メイン > 日経新聞日曜版『読書』 > 2007年4月1日~4月8日

リバタリアン宣言
リバタリアン宣言蔵 研也

朝日新聞社出版局 2007-02
売り上げランキング : 171260

おすすめ平均 star
star共産主義に似た生硬さ
starアンチ・リバタリアン宣言
starアンチ・リバタリアン宣言?

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個人の自由を最大限尊重する政治思想「リバタリアニズム」を信奉する著者が日本の政治・経済・社会を縦横に語る。国家が年金や医療などの面倒をみる考え方を否定し、個人はあらゆる制約から自由であるべきだと説く。無意識の内に「お上頼み」の発想になっている日本人を挑発する一冊だ。

■2007/04/08, 日本経済新聞 朝刊, 21ページ

何も起こりはしなかった―劇の言葉、政治の言葉
何も起こりはしなかった―劇の言葉、政治の言葉ハロルド・ピンター 喜志 哲雄

集英社 2007-03
売り上げランキング : 128162


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ノーベル文学賞を受賞した英国の劇作家の発言や時事的な文章を収める。人権侵害に敏感である分、米国の外交政策への批判が強烈。ノーベル賞の記念講演も例外ではない。地上最大の見世物だ、と激しい言葉を繰り返す。ユダヤ人としての出自や創作の舞台裏も率直に語る。喜志哲雄編訳。

■2007/04/08, 日本経済新聞 朝刊, 21ページ

私の家は山の向こう―テレサ・テン十年目の真実
私の家は山の向こう―テレサ・テン十年目の真実有田 芳生

文藝春秋 2007-03
売り上げランキング : 699

おすすめ平均 star
star時の流れを駆け抜けた歌姫
star生涯何物にも所属しなかった人

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一九九五年に急逝したアジアの歌姫テレサ・テンの生涯を、生前から取材してきた筆者が描いた。抜群の歌唱力で国境を超えた人気者となった一方、台湾と中国のはざまで多くの困難に突き当たった。突然の死に際しては、スパイ説や天安門事件との関連もうわさされた。筆者は周囲の人々を丹念に取材し、その真実に迫る。スパイ説を追究する場面は圧巻。希代の歌手を失った無念が募る。

■2007/04/08, 日本経済新聞 朝刊, 21ページ

市場の真実―「見えざる手」の謎を解く
市場の真実―「見えざる手」の謎を解くジョン・ケイ 佐和 隆光 佐々木 勉

中央経済社 2007-02
売り上げランキング : 337


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古典力学を範とした完全競争モデル、その完成型としての一般均衡理論が経済学の主流派であると思っている人は、今でも少なくないかもしれない。しかし、そうした理論が全盛を誇っていたのは、一九六〇年代である。それ以降、経済学は大きく変貌(へんぼう)し、多様に進化してきた。

八〇年代からは、特に市場の働きを支えるルールや組織、規範といった社会制度に対する関心が強まった。そして、ゲーム理論が経済学と一体化する中、情報とインセンティブに関する経済理論が発展を遂げた。

本書はこうした現代の経済学への機知に富んだ手引書である。その内容は一般の経済学に関するステロタイプ的なイメージを打ち壊すものかもしれないが、評者のような経済学者からすると、実は正統的で同感できるものにほかならない。

市場経済は、中央による計画化よりうまくいくことが多いが、それは完全競争モデルの説明とは異なる理由からである。市場経済は、社会的、政治的、経済的な諸制度が相互に関係しあって進化した結果としての自生的秩序であって、極めて複雑なものである。多元性が確保されると共に、規律が維持されていることが市場経済を成功に導くのである。

こうした複雑系をあまねく説明するような「壮大な理論」は存在しえないが、そうした理論を求める性向は人間に備わっている。かつてのマルクス主義に代わって、市場原理主義的なアメリカン・ビジネス・モデル(ABM)が、今はその役割を果たしていると著者はいう。

しかし、著者の判断は、ABMは進化した制度的基盤をもつ米国経済の正しい描写だとはいえないというものである。ABMは利己心以外の動機の重要性や非市場的な諸制度の役割を見落としている点で、決定的に間違っている。誤った普遍的説明よりも、着実な部分的理解としての「小さな説明」を積み重ねるべきだというのが著者の主張である。

本書はそうした立場から最新の経済学が市場経済をどのようなものとして理解しているかを分かりやすく示して、「経済学が楽しく刺激的な学問」であることを立証している。(佐和隆光監訳、佐々木勉訳、中央経済社・二、八〇〇円)

▼著者は48年スコットランド生まれ。オックスフォード大教授などを経て、ロンドン・スクール・オブ・エコノミックス教授。【評 慶応義塾大学教授 池尾和人】

■2007/04/08, 日本経済新聞 朝刊, 21ページ

ブランドの条件
ブランドの条件山田 登世子

岩波書店 2006-09
売り上げランキング : 2176

おすすめ平均 star
starおフランスざんす
starどのブランドも持ってませんが・・・
star大阪弁調で

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このブランドに、いくらまで払うのか―「価格の力」と消費者心理
このブランドに、いくらまで払うのか―「価格の力」と消費者心理白井 美由里

日本経済新聞社 2006-11
売り上げランキング : 11367

おすすめ平均 star
star価格理論を学問的に理解するにはかなりいい本
starタイトルと内容の距離

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ケロッグ経営大学院 ブランド実践講座―戦略の実行を支える20の視点
ケロッグ経営大学院 ブランド実践講座―戦略の実行を支える20の視点アリス・M.タイボー ティム・カルキンス 小林 保彦

ダイヤモンド社 2006-12-15
売り上げランキング : 1081


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ブランドギャップ
ブランドギャップマーティ・ニューマイヤー 宇佐美 清 アラヤ株式会社

