日経ビジネス掲載の書評『新刊の森』(2005年掲載分)の紹介です。

メイン > 日経ビジネス書評『新刊の森』(2005年) 2005年10月24日~11月7日

卵でピカソを買った男 「エッグ・キング」伊勢彦信の成功法則
卵でピカソを買った男 「エッグ・キング」伊勢彦信の成功法則山田 清機

実業之日本社 2005-07-05
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おすすめ平均 star
star卵の安全が書いてあります

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鶏卵の生産・販売を手がけるイセ食品の伊勢彦信会長は、世界の「エッグ・キング」である一方、ピカソ、モジリアニ、マチスなど数々の名画の所有者でもある。“ミステリアス”な伊勢氏の人生から、成功の秘密を探る。

伊勢氏は富山で父から養鶏業を引き継いだ。ヒヨコの育種改良事業から採卵事業に拡大。委託養鶏の一種「ツリー・エッグ・システム」を立ち上げ、大成功を収めた。生産調整によって国内の事業拡大が望めなくなると米国に進出。4年で全米のトップに立った。

取材を重ねた著者は、伊勢氏の原点は差別や偏見なく、誰もが対等と考える姿勢だと指摘。誰にも依存せず、自分の足で立って生きる姿勢を貫き通した本物の個人主義者であることが成功を呼んだと結論づけている。

■2005/11/07, 日経ビジネス, 101ページ

ロジスティクス 経営と戦略
447837502Xアラン・ハリソン 水嶋 康雅

ダイヤモンド社 2005-09-08
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おすすめ平均 star
star理論でも実務でもなく中途半端

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著者が教壇に立つ英クランフィールド経営大学院でロジスティクスコースを学ぶ学生向けに編集した教科書第2版の訳書。企業経営の視点からロジスティクスの本質や役割を探る。

まず、ロジスティクス戦略と管理手法の基礎を説明する。マーケティング戦略上、忠実な顧客は新規顧客より多くの利点があることを指摘。顧客の期待を超える優れたサービスを提供して顧客の忠誠心を高めることがロジスティクスの課題であると主張する。

続いて、顧客の需要に対する応答性を高めるロジスティクス業務について解説する。国際的なロジスティクス管理、「ジャスト・イン・タイム」や「リーン思考」「俊敏なサプライチェーン」がどんな効果を発揮し、どんな影響を与えるかを紹介していく。こうしたロジスティクス業務は、多くの場合、ネットワークパートナーの協力なしには実現できないことから、サプライチェーンの統合、パートナーシップという視点で、ロジスティクスにおける“協働”を考察する。

最後にRFID(無線自動識別)システムなど最新の話題にも触れながら、ロジスティクスの将来の課題を示す。各章に演習問題や事例研究に基づく設問を豊富に掲載し、実践的に学べる内容となっている。

■2005/11/07, 日経ビジネス, 103ページ

170のkeywordによる ものづくり経営講義
4822244709東京大学ものづくり経営研究センター 高橋 伸夫

日経BP社 2005-09-02
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おすすめ平均 star
star自由闊達な「補講」が面白い
star良書。。

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東京大学経済学部の「ものづくり経営」講義の内容を基に、そのエッセンスをまとめた1冊。「競争戦略」「品質経営」「大量生産方式」など11分野に分け、ものづくり経営に関する経営用語を解説する。

重要度の高い用語を1ページ、それに関連する2~3の用語を1ページで説明する。2ページを読むと、その項目に関して、ある程度まとまった知識が頭に入るようになっている。例えば、「競争戦略」の中で取り上げる「市場シェア」の項目では、市場での売上比率に応じて、リーダー、チャレンジャー、ニッチャー、フォロワーなどの立場があることを説明。高い市場シェアを持ち、規模の経済や経験効果によるコスト優位を得ることができるリーダーは「コストリーダーシップ戦略」が成功しやすくなること、他社が成功の兆しを見せたら、すかさず「同質化戦略」を取り、規模の大きさでの勝負に持ち込むべきであることを指摘したうえで、それぞれの戦略についても解説を加える。

11分野の用語解説の終わりには「補講」のコーナーを設け、大学の講義やゼミで学生が質問し、それに教師が答えるような形で、議論を発展させている。経営学の入門書として、読みやすく、分かりやすい構成だ。

