな問題意識の妥当性を様々な観点から検証している。
さらなる論証を期待したい分野もある。例えば、地域金融の特徴である地域分断を克服するのに、金融機関が経営統合などによる広域化を選択した場合、大手金融機関と違うビジネスモデルをどう作り上げるのか。また、地域にも投資ファンドのようなタイプのマネーが入るとすれば、リレバンとファンドのメリットやデメリットをどう整理するのか、などだ。
| 狩猟と供犠の文化誌 | |
![]() | 中村 生雄 森話社 2007-06 売り上げランキング : 158541 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
民俗学や歴史学、文化人類学、文学など幅広い分野の研究者十二人が集まり、「狩猟と供犠」をテーマに分野を横断する論考を加えた。一九九八年に活動が始まったグループ「供犠論研究会」による調査研究や議論が本書の土台になっている。
全十二章のうち、一―五章が「文化としての殺生と狩猟」、六―十二章が「供犠の論理と供犠の民俗」の共通テーマに沿って展開する。
前半では、人の生存手段の基本であった狩猟の営みが稲作文化の広がりにつれて、中世までにどのように人々の生活、意識から遠のいていったかに焦点が当てられる。その過程では、古代のインド社会で生まれた仏教思想が日本に伝わり、人間が環境へ与える負荷への歯止めとして存在していたという。現代のエコロジーや環境保護思想が担う役割を当時は宗教や神話が果たしたのだ。
後半は、動物のいけにえのほか、人身御供や人柱といった人身の供犠について語られる。中国やイスラム社会の事例も加わる。人身供犠が自然破壊へのおそれとして存在していた、との指摘は狩猟文化の衰退と呼応し合う。
本書の狙いは、文明社会では省みられる機会が少ない人間と自然との根源的な関係を捉(とら)え直すこと。人間と自然とが出合うとき、不可避的に暴力的な関係が出現する、との認識がその解になる。
| CIA秘密飛行便―テロ容疑者移送工作の全貌 | |
![]() | スティーヴン・グレイ 平賀 秀明 朝日新聞社出版局 2007-05 売り上げランキング : 42084 おすすめ平均 ![]() 対テロ戦争の裏側Amazonで詳しく見る by G-Tools |
二〇〇一年九月十一日の米同時テロの衝撃は、米国でリバティー(自由)よりもセキュリティー(安全保障)が優先されがちな政治状況を生んだ。だが、イラクのアブグレイブ刑務所での拘留者虐待が〇四年に発覚するなど、人権の観点から看過できない事態も起きている。
イタリアのミラノでイスラム過激派の関係者とみられる人物を拉致して出身国エジプトに移送したとして、イタリア司法当局が米中央情報局(CIA)職員十数人に逮捕状を出し、国際的な波紋を広げたのは〇五年だった。英国を中心に活動するジャーナリストが著した本書は、ミラノの一件も含めCIAが繰り返した「国家間移送」と呼ばれる工作の実態を詳細に追う。
CIAがテロ関連容疑で拘束した人物を秘密裏にビジネス用ジェット機で中東諸国などに移送し、そこで容疑者が拷問を受ける。しかも容疑に根拠がない例も少なくない。本書はそう指摘している。
ブッシュ米大統領は「危険を及ぼす人間を見つけ、危険な場所から除去するのは米国の国益」と主張する。だが、拷問が予期される国への移送は法にも人権擁護政策にも反し、イスラム過激派に対処しきれない米国が拷問を外部委託しているようなものではないか……。米国が主導してきた「テロとの戦い」の、裏面にも目を向けさせるノンフィクションだ。平賀秀明訳。
| prism | |
![]() | 大和田 良 青幻舎 2007-05-01 売り上げランキング : 76384 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
いつか見た記憶の中の風景と偶然、同じ場所で出合って、あまりの落差に驚くことがある。こんなはずじゃなかった、と目の前の風景を記憶に近づけていくと、本書のような写真集ができあがるのかもしれない。色あせた海、光に白く溶け込む夜のビル群、プリズムを通したように反転し増殖する木々の枝。被写体の実在感によりかからない写真は、強くはないが淡々とした印象を残す。
| 未来のリーダーへの手紙 | |