トランスワールドジャパン 2006-12
売り上げランキング : 3446

おすすめ平均 star
starマーケティングとクリエイティブの狭間

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脳科学から広告・ブランド論を考察する
脳科学から広告・ブランド論を考察する山田 理英

評言社 2007-02
売り上げランキング : 3228


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ブランドのデザイン
ブランドのデザイン川島 蓉子

弘文堂 2006-08-03
売り上げランキング : 3127


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共感ブランディング 顧客の心を巻き込むポッドキャスティング徹底活用術
共感ブランディング 顧客の心を巻き込むポッドキャスティング徹底活用術鷲尾 和彦

講談社 2007-03-27
売り上げランキング : 759

おすすめ平均 star
starポッドキャスティング再考
starまだまだ可能性を秘めたメディア

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ブランドとは何か。議論が盛んになったのはここ十年ほど。不況下にもかかわらず高級ブランドが大都市の表通りに大型店を構え存在感を増したことが大きな契機になった。基本性能で商品の差を付けることが難しくなった電機、自動車、食品などの分野でもブランド戦略への注目度は高まりつつある。

ルイ・ヴィトン、エルメス、シャネルという高級ブランド御三家の攻防を描いた仏文学者、山田登世子氏の『ブランドの条件』(岩波新書、二〇〇六年)。同書はエルメスと並び貴族向け商品を出自とし、定番主義で生きてきたルイ・ヴィトンが、シャネル的な流行型商品を強化し、ダブルスタンダード経営に移行した結果、一頭地を抜く存在になったと指摘する。

●同調圧力で消費熱
長持ちしない商品のブランド価値とは何か。長年ファッションビジネスに身を置いた高橋克典氏が『ブランドビジネス』(中公新書ラクレ、二〇〇七年)で指摘した内容は辛らつだ。人々が同質であることを好み、「隣と同じもの」を欲しがる日本だからこそブランド品がここまで普及した。カジュアル服をブランド化したユニクロは「制服好きの団塊男性がパジャマ代わりの部屋着として購入した」のが成功の理由だという。

万人にとって貴重品となった「時間」の代替品という面もブランド商品にはある。ネットの普及で製品情報はあふれている。しかし横浜国立大学准教授の白井美由里氏は『このブランドに、いくらまで払うのか』(日本経済新聞社、二〇〇六年)で「消費者はすべての製品について徹底的に情報を収集するわけではない」と言い切る。そこでブランド品の出番となる。

実はブランド論への注目は日本だけの現象ではない。世界的にM&Aが活発化する中、ブランドの資産価値を正確に測定するのは企業にとって急務。マーケティング研究で有名な米ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院は三年ほど前、実業界の要請でブランド論の講座を設けた。その研究成果をまとめたのが『ケロッグ経営大学院 ブランド実践講座』(ダイヤモンド社、二〇〇六年)だ。ハーレーダビッドソンやスターバックス、アップルなどの経営を「ブランドビジネス」の視点で読み直していく。

国や階層を超え、消費者がブランド志向を強める背景にグローバリズムがあると指摘するのはマーティ・ニューマイヤー氏の『ブランドギャップ』(トランスワールドジャパン、二〇〇六年)。様々な「壁」が消え、企業、地域共同体、家族など寄って立つものが失われることから生まれる不安が、「自分が属していると感じられる狭い世界」を求める。「族」の誕生だ。ブランド商品を購入することは、特定の「族」へ参加することを意味する。

●ビジネスの新戦略
今後、ブランド消費を理解するには、通り一遍の合理主義を超えた心理学のノウハウが必要になろう。アートディレクター、山田理英氏は『脳科学から広告・ブランド論を考察する』(評言社、二〇〇七年)で、消費者のブランド選びが「好き・嫌い」という「情動」に大きく左右され、数値化しやすい「合理的なものだけをチェックする」調査ではブランド消費は解明できないと指摘する。

研究の立ち遅れをよそにビジネスの現場では新たな戦略が始まっている。川島蓉子氏の『ブランドのデザイン』(弘文堂、二〇〇六年)は視覚、鷲尾和彦氏の『共感ブランディング』(講談社、二〇〇七年)は音声配信サービス「ポッドキャスティング」を活用した聴覚によるブランド訴求の実例を紹介する。「声という感情を伝えやすい手段は共感を呼ぶ」と鷲尾氏はみる。

性能には優れるが人の顔が見えにくい「企業名」「商品名」が主だった日本のブランド戦略。それも現在、米欧同様、料理人やモデルなどの「個人名」、農産地などの「地名」へと軸足が移りつつある。必需品が行き渡り、欠落を埋めるものがヒットするのが現代の消費。人間や土地がブランド化するのも必然かもしれない。

■2007/04/08, 日本経済新聞 朝刊, 21ページ

新明正道時評集
新明正道時評集新明 正道 山本 鎭雄

日本経済評論社 2007-01
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「オールドリベラリスト」という言葉を耳にしなくなって久しい。日本でも戦前、普通選挙の実現などを求め、自由主義的な風潮が強まった時代があった。「大正デモクラシー」である。

当時の空気を吸いながら育った一部の知識人は、時代が昭和となり、軍靴の足音が高まる中でも、自らの自由主義的な思想や信条を完全に捨て去ろうとはしなかった。社会学者、新明正道もそうした一人だった。

本の中で著者は敢然と政府批判を展開し、勇ましく軍部に立ち向かっているわけではない。むしろ足元の現状についてはかなり肯定的、追認的だった。ひとつには、本の成り立ちの問題が指摘できよう。公表を前提としない日記と異なり、本書はそもそも雑誌や新聞に発表された評論を中心に編まれているからである。しかし、理由はそれだけだろうか。

評者の目にはいたずらに理想主義に走るのではなく、現状に即して少しでもよりよい方向に社会を舵取(かじと)りしたいという著者の強い思いが、そこには色濃く投影されているように感じられる。

