メイン > 日経新聞日曜版『読書』 > 2007年4月29日~5月6日

いまこそ読みたい哲学の名著 自分を変える思索のたのしみ
いまこそ読みたい哲学の名著  自分を変える思索のたのしみ長谷川 宏

光文社 2007-04-12
売り上げランキング : 410

おすすめ平均 star
star本物の入門書

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ヘーゲルの翻訳で知られる哲学者が読んで面白かった哲学書など十五冊を紹介する。デカルト『方法序説』は「人に生きる勇気と考える勇気をあたえる爽快(そうかい)な書物」。プラトン、ルソー、パスカルのほか、シェイクスピアやドストエフスキーも。どの翻訳が読みやすいかも示した手ごろな入門書だ。

■2007/05/06, 日本経済新聞 朝刊, 21ページ

視聴率の正しい使い方
視聴率の正しい使い方藤平 芳紀

朝日新聞社出版局 2007-04
売り上げランキング : 1297


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一般視聴者からの関心も高い一方、やらせを生む根源と指摘されることもあるテレビの視聴率。リサーチ評論家が調査世帯の選択方法など、その仕組みや活用法を分かりやすく伝える。「視聴率一%は百万人に相当する」など多くの誤解があると著者は指摘、正しく理解して使うことの大切さを訴える。

■2007/05/06, 日本経済新聞 朝刊, 21ページ

夕張問題
夕張問題鷲田 小彌太

祥伝社 2007-04
売り上げランキング : 68673


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地方自治体の“倒産”とされる財政再建団体に転落した北海道夕張市。近隣自治体に住む著者は産炭地としての歴史をさかのぼり、現在の危機と対比させて、夕張再生の可能性を探る。特産の夕張メロンを軸とした農業での再生を目指すシナリオはやや物足りない。逆に、現状の財政再建案への危機感がにじむくだりには説得力がある。ただ財政を再建しても、自立にはつながらないとの指摘は市関係者には耳が痛いだろう。

■2007/05/06, 日本経済新聞 朝刊, 21ページ

M&A時代 企業価値のホントの考え方―株式市場から評価される会社のお作法
M&A時代 企業価値のホントの考え方―株式市場から評価される会社のお作法保田 隆明 田中 慎一

ダイヤモンド社 2007-03-16
売り上げランキング : 22931

おすすめ平均 star
star感動した
star初心者には目からうろこ

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敵対的買収を生き抜く
敵対的買収を生き抜く津田 倫男

文藝春秋 2006-11
売り上げランキング : 9468

おすすめ平均 star
star前半が面白い
starM&A元年を理解するために
star護るも攻めるも命懸けの時代が眼の前に!

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買収されるのも悪くない。
買収されるのも悪くない。北村 慶

PHP研究所 2007-03-27
売り上げランキング : 3022

おすすめ平均 star
star日経新聞の書評欄にも取り上げられたユニークな本
starM&Aで儲ける人たちの秘訣とは?
starM&Aの本質とは?

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今月一日に解禁された「三角合併」制度を巡っては、様々な観測が飛び交っている。経営者の間には「外資による日本企業買収が増える」という脅威論がある。一方、企業法務にかかわる弁護士からは「外国企業の利用はそれほど増えない」との見方も出ている。

混乱を避けるには、議論を二段階に分けるべきだろう。まず三角合併制度の特徴を理解することが必要だ。次にM&A(企業の合併・買収)全体の潮流を考えてみたい。

三角合併は親会社の株式を対価とした再編手法である。例えば外国企業が日本に完全子会社を設立し、その子会社に日本企業を吸収合併させることが可能になる。この際、日本企業の株主には持ち株との交換で外国企業株が渡される。手続きが終わると、日本企業は外国企業の完全子会社になる。

●国内同士合併にも

こうした例が強調されがちだが、実は三角合併を利用できるのは「海外↓国内」だけではない。日本企業が在米子会社を通じて米国企業を買収する「内↓外」も可能だし、日本企業同士の「内↓内」でも使える。企業再編に詳しい鈴木薫彦弁護士は「国内企業同士の利用が多くなるのではないか」とみる。日本企業の経営者は“外資の脅威”にだけ気を取られるのではなく、三角合併の多様な活用法にも目を向けるべきだろう。

三角合併が敵対的買収に利用される可能性はどうか。保田隆明・田中慎一著『M&A時代 企業価値のホントの考え方』(ダイヤモンド社・二〇〇七年)は「可能性は極めて低い」と予想する。三角合併も合併の一種であり、二社の取締役会で合意したうえ、株主総会で承認を得る必要があるからだ。

ただ敵対的TOB(株式公開買い付け)や委任状争奪戦などと三角合併を組み合わせ、子会社化することは理論上、可能だ。例えば外国企業がTOBで議決権の過半数を確保すれば、買収に反対している日本企業の取締役を交代させられる。さらに委任状争奪戦で他の株主の賛同を求め、議決権の三分の二以上を確保すれば株主総会で三角合併が成立する。