![]() | ラム・チャラン 依田 卓巳 エクスナレッジ 2007-05 売り上げランキング : 1365 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ゼネラル・エレクトリック(GE)、デュポン、フォードなど多くの著名企業で経営アドバイザーを務めてきた著者が、継続的な成功を目指す企業リーダーにとって必要なノウハウについてまとめた。いくらすぐれた個人的資質があっても、それだけでは不十分で、経験によって積むことができるノウハウを身に付けることが結果を出すリーダーとなるうえでは重要だという。著者が実際に現場で体験した数多くの具体例も紹介されている。依田卓巳訳。
| 実録小泉外交 | |
![]() | 飯島 勲 日本経済新聞出版社 2007-05 売り上げランキング : 1244 おすすめ平均 ![]() 楽しく読めます 小泉首相の偉大さを実感できる,政治家の一面を体感Amazonで詳しく見る by G-Tools |
小泉純一郎前首相の首席秘書官を務めた著者による、首相在任中の五十一回に及ぶ外遊の記録。就任二カ月後に実現したブッシュ米大統領との初会談に始まり、二度の北朝鮮訪問を経て、日本の首相としては初めてとなった中央アジア歴訪まで。細かい事実関係が時系列に沿って丁寧につづられ、各国首脳との写真もふんだんに盛り込まれている。外交交渉の舞台裏など著者ならではの記述が少ない印象はあるが、五年余りの首脳外交の軌跡がよくまとめられている。
| 銃後の中国社会―日中戦争下の総動員と農村 | |
![]() | 笹川 裕史 奥村 哲 岩波書店 2007-05 売り上げランキング : 54680 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
日中戦争は中国にとっても総力戦の体制を築く機会となった。食糧の大規模徴発や同時期に本格的に始まった徴兵制の実態、時に総動員の仕組みを支え、ある時は陰に陽に反抗を試みた土着権力と中央政府の確執。中国が伝統的な農村社会から近代社会に脱皮していく転換点を行政文書を通じて再現する。総動員による社会の均質化と統制強化を基盤にした戦後の共産党支配の成り立ちを考える上でも、大いに参考になる研究。
| 天才の脳科学―創造性はいかに創られるか | |
![]() | ナンシー C.アンドリアセン 長野 敬 太田 英彦 青土社 2007-05 売り上げランキング : 16099 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
天才の脳は普通の人の脳とどこが違うのか。米国の神経科学者が創造性と脳の謎を追う。著者は「通常の」創造性と「並外れた」創造性を分けてとらえ、前者はいろいろな方法ではぐくむことができるが、後者は少数の極めて天賦の才に恵まれた個人にだけ出現すると位置づける。登場する天才はモーツァルト、チャイコフスキー、シェークスピアら。最終章では「通常の」創造性を育てるための心がけを説いている。長野敬・太田英彦訳。
| モンテーニュとの対話 | |
![]() | 荒木 昭太郎 春秋社 2007-05 売り上げランキング : 7301 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
十六世紀仏の思想家モンテーニュをめぐるエッセー集。モンテーニュの主著『エセー(随想録)』からの豊富な引用をもとに、読みどころを平易な文章で紹介する。争乱の時代を生きたモンテーニュは、率直におのれを語りつつ、人間をめぐる普遍的な問題を論じた。本書はそのエッセンスをうまく抽出しており、薄手だが内容は濃い。
| ポストM&Aリーダーの役割 | |
![]() | デビッド・フビーニ 横山禎徳/清川 幸美 ファーストプレス 2007-04-20 売り上げランキング : 580 おすすめ平均 ![]() 想定されている読者ならばお勧めかもAmazonで詳しく見る by G-Tools |
経営者、大株主など関係者の思惑が錯綜(さくそう)したHOYAとペンタックスの経営統合劇は、M&A(企業の合併・買収)の難しさを浮き彫りにした。昨年十二月、両社は合併で基本合意し、両トップが握手してみせた。その後の展開を予想できた人は少ないだろう。表面上は友好的であっても、M&Aは様々な摩擦を生み出す。だから机上の計算通りに合併効果が出ないケースも多い。
本書はM&Aの契約締結後、組織の健全な統合に向けて経営トップ層が果たすべき役割を論じている。地味だが重要なテーマだ。例えば従業員の不安をどう解消するか。著者のインタビューに応じた経営者の一人は(1)解雇されないか(2)誰がボスになるのか(3)給料はどうなるか――の三つで従業員の頭はいっぱいになると語っている。統合で組織がガタガタすれば顧客が逃げ出す恐れもある。