「格好良さ」とは無縁だが、この本全体から浮かび上がってくるのは、時代の潮流に翻弄(ほんろう)されながらも、自らの良心をぎりぎりまで信じ、懸命に生き抜いた日本の知識人の強い矜持(きょうじ)である。その一端に触れるだけでも、多くの読者にとっては得難い経験となるはずだ。

■2007/04/08, 日本経済新聞 朝刊, 22ページ

M&A 賢者の意思決定―成功企業に学ぶ4つの基本原則
M&A 賢者の意思決定―成功企業に学ぶ4つの基本原則デイビッド・ハーディング サム・ロビット 山本 真司

ダイヤモンド社 2007-02-17
売り上げランキング : 984

おすすめ平均 star
star総合評価では、良書です。

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日本も含め世界的にM&A(企業の合併・買収)が増えている。だが、企業価値向上という成果を出せずに終わるM&Aは多い。最近でも、独米自動車大手の合併で誕生したダイムラークライスラーが再び独米企業へ分離する話が出ている。

本書も大型M&Aの七割は失敗に終わっていると指摘する。とはいえ、米国を代表する大企業の大半がM&Aの産物であることも事実だ。つまり、M&Aを成功させるのは難しいが、M&Aなしで世界一流企業になることも難しい。著者の言葉を借りれば「企業買収のパラドックス」だ。

このパラドックスにどう対応したらいいのか。大手コンサルタント会社に所属する著者は、世界の大企業千七百社について過去十五年分のデータを分析。そこから、M&Aを成功させるために経営者が留意しなければならない四つの原則を導き出している。

そのうちの一つは「買収のターゲット企業をどう選ぶか」。M&Aが自社の価値をどのように高めるかを示す「投資テーマ」が必要ということだ。著者によるアンケート調査では、大型M&Aを行った経営者の半数近くが「強固な投資テーマを持っていなかった」と告白している。

抽象論に終始せず、BMWやネスレなど具体例は豊富。事業会社よりも投資ファンドによる買収が価値を生み出しているなど興味深い分析も多く、中身の濃い一冊だ。山本真司、火浦俊彦訳。

■2007/04/08, 日本経済新聞 朝刊, 22ページ

ビル・ゲイツ、北京に立つ―天才科学者たちの最先端テクノロジー競争
ビル・ゲイツ、北京に立つ―天才科学者たちの最先端テクノロジー競争ロバート・ブーデリ グレゴリー T.フアン 依田 卓巳

日本経済新聞出版社 2007-02
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「Guanxi(ガンシー=関係)」。中国語で人のつながりを表すこの言葉は、欧米企業が中国戦略を語る際によく用いられる。中国で成功するには、目先の利益よりも長期的な信頼関係を築くのが大事だというわけだ。「Guanxi」は本書の原題で、その大切さを世界最大のソフト会社、マイクロソフトを舞台に描いた本である。

邦題ではビル・ゲイツ会長が中国戦略を仕切った印象があるが、主役はむしろ同社の北京研究所を立ち上げた中国人の技術者たちだ。中でも台湾生まれの初代所長、李開復氏の存在が大きい。シリコンバレーでの活躍により所長に抜てきされるものの、本社との行き違いからライバルのグーグルへと身を移す。

きっかけは契約時の約束を本社が守らなかったというもので、いかに中国人技術者が母国の将来を考え、誇りを持って仕事に就いているかがうかがえる。物語の大半は人の動きの描写だが、李氏の助言をもとに「中国で成功するために」と題した最終章は日本企業にも十分参考になる。

北京研究所はマイクロソフトの新製品開発はもとより、中国での技術者養成にも大きな役割を果たした。同社が中国と密接な関係を築こうとしている姿勢がわかるが、物語で日本への言及がないのが気になる。逆にみれば、日本のIT(情報技術)産業が中国市場に臨む際の重要なヒントが隠されているともいえる。依田卓巳訳。

■2007/04/08, 日本経済新聞 朝刊, 22ページ

浜田知明よみがえる風景
浜田 知明 (著)

版画家、彫刻家の浜田知明は八十九歳の現役作家だ。ゴヤに影響を受け、戦争体験を銅版画に託した「初年兵哀歌」が名高い。銃をのどにつきつける「歩哨」をはじめとする連作、近年の風刺精神に富んだ彫刻。時々の文章を添え、主な作品を紹介する。惨禍をもたらす権力と人間を一貫して批評する。独創的な造形感覚に圧倒される。写真は核の恐怖を象徴するかのような「ボタンを押す人」。

■2007/04/08, 日本経済新聞 朝刊, 22ページ

神話論理〈1〉生のものと火を通したもの
神話論理〈1〉生のものと火を通したものクロード レヴィ=ストロース Claude L´evi‐Strauss 早水 洋太郎

みすず書房 2006-04
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おすすめ平均 star
starついに!
star論理があまりに粗雑で恣意的に過ぎ、読む価値があるか疑問

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蜜から灰へ
蜜から灰へクロード・レヴィ・ストロース 早水 洋太郎

みすず書房 2007-01
売り上げランキング : 119055


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家の馬鹿息子〈3〉ギュスターヴ・フローベール論(1821年より1857年まで)
家の馬鹿息子〈3〉ギュスターヴ・フローベール論(1821年より1857年まで)ジャンポール サルトル Jean‐Paul Sartre 平井 啓之

人文書院 2006-12
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海外の人文書の大著を翻訳刊行するには様々な困難が伴う。読者層が限られ、収益確保も厳しい。それでも優れた本を読者に届けようとする出版社の苦心が近刊に見て取れる。

昨年四月からみすず書房で刊行が始まった、フランスの人類学者レヴィ=ストロースの『神話論理』(翻訳は全五巻)。第一巻『生のものと火を通したもの』は三刷、一月に出た第二巻『蜜(みつ)から灰へ』は二刷となり、全体で六千四百部と快走している。