もっとも日本では敵対的買収へのアレルギーが強く、外国企業が踏み切る場合、企業イメージの低下をある程度覚悟しなくてはならないだろう。また保田・田中の前掲書は三角合併の「副作用」も指摘する。日本企業の株主が外国株の保有を嫌う場合、合併の成立後すぐに外国企業の株を売却する可能性があるためだ。外国企業はこうした売り圧力で自社の株価が下がるリスクも想定しなければならない。

総合的にみて三角合併解禁だけで外資による大型の敵対的買収が急増するとは考えにくい。だがM&A全体を展望すれば、日本企業が国内外の企業や投資ファンドに合併・買収されるケースは増えていくだろう。世界的な企業間競争の激化やカネ余りが背景にあり、純資産に比べて時価総額が小さいなど割安な企業が標的になりやすい。

●買収拒否か応諾か

経営者はどうすべきか。津田倫男著『敵対的買収を生き抜く』(文春新書・二〇〇六年)は撃退策として「取締役会が無能な経営者を代える」「企業価値(株価)を引き上げる」などの方法を提案している。

買収の脅威を感じた企業が経営改革に乗り出し、資本や資産の効率を高めれば意義がある。村上ファンドにTOBをかけられ、不成立に終わったものの積極的な資産活用に転じた昭栄が実例といえるだろう。

一方、北村慶著『買収されるのも悪くない。』(PHP研究所・二〇〇七年)は売却の意義を説く。買収対象になるのは評価されている証しであり、むしろ危惧すべきは外国企業から無視されてしまうことだと述べる。

買収提案を拒むか、応じるか。経営者は自社の企業価値を冷静に見つめ直し、どちらの選択が価値を高めるかを基準に判断すべきだ。自ら株式を公開した上場企業であれば、理由なく買収提案を拒むことはできない。自ら経営を続けた方が価値が高まることを説明し、株主の信任を得る必要がある。

■2007/05/06, 日本経済新聞 朝刊, 21ページ

東京市政―首都の近現代史
東京市政―首都の近現代史源川 真希

日本経済評論社 2007-04
売り上げランキング : 22884


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統一地方選が終わり、東京都では石原慎太郎知事が二百八十万票を超す得票で三選された。政治理念や思想の方向性は様々だが、国と対峙(たいじ)する石原氏の姿勢は、東京をつかさどってきた人々に共通する伝統である。

本書は帝都が誕生した明治初期から一九九〇年代までの近現代の東京を概観している。東京の行政史や都市計画史を扱った書物はあまたあるが、貧困問題に対応する社会政策の展開や東京における「市民」の誕生、コミュニティー形成の経緯などに紙幅を割いている点が新しい。

書名が「東京都政」ではなく、「東京市政」なのは東京都誕生(一九四三年)以前の歴史に言及するためだけではない。筆者は経済的貧困や都市問題と闘い続けた東京市の職員グループに敬意を表するため、あえて「東京市政」をタイトルに選んだ。

その代表といえるのが一九三五年に発足した「市政研究会」である。中心メンバーには後に都市社会学の権威となる磯村英一氏がいた。同研究会の活動をまとめた部分は史料的な価値がある。

東京は首都であるが故に、自治権を制約しようとする国と長年対立してきた。戦時下に東京府と東京市が合体して東京都制に移行したが、都長官は国の官吏となり、東京の民主主義は後退した(一九四七年に公選に戻る)。この点でも「東京都」ではなく、「東京市」にこだわる筆者の思いが伝わってくる。

■2007/05/06, 日本経済新聞 朝刊, 22ページ

中国外交の新思考
中国外交の新思考王 逸舟 天児 慧 青山 瑠妙

東京大学出版会 2007-03
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中国の国際関係論といえば毛沢東時代はマルクス主義の立場から途上国の連帯を説いた第三世界論、〓小平以降は孫子の兵法や合従連衡論につながるような現実的な国家戦略論の印象が強かった。本書では、国家と政治だけを分析対象にした従来の思考様式から抜け出し、経済や情報のグローバル化時代に即応した新しい中国型の国際関係論の構築に取り組んでいる。

著者は環境保護団体など非政府組織(NGO)、インターネット、世論調査の興隆を取り上げ、育ち始めた中国の市民社会がどのように外交に影響しているかを分析している。辛亥革命後の中国知識人は国民国家や中央集権の概念にとらわれすぎ、中央政府以外の行動主体を軽んじる傾向があった。著者は中国東北部とロシア、南部とインドシナ半島のように国家の枠組みを超えて進む地域経済圏に筆を進め、地方政府の外交にも言及する。近代中国の殻を打ち破った革新的な国際政治学者といっていいのだろう。

ただ、多方面の分析から導きだされた結論は平板だ。非国家的な行動主体はあくまで脇役であるとし、国家主権の重要性に回帰する。米国の一極主義に反対し多極化による平和維持を説くなど、胡錦濤政権の外交政策と著者の主張にさしたる隔たりはない。

共産党政権下で多様化しつつある中国の国際関係論とその受容限度を知る上では興味深い。天児慧、青山瑠妙訳。

■2007/05/06, 日本経済新聞 朝刊, 22ページ

ヤモリの指―生きもののスゴい能力から生まれたテクノロジー
ヤモリの指―生きもののスゴい能力から生まれたテクノロジーピーター・フォーブズ 吉田 三知世

早川書房 2007-03
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おすすめ平均 star
starj自然界のテクノロジー
star自然のすごさ