■2005/11/07, 日経ビジネス, 103ページ

第三の消費スタイル―日本人独自の“利便性消費”を解くマーケティング戦略
4889901183野村総合研究所 野村総研=

野村総合研究所広報部 2005-10
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おすすめ平均 star
star何も考えない消費スタイル、というのは新しい定義
starそりゃないよ野村さん

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日本の消費は高級志向と価格志向に2極化していると指摘されてきた。だが本書は、日本にはこのほかに、モノにも価格にもこだわりがなく、手軽に買えるから購入する「第3の消費スタイル」があることを指摘。その特徴を説明しながら、企業が取るべきマーケティング戦略を提案する。

まず定量データを基に、日本人消費者を徹底的に分析。値段は高くても自分のお気に入りにこだわる「プレミアム消費」、その反対に位置する「安さ納得消費」のほか、第3の消費スタイルである「利便性消費」、さらにはモノにも低価格にもこだわる「徹底探索消費」の4つがあることを示す。日本人は利便性消費を取る人の比率が35%と最も高く、この層を攻略できるか否かが市場での位置を決定づける。従来のマーケティングで重要だった製品(Product)、価格(Price)、販売チャネル(Place)、広告宣伝(Promotion)の4Pに、利便性(Convenience)を加えた「4P+1C」の追求が求められる。

郵送でやり取りできるレンタルDVDサービスを始めたカルチュア・コンビニエンス・クラブのグループ会社、駅前でブロードバンド(高速大容量)インターネット接続機器を配るソフトバンクなど、常識を覆す「プラスの利便性」を提供する事例を紹介する。

■2005/11/07, 日経ビジネス, 103ページ

義務教育を問いなおす
義務教育を問いなおす藤田 英典

筑摩書房 2005-07-06
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構造改革の大合唱の下、我が国は経済立て直しを最優先課題に据えて、新自由主義的競争原理を推し進めてきた。しかし、義務教育でさえその潮流に巻き込まれていくことに、教育社会学の第一人者である著者は危機感を抱く。本書では、教育の現場で着々と進行する習熟度別学習、エリート教育、成果主義的教員評価などの問題点をえぐり出して、警鐘を鳴らす。

とはいえ、加速するグローバル化や日本社会の変容は著者も認めるところであり、硬直的な旧来の制度はもはや通用しないと説く。しかし、国を挙げて推進してきた「ゆとり教育」は失策であったと言い、ましてやできる子や恵まれた家庭の子が優先される「強者の論理」に未来はないと訴えて、抜本的な改革の指針を論じる。

■2005/10/31, 日経ビジネス, 79ページ

学力の新しいルール
4163674802陰山 英男

文藝春秋 2005-09-09
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star衝撃だった  
star大事なことは変わらない

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■著者に聞く 陰山英男氏[広島県尾道市立土堂小学校校長] 学力低下は朝ご飯で防げ

「百ます計算」で有名な著者が、学力低下を招いた原因を改めて考察する。教育政策が激変する中で、保護者は何を信じて子供と向き合えばいいのか。“教育の常識”から逃れることが最善だと説く。

――「子供の教育にはカネがかかる」という通説を否定されています。

現在教育界で信じられている多くは、実は何の根拠もないということを保護者の方々に知ってほしい。それが本著を執筆した目的です。

例えば「東京大学は金持ちの子しか入れない」とまことしやかに語られていますが、事実は異なります。東大が公表している合格者の概要を見ると、最近では東大生の3人に1人が平均所得以下の家庭で育てられています。学力低下問題についても、「元凶はゆとり教育」と多くの人は信じていますが、原因はそれだけではありません。

そもそも学力低下は、京都大学の学生の学力が低下しているという指摘から始まっています。京大に受かるような学生は、小さい頃から激烈な受験競争をくぐり抜けてきたわけですから、ゆとり教育とは無縁のはずです。

つまり、学力低下問題は、勉強をしなくなって学力が低下した層と、勉強してきたにもかかわらず学力が低下してしまった層の2つに分けて考える必要があります。双方に共通している原因が、子供たちの生活が夜型化してしまったことだと私は考えています。