だが刊行までには曲折があった。原著の発刊は一九六六年。みすずは同年、翻訳権を取得し、七九年には発刊予定の広告も出した。だが訳者との調整が難航、翻訳作業が停滞した。

九八年に訳者を再結成し、原著刊行から四十年たってようやく発刊にこぎ着けた。『神話論理』は南米の神話から人々の思考を探る内容で、早水洋太郎氏ら異分野の研究者四人が共訳する。「訳者委員会で意思疎通し、円滑に翻訳を進めた」(守田省吾・みすず書房取締役)。来夏の悲願の完結に向け作業が進む。

一方、続刊が事実上頓挫したのがサルトルの『家(うち)の馬鹿(ばか)息子』(人文書院、全五巻)。十九世紀仏の作家フロベールを論じたもので、サルトル思想を理解するうえで重要な著作だ。

昨年十二月、前巻から十七年ぶりに第三巻が出た。訳者の一人、海老坂武氏は「解題」の中で続刊が困難であることを読者にわびつつも、「出版社の責任も重大」と指摘。四人の訳者のうち一人が原稿を未提出という状態を放置した人文書院を厳しく批判している。

翻訳書を出す出版社は原著の出版社と契約を結ぶのが通例。一定期間内に訳書を出さないと、契約更新料や違約金を支払わされる。刊行延期は読者の信頼を失うだけでなく、コストにも跳ね返ってくる。刊行に時間のかかる大著であればなおさら、出版社の管理能力が問われることになる。

出版事情に詳しい明治学院大学の長谷川一准教授は「ネット時代には、知のよりどころとして人文書の需要が高まる可能性がある」と分析する。質の高い訳書を出そうとする出版社の志は高く評価すべきだが、読者のニーズが高まればその分、刊行を完遂する責任も大きくなるだろう。

■2007/04/08, 日本経済新聞 朝刊, 22ページ

ぼくの複線人生
ぼくの複線人生福原 義春

岩波書店 2007-03
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経済界きっての文化人といわれる福原義春資生堂名誉会長の自伝的回想だ。創業者の孫に生まれ、芸術を愛し、先取を好む気風を身体で感じながら育った著者は、様々な経営の難局に立ち向かう一方、日本に企業メセナを根づかせ、東京都写真美術館の再生にも手腕を発揮した。仕事にも趣味にも夢中で打ち込んできたその“複線人生”からは、「美しいとはどんなことなのか。人も会社も美しく生きるとは何なのか」が見えてくる。

■2007/04/08, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

フィクションと証言の間で―現代ラテンアメリカにおける政治・社会動乱と小説創作
フィクションと証言の間で―現代ラテンアメリカにおける政治・社会動乱と小説創作寺尾 隆吉

松籟社 2007-01
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ガルシア=マルケスやコルタサルらに代表される二十世紀のラテンアメリカ文学を取り上げ、小説と政治・社会の関係を論じる。ラテンアメリカ文学といえば「魔術的リアリズム」と呼ばれる幻想的なイメージの展開を思い浮かべるが、実は政治色が色濃く表れていると著者は説く。文学が政治運動・社会改革と緊密に結びついていたとの指摘は、ラテンアメリカ文学を読み解くうえで新たな視座を提供してくれるだろう。

■2007/04/08, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

在日朝鮮人問題の起源
文 京洙 (著)

近代以降の日本社会は在日朝鮮人の存在をどうとらえ、その中で彼ら自身の意識はどう変化してきたのか。幕末・明治期の日本人の朝鮮観の変化に始まり、一九一〇年代後半からの移民急増期、戦後の高度成長期を経て八〇年代後半以降の現代までを検証する。著者は在日二世の立命館大教授。各種の記録や在日の作家による小説に加え、著者の体験に根ざした記述もあり、在日コリアンの精神史としても読める。韓流ブームの背景など最近の話題にも触れている。

■2007/04/08, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

日本を磨く―輝く「強い国」をつくる
日本を磨く―輝く「強い国」をつくる日本経済新聞社

日本経済新聞出版社 2007-02
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奥田碩・日本経団連名誉会長や香西泰・日本経済研究センター特別研究顧問ら総勢二十九人に上る識者のインタビュー・論考集。その多くがどうすれば日本は世界から尊敬される国家になれるかを語っている。論点は多岐にわたるが、共通点は「自由」「市場」「知識」。それらの価値を最大限尊重したうえで、日本の伝統や規律と共存させることが大事だと説いている。メディアに氾濫(はんらん)する「格差論」への異論も多く、知的刺激が得られる仕上がりだ。

■2007/04/08, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

日本経済のリスク・プレミアム―「見えざるリターン」を長期データから読み解く
日本経済のリスク・プレミアム―「見えざるリターン」を長期データから読み解く山口 勝業

東洋経済新報社 2007-03
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リスク・プレミアムとは、金融取引で資金の受け手のリスクに応じて、資金の出し手が要求する高い利回りのことである。本書はこう定義したうえで、株価などを左右するリスク・プレミアムについて、実証的に分析する。過去のデータの解析にはなるほどとうなずける点が多い半面、後講釈にすぎないと感じる読者もいるかもしれない。この種の研究は実際の投資でどれだけ役に立つかが勝負。著者自身のトラックレコード(運用実績)を知りたい気がする。

■2007/04/08, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

フランク・ロイド・ライト・ポートフォリオ
フランク・ロイド・ライト・ポートフォリオマーゴ スタイプ

講談社 2007-04-06
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米国建築界の巨匠の作品写真やスケッチ、手紙などの資料を収録したマーゴ・スタイプ著『フランク・ロイド・ライト・ポートフォリオ 素顔の肖像、作品の真実』(講談社)が刊行された。ニューヨーク市のグッゲンハイム美術館のコンセプトスケッチなど秘蔵資料を複製して封入した。インタビューや講演録などライトの肉声を収めたCDが付く。隈研吾監修。一万円。