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ヤモリの指は吸盤があるわけでも粘着液が出ているわけでもない。にもかかわらずガラス窓を登り天井を逆さになってはい回る。

その秘密は電子顕微鏡でなければ見えないほど微細な毛。一匹あたり十億本も生えている毛の先端がガラスやコンクリートの表面とミクロの力(分子間力)で引き合い、ヤモリの体重を支えている。

この仕組みを応用すれば、どんな場所にも接着剤なしでくっつけたりはがしたりできる魔法のテープができるはず。そう考えて懸命に研究する企業があるという。

生きものの仕組みに学ぶ技術開発を日本では「バイオ・ミメティクス(生物模倣)」と呼ぶ。英国の科学評論家である筆者は「バイオ・インスピレーション」という魅力的な言葉で表現した。生物にヒントを得たという意味だ。

ヤモリのほかにも、汚れをはじくハスの葉や軽くて丈夫なクモの糸など、身近な生物の驚きの技が次々と登場。そんな生物に魅せられた科学者や起業家の奮闘ぶりも。

科学が自然に迫ると、神秘のベールをはがし恐れ敬う気持ちを損なうという批判がある。しかしそんな心配は無用。自然はちょっとやそっとでベールをあげてくれないし、まねもさせてくれない。インスピレーションに導かれて事業化したものの大失敗という例もある。ニュートンの言にあるよう、人は真理という大海の浜辺で砂遊びに興ずる子供なのだ。吉田三知世訳。

■2007/05/06, 日本経済新聞 朝刊, 22ページ

文字の母たち Le Voyage Typographique
文字の母たち Le Voyage Typographique港 千尋

インスクリプト 2007-03-23
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おすすめ平均 star
starいまわれわれが自明のものとする「知」の総体を作り出したこの優美な技術が、消えてゆくのかこの地上から

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活版の衰退とともに金属活字は印刷の現場から消えている。著者は活字を彫り、伝えてきた場所をパリと東京に訪ねた。世界最古の印刷所の一つ、仏国立印刷所が保管するくさび形文字、ヒエログリフ、アラビアやヘブライの活字。大日本印刷に眠る膨大な金属活字。一つひとつを造形物として眺めれば美しさに目をみはる。人類が生み、洗練し、広めた文字文化の記憶を呼び覚ます写真集だ。

■2007/05/06, 日本経済新聞 朝刊, 22ページ

サービス・ストラテジー
サービス・ストラテジージェームス・トゥボール 小山 順子 有賀 裕子

ファーストプレス 2007-03-13
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定義にもよるが、サービスの範囲は実に幅広い。そのため、有効なサービス戦略を立案するのは見かけほど易しい作業ではない。本書は企業の事業活動を表舞台のサービスと、舞台裏のモノづくりなどの大きく二つに分類、相互の関連性を明確にしたうえで、品質や生産性、柔軟性などがサービスの高度化、洗練されたサービス戦略の実現に欠かせないことを分かりやすく解説している。小山順子監訳、有賀裕子訳。

■2007/05/06, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

吉野家安部修仁逆境の経営学
吉野家安部修仁逆境の経営学戸田 顕司

日経BP社 2007-03
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二〇〇四年、BSE(牛海綿状脳症)による米国産牛肉の輸入停止で、吉野家は牛丼の販売を中止した。主力商品の不在という重大な経営危機をいかに乗り越えたのか、社長自身が語り尽くす。「社員へのメッセージは、公式声明文ではなく、感情を共有できる言葉で迅速に」「一過性の評価である時価総額の増加は目指さない」「一番のよりどころはキャッシュ」など、逆境を乗り切るのに役立つ現場発のノウハウを満載する。

■2007/05/06, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

現代日本の生活保障システム―座標とゆくえ
現代日本の生活保障システム―座標とゆくえ大沢 真理

岩波書店 2007-03
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格差社会が問題になる中で、これからの生活保障はどうあるべきかをジェンダー(社会的・文化的性差)の視点で考察した一冊。著者は制度を「男性稼ぎ主型」「両立支援型」「市場志向型」に分け、日本は強固な「男性稼ぎ主型」と指摘。それに固執したことが年金の空洞化や非正社員の増加をもたらしたと主張する。改革の歴史を振り返りながら、年金の一元化や負の所得税など社会的な弱者を排除しない制度を提言している。

■2007/05/06, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

声と顔の中世史―戦さと訴訟の場景より
声と顔の中世史―戦さと訴訟の場景より蔵持 重裕

吉川弘文館 2007-04
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音が残っていない前近代の歴史研究は文字史料に頼らざるを得ないが、文字にも当時の人々の声は書き留められている。本書で、日本中世史が専門の著者は「口頭の詞(ことば)のもつ力が、中世の歴史の場においてどのような役割を果たしたか」を検証する。口頭の詞は訴訟の場で重要な役割を果たし、戦場では「名告(なのり)」があった。声を発する顔の表情にも意味はある。中世の人々の声に耳を傾け、表情をうかがえば、歴史はより生き生きとしてくる。

