メイン > 日経ビジネス書評『新刊の森』(2005年) ( 2005年3月7日~3月28日 )
| メジャーリーグとだだちゃ豆で読み解く金融市場 | |
![]() | 加藤 出 ダイヤモンド社 2004-12-18 売り上げランキング : 123,698 おすすめ平均 ![]() 「読みものとしても秀逸!!」 著者の人柄と見識の高さがにじみ出る良書 金融エコノミストには日常がこのように見えるAmazonで詳しく見る by G-Tools |
■著者に聞く 加藤出氏 東短リサーチ取締役チーフエコノミスト 量的緩和は「愛の妙薬」
ゴルゴ13と為替介入、オペラと量的緩和…。専門家にしか分からないと思われがちな金融政策の実態と、その影響を身近な題材から描く。41の小話に通底するのは、日本銀行の金融緩和政策の行き詰まりへの批判だ。
――日銀の量的緩和を知っている人は多いでしょうが、理解している人は少ない。著書では、例えば歌劇「愛の妙薬」になぞらえて、その実態を説明しています。
「愛の妙薬」はドニゼッティという人のオペラで、ヨーロッパの田舎の村に、怪しげな薬売りがやってきて、恋の悩みにも効くという万能薬を売るところから始まります。
本当はただの葡萄酒なのですけど、物語の主人公の青年は、その効能を信じて高い値段で買ってしまいます。でも、もともと内気な彼は、それを飲むと勇気がわいて、あこがれの娘の心を射止めるというお話です。
実際は酔っぱらっただけで効能も何もないのですが、「信じるものは救われる」というわけです。福井俊彦日銀総裁は今の量的緩和策でそれを狙ったのではないでしょうか。
量的緩和策は日銀にある銀行などの当座預金の残高について、日銀が目標を定め、それに合わせて資金供給をする政策です。結果的に市中にマネーが多く流れることで金融システム不安を解消し、デフレ克服を期待するものですが、後者には効果があったとは思えません。
既に短期金利が長くゼロ%水準を続けている環境の下では銀行間市場に資金がだぶつくだけ。量的緩和策は一言で言えば、日銀の演技、「愛の妙薬」なのです。
――劇画『ゴルゴ13』(小学館)が政府・日銀の巨額為替介入の裏側を描いて話題となったことから、介入のアカウンタビリティー(説明責任)についても触れていますね。
昨年3月25日号のビッグコミック誌で「ゴルゴ13」が、2003年1月以来続いてきた35兆円にも上る円売りドル買い介入を描きましたが、その内容の1つが為替市場介入に使う資金を管理する外為特別会計の問題でした。
財務省が円売り介入を行う際には、FB(政府短期証券)を発行して円を調達します。逆に円買い介入では、介入で手に入れた円を使ってFBを償還する。つまり、売りと買いが相殺して外為特会の借入残高は変動するのですが、2003年以降、この借入残高の膨張がすさまじいものになっています。
約39兆円増え残高は一般会計予算を上回る規模になっています。私は結果的に、この介入は昨年7月の参院選対策になった面があると感じています。ですが、この大規模な介入を誰が考えたのか、財務省官僚が事実上判断したのかなど、一切公開されていない。
日銀も外為特会に計上されている米国債を財務省の買い戻し条件付きで購入することで新たな資金供給もしている。これも問題で、日銀は自らを「政府のATM(現金自動預け払い機)」にしてしまっているのです。
――有数の日銀ウオッチャーとして金融緩和政策の行き詰まりを分かりやすく表現しています。
以前、埼玉県で1700万円が用水路に浮いていたなんてことがありましたね。あれも元をたどれば日銀のゼロ金利政策に行き着くのです。ゼロ金利の中で金融システム不安が続き、銀行に預けるより、自宅などの金庫に退蔵しておく方がいいという事象が起きる。
用水路の一件は事件でしょうが、こうして退蔵されているお金が、日本にあふれています。実は日銀券(紙幣)の発行残高は、ドルに匹敵する規模になっています。例のない日銀の資産拡大は、何が起こるか分からない不安を醸し出しているのではないでしょうか。
加藤出(かとう・いずる)氏
1965年生まれ。88年、横浜国立大学卒、東京短資入社。短期金融市場のブローカーを務める傍ら研究員も。日銀ウオッチャーとして知られる。