■2007/04/08, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

謎のマンガ家・酒井七馬伝―「新宝島」伝説の光と影
謎のマンガ家・酒井七馬伝―「新宝島」伝説の光と影中野 晴行

筑摩書房 2007-02
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おすすめ平均 star
star謎のマンガ家の実像

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酒井七馬という名に覚えがなくても、手塚治虫の出世作で、戦後ストーリーマンガの出発点となった『新宝島』の原作・構成を務めた人物といえばピンとくる人もいるだろう。本書はゆかりの人物への取材を重ねて構成した評伝だ。

マンガ史でもほとんど言及されていない。「不遇な晩年で餓死した」という伝説くらいだ。マンガ家を目指したこともある著者も、手塚とトラブルがあったという逸話から「因果応報だろう」と伝説を疑わなかった。

七年勤めた銀行を辞め、大阪を拠点に「めったやたらに歩いて」昭和マンガ史を取材していた九〇年、酒井と長年交流があったマンガ家、大坂ときをと出会ったことが執筆の出発点。“餓死伝説”を知った大坂がいたく憤慨したというのだ。

事実と異なる伝説が流布されながら、だれも訂正しなかった酒井の存在の希薄さに著者はひかれた。手塚や横山光輝といったスターを輩出しながら「東京に全部持っていかれる」大阪の文化状況も背後に感じた。

「酒井を直接知っている人が次々亡くなる」困難もあったが、足跡を訪ねると想像以上の活躍ぶりだった。日活で草創期のアニメに携わっていたほか、在阪のマンガ雑誌、紙芝居でも活躍した。だがどこか中途半端なあきらめも漂う。名を残していないのは「大阪人だから」というのが著者の見立てだ。

「主張が強いと思われがちだが、実際は一歩引いて『まあ、ええやん』というところがある。あとから大阪に来ただけに余計美点と感じる」。本書は酒井の評伝の形を借り、歩き回って肌で感じた大阪文化論でもある。

十年前、東京・神田に拠点を移した。「まだ歩き足りない」というが、「大阪とどこか似ている」東京の下町文化論にも取り組むつもりだ。(筑摩書房・一、九〇〇円)

(なかの・はるゆき)1954年生まれ。編集者・ノンフィクションライター。著書に『球団消滅』『マンガ産業論』など。編集の仕事に『桂米朝コレクション』など。

■2007/04/08, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

周恩来秘録 上
周恩来秘録 上高文 謙 上村 幸治

文藝春秋 2007-02-27
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おすすめ平均 star
starおもしろくって一気読みです。
star全く知らなかった数々の事実
star歴史を知らずして、今を生きることは出来ない

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周恩来秘録 下
周恩来秘録 下高文 謙 上村 幸治

文藝春秋 2007-02-27
売り上げランキング : 140

おすすめ平均 star
star毛・周と舞台回しの役者達。本書は現代版「三国志」

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文化大革命以降の周恩来晩年と、彼を取り巻く凄惨(せいさん)な権力闘争を深彫りした力作である。日中、米中国交正常化交渉の立役者でもあった周恩来については、日本でも戦中派世代を中心に熱烈な信奉者が多い。しかし本書が描く周恩来は暴君、毛沢東の下で小心翼々と仕える優柔不断な宰相の姿である。人間、周恩来の苦悩を赤裸々に描くと同時に、「毛沢東専制政治の暗黒と凶悪さ」を徹底的にえぐり出している。

著者は中国共産党中央文献研究室に勤務し、一九八九年の天安門事件後に渡米。党の秘密文書や歴史当事者の証言などの膨大な文献資料をもとに、激動の文革期を実証的に描いて説得力がある。長年来の周恩来ファンには目を覆いたくなるような記述が延々と続く。毛沢東が劉少奇や彭徳懐、林彪らの政敵を次々と粛清していく中で、周恩来は実は彼らの思想、政策に共感を持ちながらも保身のため毛に協力する。最後は自身が毛沢東からライバル視され、膀胱(ぼうこう)がんの手術も許されず、寿命を縮める。闘病中も毛沢東や江青から繰り返し「修正主義者」「投降主義者」とつるし上げられる。それでも毛への忠誠を誓い、死期の迫る床で毛沢東賛歌を口ずさむ。

著者は周恩来の毛沢東に対する“奴隷的”な服従の背景に、「儒教文化の忠君思想」をみる。また周の「封建時代の名家出身という原罪意識」が、「革命の晩節をまっとうせよ」との毛沢東のマインド・コントロールに操られた原因、とも分析する。本書が紹介する鄧小平の周恩来評価が核心を突いている。「もし総理(周恩来)がいなかったら文革の状況はさらに悪くなっていた。もし総理がいなかったら文革はこんなに長引かなかった」

この評価は毛沢東政権の本質でもある。周恩来は抜群の実務、調整能力で毛沢東の凶悪な専制政治の“緩衝材”となったが、周がいなければ毛の権力はこんなに長続きしなかった、と読むこともできる。一九三五年の遵義会議で「毛沢東の全党における指導的地位が確立された」との通説を否定、その時の決定権は周恩来にあったことを指摘している。

著者は53年生まれ。八〇年代から中国共産党中央文献研究室に勤務。周恩来研究の第一人者で、党公式『周恩来伝』などを執筆。現在は米国で研究を続ける。【評 編集委員 山本勲】

■2007/04/01, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

アグネス・ラムのいた時代
アグネス・ラムのいた時代長友 健二 長田 美穂

中央公論新社 2007-02
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おすすめ平均 star
star憧れとノスタルジーに満ちたあの1970年代 私はその時代に遅れて生まれてきた(追悼長友健二氏)