■2007/05/06, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

草原のラーゲリ
草原のラーゲリ細川 呉港

文藝春秋 2007-03
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おすすめ平均 star
star歴史の生きた証人

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強国のはざまで揺れた一人の内モンゴル人の数奇な運命を二十年来の知己である元編集者がたどったノンフィクション。中国東北部(旧満州)生まれのソヨルジャブは満州国の教育を受け、省の役人になる。満州国崩壊後はモンゴルに留学するが、一九四七年に反革命罪で逮捕。その後、中国・内モンゴルに移送される。強制収容所(ラーゲリ)を転々とし、名誉回復がなったのは八一年だった。氏の波(は)瀾(らん)万丈の人生から、知られざる歴史の一断面が浮かび上がる。

■2007/05/06, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

夕子ちゃんの近道
夕子ちゃんの近道長嶋 有

新潮社 2006-04-27
売り上げランキング : 76

おすすめ平均 star
star人によってはちっとも面白いと感じないだろうけど、
star長嶋有の描く関係性は、いつだって、とってもいいなぁと思えるのだ
star長嶋さんの真骨頂!!

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英語文学事典
英語文学事典木下 卓

ミネルヴァ書房 2007-04
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講談社の創業百周年を記念する第一回大江健三郎賞に長嶋有氏(34)の連作短編集『夕子ちゃんの近道』(新潮社)が選ばれた。同賞は大江氏の作家生活五十周年に併せて日本文学に新たな可能性をもたらすとともに世界文学に向けて大いなる潮流を巻き起こそうと創設された。大江氏が選考にあたり、受賞作は英語(仏語、独語を含む)に翻訳され、海外で刊行される。

英語圏の文学を対象に作家や作品、読解に役立つ概念などを解説する『英語文学事典』がミネルヴァ書房から刊行された。英米を中心に小説、詩、演劇、批評、児童文学などの代表的な作家と作品をエピソードや名言・名句を交えて紹介。「構造主義」「リアリズム」といった用語も含め、約千七百項目を収録する。編著は木下卓・愛媛大学教授、窪田憲子・都留文科大学教授ら。

■2007/05/06, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

ドレミを選んだ日本人
ドレミを選んだ日本人千葉 優子

音楽之友社 2007-03-01
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おすすめ平均 star
star明治以降の音楽の西洋化の歴史

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本書によると、明治期の兵士はフランス人が作った軍歌を歌えなかったという。才能の問題ではない。当時の日本人が、西洋人とは異質の音楽的感性を持っていたためだ。では、なぜ今の日本人が西洋音楽を自然に受け入れるのか。その理由を多面的に探った。

出発点は個人的な関心にあった。「幼少時からピアノを習ってきたが、日本人なのに西洋楽器を当然のように受け入れる自分が、改めて考えると不思議だった。日本人と西洋音楽のかかわりを一度まとめたいと思っていた」と話す。

そもそも日本には箏曲、地歌など個々の楽曲は存在したが、「音楽」という統一概念がなかった。だが明治政府は日本古来の楽曲を低俗とみて、西洋音楽に匹敵する「音楽」に改良したいと考えた。それには西洋風の音階教育が必要と考え、唱歌教育を進めた。これが西洋音楽受容の下地になったという。

調査の結果、日本人が西洋音楽を本格的に受容した時期を大正期とみている。「当時はバブル期と一緒で著名な西洋音楽家が数多く来日し、クラシックのレコードが盛んに輸入された。格下に見られていた邦楽の側からも、西洋音楽の理論を取り入れた作曲が試みられた」という。今やお正月の定番である宮城道雄の箏曲「春の海」も、当時はその斬新さが驚きをもって迎えられたそうだ。

学生時代に民族音楽を学び、異なる文化の衝突が、優れた文化を生むとの思いを深めた。「邦楽が西洋音楽に劣ると考えた当時の考え方は今から見るとおかしいが、そこで悩み葛藤した音楽家が優れた音楽を生みだした。非常に豊かな時代だった」と振り返る。

ところで、個人的な音楽の好みは? 「ワーグナーは結構好きです。でも子供と一緒にロックを聴いたりもします。何でもありですね」(音楽之友社・二、五〇〇円)

(ちば・ゆうこ)1954年東京都生まれ。武蔵野音楽大学大学院修了。専攻は音楽学。宮城道雄記念館資料室室長。慶応大講師。

■2007/05/06, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

新教養主義宣言
新教養主義宣言山形 浩生

河出書房新社 2007-04
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クルーグマンの翻訳などで知られる評論家のエッセー。「選挙権の売買を可能にすれば、政治を自分の利害に結びつけて考えられる」などの奇抜な提案も不思議に説得力がある。八年前に出た本の文庫化だが今も十分に刺激的。世の中を面白がる教養を読者に伝えたい、という著者の宣言がすがすがしい。

■2007/04/29, 日本経済新聞 朝刊, 21ページ

会社を辞めるのは怖くない
会社を辞めるのは怖くない江上 剛

幻冬舎 2007-03
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おすすめ平均 star
star日本振興銀行の社外取締役
starうーん。