――朝ご飯をきちんと食べさせると学力が上がると主張されていますが、どうしてですか。

小学校に赴任してみて驚いたのは、とにかく朝からぼーっとしている子供が多かったことです。それで朝ご飯をきちんと食べているか聞いてみると、食べていないか、食べていてもパン食が多かった。それで保護者の方々に子供は夜更かしさせずに、毎朝ご飯とみそ汁をちゃんと食べさせてあげてくださいとお願いしました。

生活習慣を改善すれば子供は元気になります。そして「読み書き計算」の繰り返し学習を徹底させる。そうすれば子供の学力は必ず上がります。私は公募で選ばれ、2003年4月から広島県の尾道市立土堂小学校の校長を務めています。私の教育手法を全校で実施した結果、2年余りでテストの平均点が全国トップクラスになりました。

事情があるにせよ、親が夜遅く帰ってくるのは子供にとって良くない。親の帰りが遅くなれば必然的に家族の生活が夜型になってしまい、結果として子供の学力低下を招いてしまう。親御さんからすれば「子供を塾に入れるため必死に働いている」と言われるかもしれません。ただ、子供への愛情表現が高い学歴をつけることだけに特化してしまっているのであれば、それは寂しいことです。

――教師の質も問題視されています。

問題が深刻化するのはむしろこれからです。今の学校では40代後半の教師が約半数を占めるので、その人たちは今後10年間で退職していきます。その代わりに入ってくる新任教師はゆとり教育の時代に義務教育を受けた若者たちです。先日、ある有力な国立大学で教育学部の学生たちと話をする機会がありました。彼らに富士山の位置を尋ねてみたところ、1割の学生が正確な場所を知らなかった。教職に就こうという者が最低限の教養も身につけていない。思わず背筋が寒くなってしまいました。

原因は指導要領にあります。北海道から沖縄まで順番に教えるカリキュラムは小学校になく、中学校でも3つの県について学習するだけです。高校で日本地理は必修ではありませんから、最低限の教養も備わっていない大人が生まれてしまうのです。

陰山英男(かげやま・ひでお)氏
1958年生まれ。89年に小学校教諭となり、生活習慣の改善と「読み書き計算」の反復練習を柱に学力向上に取り組む。著書多数。

■2005/10/31, 日経ビジネス, 83ページ

産業活性化を担う プロジェクトマネージャー養成講座―東工大COE教育改革 PM編
4822232042丸山 正明

日経BP社 2005-09
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おすすめ平均 star
star成果は如何に?
star東工大における新しい試み
star企業側にも参考になる本

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技術立国日本の優位性をより強固にすべく文部科学省が推進する「21世紀COE(研究拠点)プログラム」。拠点の1つである東京工業大学大学院において実際に行われている研究開発者養成コースの講義を再現し、その成果を報告する。本書では「プロジェクト・マネージング(PM)」をテーマに据えて、将来を担う技術系の学生が、研究開発プロジェクトを自ら企画・立案し管理・運営する基礎力を養うための学習課程を紹介する。

我が国の研究開発の現場では、「基礎研究だから、研究期間に制限されることなく、真理を追究すればいい」という風潮がいまだに根強いと言う。端的に言えば、経営を理解しようとしない技術者が多いということだ。このままでは広義の研究開発能力という点で欧米に後れを取ると著者は指摘。我が国の理工系大学院では先駆的な試みとなる、「経営者と議論できる研究開発リーダーの育成」を行っている同大学院の取り組みを追う。PMコースで院生らは、実際の企業経営を例に、資源配分や財務的指標の意義など、会社経営の本質について学んでいく。

さらに、自らの提案の有効性を、関係者のみならず非専門家に対しても分かりやすくプレゼンテーションする法など、実践的な講義も紹介する。

■2005/10/31, 日経ビジネス, 81ページ

コトラーの資金調達マーケティング 起業家、ベンチャー、中小企業のための投資家獲得戦略
4569644651フィリップ・コトラー ヘルマワン・カルタジャヤ S・デイヴィッド・ヤング

PHP研究所 2005-08-25
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おすすめ平均 star
star天才コトラーがついに金融に
star悪書です。
star悪書です。