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一九五〇年代末から映画俳優やアイドルらを撮り続けた写真家がインタビューに答える形で舞台裏を振り返る。石原裕次郎、アグネス・ラム、キャンディーズや日活ロマンポルノの女優たち――。撮影を通して彼らの素顔に触れただけに時代を見る目は鋭く、メディアや世論がスターを生み、消費した過程の証言が興味深い。グラビア誌の登場、テレビと映画の盛衰などメディア史としても読める。

■2007/04/01, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

坂手洋二 1 (1)
坂手洋二 1 (1)坂手 洋二

早川書房 2007-03
売り上げランキング : 47387


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演劇文庫で平田オリザと坂手洋二の戯曲刊行が始まった。収録作の「屋根裏」は読売文学賞受賞作。極小空間が子供部屋、山小屋などに次々と転じ、現代の寄る辺なき人々の精神状況を照らし出す。作者の手法をよく示す問題作だ。「みみず」は小さな生き物を象徴的な効果として用いた個性的な作品。

■2007/04/01, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

ミサイル防衛 日本は脅威にどう立ち向かうのか
ミサイル防衛 日本は脅威にどう立ち向かうのか能勢 伸之

新潮社 2007-02-16
売り上げランキング : 61052

おすすめ平均 star
star新聞などでは得られない迫真の記述

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二〇〇六年に北朝鮮が弾道ミサイルの発射と核実験を相次ぎ実施したことで、日本でもにわかに核ミサイルに対する防衛論議が活発になった。著者は長く防衛問題を追ってきたテレビジャーナリスト。豊富な取材経験をもとに、弾道ミサイルの歴史やミサイル発射の探知方法、迎撃の仕組みなどを解説する。

■2007/04/01, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

成功はゴミ箱の中に―レイ・クロック自伝 世界一、億万長者を生んだ男-マクドナルド創業者
成功はゴミ箱の中に―レイ・クロック自伝 世界一、億万長者を生んだ男-マクドナルド創業者レイ A.クロック ロバート・アンダーソン 野崎 稚恵

プレジデント社 2007-01
売り上げランキング : 80

おすすめ平均 star
star五十二歳からのアメリカンドリーム
star勇気が湧いてくる本
star内容は最高の一冊

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本書の最終章に、こんな一節がある。「いまの××(国名)の若者には、仕事を楽しむ方法を学ぶ機会が与えられていない。この国の社会的、政治的哲学は人生から一つずつ、リスクを取り除くことを目標としているようだ」

「日本」と当てはめても納得しそうな指摘だが正解はアメリカ。本書はハンバーガーチェーン「マクドナルド」の実質的な創業者であるレイ・クロックの自伝だ。原著の出版は三十年前。邦訳の完全版は今回が初めてだ。今の日本でこそ起業家精神を鼓舞する著者の言葉が響くのか、一月の発売以来ベストセラーリストに名を連ね続けている。

ミルクセーキ用ミキサーを売り歩いていたクロックは五十二歳でマクドナルド兄弟の経営するハンバーガーレストランと出合う。清潔な店内、調理やサービスの効率性などに感銘を受けた彼は全国チェーン化を持ちかける。その後、新製品や新業態の失敗、リスクを嫌うマクドナルド兄弟との決別などを乗り越え「M」マークが世界に広がるまでの半生がつづられる。

原著出版時、日本でマクドナルドはまだ新興勢力。九〇年に別の出版者と訳者の手で前半部が翻訳されたが、日本型経営礼賛の時代とあってか後半は日の目を見ずじまい。本書が人生の教科書だという「ユニクロ」の柳井正会長が完全版の出版を持ちかけ、巻末の解説も執筆した。野地秩嘉監修・構成、野崎稚恵訳。

■2007/04/01, 日本経済新聞 朝刊, 24ページ

青に候
青に候志水 辰夫

新潮社 2007-02-22
売り上げランキング : 7697


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まさにタイトルにふさわしい、若々しい青春時代小説である。主人公の下級武士が青臭く突っ走って生きる姿はすがすがしいし、二人の女性とのぎこちない恋愛もみずみずしい。一貫した現代語口調の会話に「シミタツ節」と呼ばれる濃密な文体も相まって、従来の時代小説とはひと味違う作品になっている。

二十一歳の神山佐平は播磨栗山の山代家に仕える下級武士。彼を登用した前藩主が急死し、異母弟が後を継ぐ。佐平は新藩主の取り巻きの一人を斬(き)ってしまい、心ならずも脱藩して江戸に向かう。前藩主の死をめぐり、江戸にも不穏な雰囲気が漂う。佐平は秘密を抱えたまま行方不明になった同僚を探すが、自らも何者かに後をつけられる。

佐平以外の登場人物も魅力的だ。山代家の目付である小宮六郎太の妹で佐平に好意を持つたえと、佐平がひそやかに思いを寄せる幼なじみで前藩主の側室園子。この二人はタイプこそ違うが、ともにりりしさを持っている。さらに佐平が心を許す数少ない家臣の一人である六郎太。重臣である六郎太は山代家を守るため、私心を抑えて苦労を自らに課す。そんな六郎太に共感を覚える読者も多いだろう。

本書はハードボイルド小説で知られる作家が、七十歳にして初めて書いた時代小説。己の信じる道を愚直なまでに真っすぐ進んでいく青年武士の清冽(せいれつ)な生き方を、ベテランならではの熟練の技で描ききっている。

■2007/04/01, 日本経済新聞 朝刊, 24ページ

投資の科学 あなたが知らないマーケットの不思議な振る舞い
投資の科学 あなたが知らないマーケットの不思議な振る舞いマイケル・J・モーブッシン 川口 有一郎 早稲田大学大学院応用ファイナンス研究会

日経BP社 2007-02-22
売り上げランキング : 471

おすすめ平均 star
star行動ファイナンスに食傷気味の方へ
star興味深いが・・・
star科学で投資常識を切る感覚が面白い

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株式市場がどのような原理で動いているのかについて定説はない。しかし、その本質を理解するには経済学にとどまらず、心理学など幅広い分野での知識が求められる。本書の特徴もここにある。