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二〇〇三年に二十六年間勤めた銀行を辞め、専業作家に転じた著者が、退職して新しい人生を送るための心構えを説く。必要なのは「(1)自分の足で立つという気構え(2)本当の人脈(3)家族の支えの三つ」という。定年まで勤める人にとっても、「個人力」が必要との指摘は説得力を持つ。

■2007/04/29, 日本経済新聞 朝刊, 21ページ

性犯罪者から子どもを守る―メーガン法の可能性
性犯罪者から子どもを守る―メーガン法の可能性松井 茂記

中央公論新社 2007-03
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おすすめ平均 star
star劇薬注意

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二〇〇四年に奈良県で起きた女児誘拐殺害事件をきっかけに、性犯罪者の氏名や住所などの情報を登録・公表する制度の導入の是非が議論されるようになった。米国では一九九〇年代半ば以降、そうした制度を定めるメーガン法と呼ばれる法律が全州で制定されている。米国での議論を踏まえ、日本に導入した場合の効果や問題点、合憲性について憲法学者が解説。問題の全体像をつかむことができる。

■2007/04/29, 日本経済新聞 朝刊, 21ページ

「最後の社会主義国」日本の苦闘
「最後の社会主義国」日本の苦闘レナード・ショッパ 野中 邦子

毎日新聞社 2007-03
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原題は『RACE FOR THE EXITS』。「出口への殺到」である。狭隘(きょうあい)な出口の扉をめがけて駆け込もうとしているのは二人。一人は日本の名だたる輸出型企業、二人目は女性。二人が同時に経済社会からの脱出を図り始めた結果、国力の衰えが深刻になってきたという問題意識が本書の核心にある。

戦後復興、高度成長から安定成長へ、そしてバブル――。日本経済の成功物語が企業と女性の犠牲のうえにあったという切り口は面白い。だが企業がグローバリゼーションの波に揉(も)まれながら海外生産を加速させ、産業の空洞化を招き、国の成長を阻む一因になったという指摘はひと時代、前のものだ。

中国やアジア、米欧などの国・地域との結びつきの強まりは企業が主導してきた。日本企業はグローバリゼーションを自国の成長につなげる手法を確立させた。他方、女性の脱出物語が成長力を損なっているという視点はさらに深く論じられるべきだ。結婚年齢の上昇や出生率低下について、筆者はどうか子供を産んでくれ、と女性に頭を下げる政治家の出現を指摘、次のような趣旨の論を展開している。

「日本の社会保障制度は外で働かずに無給で家族を世話する女性の存在なしには立ち行かない。(中略)女性は制度に異議を唱えたり政策や男性に変化を求めたりするよりも非婚という道で抵抗を示している」

現実はもっと先を行く。国も地方自治体も膨大な借金で首が回らなくなっている日本で、次世代は税金や年金・医療の負担上昇が運命づけられている。いわゆる「財政的幼児虐待」だ。虐待者が待ち構えている社会に自らの子供を残したいと思う女性がどれほどいるだろうか。

半面、いまも続いている戦後最長景気は団塊ジュニア世代を結婚に駆り立てている。足元で出生数がわずかに反転増加した現状の分析やアメリカの高出生率の裏側にも迫ってほしかった。「最後の社会主義国」という邦題には軽い既視感を覚える。基礎年金を基本年金と表現するなど一部にこなれない訳語が登場するのも残念だ。【編集委員 大林 尚】

著者は62年米国生まれ。バージニア大教授。子供のころ日本で暮らす。英オックスフォード大で政治学博士。専攻は日本政治と政治改革の国際比較。

■2007/04/29, 日本経済新聞 朝刊, 21ページ

ボクシングはなぜ合法化されたのか―英国スポーツの近代史
ボクシングはなぜ合法化されたのか―英国スポーツの近代史松井 良明

平凡社 2007-04
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英国ではかつてフットボールやボクシングが刑法上、違法行為と判断された。現代のエンターテインメント性の強いスポーツ事情からみると、やや意外な事実だ。本書は、これらの競技が合法化される過程をたどることで、スポーツが抱える本質と危うさを抉(えぐ)り出そうとする。

表題はボクシングとなっているが、著者はキツネ狩りや闘鶏などに始まり、クリケットなど、英国の様々な伝統的スポーツを俎上(そじょう)に載せる。サッカー、ラグビー、ホッケーなど近代スポーツが現在の形式に整備、組織化されたのが十八―十九世紀の英国だったことが改めて実感される。

著者は賭博が英国スポーツ史に大きな影響を与えてきたと指摘する。一つの典型がボクシングの原型となったグラブを使わない拳闘だ。プライズ・ファイト(懸賞試合)と呼ばれ、多額の賞金で多くの観客を引き寄せた。

司法の場では早くから「社会的かつ身体的に危険な行為」と判定し、懸賞試合を違法とみなしてきた。合法化される過程では、一定の秩序を保つための統括団体と安全性を確保するための理性にかなったルールが不可欠になった。

スポーツはもともと、自由に裏打ちされ、集団の連帯強化、支配的な権力への敵意の表現をはらむものであったという指摘は興味深い。それ故に歴史上、為政者から抑圧を受けたというわけだ。この背景を忘れるべきでない。

■2007/04/29, 日本経済新聞 朝刊, 22ページ

団塊格差
団塊格差三浦 展

文藝春秋 2007-03
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おすすめ平均 star
star団塊世代はマスではない
starビジネスの役に立つ
star何匹目のドジョウだ?