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マーケティングの世界的権威として知られるフィリップ・コトラー氏が、企業における資金調達の今日的状況を示し、それを成功に導くノウハウを指南する。金融の専門家ではない著者がキーワードに据えるのは、ずばり「マーケティング」である。金融のグローバル化、情報伝達の広域化やスピード化により資金を求める企業経営者と投資家の関係は劇的に変化していると指摘。「一瞬にして巨額な資本があなたの企業に向かって流れてくる、あるいはあなたの企業から離れていってしまう可能性がある」と述べ自身のマーケティング理論を基に最適の投資家と出会う法や彼らを説得する法を論じる。

まずは資本調達の手段を整理して示す。縁故やエンジェル(投資意欲のある裕福な個人)から、ベンチャーキャピタルや新規株式公開まで、今日の選択肢は一見多様に見えるが、有効な選択を行うためには自社のポジションやライフサイクル(創業期、拡張期、衰退期など)を冷静に分析する作業が不可欠だと言う。自社に内在する価値をどう引き出してそれぞれの投資家に示すと効果的か、セグメンテーションやポジショニングなどマーケティングの概念を当てはめつつ導いていく。効率的な資産運用を望む投資家の側にとっても役立つ1冊である。

■2005/10/31, 日経ビジネス, 81ページ

クリティカル・ワーカーの仕事力
4478312184赤堀 広幸

ダイヤモンド社 2005-09-01
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おすすめ平均 star
star【起業成功の人財活用方法】
star自分はどうだろう?
star素晴らしいケース

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成長著しいソフトウエア企業、ワークスアプリケーションズの創業者であり現役リーダー2人を題材に、今日のビジネス社会で個人、特に若手社員が成功する法を模索する書。人材育成や新規事業の創出を専門とする著者は、理想のビジネスパーソンを「クリティカル・ワーカー」と呼んでその特性を示す。安定的かつ豊かな生活の確保に加えて、個人のやりたいテーマで仕事ができる、個人の才能を生かせる、社会に貢献する新しい価値を創造する、スケールの大きな仕事ができるといった4つの目標を抱けと言う。しかし、それをかなえているのは100人に1人くらいだとも指摘。ただ働いているだけではダメだと叱咤激励する。

「クリティカル・ワーカー」になるには、「あるべき頭の使い方や取り組む姿勢、成長の方法論などの具体的『ノウハウ』が必要」と言い、2人のリーダーが身をもって示してきた問題解決の実例を紹介する。また、彼らのようなブレークスルー(現状打破)型人材の対極にあり、論理的で迅速な作業を好む「ルーチン・ワーカー」との違いを解説する。著者は本書を多くの若いビジネスパーソンに推奨しているが、後輩を育成して組織に忠誠心を抱かせたいと願うリーダーにとっても様々なヒントを提示している。

■2005/10/31, 日経ビジネス, 81ページ

私ががんなら、この医者に行く
私ががんなら、この医者に行く海老原 敏

小学館 2005-09
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おすすめ平均 star
starこれまでで最高の「がん専門医紹介」の本

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国民の約3人に1人がガンに命を奪われている(2002年の統計)時代に、我々はどのような姿勢でこの病と向き合い、どの医者にかかることを最善の策とすべきか。ガン治療の最前線に約40年間身を置き、自らも大腸ガンを患った経験を持つ国立がんセンター名誉院長が、1つの答えを示す。

前半では、苦痛を伴うことが少なくなったガン治療の今を紹介する。一方で、患者の身体の機能をどこまで温存するかなどは、病院や医者によって判断が異なるのも事実だという。そこで、頭頚部ガン、肺ガンなどに症状を分類したうえで、著者が信頼する全国70の病院と143人の専門医を紹介する。登場する専門医は自らの治療方針を自らの言葉で具体的に語るという、分かりやすく心強い構成だ。

■2005/10/24, 日経ビジネス, 71ページ

1985年
4106101300吉崎 達彦

新潮社 2005-08
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おすすめ平均 star
star少し通り一辺倒かな
star退屈な本
star日本にとって確かに変節点だった年

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■著者に聞く 吉崎達彦氏[双日総合研究所副所長] 2005年と似たリセット感

