メイン > 日経新聞日曜版『読書』 > 2006年7月9日~7月16日

がん遺伝子は何処から来たか?
がん遺伝子は何処から来たか?J・マイケル・ビショップ 大平 裕司

日経BP社 2004-09-23
売り上げランキング : 2683

おすすめ平均 star
star微生物学者の楽しい本

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日本のがん医療を問う
日本のがん医療を問うNHKがん特別取材班

新潮社 2005-12-20
売り上げランキング : 171379


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がんに負けない、あきらめないコツ
がんに負けない、あきらめないコツ鎌田 實

朝日新聞社 2006-03
売り上げランキング : 2442


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がんを友に生きる―空蝉橋を渡ったジャーナリスト
がんを友に生きる―空蝉橋を渡ったジャーナリスト松井 寿一

元就出版社 2005-11
売り上げランキング : 2188


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あなたのためのがん用語事典
あなたのためのがん用語事典日本医学ジャーナリスト協会

文藝春秋 2004-08-21
売り上げランキング : 201236

おすすめ平均 star
star学生や医療関係者のためにも

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「がん」に関する本には五種類ある。第一はがん発生・発症の仕組みを解説したものやそれに取り組んだ研究者の物語である。がんは遺伝子の“乱れ”によっておきるので、これにはがん遺伝子にかかわる本が多い。

第二はがん治療に携わる医師による啓発書である。エッセーも含まれる。第三はがんにかかった人の「闘病記」であり、第四はジャーナリストたちががん医療を追ったルポである。そして第五の範疇(はんちゅう)に入るのが、病院の紹介やがん治療法などのハウツーものであろう。

がんの発症の仕組みを述べた本は学術書としては貴重であるが、一般の人が読むにはちょっときつい。その中でJ・マイケル・ビショップ著の『がん遺伝子は何処から来たか?』(大平裕司訳、日経BP社・二〇〇四年)は比較的手軽に読める。

●基礎から臨床まで

原題は「How to Win the Nobel Prize(ノーベル賞をとるには)」と、邦題とは異なる。ただ、著者は発がん遺伝子の研究で一九八九年にノーベル生理学・医学賞を受けた著名な研究者であり、「がんの秘密を探る」の章があるようにがんの基礎研究から臨床までを概観できる。

また、感染症と抗生物質、遺伝子治療などの生物医学の最前線を知ることができるほか、進化論論争や科学研究費、科学と社会の関係など広い視野で科学を見渡すこともできる。

NHKがん特別取材班による『日本のがん医療を問う』(新潮社・二〇〇五年)は良質のルポルタージュである。二〇〇五年の春に放映されたものの出版化である。テレビの医療、健康番組では紋切り型の表現や事実誤認がしばしばみられるが、この本では非常に少ない。全国各地からエピソードを拾い上げ、日本のがん医療が抱える問題点も浮き彫りにしている。

ただ、日米を比較して彼我の差を述べるという手法にはやや違和感を覚える。確かに日本のがん医療には遅れている点は多い。検診や患者登録制度などがそうである。しかし、米国の最先端の治療に比べると見劣りするものの、全体として日本のがん医療はそんなに悪いものではないと思う。米国のよい面と日本の悪い面を強調するという手法からそろそろ脱却してはどうか。もちろん、米国から学ぶべき点は多いのだが……。

専門医によるわかりやすい解説も読みごたえがある。国立がんセンターの垣添忠生総長が書いた『がんを防ぐ』(主婦の友社・二〇〇六年)はその一つだ。がんにならないための予防やがんの死亡率を減らすにはどういった方法があるかなどを具体例を挙げて述べている。

鎌田実著『がんに負けない、あきらめないコツ』(朝日新聞社・二〇〇六年)はがん患者との往復書簡と遺伝子研究や免疫学の専門家との対談で構成している。中の「がんに負けないための発想の転換七カ条」の第四条には「希望を持ち続ける」とあり、「冷たい余命告知を受けても負けてはいけません。未来のことはわからないのです」と書かれている。著者の持論(?)である「頑張らないけどあきらめない」のがん治療版であろう。

●克服した体験記も

日本では毎年三十二万人ががんで亡くなっている。ただ、がんを克服した人はもっと多い。そうした人の闘病記もたくさん出ている。松井寿一著の『がんを友に生きる』(元就出版社・二〇〇五年)や、藤田憲一著『末期ガンになったIT社長からの手紙』(幻冬舎・二〇〇六年)はその代表だろう。

前者は薬業時報社の元編集局長である医療ジャーナリストの手になるものだ。胃がんの手術を受けて十一年になるが、「男はつらいよ」の寅さんファンクラブ会長をつとめるなど「病気も笑い飛ばす」愉快な人生をおくっている。

後者の著者は一九七〇年生まれ。三十三歳でがんを発症し、現在も闘病中で、告知の問題にも触れている。

がんのABCを知るには日本医学ジャーナリスト協会編著『あなたのためのがん用語事典』(文春新書・二〇〇四年)や、小川一誠・田口鉄男監修『がんの早期発見と治療の手引き 第3版』(小学館・二〇〇五年)が参考になることを付け加えておこう。

■2006/07/16, 日本経済新聞 朝刊, 21ページ

とっておきの東京ことば
とっておきの東京ことば京須 偕充

文藝春秋 2006-06
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円生や志ん朝の落語CDプロデューサーで、江戸っ子の著者がつづる東京下町ことばの神髄。「有り体に言えば」が「正直言って」となり、今や「ぶっちゃけた話」に。何とも「不衛生なことば」と一刀両断。「冥(みょう)利(り)が悪い」「おやかましう」など風情あることばから、東京人気質が映し出される。