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今年から定年を迎える団塊の世代は時間と金銭のゆとりを兼ね備え、趣味も豊富に持つ有望な消費者。そんなイメージが目に付く一方で「実はそれほどゆとりはない」という数字も発表される。なぜ正反対の説が両立するのか。

大規模な独自調査をもとに団塊の今を描いた本書によれば、答えは明快。バブルのころまでと違い、現在の団塊世代は決して均質な集団ではないからだ。大きな分かれ目はリストラを免れたか、いつ家を購入したか(=資産デフレを避けられたか)、子どもが正社員になったかの三点。組織から離れ、個人の価値観で行動し始めたことも消費行動の多様化を後押しする。

著者はパルコが出版していたマーケティング専門誌「アクロス」の編集長だった一九八〇年代から、団塊世代の消費とライフスタイルを注視し続けてきた。ビートルズにもVANにも無縁だった人が多数派で、支持するブランドは「ユニクロ」や「ナイキ」。社会貢献や農業への関心は薄い。そんな実像を過去の蓄積も生かしつつあぶり出す。

人数が多いこの世代は、常にマーケティングや広告の対象になってきた。時代ごとの虚像をメディアがつくり、団塊自身もそれに踊らされてきた。こうした「虚像と実像をふ分けする試み」も本書の狙いだと著者は言う。今後も画一的な行動を期待する向きに踊らされないよう、自分の立ち位置を確認したい団塊の人々に、特に一読を薦(すす)めたい。

■2007/04/29, 日本経済新聞 朝刊, 22ページ

選挙の民俗誌―日本的政治風土の基層
選挙の民俗誌―日本的政治風土の基層杉本 仁

梟社 2007-03
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公正な選挙は民主主義の土台だが、買収、供応、中傷や候補者調整を巡る談合などが絶えず発覚する。「甲州選挙」と呼ばれる山梨県も代表の一つだ。今年一月の知事選でも汚名返上とはならず選挙違反事件で小菅村の村議全員が辞職し、約五十日間村議不在という異常事態となった。

本書は「甲州選挙」の背景を民俗学の視点から分析する。盆地で江戸時代、天領として周囲と隔絶していた地理的・歴史的風土もあって地域の結束は固い。親分子分の慣行や今も全国でもっとも盛んな無尽組織。選挙に出馬する候補者は所属政党にかかわらず何本もの無尽に参加する。

葬儀となると、近所が手伝う濃密な地縁血縁の関係もある。個人が自立し、自由に投票するというのは掛け声倒れになる。建設業界のような利権との結びつきは全国共通だが、山梨は義理と贈与・互酬関係が依然として残る。自分の葬儀に多数の参加者や政治家の弔電などを求めることが、政治と民俗の結合を強固なものにしているという。

著者の父は山梨県内で市議会議長も務め、選挙違反で収監されたこともある。子供のころから甲州選挙に慣れ親しんできたことが本書に説得力をもたせる。第三章の金丸信論は民俗の視点からだけでは不十分といった異論も予想されるが、甲州選挙に象徴される民俗に規定された選挙の行動様式は程度の差はあれ全国各地でも呪縛(じゅばく)から逃れられないとの指摘は重い。

■2007/04/29, 日本経済新聞 朝刊, 22ページ

Fairly Tale 老少女綺譚
Fairly Tale 老少女綺譚やなぎ みわ セス・ヤーデン

青幻舎 2007-03
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雪の中でマッチをすり続けて老いたマッチ売りの少女。オオカミの腹から血まみれの双子となって現れた赤ずきん。グリムやアンデルセン、ガルシア=マルケスの物語からぬけだした少女と老女が、あやしく、残酷で、エロティックな夢を紡ぎ出す。現代美術作家、やなぎが2005年に発表した「フェアリーテール」シリーズを収めた作品集だ。写真は著者が作り出した寓話(ぐうわ)の主人公「砂女」。

■2007/04/29, 日本経済新聞 朝刊, 22ページ

12歳の文学
12歳の文学
小学館 2007-03-30
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小学生らを対象にした文学賞が相次いで創設されている。文章力低下や、活字離れを指摘されて久しいが、賞を通して見えてくるのはそんなイメージとは異なる子供たちの姿だ。

小学館が創設した「12歳の文学賞」は小学一―六年生から二千二百五作品の応募があった。このほど受賞作を収めた『12歳の文学』が刊行された。企画した児童・学習編集局「小学六年生」編集部の水野隆氏は「小学生作家を輩出したいという思いで発案した。当面の採算は度外視している」と力を込める。

地方自治体も子供の書き手に期待する。東京都武蔵野市は市内の小中学生を対象にした「子ども文芸賞」を立ち上げた。秋田県能代市も同様の「さわやか文学賞」を始めた。自治体の場合、教育的な色彩が濃いが、才能を発掘したいという思いは出版社と共通する。

各受賞作は、現代の子供の実像を探る手掛かりを与えてくれる。まずは成熟した文章力だ。「12歳」で審査員を務めた作家、あさのあつこ氏は「圧倒的な文章力にビックリしました」と語る。中には原稿用紙二百五十枚の長編小説もあった。