| 人は仕事で磨かれる | |
![]() | 丹羽 宇一郎 文藝春秋 2005-02-24 売り上げランキング : 853 おすすめ平均 ![]() 就職活動をする学生や若い人達に一読をお勧めする ビジネスマンは見習おう 修羅場が人を磨くAmazonで詳しく見る by G-Tools |
昨年までの6年間、伊藤忠商事の社長を務めた著者は、1999年には約4000億円に上る不良資産の一括処理に成功し、翌2000年度の決算では同社史上最高益を計上するなど、その辣腕ぶりが注目されるリーダーだ。本書は、現在会長職に就く著者が、自らの半生を振り返りつつ、企業人としてすべてを賭けて臨んだ同社の改革の舞台裏を明らかにするもの。そこで得た教訓や、トップが後任を育てる知恵と志について熱く語る。
「人にはそれぞれ役割があります。私の場合はさしずめ、伊藤忠にとって考えられるすべての膿を掻き出すことだった」と述べ、自らを「掃除屋」と割り切って社長職を引き受けたと言う。また、「自分の人生なんてたかが知れている。社長を辞めたらタダの小父さんだ。格好つけたってしょうがない」と言ってはばからない。こうした著者のエネルギーが組織全体に浸透していく様子を、様々な経験談を通じて描いていく。
数え切れないほどの社員とEメールで直接対話する地道な努力や、「給料に差が付くのはしょうがない。しかし仕事で自らが育つ『見えざる報酬』を与えたい」という願いは、人生の多くの部分を仕事に重ねることの清さを、若い世代に訴える迫力に満ちている。
| 日本経済を学ぶ | |
![]() | 岩田 規久男 筑摩書房 2005-01 売り上げランキング : 2,368 おすすめ平均 ![]() 現在の日本経済の課題を経済理論で解明! 基本は正しいが、なぜインフレターゲット? 面白い!より多くの人に読んでもらいたいAmazonで詳しく見る by G-Tools |
“失われた10年”の教訓を導き出し、日本経済の再生について数多くの提言を行っている著者が、戦後の経済の流れを解説する。所得倍増計画、日本的経営、規制改革など時々のキーワードを設定し、学術的な表現を極力排した分かりやすいレクチャー方式でポイントを切り取っていく。著者は昨今、英国の大学でサッチャー改革に関する研究を行っていることから、いわゆる「英国病」と日本の高度経済成長政策の対比や、サッチャー政策と小泉構造改革との比較を織り交ぜた分析を試みている。単なる経済史とは異なる視点を提示した書となった。
国民の自由な創意と工夫を最大限に引き出すためには、構造改革や競争政策を割り当てよ、物価と雇用の安定を図るためには金融政策に象徴されるマクロ経済政策を割り当てよ――。著者の主張は明確であり、各時代の政策をこの観点に基づいて読み解いていく。
昭和30年代からの高度経済成長の最大の要因を、旧通産省をはじめとする官僚の「産業政策」とする論は根強い。しかし著者は、「勝手にやってくれ。政府は余計な干渉はしない」という“成長の原則”を、当時の政府が貫いたことにこそ勝因があったと説く。同様の視点で、バブル経済の顛末や構造改革の成否についても持論を展開する。
| 銀座激変商売の桧舞台で、いま何が起きているのか! | |
![]() | 丸木 伊参 ダイヤモンド社 2004-10-08 売り上げランキング : 7,337 おすすめ平均 ![]() 「銀座空洞化」はあるか?Amazonで詳しく見る by G-Tools |
商業地のあり方が大きく変わりつつある。日本の流通業・小売業の変遷を研究してきた著者は、「立地が良い」「店が大きい」というだけでは、もはや何ら売り上げを保証するものではないと断言する。そうした変化が最も象徴的に起きているのが銀座だと指摘。老舗や有名百貨店の停滞、銀座とは縁遠いように思われた大型ディスカウント店の成功、海外高級ブランド店の進出など、銀座で今起きている出来事は「これからの商業の方向性やマーケティングを考えるうえで重要な示唆を含んでいる」と語る。