■2006/07/16, 日本経済新聞 朝刊, 21ページ

楊家将〈上〉
楊家将〈上〉北方 謙三

PHP研究所 2006-07
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楊家将〈下〉
楊家将〈下〉北方 謙三

PHP研究所 2006-07
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日本では翻訳版さえ出ていなかった中国の人気歴史物語を、「三国志」「水滸伝」などを手がけた著者が再構築して小説にした。主人公は、軍人一家の長である楊業と彼の七人の息子たち。戦乱の中に描かれる英傑の人生と、好敵手たちの人間的な魅力が印象的だ。吉川英治文学賞の受賞作。

■2006/07/16, 日本経済新聞 朝刊, 21ページ

「失われた十年」は乗り越えられたか―日本的経営の再検証
「失われた十年」は乗り越えられたか―日本的経営の再検証下川 浩一

中央公論新社 2006-04
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おすすめ平均 star
star終章がよい
star経営学者による「失われた十年」論
starコンパクトに纏められた本です

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バブル崩壊後の不況に際し、企業が行った日本的経営の否定を経営者の焦りだったと著者は指摘する。その上で過剰なまでに繰り広げられた一連のリストラは収益改善に貢献したものの、企業の活力をそいだマイナス面の方が大きかったと総括する。今後の課題として企業の中間管理層の意見に目配りすることが重要になるという著者の論は、企業を活性化する方策を考える上で興味深い。

■2006/07/16, 日本経済新聞 朝刊, 21ページ

美瑛の大地 The earth of Biei―阿部俊一写真集
美瑛の大地 The earth of Biei―阿部俊一写真集阿部 俊一

東方出版 2006-07
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この季節になると旅行会社の印刷物などで必ず目にする北海道美瑛町の丘陵写真。暑く狭苦しい都市で暮らす人間には、広大な自然と農地の織りなすその空間の開放感と清涼感、鮮やかな彩りは別世界のものに感じられる。関西出身の写真家である著者もそんな風景に魅せられ、美瑛に拠点を移した。6年目にしてまだ「飽きたと感じたことは一度もない」そうだ。

■2006/07/16, 日本経済新聞 朝刊, 22ページ

栄家の血脈―激動の大陸を疾走する赤い資本家の誓い
栄家の血脈―激動の大陸を疾走する赤い資本家の誓い王 曙光

東洋経済新報社 2006-06-01
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「赤い資本家」と称され、昨年死亡した栄毅仁・元中国国家副主席を中心に栄家一族の数奇な運命とその功罪を、豊富な取材をもとに描いた力作。政治と経済の特権層が結託して国の富を占有する、中国社会の現状を理解する格好の手掛かりともなる。

激動の中国現代史においても、栄ファミリーほどドラマチックな浮き沈みを経験した一族は珍しい。二十世紀前半には紡績や製粉で中国最大財閥にのし上がったものの、共産革命によって一族は世界各地に離散した。

中国に残った四男の栄毅仁は共産党に忠誠を誓い、紡績工業省次官などの要職を歴任した。しかし文化大革命では紅衛兵の暴行で片目を失い、長男の智健は辺境に追われるなどの辛酸をなめる。

文革後、毅仁は鄧小平の全面的な擁護を受けて、政府直属の中国国際信託投資公司(CITIC)を設立。十四年にわたり董事長(会長)として活躍後、功績を評価され一九九三年に国家副主席に就任した。一方、智健は文革後、香港に渡り、事業を立ち上げて中国一の富豪となる。

以上が簡単なあらましだが、本書は単なる栄一族の成功物語ではない。その背景には(1)毅仁が党・政府や軍幹部を金や地位で取り込み、政治特権を利用して事業を進めた(2)智健の投資ビジネスは父の権勢やインサイダー情報に大きく依存していた――ことなど、負の側面にもしっかり目を向けている。

■2006/07/16, 日本経済新聞 朝刊, 22ページ

日本のポップパワー―世界を変えるコンテンツの実像
日本のポップパワー―世界を変えるコンテンツの実像中村 伊知哉 小野打 恵

日本経済新聞社 2006-05
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日本が「失われた十年」といわれた間に、実は日本の国際競争力が着実に高まった分野がある。マンガ、アニメ、ビデオゲームなどの娯楽産業だ。本書はこうした若者文化を「ポップカルチャー」と呼び、どうすれば新しい産業として発展させられるかを研究した報告書である。

米ハーバード大学のジョセフ・ナイ教授は、軍事力によらない国際的影響力を「ソフトパワー」と呼んだが、日本のアニメやゲームもまさに立派なソフトパワーだ。今や海外で「ポケモン」や「ドラえもん」を知らない子供は少ないし、アニメの主人公のように着飾る「コスプレ」も若者の間で流行している。

日本のポップカルチャーが生まれた背景には、経済の高度成長から安定成長への転換があるが、それを支えたのがいわゆる「オタク」の出現だったと本書は指摘する。こうした新しい若者層を日本では否定的に見る向きもあるが、彼らのこだわりが世界の若者の気持ちもとらえた。

問題はそうした日本の娯楽文化が世界で注目されながら、供給基盤があまりにも脆(ぜい)弱(じゃく)なことである。戦後、世界の大衆娯楽をリードしたのは米国だが、その背後にはハリウッドのような強固な産業基盤があった。

日本もこの分野で競争力を高めるには新たな国家戦略が必要だというのが本書の趣旨である。豊富なデータを集めており、興味深く読める本である。

■2006/07/16, 日本経済新聞 朝刊, 22ページ

史上最強のオペラ
史上最強のオペラジョゼフ・ヴォルピー

ぴあ 2006-06-20
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今から四十三年前、舞台作りの仕事をしたいと、ニューヨークの劇場雇用者組合の入会試験を受けたイタリア系の若者がいた。名はジョセフ・ヴォルピー。本書は、十六年間務めたニューヨーク・メトロポリタン歌劇場総支配人の任を今年終えるその人自ら筆を執った半生伝である。