プラザ合意やゴルバチョフ登場、金妻やひょうきん族の跋扈、日航機墜落……。歴史をあえて「横」に読み返せば、当時の景色と空気が実に新鮮に見えてくる。20年後の2005年。「共通するのは時代をリセットする感覚」という。

――過去と言うには新しく、現在と言うには時間が経っている。1985年は確かに微妙な距離感がありますね。

10年前の記憶は鮮明なのに、20年前となると覚えていそうで忘れてしまっていることが多い。本を書いていて我ながら驚きました。例えば当時、私が勤めていた日商岩井にはファクス端末が1台しかなかった。部署に1台ではなく全社に1台ですよ。ワープロも導入したばかりで、文書作成のワープロ専門職の社員がいたほどです。

多くの人がこの本の感想をメールで送ってくれたり、ブログ(日記風のホームページ)で紹介してくれていますが、大半が私と同世代です。内容は「自分の1985年はこうだった、ああだった」という話ばかり。45歳の私ぐらいの世代の人間が20代のことを振り返るのは、楽しい作業なんですね。

最初に書いたのが、テレビドラマ「金曜日の妻たちへ」を取り上げた第6章です。主題歌の「恋に落ちて」に「ダイヤル回して手を止めた」という詞があるのを思い出し、これは使えるなとひらめきました。携帯電話がない頃は不倫も慎ましかったのでしょう。

分量の都合で掲載できなかった題材の1つが学生の就職先人気ランキング。第一勧業銀行、富士銀行など懐かしい名前が並んでいます。もう1つは新風俗営業法で歌舞伎町から賑わいが消えたことです。初のエイズ患者発生もこの年で、風俗の社会通念みたいなものが大きく変わった気がします。

――85年が日本にとってどういう意味を持つのかといった点は、あえて論じないということですが。

ただ、85年と2005年はある種、時代をリセットする感覚が似ているかもしれません。高度成長時代から日本の製造業がコツコツと積み上げてきたものに対し、プラザ合意と円高は企業の競争力のゼロからの見直しを迫った。2005年はというと、長い間、日本経済を苦しめてきた不良債権の問題があらかた片づき、再び経済成長を目指して頑張りましょうという空気が広がってきた局面だと思います。

9月の総選挙もそうです。ガラガラポン解散などと呼ばれていますが、新人議員を含めて100人を超す「小泉チルドレン」はかつての田中(角栄氏)派より巨大ですから、そのパワーは無視できません。経済は大概、連続的な変化を見せるものですが、政治は突然、何もかも変わることがある。不連続な変化から生まれたものが、2005年体制ということだと思います。

もし20年後に2005年が描かれるとしたら、最大の事件は、恐らく「日本の歴史で初めて人口が減少に転じた年」という点でしょう。人が減っていく、社会が縮小に向かうというのは大変なことです。そう考えても今の時期に金融が蘇生し、政治が変わった意味は決して小さくないと思います。

――吉崎さん個人にとっての1985年はどういう年でしたか。

やはり日本航空機事故が忘れられません。8月12日の夜、1人で残業している時にニュースが入りました。当時の上司の奥様が乗っており、テレビで行方不明者の名前が読み上げられるのを聞いているのが実に辛かった。あまりに重い出来事としか言えません。

明るい記憶なら阪神タイガース優勝です。野球って面白い、と心が躍りました。今年の優勝はどうでもいい。虎党の私でさえ、3年間で2回も優勝するのは変だと思っていますから。

吉崎 達彦(よしざき・たつひこ)氏
1960年富山市生まれ。日商岩井、米ブルッキングス研究所客員研究員などを経て現職。ホームページ「溜池通信」運営。

■2005/10/24, 日経ビジネス, 75ページ

戦略の本質 戦史に学ぶ逆転のリーダーシップ
4532165296野中 郁次郎 戸部 良一 鎌田 伸一

日本経済新聞社 2005-08-06
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おすすめ平均 star
star前作の成功にいい思いをした出版社がけしかけた・・・?
star類書を凌ぐ
starもう一つ踏み込みが足りないような