著者は著名な投資ストラテジスト。本書で取り上げられる事例は驚くほど多様だ。アリの行動パターン、伝説的ギャンブラーの成功法、飛行機のライト兄弟、タイガー・ウッズのゴルフスイングなどの事例が実際の株式投資と関連づけて紹介される。

確率論では、野球で五十六試合連続ヒットの偉業をなし遂げたジョー・ディマジオが出てくる。著者は、ディマジオが五十六試合連続ヒットを実現する確率は百万分の一に満たないと指摘。要は、ディマジオは確率論では説明できないほどの異常値なのだ。

この話は、投資信託のファンドマネジャーの連勝(何年も市場平均を上回る運用成績を出すこと)との関連で使われる。ファンドマネジャーが何年にもわたって市場平均に勝ち続けるのは非常に難しく、連勝記録は「卓越した技術に裏打ちされた、大いなる幸運の産物」だという。

一般になじみやすい事例が使われるほか、章立てなどもわかりやすく構成されており、専門知識がなくても比較的苦労せずに読める。トピックによっては食い足りなさも感じさせるが、株式投資と縁がない読者にとっても知的好奇心を刺激してくれる本である。川口有一郎監訳。

■2007/04/01, 日本経済新聞 朝刊, 24ページ

囲市
囲市高梨 豊

クレオ 2007-03
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タイトルは「かこいまち」と読む。ビルが林立するすき間、忘れられたような空き地や路地。都市の風景の中には様々な形で囲われ、包まれ、取り巻かれた空間があり、ひっそりと人の気配をたたえて鎮まっている。何かを守っているようでもあり、とじ込めているようでもある。そんな場所を、著者のまなざしはやさしく開放するかに見える。写真は「kawaguchi NOV.2004」。

■2007/04/01, 日本経済新聞 朝刊, 24ページ

映像の発見―アヴァンギャルドとドキュメンタリー
映像の発見―アヴァンギャルドとドキュメンタリー松本 俊夫

清流出版 2005-10
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表現の世界―芸術前衛たちとその思想
表現の世界―芸術前衛たちとその思想松本 俊夫

清流出版 2006-11
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一九六〇年代から八〇年代にかけての映画論の名著が復刻されている。バブル期以降、拡散する一方の言論状況に抗するような骨のある論考は、映画の豊かさを再発見させてくれる。

六〇年代の映画批評をリードした松本俊夫の『映像の発見』『表現の世界』が清流出版から復刊された。『映像の発見』は六三―七九年に十三刷を重ねた映画青年のバイブル的存在だ。

記録映画作家として出発した松本は現代芸術の課題を「『眼に見える』対象的な外部世界を懐疑し、『眼に見えない』内部世界へと主体的につき進んでゆく」こととし、外部を記録する記録映画と内面を表現する前衛映画の「統一」を探る。六〇年代のヌーベルバーグの方法論を想起させるが、この論考「前衛記録映画論」が書かれたのはそれに先立つ五八年というから驚く。

小説や演劇に隷属する映画への松本の辛らつな批判は、映画監督ロベール・ブレッソンの箴言(しんげん)集『シネマトグラフ覚書』(筑摩書房)とも響き合う。七五年に原書、八七年に邦訳が出た名著も長く品切れだった。

「人生をコピーし、研究しつくした感情を敷き写しになぞる演劇のこの自然らしさのトーンほど、映画において偽りのものはほかにない」。「シネマ」を否定し、リュミエール兄弟の「シネマトグラフ」の原点を見つめるブレッソンの思索は深い。「人間の生の在り様そのものをめぐる、観察と瞑想の記録」(訳者の松浦寿輝)としても読める。

全く異質の本だが、色川武大『映画放浪記』(キネマ旬報社)も、映画を凝視する著者の肉体が見える点で共通する。週刊誌連載のビデオガイド『色川武大の御家庭映画館』(八九年刊)の改題。寄席芸の素養がキートンや凸凹コンビの身体性を浮き彫りにし、不良少年体験がトリュフォー映画の細部をよみがえらせる。

松本作品の復刻を手がけた編集者の高崎俊夫氏は「八〇年代半ばから蓮實重彦氏の表層批評が大きな影響力をもったが、若い世代はそれ以前の歴史意識が薄い。どちらがいいというのではなく、戦後の映画批評の変遷を知らなければ、蓮實批評が現れた背景もわからない」と語る。同氏は五〇―七〇年代の花田清輝の映画論集も編集中で、近く清流出版から刊行される。

■2007/04/01, 日本経済新聞 朝刊, 24ページ

松下ウェイ―内側から見た改革の真実
松下ウェイ―内側から見た改革の真実フランシス・マキナニー

ダイヤモンド社 2007-02-17
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おすすめ平均 star
star一連の企業改革の理論的な裏づけ

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「破壊と創造」を掲げ、松下電器産業を立て直した中村邦夫前社長(現会長)。本書は経営コンサルタントから見た松下復活の軌跡である。著者は米国駐在時代の中村氏と知り合って以来、松下が当時抱えていた問題点を辛らつに指摘しながら、経営改革への助言を続けてきた。中村氏や経営幹部の思い、決断を克明に描写するとともに、情報化時代に企業が生き残るための経営理論も提示している。沢崎冬日訳。

■2007/04/01, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

ネットワーク・パワー―情報時代の国際政治
ネットワーク・パワー―情報時代の国際政治土屋 大洋

NTT出版 2007-01
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おすすめ平均 star
star独自のスタンスは何処にあるのか?