生きざまが綴(つづ)られる中で明らかになるのは、歌手やオーケストラを除いても数百人のスタッフを擁する巨大なオペラハウスの舞台裏だ。世界のオペラハウスで、彼ほど舞台裏を知り尽くした支配人はいないはずだ。大道具係からたたき上げた人物だからである。「裏方の経験は、オペラハウスのすべての仕事の理解に役立ち、運営の礎になった」と彼は語っている。オペラはすぐれた歌手、指揮者、オーケストラ、演出家がいるだけでは成り立たないのだ。

スター歌手を巡って実際に起こる「ドラマ」の記述にも事欠かない。日本でも人気のあったソプラノ歌手、キャスリーン・バトルに引導を渡したのはなぜか。リハーサル中、撮影しない約束だったソプラノ歌手、カリタ・マッティラのヌードシーンにシャッターを押したカメラマンにどう対処したか。テノール歌手、ルチアーノ・パバロッティが急病で舞台に立てなくなったとき、ヴォルピーはいかにして歌手目当てに来た観客と向かい合ったか。華やかなオペラハウスの表裏を多様な角度から語った一冊だ。佐藤真理子翻訳監修。

■2006/07/16, 日本経済新聞 朝刊, 22ページ

日・中・韓のナショナリズム―東アジア共同体への道
日・中・韓のナショナリズム―東アジア共同体への道松本 健一

第三文明社 2006-05
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不安型ナショナリズムの時代―日韓中のネット世代が憎みあう本当の理由
不安型ナショナリズムの時代―日韓中のネット世代が憎みあう本当の理由高原 基彰

洋泉社 2006-04
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おすすめ平均 star
star東アジアのナショナリズムをグローバリゼーションの中に位置づける試み
star新しい視角からの分析が光る
star面白い!!

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現代日本の「ナショナリズム」のあり方を問う著作の刊行が相次いでいる。首相の靖国神社参拝に対する中韓の批判や竹島などの領土問題に、日本の国家や国民は改めてどう向き合えばよいのか。具体的な問題のありかを反映し、東アジアの国際関係の中で日本のナショナリズムを特徴づけ、進むべき道を示そうとする論考が目立つ。

六月に出版された松本健一著『日・中・韓のナショナリズム』(第三文明社)。戦前戦後の日本のアジア主義などに関する研究を積み重ねてきた著者が、東アジア三カ国のナショナリズムの実態を平易な言葉で解説している。  靖国、領土、歴史教科書、憲法改正の四つの問題について、日・中・韓の主張が具体的にどう対立しているかを示す多角的な視点が特徴だ。例えば靖国問題。合祀(ごうし)されている東京裁判のA級戦犯を、日本では米英との帝国主義戦争に負けた戦争指導者とする考え方が強い一方、中国側はあくまで侵略戦争の責任者としてとらえていると指摘。この認識のギャップこそが対立の源と分析している。

「現状では日・中・韓とも政治が内にこもりすぎ。外との対話の回路が失われている」と松本氏。実現まで時間がかかるにしても、ナショナリズムに基づく各国の主張を調整する常設機関の設置が必要と説く。

中国で昨年起きた反日暴動、日本のインターネット上で広がる「嫌韓、嫌中」の主張。主に若者世代に着目し、ナショナリズムを新たな角度からとらえ直した研究も現れた。一九七六年生まれの社会学者、高原基彰氏が四月に出した『不安型ナショナリズムの時代』(洋泉社新書y)。日中韓のネット世代で目立つナショナリスト的な主張は「左右対立」といった旧来のイデオロギー的な発想ではなく、雇用不安や階層分化など若年層が直面する国内問題のはけ口として機能していると分析している。

雑誌では「中央公論」「文芸春秋」「論座」といった月刊総合・論壇誌が、七月号で相次ぎ「愛国心」や「国家」についての特集を組んだ。経済のグローバル化が進んだといえ、東アジア各国が抱える問題をあぶり出すカギとして、ナショナリズムへの関心は今後も続きそうだ。

■2006/07/16, 日本経済新聞 朝刊, 22ページ

子ども兵の戦争
子ども兵の戦争P.W. シンガー Peter Warren Singer 小林 由香利

日本放送出版協会 2006-06
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アフリカやアジアなどの様々な内戦や紛争で子供たちが武器を手にして殺りくの加害者になり、被害者になっている。多くは貧困層や難民の子だ。拉致や脅迫によって組織化され、生き延びるために兵士になる。「子どもの権利条約」など国際法で禁じても、深刻な事態が続く。国家の破綻、人口爆発と貧困、カラシニコフ銃など兵器の入手しやすさ……。多くの証言を織り交ぜて現代世界の病巣を示した本だ。小林由香利訳。

■2006/07/16, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

自治体崩壊―経営感覚なき組織の行く末とは
自治体崩壊―経営感覚なき組織の行く末とは手島 皓二

PHP研究所 2006-06
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北海道夕張市の財政再建団体申請で少なからぬ自治体で現実味を帯びる財政破綻の危機。経団連事務局職員、衆院議員秘書、ベンチャー企業役員などを経て現職市議という異色の経歴の著者が自治体財政にメスを入れる。首長、地方公務員の責任はもちろん、地方議会・議員のずさんなチェックもやりだまに。著者の言葉を借りれば「品がない」「宴会屋」「タダ視察旅行」といった批判が強い議員と当局のやりとりを描きながら、経費削減の構造的な難しさと方策を提案する。