著者は組織融合のコンサルティングを手掛けるマッキンゼーのディレクターと研究者。記述が抽象的で物足りなさを感じる面もあるが、実際に統合を経験した経営者らの談話がそれを補っている。特に最終章に登場するCEO(最高経営責任者)の言葉が印象的だ。彼は「私は統合プロセスが始まったら早い時期に、以前の私の会社側の人の期待に背くことをしなければなりません」と話し、そのつらさを率直に吐露している。
トップが出身母体の利益ばかり主張すれば、組織の融合はおぼつかない。だが合併相手の利益を尊重すれば、出身母体の従業員に恨まれるかもしれない。合併後のトップの立場はそれほど厳しい。評者も大型合併に踏み切ったトップが「二度と合併はしたくない」と振り返ったのを思い出した。
かといって単に二社間のバランスを取ればいいわけでもない。社長のたすき掛け人事はむしろ、合併の後遺症とみなされやすい。著者が「新会社の未来に続く物語を語れ」と指摘しているように、トップが合併で生まれた「新しい会社」のトップになりきることが融合への出発点なのだろう。
▼フビーニ氏とプライス氏はマッキンゼー・アンド・カンパニーの支社ディレクター。ゾロ氏は仏ビジネススクールINSEADの特別研究員。
| 再婚生活 | |
![]() | 山本 文緒 角川書店 2007-06 売り上げランキング : 1128 おすすめ平均 ![]() おかえりなさい、そして待ってます。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
二〇〇一年に直木賞を受賞、翌年には再婚もした。仕事もプライベートも順風満帆に見えた作家をうつが襲う。執筆もままならず、家族や友人との関係にも微妙な影が差す。苦しみの日々と、そこからの緩やかな心の再生をつづった日記エッセーが本書だ。
「小説は無理でも、エッセーだったら比較的気軽に書けるんじゃないかと思ったのが執筆のきっかけ。一種のリハビリといえるでしょう。それもあって、(こうあるべきといった)構えみたいなものは意識的になくすようにしました」
本書は小説誌「野性時代」に連載した文章をまとめたもので、〇三年八月から昨年十二月までの日常がつづられている。もっとも、入院先の病院にパソコンを持ち込んで仕事をするといった無理を重ねた結果、体調を著しく悪化させて、ほぼ二年間の休載を余儀なくされた。
「以前は仕事こそがアイディンティティーと思い込み、全プライドをかけて小説を書いていました。それが大きなストレスになっていたのでしょう。ついつい酒量も増えていました。今は仕事はもちろん大切ですが、もっと周囲の人々とのコミュニケーションを優先したいと考えるようになりました」
同じ病に悩む人々に対して「多少の参考になれば」との思いもある。「症状は千差万別でしょうが、道はそれぞれ違ってもかなりの確率で治るようになっていることは知ってほしい。精神の病というより、体の病としてとらえることが大切ではないでしょうか」と呼びかける。
作家自身の体調もかなり回復した。「以前の自分に戻るというより、新しい自分に生まれ変わったという印象。それを小説に反映できればいいなあと思う」。ウオーキングによる体力作りを通じて、小説執筆を再開する日に備えている。
(やまもと・ふみお)1962年横浜市生まれ、神奈川大卒。著書に『恋愛中毒』(吉川英治文学新人賞)、『プラナリア』(直木賞)など。
| 健康・老化・寿命―人といのちの文化誌 | |
![]() | 黒木 登志夫 中央公論新社 2007-05 売り上げランキング : 1735 おすすめ平均 ![]() 興味深いエピソードも盛りだくさんAmazonで詳しく見る by G-Tools |
著者はがん研究一筋の医学者である。前著で悪性腫瘍(しゅよう)の正体に迫ったが、本書は老化や肥満、糖尿病などの治療や解明に挑む医学の最前線の様子を、その歴史を振り返りつつエピソード豊富にまとめている。老いや病を描いた文学から印象的な一節を多数引用し堅くなりがちな話を読みやすくした。
| 新編新宗教と巨大建築 | |
![]() | 五十嵐 太郎 筑摩書房 2007-06 売り上げランキング : 7983 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
気鋭の建築評論家が新宗教と神社仏閣についての二冊の著書を増補改訂。まともに評論されてこなかった新宗教の神殿や本部の空間の変遷を調査。オウム事件後にプレハブ工場風の施設が話題になったが、宗教が壮麗さにまい進し始めるのは「カリスマを失ったとき」という指摘は興味深い。







「うんうん!」と思える内容でした
その先が知りたい