中央通り、晴海通りに面したメーンストリートでまず目につくのは海外ブランドの大型店舗だ。「エルメス」「シャネル」をはじめ、有名どころが海外観光地の免税店さながらに軒を連ねる。一方では「コメ兵」や「ブランドオフ」など、ブランド品を安く売るチェーン店が共存し得る背景に分析を加える。
また、業種にかかわらず、国内の“勝ち組”が集積している点にも注目する。化粧品の「ファンケル」、低価格美容室の「田谷」、仏壇の「はせがわ」など、これまでの銀座であれば異質と見なされたであろう企業の進出理由などについて解説する。紹介した店舗とそのエリアを細かく区分して示した地図も、併せて掲載している。
| 勝つ力 ビジネスの勝ち方は学ぶことができる | |
![]() | 山崎 養世 ダイヤモンド社 2004-12-04 売り上げランキング : 4,378 おすすめ平均 ![]() 出る杭が打たれないワケを知った 勝つ相手を決めることが、本当の勝負なんだ! 決して転職本ではない。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
■著者に聞く 山崎養世氏[山崎養世事務所代表] 自分の地図を作れ
3年前、ゴールドマン・サックス投信などの社長を辞し、ビジネスマン人生に終止符を打った。徳島県知事選に挑み、民主党の「次の内閣」の国土交通相に指名されるなど軸足は政治に。人生で勝つためのノウハウを、8つの鉄則にまとめて惜しみなく提供する。
――志だけでなく、自らの地図を持たなければいけないと説いています。若い人を意識していますね。
読者として想定したのは、まず就職しようとしている人、次に転職を考えている人、そして起業しようとしている人です。高速道路無料化を唱えた『日本列島快走論』など、これまでの本は世の中の視点から書きましたが、今度は私の視点に立ちました。おかげで、「なぜ政治に関心を持つのか分からない」と言っていた人が、私の考え方を理解してくれました。
ビジネスの世界で成功するために重要なのは、マッピングという地図作りです。大和証券時代、ライバル会社の野村証券で顧問をしていた徳山二郎さんからいろいろ学びました。徳山さんには若い人を育てる情熱があり、私も恩返しのつもりで秘伝を公開すべきだと思いました。
大和証券では10前後の新しい部署を渡り歩きましたが、その半分は私が提案して作ったものです。スワップや不動産ビジネス、証券化、カードといった事業です。場数を踏むと、新しいビジネスの立ち上げ方が分かるようになります。
マッピングで重要なのは、クロスセクションと言って横への連絡を考えることです。イラク問題から石油、中東紛争、中国、自動車とつなげていけばいろいろなことが見えてきます。また、過去にさかのぼると先が読めるようになります。第2次世界大戦の敗戦やバブルの崩壊も、本当に不幸だったのかどうかは分かりません。負けたからこそ、今の繁栄があるとも言えます。
祖父の影響で盆栽のコレクターになりましたが、植物は悪いところを取り除くと半永久的に生きます。スポーツでも天才は障害を取り除いてやるとものすごく伸びます。
――高速道路の無料化にこだわっていますね。今の日本を人体に例えると、国土の97%を占める田舎は貧血、3%の都会は血が固まりドロドロの状態です。もはや金融の世界にいて解決できる時代は去りました。高齢化社会では何にお金がかかるのか。介護でも何でも一番は施設の土地代です。経済で大事なのはヒト、モノ、カネ、情報の4つがうまく回ることですが、日本はヒトとモノの動きが3%の土地に縛られています。通信のブロードバンド(高速大容量)も、料金を従量制から定額制に切り替えたことで普及しましたが、交通インフラも同じです。自動車ユーザーから取っている税金が9兆円以上あるので、財源の問題も簡単にクリアできます。
――20年前、バブルの生成と崩壊を予想したそうですが、人口減少が近づく日本の未来はあまり楽観できません。
逆です。どの国もいずれ直面する問題を日本は先取りするのです。21世紀の地球の生き方を最初に確立できれば、他の国をリードできます。既にロボットや環境の技術は世界最先端です。食べ物には芸術的センスと工業的センスが求められるので、日本は農業でも世界一になれるはずです。自動車にはいずれパソコンにおける米インテルのようにトヨタ自動車の「プリウス・インサイド」という時代が来るかもしれません。