■2006/07/16, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

大丈夫か、日台関係
大丈夫か、日台関係内田 勝久

産経新聞出版 2006-05-25
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おすすめ平均 star
star日台関係はなぜ重要なのか

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著者は日本の台湾代表部である交流協会台北事務所の所長を二〇〇二年から三年間勤めた職業外交官。親日的な台湾社会に深く共感し、日台交流の促進に尽力するが、事あるたびに中国やその圧力を受けた日本外務省と台湾の間で板挟みに悩む姿が生々しく描かれている。日台断交以来三十二年ぶりに台湾で再開した天皇誕生日祝賀会や、二〇〇四年末の李登輝前総統訪日のいきさつなどが興味深い。

■2006/07/16, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

Lady,GO
Lady,GO桂 望実

幻冬舎 2006-07
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ベストセラー小説『県庁の星』の作家による最新長編。二十三歳の南玲奈は自分のことを好きになれない。恋人に振られ、仕事もうまくいかず、生活に困ってキャバクラに勤めることになる。「顧客管理」や「営業努力」で成績トップに躍り出た女性や、女性研究を趣味とする敏腕店長、店が雇っているオカマのスタイリストなど個性豊かな面々との出会いを通じて、自信を持つようになる。気弱だった玲奈が変身していく様子に元気づけられる。

■2006/07/16, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

「ゼンカイ」ハウスがうまれたとき
「ゼンカイ」ハウスがうまれたとき宮本 佳明

王国社 2006-07
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一九九五年の阪神大震災によって「全壊」と認定された生家を、建築家の著者はあえて災害の傷を残したまま修復して住み続ける道を選ぶ。名付けて「ゼンカイ」ハウス。住まう者にとって建築とは「記憶の器」でもあると著者は言う。修復の意思さえあれば「モノはどんなにコワレたとしても無用にはならない」。実体験に基づく主張に説得力があり、建築が都市にかかわる視点を明確にする。ほかに震災後十一年間の論考を収めている。

■2006/07/16, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

ライブドア監査人の告白
ライブドア監査人の告白田中 慎一

ダイヤモンド社 2006-05-26
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おすすめ平均 star
starプロフェッショナリズムと当時の心境
star会計士としての信念に感銘
starカッコよく書きすぎでは・・・

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ライブドアの粉飾事件に関しては、情報洪水と感じるほど多くの報道がなされてきた。だが、何が起きたかについて当事者が詳細に語った本はこれまで世に出ていなかった。本書は当事者による本としては第一号といえる。

著者は、ライブドアの会計監査を担当した港陽監査法人に所属。港陽出身の会計士二人は粉飾に関与したとして検察当局に起訴されたが、著者本人は起訴を免れた。問題の決算期を担当していなかったためだ。ただ、事件を未然に防げなかった責任を感じ、自主的に会計士の資格は返上するという。

当事者による記述であるだけに内容は臨場感あふれる。事件直後については、逮捕されるのではとの不安にかられながら、検察当局にパソコンやシステム手帳を取り上げられるシーンなどを披露。「悪いことは何もしていない」との自信はあっても、当局が事件を“作り上げる”という国策捜査も頭をよぎったという。

もちろん、ライブドアでどんな形で会計処理が行われていたのかについても、港陽のパートナーとして目撃したり、体験したりした立場から振り返る。同僚パートナーがライブドアに対して厳しくなれず、不透明な会計処理を許した経緯も記している。

テーマが複雑極まりない粉飾の仕組みに関係するため、内容が専門的になる部分はある。しかし、題材は話題性抜群のライブドア事件で、それを会計士としての当事者が実体験に基づいて書いていることから、会計の解説書を読まされているような退屈さはない。

難点は、逆説的だが著者が当事者であるということだ。著者はライブドアの堀 江貴文前社長ら幹部に向かって「監査人を降りる」と強く出て、問題含みのファンドを解散させて会計処理を適正化させたという。それが事実でも、「努力したが粉飾は防ぎようがなかった」と自己弁護しているように読めてしまう。

ただ、その部分を割り引いても本書の価値は損なわれない。事件は「村上ファンド」へ発展し、日銀総裁まで巻き込むほどの広がりを見せている。当事者がきちんと記録を残すことで、事件から何らかの教訓を得ることも可能になるのだ。

▼たなか・しんいち 72年生まれ。港陽監査法人ベンチャーサポート部パートナー。

■2006/07/16, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

森林はモリやハヤシではない―私の森林論
森林はモリやハヤシではない―私の森林論四手井 綱英

ナカニシヤ出版 2006-05
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九十四歳の林学者がここ十年ほどで書いた文章を一般向けにまとめた。七十年以上の研究に裏打ちされた文章は、いずれも森林や自然保護への思いに貫かれている。「本を出すのもこれで最後かもしれない。言いたいことを一冊に集約しておきたかった」という。

「森」は本来「深」と同義の形容詞であり、「森林」とは「深い林」のことである――。森林という言葉の誤解を解くことが表題の趣旨。同様に、本書のどのページを繰っても「森林について、読む人を啓発していきたい」との情熱が行間にあふれている。

例えば「山に緑さえあればいい、というのでは駄目。無計画な植林は環境破壊でしかない」。日本の山林は材木の生産を主眼にし、植林されるのは針葉樹ばかり。保水力が弱く、表層土が流れやすい。「ヒノキを三代植えれば表土の養分が乏しくなってマツしか生えなくなるし、自然災害にも弱くなる」等々、問題点を丁寧に指摘する。