インターネットの普及が文章力を磨いた可能性がある。受賞者の半数は自分のブログまたはホームページを持つ。フリーライターの永江朗氏は「毎日のようにやりとりをしている携帯メールは、大きな影響を与えている」と指摘する。

書くことが思考の深化や成長を促す様子もうかがえる。いじめ、親への反発、自殺、妊娠といったシリアスなテーマを扱った作品が目立つ。「子ども文芸賞」の最優秀賞は、いじめ問題への前向きな対峙(たいじ)をつづった。「現実に基づいた作文では触れにくい題材でも創作なら踏み込みやすい」(武蔵野市教育委員会)

「12歳」では、我が子の作品を読んだ親が、「普段見せたことのない一面が書かれている。急に大人になった気がする」と困惑した例もあったという。

二〇〇五年に十五歳の三並夏さんが『平成マシンガンズ』で文芸賞を受賞するなど、近年、作家の低年齢化が進んできた。小学生の受賞者たちが今すぐ作家に育つとは考えにくいが、文学の可能性、すそ野を広げる試みとしては意義がある。

■2007/04/29, 日本経済新聞 朝刊, 22ページ

韓国財閥史の研究―分断体制資本主義と韓国財閥
韓国財閥史の研究―分断体制資本主義と韓国財閥鄭 章淵

日本経済評論社 2007-03
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韓国の財閥を研究した類書は多いが、そのほとんどが経営学的な視点からの分析だった。本書は第二次世界大戦後からアジア通貨危機までの韓国経済の発展過程の中で、財閥がどのような役割を果たしてきたのか、経済発展と財閥の関係に焦点を絞って詳述している。最近の分析がないのが残念だが、本書を読むと財閥抜きに韓国経済、著者のいう「分断体制資本主義」体制の形成と発展を語れないことが改めてよく分かる。

■2007/04/29, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

メディチ・マネー―ルネサンス芸術を生んだ金融ビジネス
メディチ・マネー―ルネサンス芸術を生んだ金融ビジネスティム・パークス 北代 美和子

白水社 2007-02
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教皇庁と結びついて巨万の富を築き、中世のイタリア・フィレンツェを支配したメディチ家。十五世紀に鮮烈な興亡の軌跡を描いたこの銀行家の一族は、いかにして政治に深くかかわり、なぜルネサンス芸術の擁護に力を注いだのか。英国人でイタリア在住の作家が豊富なエピソードを基に、メディチ家の組織存続の論理と倫理に迫る。現代における金融、政治、芸術、宗教の関係を考える上でも参考になる。北代美和子訳。

■2007/04/29, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

クリーンカー・ウォーズ
クリーンカー・ウォーズ長谷川 洋三

中央公論新社 2007-04
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次世代の環境技術をめぐる開発競争にしのぎを削る大手自動車メーカーの最先端の動きをベテランのジャーナリストが追った。世界初のハイブリッド乗用車「プリウス」を世に送り、環境対策で先行するトヨタ自動車。巻き返しを図るホンダのほか、GM、フォード、ダイムラー・クライスラーといった欧米メーカー。米国に次ぐ世界第二位の市場に成長しつつある中国を制する上でも、環境問題への対応が経営戦略上の重要ポイントになっている現状を伝える。

■2007/04/29, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

校長先生になろう!
校長先生になろう!藤原 和博

日経BP社 2007-03-21
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おすすめ平均 star
starさすが実務者!

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リクルート社員から東京都杉並区立和田中学校の校長に転じた著者が、中学校教育の現場をどう変えるべきか、体験を踏まえて語る。子どもたちに親や先生以外の大人との「ナナメの関係」をもたせる必要性を論じ、民間校長三千人導入、教頭やプロ教師の学校外での修業、学校内への地域ボランティアの大量導入の三作戦にすぐ取りかかるべき、と主張。校長のリーダーシップによる学校の開放と地域社会の再生こそが公教育の信頼回復につながる、と強調する。

■2007/04/29, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

びわ湖ホールオペラをつくる
びわ湖ホールオペラをつくる上原 恵美

新評論 2007-03
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公共ホール建設ラッシュの終盤の一九九八年に開館した滋賀県の「びわ湖ホール」は、オペラの自主制作という独自路線を打ち出した。以来九年間で培った様々なノウハウを劇場のスタッフたちがまとめたのが本書。よくある行政の報告書と違って、二つの自主制作オペラのドキュメントを中心に具体的な制作のハウツーを示している。指定管理者制度の導入などで逆風の吹く公共ホール関係者の参考書であると共に、文化行政の現場を知る手がかりともなる。

■2007/04/29, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

フェアトレード―格差を生まない経済システム
フェアトレード―格差を生まない経済システムジョセフ・スティグリッツ アンドリュー・チャールトン 高遠 裕子

日本経済新聞出版社 2007-03
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現在の世界貿易機関(WTO)、ドーハ開発アジェンダ(DDA)の抱える問題点を発展途上国の立場に立って論じた好著である。近年のスティグリッツの論はやや感情的に過ぎる時もある。しかし本書は若く優秀な共著者を得て、情熱と論理の相乗効果が功を奏している。確固たる経済理論の理解を踏まえつつ、目配りの効いた広範な論文サーベイも含んでいる。貿易自由化と経済発展の関係に関心を持つ読者にとっては必読の書である。