高速道路が無料化されるなら、15年後には日経平均株価が10万円まで上がっていると思います。無料化されなくとも5万円まではいくでしょう。
山崎養世(やまざき・やすよ)氏
1958年福岡市生まれ。東京大学経済学部卒、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校経営学修士。大和証券など金融界で新規ビジネスを開拓。
| キャピタル 驚異の資産運用会社 | |
![]() | チャールズ・エリス 日本経済新聞社 2005-02-19 売り上げランキング : 1,707 おすすめ平均 ![]() 株主至上主義の今こそ必読 そうか!!と思いたくなるような話Amazonで詳しく見る by G-Tools |
世界最大級の資産運用会社、米キャピタル。長期の運用で過去50年以上、業界全体の上位4分の1以下に落ちたことがないという快進撃を続ける。非上場企業で、マスコミを避け、宣伝も嫌っている同社の実像はほとんど知られていない。本書はキャピタルの歴史を振り返り、成功の要因を探る。
著者は、創立者ジョナサン・ラブラスをはじめとする経営陣の思想が、キャピタルの骨格を形成したと指摘する。彼は長期的な思考の重視、徹底したリサーチに基づく忍耐強い運用、顧客サービスの重視といった基本的な価値基準を作った。市場環境や流行に左右されない運用・投資の方針は、こうした企業文化の下で定着した。
また、知識産業では、「スター」がもてはやされがちだが、キャピタルは個人のエゴよりもチームプレーを優先する文化を確立している。特徴的なのが複数マネジャーシステム。複数のファンドマネジャーがポートフォリオの一部ずつに銘柄選択責任を持つこの制度を取り入れたことで、資産額の拡大にも柔軟に対応でき、人材の引き抜きに悩まされることなく、高い運用実績を上げることに成功した。
個人主義が浸透した一般的な米企業とは趣の異なる優良企業の内幕を知ることができ興味深い。
| 黒川温泉のドン後藤哲也の「再生」の法則 | |
![]() | 後藤 哲也 朝日新聞社 2005-02 売り上げランキング : 6,553 おすすめ平均 ![]() 後藤氏の人生の理想形を祝う 黒川温泉版、プロジェクトXAmazonで詳しく見る by G-Tools |
かつては地図にも載らない無名の温泉地だった熊本県の黒川温泉。地域ぐるみでの大改革を経て、一躍、人気温泉地となった。改革のリーダーを務めたのが、黒川で2軒の旅館を経営し、国土交通省の「観光カリスマ」にも選ばれた著者である。本書で、その経営哲学を示し、改革の道筋を振り返る。
25年ほど前、著者は京都で日本庭園を訪れる観光客が減り、自然の木が植えてある寺に向かう観光客が増えていることに気づいた。人々は自然の中で気持ちよく過ごすことを求めていると察知した著者は、松や盆栽で埋まっていた旅館の庭に雑木を植え始めた。裏山を金づちと、のみで掘り進めた「洞窟風呂」や、裏山から切り出した石で組んだ「岩戸風呂」も作った。
自然を楽しむには、地域全体での雰囲気作りが必要。著者は旅館組合の執行部に入ってから、温泉地全体の改革を牽引する。雑木の植樹を進め、旅館や店の外壁を黒を基調としたものに変え、旅館の看板を撤去するなど、「日本のふるさと」を存分に味わえる景観作りを進めたのである。
こうした経験から、どんな商売も「顧客が何を求めているか」を目を凝らして探し、真心を込めて提供することが重要と指摘。企業経営にも生かせる「再生の法則」をまとめている。
| 組織力を高める 最強の組織をどうつくるか | |
![]() | 古田 興司 平井 孝志 東洋経済新報社 2005-02-11 売り上げランキング : 2,839 おすすめ平均 ![]() 組織だけでなく、一個人に対しても非常に参考になる 組織力について偏りなく書かれた一冊 中間管理職頑張れ!の本かもAmazonで詳しく見る by G-Tools |
同じような戦略を構築し、同じようなオペレーションを行っていても、組織によって結果に差が出てしまうことがある。本書は、「組織力」を成す要素を明らかにし、組織力向上の手法を解説する。