京都・山科の自宅の裏庭で動植物の観察を三十年以上続ける。鳥やチョウは減り、モグラやドブネズミは姿を消した。「多様性の維持こそが自然保護の根本。様々な樹齢や大きさの針葉樹と広葉樹が混交してこそ、優れた森林」という。

中学から大学まで山岳部に所属。山登り好きが高じ大学で造林学を専攻した。京都を拠点に研究を続け、「里山」「森林生態学」などの概念を流布した。健脚を誇り、昨年まで北山などの山林を歩き回っていた。

今年から体調を崩し、自宅で療養中。ベッドで半身を起こし、酸素吸入器をつけながらインタビューに答えてくれた。本書の刊行後、「京都や滋賀でナラの木が激減していることをまだ書いていないことに気づいた。他にもまだ言っておきたいことがたくさん出てきた」。病床で筆を執る日々が続く。(ナカニシヤ出版・二、〇〇〇円)

(しでい・つなひで) 1911年京都府生まれ。京大農卒。現在の林野庁、京大教授や京都府立大学長などを歴任。京大名誉教授。著書に『森林』『森の生態学』など。

■2006/07/16, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

ネット株の心理学
ネット株の心理学小幡 績

毎日コミュニケーションズ 2006-06
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おすすめ平均 star
star行動ファイナンス論的視点からのデイトレーダーの評価は面白い
starネットで買いました
star株式投資の初心者から中級者はぜひ読むべきです

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オープンソースがなぜビジネスになるのか
オープンソースがなぜビジネスになるのか井田 昌之 進藤 美希

毎日コミュニケーションズ 2006-06
売り上げランキング : 30191

おすすめ平均 star
starちょっと題名と違う印象が・・・
starオープンソースとハッカーの実情が解かる本
starオープンソースの,過去,現在,未来

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ネット犯罪から子どもを守る―被害者にも加害者にもしないために親がすべきこと
ネット犯罪から子どもを守る―被害者にも加害者にもしないために親がすべきこと唯野 司

毎日コミュニケーションズ 2006-06
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IT(情報技術)とビジネス、経済、社会の関係をわかりやすく解説する新書シリーズ「MYCOM新書」(毎日コミュニケーションズ)が刊行された。パソコン関連書籍を出してきた実績を生かす狙いがある。第一弾として、小幡績『ネット株の心理学』、井田昌之・進藤美希『オープンソースがなぜビジネスになるのか』、唯野司『ネット犯罪から子どもを守る』の三冊を発売。

■2006/07/16, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

日本の祭り文化事典
日本の祭り文化事典星野 紘 芳賀 日出男 社団法人 全日本郷土芸能協会

東京書籍 2006-07-01
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日本全国の祭礼について解説する「日本の祭り文化事典」(東京書籍)が刊行された。「相馬野馬追」「十津川の大踊」など国指定の重要無形民俗文化財を中心に、各都道府県に伝わる祭礼、芸能、約一千項目を収録。項目ごとに祭りの由来、行事の詳細、祭りを担う組織などを紹介する。監修は民俗学者の星野紘氏、民俗芸能の写真家である芳賀日出男氏。

■2006/07/16, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

日露戦争 もう一つの戦い―アメリカ世論を動かした五人の英語名人
日露戦争 もう一つの戦い―アメリカ世論を動かした五人の英語名人塩崎 智

祥伝社 2006-06
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日露戦争に日本が辛勝した裏には、当時の新興経済大国である米国の支持があった。本書は戦争中、米世論を親日に導いた五人の日本人の足跡を追う。芸術を通じて日本を擁護し続けた岡倉天心、鮮やかな弁舌で社交界の支持を得た金子堅太郎。英語を駆使して日本を語った明治人たちの気迫が伝わる。

■2006/07/09, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

三浦綾子創作秘話
三浦綾子創作秘話三浦 光世

小学館 2006-06-06
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デビュー作『氷点』から最後の『銃口』まで、作家三浦綾子の代表作十五編の舞台裏を創作活動を支えた夫がつづった。息子を殺害した犯人を許したある夫人の体験を知り、『続氷点』の「ゆるし」のテーマを深めていったことなど、名作の執筆動機を明かす。亡き妻の思い出を語る文章は優しさに満ちている。

■2006/07/09, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

ヤバいぜっ!デジタル日本―ハイブリッド・スタイルのススメ
ヤバいぜっ!デジタル日本―ハイブリッド・スタイルのススメ高城 剛

集英社 2006-06
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おすすめ平均 star
starITの次が分かる本!

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IT戦略でも、音楽や映像のコンテンツ戦略でも、経済力でも世界から後れを取りつつある日本。ならばどうすればいいかを考察する。現在の日本人の強み、新たな輸出文化を作り得る芽は、スタイリッシュさや、二つ以上の物事を並行して行うハイブリッドの能力であると提言する。一九九七年に書いた前著『デジタル日本人』で現在のメール社会を予告し、毎年地球十一・三周分も移動し続ける著者らしい視点だ。

■2006/07/09, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

大地の咆哮 元上海総領事が見た中国
大地の咆哮 元上海総領事が見た中国杉本 信行

PHP研究所 2006-06-22
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おすすめ平均 star
star上海事件は?