「フェアトレード」と題されているが、欧州の非政府組織などが推進している同名の運動とは直接関係はない。正統派経済学の流れの中にある著作である。

本書の主張は三点にまとめられる。第一に、先進国は途上国の主要輸出品について貿易を自由化すべきだとしている。ここでは、農産品・食料品や繊維・衣料等労働集約的産品に残る保護主義、不当なダンピング提訴を含む非関税障壁の存在、労働移動に対する制限など、多岐にわたる政策が批判的に検証されている。

第二に、市場が未成熟であるがゆえに、即時の貿易自由化が途上国のためにならない可能性もあることを強調している。それが「特別かつ異なる待遇」についての記述にも反映されている。

第三に、WTOが取り扱う政策範囲の拡大は、専門家の能力と途上国側の状況に配慮して、慎重であるべきだと主張している。

それぞれ議論のある問題について理路整然と見解が示されており、大変参考になる。政策論争というのは本来このような高次のところから出発すべきものだろう。

評者が議論するとすれば、第一点は受け入れるとして、第二点については、東アジアの発展モデルの議論があまりに古風で、一九九〇年代以降の工程間国際分業と集積形成のメカニズムを十分に認識していないことを指摘するだろう。第三点については、WTOの活動を限定することが本当に途上国のためになったのか、かえって地域主義の台頭を生んでしまったのではないかと立論してみたい。大いに議論を喚起する本である。(浦田秀次郎監訳、高遠裕子訳、日本経済新聞出版社・二、二〇〇円)【慶応義塾大学教授 木村福成】

■2007/04/29, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

心に太陽を 唇に歌を
心に太陽を 唇に歌を藤原 正彦

世界文化社 2007-03-20
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『国家の品格』がベストセラーとなった数学者が、今回向き合ったのは子どものいじめ問題。ガキ大将だった自分の少年時代のエピソードを紹介する物語を通じて、「卑怯(ひきょう)者になるな」という教えをもう一度見直すべきだと訴える。

「私の子どものころもいじめはあったが、それが自殺につながったという話は聞いたことがない。それはみんなで一人をいじめるのは卑怯なことだと教えられていたので、エスカレートする前に誰かが止めに入っていたからだと思う」

本書にも、父親(作家の新田次郎)から「大勢で一人を殴ること、大きな者が小さな者を殴ること、男が女を殴ること、武器を用いること、相手が謝ったり泣いてもなお殴ること」の五つを厳しく戒められたとの思い出が登場する。

「江戸時代、(人材育成で高い水準にあった)会津藩の藩校『日新館』では『ならぬことはならぬものです』と教えた。今は学校でも家庭でもそうした教えができていない。子どもたちには理屈ぬきでダメなものはダメと教えなくてはならない」と強調する。

現在の教育は「現実に向き合っていない」ともいう。「確率論からいっても、集団ができればいじめる人間といじめられる人間は必ず出てくる。それを前提にすることが大切であり、おおごとになる前に止めなくてはいけない」と話す。

この物語にも描かれているように、理想主義的な父親と現実主義的な母親(作家の藤原てい)は対立することもあった。「夫婦は子育てに関してどんどんやりあうべきだ。私の場合、それによって複眼的な思考が身に付いたと思う」

今は第二次世界大戦中の諜報(ちょうほう)活動をめぐるノンフィクションを執筆している。「次はいわば本業」と話すように、暗号にかかわった数学者たちが登場する予定だ。(世界文化社・一、二〇〇円)

(ふじわら・まさひこ)1943年旧満州(現中国東北部)生まれ。お茶の水女子大教授。著書に『若き数学者のアメリカ』など。

■2007/04/29, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

日本陸軍とアジア政策 1―陸軍大将宇都宮太郎日記
宇都宮太郎関係資料研究会 (編さん)

明治後期から大正期に活躍した陸軍軍人、宇都宮太郎の日記『日本陸軍とアジア政策』の刊行が岩波書店で始まった。宇都宮は辛亥革命で孫文ら改革派を援助したことなどで知られ、当時のアジア政策を考えるうえで重要な資料だ。既刊の第一巻には一九〇〇年、〇七―一一年の日記を収録。全三巻で二巻は七月上旬、三巻は十一月上旬刊行予定。価格は各六千四百円。

■2007/04/29, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

アフリカン・アメリカン スラング辞典 (改訂版)
アフリカン・アメリカン スラング辞典 (改訂版)泉山 真奈美

研究社 2007-04-21
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黒人英語のスラング(俗語)を網羅した『アフリカン・アメリカン スラング辞典』(研究社)の改訂版が刊行された。ヒップホップ音楽から生まれた最新の俗語を取り込んで大幅増補し、十年ぶりに全面改訂した。すべての見出し語に発音記号を付けて、利用者の利便性を高めた。黒人スラングとヒップホップの変遷がわかる年表なども付いている。泉山真奈美編著。

■2007/04/29, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

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