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米国でインターネットの商用化が始まったのは約十五年前だが、国防総省が開発したこの通信技術により、米国は世界のIT(情報技術)革命をリードし、再び求心力を高めることに成功した。本書は国際関係と情報通信を専門とする若手の学者がネットワークが生む覇権について分析した。ネットワークの概念についてはインターネットに限らず、海運や航空など伝統的な伝達手段にも言及しており、これを読むと日本がとるべきIT戦略の方向性がうかがえる。

■2007/04/01, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

若き数学者への手紙
若き数学者への手紙イアン・スチュアート 冨永 星

日経BP社 2007-03-01
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star生き生きとした数学を極める職業としての「数学者」像を提示

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なぜ数学を学ぶのか。数学の面白さはどこにあるのか。著名な数学者が、数学を志す知人の娘への書簡集という形式で生き生きと語る。娘の高校時代から始まる書簡は、彼女が大学の終身教授職に就くまで続く。学問の手ほどきから、後輩数学者へのアドバイスなど話題はページを繰るごとに広がり、数学の世界の奥深さが示される。数学者の発想や、社会の様々なところに数学が応用されている様子がよく分かる。冨永星訳。

■2007/04/01, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

変死するアメリカ作家たち
変死するアメリカ作家たち坪内 祐三

白水社 2007-02
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米国文学に造詣の深い著者が、ハリー・クロスビーら日本では無名に近い五人の生涯に、端正な筆致で迫った。自殺や失踪(しっそう)といった「変死」の描写にスポットを当てたわけではない。各作家が生きた時代背景、影響を受けたヨーロッパの文壇などに触れ、死を選ぶまでの心情を追うことで、米国文学の裏面史を描き出す。初稿は一九九一年に発表され、十年以上を経て単行本化された。一九二〇―六〇年代の米国文学への思い入れが行間からもにじむ。

■2007/04/01, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

なんでそーなるの!―萩本欽一自伝
なんでそーなるの!―萩本欽一自伝萩本 欽一

日本文芸社 2007-02
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一九六六年に坂上二郎と「コント55号」を結成して一世を風靡し、その後「欽ドン」「欽どこ」など高視聴率番組を手掛けた欽ちゃんの自叙伝。浅草でのコメディアン修業時代や家族とのエピソードは温かくもほろ苦く胸を打つ。今やクラブ野球チームの監督として野球界に新風を吹き込んでいる欽ちゃん。六十五歳にしてこの“夢見る力”、脱帽だ。「野球とコメディアンてすごく近い」という。そのココロは、ともに「ため」と「間」が大事。

■2007/04/01, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

宗教と現代がわかる本 2007 (2007)
宗教と現代がわかる本 2007 (2007)渡邊 直樹

平凡社 2007-03
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二〇〇六年に国内外で起きた宗教に関する出来事や現象を取り上げ、背景と問題点を解説する『宗教と現代がわかる本 2007』が平凡社から刊行された。養老孟司氏と中沢新一氏の対談や高村薫氏らのインタビュー、宮崎哲弥氏や香山リカ氏らの寄稿などで構成する。責任編集は渡辺直樹・大正大教授。巻末には重要人物の発言などをまとめた。

■2007/04/01, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

岩石と宝石の大図鑑―岩石・鉱物・宝石・化石の決定版ガイドブック
岩石と宝石の大図鑑―岩石・鉱物・宝石・化石の決定版ガイドブックロナルド・ルイス・ボネウィッツ 青木 正博

誠文堂新光社 2007-03
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自然界に存在する鉱物、岩石、宝石などを写真で紹介した『ROCK and GEM 岩石と宝石の大図鑑』(誠文堂新光社)が刊行された。世界各国で翻訳された図鑑の日本語版。宇宙や地球の生成から始まって、鉱物の鑑定法や科学的分析、宝石の採掘、カット手法などを詳しく紹介した。植物や無せきつい動物などの化石の図解にも多くのページを割いた。青木正博訳。

■2007/04/01, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

チャップリン・未公開NGフィルムの全貌
チャップリン・未公開NGフィルムの全貌大野 裕之

日本放送出版協会 2007-03
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映画『独裁者』を九歳のときテレビで目にし、喜劇王チャーリー・チャップリンに魅せられた。以来「好きの一念」で現存八十作品を「数えきれない」ほど見、関連書籍や一次資料に手当たり次第あたり、親族やゆかりの人、研究者を海外に訪ね、秘密主義を貫いたチャップリンの創作過程を解き明かそうとしてきた。

本書は英国映画協会(BFI)保管のチャップリンの未公開NGフィルムを完成版と見比べ、世界的に名を成すキャラクター「放浪紳士チャーリー」誕生の軌跡をたどった。ロンドンのBFI映写室で見たNGフィルムは全部で約六千九百テイク。完成版では使われなかったショットやシーンを収めた〇・五秒から三分のフィルム群だ。

最初映写機にかけたのは『チャップリンの冒険』(一九一七年)のテイク。海を泳いで逃げてきた脱獄囚チャーリーが、岩場でワカメを毛布代わりにして寝るギャグが映し出された。「素晴らしいアイデアでも、納得できなければ惜しげもなく捨てる。聞きしに勝る完全主義者ぶりにのっけから驚いた」

結局、大学院生だった一九九九年から冬と夏にそれぞれ一カ月ほど計六回ロンドンに滞在、朝から晩までBFIの映写室で過ごした。

未公開NGフィルムをすべて見たのは世界で三人。「スタジオの片隅で映画製作を見学させてもらう気分を味わえた」。ただし、チャップリンの完全主義者ぶりを目の当たりにしたればこそ、「BFIと交渉を始めて十年来の仕事もテイク・ワンとし、研究のさらなる完成版を求めたい」と意気込む。

材料はある。チャップリン家所蔵の二十万枚にのぼる未公開書簡や写真、構想メモ類だ。閲覧の許可は既に得ている。目指すは「チャップリンの伝記」と言う。

(おおの・ひろゆき)1974年大阪府生まれ。京大大学院博士課程修了。日本チャップリン協会会長、ミュージカル劇団「とっても便利」代表、大阪市大特任講師。

■2007/04/01, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

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