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中国を専門とする職業外交官が難問山積する現代中国や日中関係を縦横に論じた力作である。中国が抱える巨大な内部矛盾を鋭くえぐり出して反日運動の背景に迫る一方、民主化促進のためにバチカンとの関係正常化を急げと提言するなど大胆な分析と主張は興味深く説得力がある。

著者は外務省「チャイナスクール」の一員として中国、台湾で計十四年の駐在経験を有する。本書は一九七四年の北京留学から説き起こしているが、九八年からの北京での経済担当公使、二〇〇一年から〇四年までの上海総領事時代の六年余りの話が印象深い。

北京では政府開発援助の担当者として内陸農村など各地を訪問、「草の根無償資金協力」に情熱を注ぐ。上海では進出ラッシュの日本企業や駐在員のトラブル解決に粘り強く取り組む。著者の徹底した現場主義は企業関係者の間でも定評があった。本書の指摘や分析が説得力を持つのは、生の中国と切り結んだ豊富な実体験に裏付けられているからだろう。

浮き彫りになるのは途方もない内部矛盾である。北京から百キロ足らずの農村で、飲み水もままならない水不足。実質三十倍にまで拡大した都市と農村の所得格差。土地を追われ、難民化する農民。彼らをさげすむ上海の子供に対する農民の子供たちの「すさまじいまでの敵がい心」に、「将来の恐ろしい社会問題」を予感する。

上海に林立する高層ビルは「見栄えはいいが、もろい地盤に耐震性を考えずに建設され、エネルギー効率は悪く、エレベーターも少ない」。成長一辺倒で爆走する中国経済を象徴している。共産党政権が反日愛国主義運動を展開した背景に、こうした内部矛盾の矛先を日本に転化する狙いがあったことがおのずから理解されよう。

中国を救うには民主化を促すべきだが、著者はその媒介役としてバチカンに期待している。共産党政権が目を回しそうな提言だが、内部からの改革の芽は出るたびにつぶされてきた。

著者の上海総領事時代に館員が中国の特務機関に脅迫され、自殺するという悲劇があった。その著者自身が末期の肺がんと闘いながら本書を著したことに敬意を表したい。【編集委員 山本勲】

▼すぎもと・のぶゆき 49年生まれ。京大法卒。73年外務省入省。2001年、在上海日本国総領事館総領事。現在は日本国際問題研究所主任研究員を務める。

■2006/07/09, 日本経済新聞 朝刊, 23ページ

テレビ政治―国会報道からTVタックルまで
テレビ政治―国会報道からTVタックルまで星 浩 逢坂 巌

朝日新聞社 2006-06
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テレビの政治に対する影響力を知らされたのは一九六〇年の米大統領選挙でのケネディ、ニクソンの討論だったろう。ラジオで聴いた人は重厚なニクソンが勝ったと思い、テレビを見た人はさわやかな容姿のケネディが勝ったと思った。有名な話である。

それ以降、テレビと政治との関係を考えた本があまた出版された。政治記者と研究者との共著である本書もそのひとつである。記者はテレビの政治に対する影響を多角的に考え、研究者は地道にデータを集め、テレビ政治を社会学的に論じた。

テレビや政治に関心のある人には興味深い内容である。とりわけ記者がスケッチした歴史、研究者が蓄積したデータが簡潔な形でまとめられている点に意義があるが、テレビ政治を論じる作業が意味を持つ時代がいつまで続くのだろう。

政治に影響があるのはテレビだけではない。新聞を含めたメディア全体との相互作用によって動くのが民主政治であり、テレビだけを抜き出してそれを考えるのは木を見て森を見ない結果にもなりかねない。インターネットの政治に対する影響力も増大傾向にある。次なる分析対象になるだろう。

この半世紀の日本の政治家のなかでテレビを最も有効に使ったのが小泉純一郎首相だったのは争いがない。その視点から「小泉劇場」を分析した部分は面白いが、簡潔にすぎたのが残念な気もする。

■2006/07/09, 日本経済新聞 朝刊, 24ページ

霊的人間―魂のアルケオロジー
霊的人間―魂のアルケオロジー鎌田 東二

作品社 2006-04
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宗教、民俗学、日本思想と、幅広い分野で思索を続けてきた著者が、古今東西、人間存在の根源である魂とは何かを探求し続けた先学たちの姿を追った。

本書は欧州の西端、ケルト民族の地アイルランドから説きおこし、ヘッセ、ゲーテから本居宣長、平田篤胤らを経て、イエイツ、ラフカディオ・ハーンと再びアイルランドに立ち返る。地理・時代状況の違いゆえに各人が選んだ方法は様々ながら、その根底には文化や伝統の違いを超えた精神の「普遍的古層」を明らかにしようとする共通目標が潜んでいることを、著者は巧みな構成で示そうとする。

例えば江戸時代の日本に生まれ、国学者となった平田篤胤。著者は平田国学が「生まれ変わり」の記憶を持つ子供の調査など、折口信夫ら近代民俗学の先駆けとなる手法で「霊魂の行方」を探ろうとしたと指摘する。そうした態度は故国の妖精伝説などを援用しつつ、「日本的霊性」の物語を紡いだハーンらに一脈通じることも浮かび上がる。

著者は本居宣長の「もののあはれ」を引きながら、そこでの「モノ」とは単なる物質にとどまらず、「者」でもあり「霊」にもつながると強調する。そこから「二十一世紀の『もの』と自然と文明と人間との関係を再構築してみたい」と宣言する姿勢には、先人の業に学びつつ、この不透明な現代を生き抜く新たな「普遍的知恵」を探ろうとする意志が読み取れる。

■2006/07/09, 日本経済新聞 朝刊, 24ページ

西武争奪―資産2兆円をめぐる攻防
日本経済新聞社

有価証券報告書の虚偽記載発覚に端を発した西武鉄道グループの経営危機と中核会社コクドの株式所有権をめぐる争奪戦を扱ったルポ。虚偽記載発覚までを第一幕とすれば、その後の関係者の複雑な動きと「再編」決定までの第二幕を丹念に追っている。