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勝つための戦略とは何か。リーダーたる立場の者が、常に自問自答を繰り返すこの難問に、企業戦略の専門家と軍事戦略の専門家らが改めて答えを導き出そうと試みた。著者らは「戦争や軍事の領域にこそ戦略現象が明確に発現する」という考え方に立つ。そしてその本質は今日の一般社会全般に求められる「戦略」にも通じると述べる。本書は、第2次世界大戦における日本軍敗北の原因を、組織論の視点から鋭く掘り下げた著作『失敗の本質〓〓日本軍の組織論的研究』(1984年、ダイヤモンド社刊)の姉妹編でもある。

今回は「転機・逆転」をテーマに据えた。戦略不在であった日本軍とは対照的に、中国の国民政府軍に対抗した毛沢東の反「包囲討伐」戦、第2次世界大戦下でドイツ軍の侵攻をソ連軍が食い止め反撃に転じたスターリングラードの攻防戦、「小国」が「大国」を退ける結果となったベトナム戦争などには、戦略の本質である「逆転の契機」が存在していたと指摘。また、戦略論の発展の歴史をひもとき、クラウゼヴィッツら大家の理論を併せて検証する。さらに終章では「戦略は『弁証法』である」「戦略は時間・空間・パワーの『場』の創造である」「戦略は『言葉(レトリック)』である」などといった「10の命題」を示して解説を加えていく。

■2005/10/24, 日経ビジネス, 73ページ

「談合業務課」 現場から見た官民癒着
4334974864鬼島 紘一

光文社 2005-08-24
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おすすめ平均 star
star告発本としてではなく
star出版物としては、ここまでが限界か

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構造改革の大合唱の下、長年この国を支配してきた官民癒着の構図は崩れかかっているように見える。その原動力の1つが関係者による内部告発だ。本書もその1つであり、かつて大林組課長という肩書を背負っていた著者が、建設業界の中枢で目の当たりにした官民の馴れ合いと談合の実態を白日の下にさらす。著者は、「極秘内部資料」だというデータや手書きのメモも公開する。すべてが事実であれば、現在発覚し裁かれている談合や汚職の事例などは、氷山の一角だと考えざるを得ない。それほど根深くやっかいな“負の仕組み”が、この国の建設業に組み込まれていることが分かる。

5~6年前まで、ゼネコン(総合建設会社)大手、大成建設、鹿島、清水建設、大林組の中で、大林組は売上高、株価などで決して秀でた存在ではなかった。しかし、それ以降首都圏で最も注目を浴びた汐留、品川駅周辺、丸の内、六本木ヒルズなどの超高層ビル建設の大半を請け負い、経常利益でトップとなった。その要因を「天下りによる癒着」と「絶えざる談合」だと指摘。その巧妙な仕掛けと落札に至る過程を示す。門外不出であるべき入札予定価格を探る社員の動きや、天下りOBの巣窟と化した「談合専門部署」の実態などを、赤裸々に綴っている。

■2005/10/24, 日経ビジネス, 73ページ

コンテンツビジネス・マネジメント
4492270434八代 英輝

東洋経済新報社 2005-08-26
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コンテンツとは新聞、雑誌、書籍などを飾る文字やグラフィックの情報、映画やテレビ番組などの映像情報、その他音楽やコンピューターソフトウエアなどを指す。日本をはじめとする先進国の政府では、こうした「経済的価値を有する情報」の知的財産権を明確に定義してビジネスの発展を後押しすることを、経済政策の重要な課題に位置づけ始めた。本書は、著作権法を専門分野とする弁護士であり米国の事例にも明るい著者が、かつては「水もの」と呼ばれた著作権ビジネスの仕組みを、最新事例を交えて説いたもの。

まずはアニメ業界の大ヒット作「宇宙戦艦ヤマト」や「キャンディ・キャンディ」の著作者認定を巡って繰り広げられた裁判の例を示す。一般の目からは、キャラクターを描いた漫画家が有利と見られがちだが、裁判所はプロデューサーや原作者に同等の権利を認めた。著者は、一見単純に見えるこうした事例でも争いが起きるのだから、作品を加工して行った2次使用やパロディー、インターネット上に市民が匿名で書き込んだ文書などのケースは一筋縄ではいかないと注意を促す。著作物が国境を越えた場合の対処はさらに難しいと言い、例として日米での法の違いを示しつつ、契約時に取り交わすべき事項などを助言する。

■2005/10/24, 日経ビジネス, 73ページ
 
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