不正発覚後、オーナーの堤義明氏は違法行為で起訴され有罪が確定する。その間、グループに多額の債権を持つ銀行団が再建の道を探る委員会(通称、諸井委員会)を設け、銀行主導での再編絵図を描く。一方、主力銀行から送り込まれた後藤高志氏(現西武ホールディングス社長)は諸井委員会と一線を画しながらも、堤家の影響力を薄めるという意味で銀行と同じベクトルの再編案を練り上げる。

その間、義明氏の二人の実弟による「コクド株には名義偽装株が多く、堤家の実際の持ち株を表していない」という主張は無視され、また複数の外資系金融機関が持ち込んだ最大二兆円の買収案も、採用されない。ドロドロした人間関係と「昨日の敵は今日の友」を地でいく目まぐるしい変遷はドラマチックだ。

巨大企業グループを実質個人商店として支配した義明氏の古い経営と、企業の合併・買収(M&A)の普及や情報開示への世間の厳しい目など日本の産業社会にとって新しい流れとの出合い、または衝突が、異例の複雑な騒動を生んだともいえよう。騒動は完全に決着しておらず第三幕も読みたいところだ。

■2006/07/09, 日本経済新聞 朝刊, 24ページ

上田義彦写真集 at Home
上田義彦写真集 at Home上田 義彦

リトルモア 2006-05-18
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おすすめ平均 star
star憧れ・・。
star長編映画のよう
star美しき「こどもの成長日記」

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むくな子供の笑顔とそれを見つめる母のまなざし。母子像が美しいのは、人間愛の普遍的な姿がそこに凝縮しているからだろう。被写体が元ファッションモデルの桐島かれんとその子供たち、撮影が夫であり父親である広告写真界の俊英なら、美しさはさらに別格。何気ない日常の中に「二度と見ることの出来ない、大事なほほ笑み」を写し込んだというが、一番ほほ笑んでいるのはたぶん撮影者本人だ。

■2006/07/09, 日本経済新聞 朝刊, 24ページ

書林逍遙
書林逍遙久世 光彦

講談社 2006-06-15
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今年三月に急逝した作家で演出家の著者が、忘れ得ぬ本についてつづっている。隠れファンだった太宰治の『お伽(とぎ)草紙』は、父親の蔵書にあった初版本を、小学五年生で読んだという。江戸川乱歩『人間椅子(いす)』に関しては、応接間にあったソファの腹を切り裂いて母親にしかられたとの思い出を記す。三島由紀夫『潮騒』を読んでからは、三島に「ずっと騙(だま)されっ放し」だったと振り返る。希代の読書家であった著者の本に対する深い愛情が伝わってくる。

■2006/07/09, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

ゴールデン・サイクル―「いざなぎ超え」の先にあるもの
ゴールデン・サイクル―「いざなぎ超え」の先にあるもの嶋中 雄二

東洋経済新報社 2006-05
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starデータ豊富、しかし。

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景気循環には三年程度の短いものから、六十年周期の長いものまで四種類あるが、著者によれば、今年は四つとも上向く年にあたるという。団塊世代の大量退職や高齢化の進展は、日本の成長のマイナス要因とされることが多いが、構造改革による公共サービスの自由化などが、民間の設備投資を喚起すれば、マイナスどころか、かえって大きなビジネスチャンスにつながる可能性が高いという。

■2006/07/09, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

信頼と自由
信頼と自由荒井 一博

勁草書房 2006-06-01
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おすすめ平均 star
star新古典派経済学を考える

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続発する事件や不祥事――。社会の至る所で信頼の崩壊が表面化している。その主因として著者が指摘するのが過剰な自由のまん延だ。私利を追求すれば社会はうまく機能すると多くの人が無邪気に考えすぎた結果、自由の暴走が起きたという。暴走を封じ込めるには、良質な文化に基づいて人間が行動する必要があるというのが著者の主張だ。ゲーム理論などを用いて丁寧に論を展開することで、単なる自由主義批判の書にはない魅力を持っている。

■2006/07/09, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

鬼と悪魔の神話学
鬼と悪魔の神話学吉田 敦彦

青土社 2006-04
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日本の鬼と西洋の悪魔。神話の中で悪を象徴する両者には、決定的な違いがある。「御伽(おとぎ)草子」の「一寸法師」に登場する鬼は、打ち出の小づちを置いて逃げることで福神になった。阿蘇地方には、今でも、鬼を土地に利益(りやく)をもたらす神に転じさせる祭りが続いている。一方、新約聖書の記述では悪魔は完全な悪であり、あくまで神の宿敵であり続ける。インド神話にも言及しながら、鬼が神に転じる日本固有の神話観を神話学の第一人者があぶりだす。

■2006/07/09, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

メディチ家の墓をあばく―X線にかけられた君主たち
メディチ家の墓をあばく―X線にかけられた君主たちドナテッラ リッピ クリスティーナ ディ・ドメニコ Donatella Lippi

白水社 2006-06
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ルネサンス期から十八世紀にかけて伊トスカーナ地方を治め、芸術の保護者としても知られるメディチ家。本書は二〇〇四年、フィレンツェのメディチ家地下墓所で実施された遺骸調査の経過を記した異色のドキュメンタリーだ。遺骨やミイラ化した皮膚などをX線で徹底的に調査。痛風、マラリアなどの感染症、はては毒殺が疑われる当主など、欧州でも有数の権勢を誇った一族が直面した、様々な生の姿が浮かび上がる。市口桂子訳。

■2006/07/09, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

現代に生きるケインズ―モラル・サイエンスとしての経済理論
現代に生きるケインズ―モラル・サイエンスとしての経済理論伊東 光晴

岩波書店 2006-05
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star伊東先生,ご健在!
starケインズとは何か?

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一九六二年、著者は名著『ケインズ』によりわが国におけるケインズ理解を飛躍的に高めた。四十有余年の歳月を経て刊行された本書は、同じ著者による辛口の批判の書である。

批判の矛先は二つ。一つは『一般理論』刊行(一九三六年)直後に書かれたヒックスの論文を礎として、戦後アメリカ・ケインジアンによって流布されたケインズ理解(通常IS・LMモデルと呼ばれる)に対する理論的批判。もう一つはそうした教科書的理解に基づく政策立案がいかに惨めな失敗に終わるか、「失われた十年」に象徴される、わが国における財政・金融政策に対する批判である。

ヒックスの『一般理論』解釈、すなわちIS・LMモデルに対する著者の批判については、評者は必ずしも全(すべ)て賛成というわけではない。貨幣の需給均衡式を「貨幣数量説」と呼び、その「特徴は定義式から因果関係を引き出すところにある」と根こそぎ批判するのはヒックスに少々酷なのではないだろうか。

しかし教科書に書いてあるモデルを鵜呑(うの)みにするとそこに大きな落とし穴がある事は、正(まさ)に著者の説くとおりである。例えば、貨幣数量が中央銀行によって左右できる「外生変数」であるとか、公共投資には安定した「乗数」つきの景気拡張効果があるといった考え方は、いずれもスタンダードなモデルに基づくものだが、現実の経済との距離は大きい。

貨幣数量は経済の動きを反映し、結果として決まる面を強く持っているし、公共投資は乗数過程を必ず生み出すわけでもない。教科書的な理論に対する盲信(もうしん)が、無駄な公共投資や政策効果のはっきりしない「量的緩和」などマクロ経済政策の迷走を生み出した。

このように主張する著者の真意が「歪(ゆが)められた」ケインズ経済学を正す所にあることは言うまでもない。実際世の中にはケインズ経済学とは公共投資のばらまきの事だと思っている人も沢山(たくさん)居るのである。著者が「時代錯誤の経済理論」と呼ぶ新古典派経済学との対比はやや専門的かもしれないが、マクロ経済学、そして日本の経済政策論争に関心を持つ人々によって広く読まれるべき書物である。【東京大学教授 吉川洋】

▼いとう・みつはる 27年生まれ。東京商科大卒業。京都大学名誉教授。著書に『ケインズ』など。

■2006/07/09, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

アメリカの文明と自画像
アメリカの文明と自画像上杉 忍 巽 孝之

ミネルヴァ書房 2006-06
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九・一一同時テロ後の米国が抱える課題を経済、環境、共同体などの視点で分析する「アメリカ研究の越境」(全六巻、ミネルヴァ書房)の刊行が始まった。既刊の第一巻『アメリカの文明と自画像』(上杉忍・巽孝之編著、三千五百円)は、世界に広まる米国的価値基準の源泉を、「宗教的使命感」「戦争」などを手がかりに探る。八月末の次回配本は第三巻『豊かさと環境』。以後、毎月刊行する。

平和の視点で人物をとらえ直した『平和人物大事典』(日本図書センター)が刊行された。近世初期から現代までの日本で、活動や著作などで平和を志向してきた政治家、財界人、作家など約二千七百名の人物解説を掲載。各項目は、平和に焦点を当てて記述されている。日本にかかわりの深い外国人も掲載対象。監修は、評論家の鶴見俊輔氏。

■2006/07/09, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

映画の中で出逢う「駅」
映画の中で出逢う「駅」臼井 幸彦

集英社 2006-05
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star映画より駅が好きな人に

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「終着駅」「ひまわり」の別れの場面。「ハリー・ポッター」の旅立ちの場面。映画の父リュミエールの映像作品から「千と千尋の神隠し」まで、古今東西の映画から「駅」のシーンばかりをピックアップして、物語の中での役割や建築構造、東西の鉄道事情などの薀蓄(うんちく)を語っている。言及する作品の数も駅の知識も半端ではない。もしや映画と鉄道の“ダブル”オタク?

実は著者は、JR北海道の開発事業本部長。駅と鉄道に関してはプロフェッショナルだが、映画の方は「若いころから好きだけど、オタクというほどではない」と笑う。

駅と映画について研究するきっかけは、JR札幌駅の再開発事業。著者はそのグランドデザインを手掛けた。民営化間もない二十年近くも前からこのプロジェクトに取り組み、自治体や地域住民、商業店舗などと粘り強く折衝を重ねてきた。「その過程で、市民が駅についてどういう思いを抱いているのかもっと知らなければと痛感した」

その一方で、駅についての講演を頼まれる機会も増え、「鉄道や建築の硬い話でも、映画を引き合いに語ると反応がいい」と気づく。人生の出発点として、別れと出会いの場として重要な役割を与えられている映画の駅を考えることは「無機物ではない、血の通った公共建築として駅を見直す格好の教科書」になった。

中でも、「駅を撮らせたら日本一」と絶賛する降旗康男監督の『駅 STATION』。殺人犯の死刑囚(根津甚八)が死刑執行の前日、主人公の刑事(高倉健)に辞世の歌を贈る。「暗闇の彼方に光る一点を、今、駅舎(えき)の灯と信じつつ行く」。「この歌に、安心感や信頼感など人々が駅に抱く思いの本質がすべて詰まっていると確信した」とか。新しい札幌駅には、人と映画から学んだ「駅への思い」が息づいている。

(うすい・ゆきひこ)1944年福岡県生まれ。京都大学大学院修士課程修了。旧国鉄を経て87年に北海道旅客鉄道へ。現常務開発事業本部長。著書に『駅と街の造形』。

■2006/07/09, 日本経済新聞 朝刊, 25ページ

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