まず、組織力とは遂行能力と戦略能力を掛け合わせたものと定義。どちらが欠けても強い組織とならないと説明する。組織は人の集まりであるから、結局のところ、遂行能力も戦略能力も人が左右する。特に、組織の要で上司、部下、同僚などに影響力を及ぼせる立場にいるマネジャーが、それぞれの能力向上に大きな役割を果たすという。
組織の遂行能力を高めるためには、まず、マネジャー自身が「完遂力」を持つことが必要。同時に、持っている力を増幅させ、期待を超える結果を出すことができる(オーバーアチーブする)人材を育てることにも目を向けるべきと指摘する。さらに、マネジャーが正しい戦略マインドを持ち、組織に積極的に働きかけていくことによって、シンプルで整合性のあるビジネスモデルが組織に浸透し、戦略能力を獲得できると説明する。
オーバーアチーブのためのリーダーシップと戦略マインドを鍛え、主観性と使命感を持つマネジャーこそが、真のリーダーとなり得ると結論づける。
| 世界を変えるお金の使い方 | |
![]() | 山本 良一 Think the Earth Project ダイヤモンド社 2004-12-11 売り上げランキング : 4,995 おすすめ平均 ![]() お金の まず家族や友人から見せたい 現実的なお金での援助が分かる本Amazonで詳しく見る by G-Tools |
■著者に聞く 山本良一氏[東京大学教授] 偽造犯だって社会貢献
100円で砂漠に苗木の植林ができるなど、少額でも可能な社会貢献策を網羅している本。天然資源の乏しい日本は、環境技術で稼げる社会構造に転換すべしと説く。最大の障害は環境に関心が薄い小泉政権、との苦言も。
――100円あれば、内モンゴルの砂漠にポプラの苗木が10本植えられる。500円でハイチの診療所で医者を1人雇える。少額のお金にこんな使い方があったのかと、新鮮な驚きを感じます。
最近、書店に並んでいるのは、お金をいかに儲けるかという本ばかりですよ。「こんな株や商品が注目だ」なんていう、私に言わせれば品性下劣な本が、幅を利かせている。カネ儲けの情報が溢れる一方、お金の使い方の教育がなされなければ、社会がおかしくなるのは当然です。
先日は、福岡の刑務所からこの本の読者アンケートはがきが来ていました。「今日は100円でチョコレートを買おうと思ったけれど、買ったつもりで100円を貯め、ポプラの植林に寄付します」というもの。調べたら、差出人は1万円札の偽造で捕まった人でした。1冊の本がきっかけで、偽造犯が100円からできる社会貢献に目覚め、獄中の仲間を勧誘していた。啓蒙という言葉は好きではありませんが、この本を出して良かったと実感しました。
――先生の専門は、地球温暖化の研究。今後、日本は環境関連ビジネスで儲ける構造に変わっていくべき、というのが持論ですね。
地球の温暖化は、世間が想像する以上に、国や社会に変革を迫る大きな問題です。人間1人を生かすために、生産力を持つ土地がどれくらい必要かという指標を「エコロジカル・フットプリント」と呼びますが、この分析によれば日本は米国や中国の2.5倍も贅沢な暮らしをしている。それだけ日本は、環境変化に対して脆弱なのです。
温暖化が進めば、資源やエネルギー、水の争奪戦が激しくなる。その時、日本が資源の対価として提供できるのは、省エネルギーなどの環境技術が中心になるでしょう。環境技術を磨かなければ、生きていけない時代が来る。
しかし、こういう危機感が日本ではまだまだ薄い。例えば日本経済団体連合会などは「CO2(二酸化炭素)の削減義務づけには反対」だとか「日本は乾いた雑巾。これ以上の削減は無理」といったことを主張していますが、とんでもないことです。
企業は大変な努力をしながらCO2削減を進めています。ああいう組織にいると現実が見えなくなり、組織の保身を優先するようになる。日本が環境事業で先頭を走るには、百害あって一利なしの団体と言わざるを得ません。
――2月16日に、京都議定書が発効しました。採択時の議長国だった日本は、環境問題で本当に、国際的なリーダーシップを取れるのでしょうか。
少なくとも、小泉内閣が続く限りは無理でしょうね。地球温暖化の影響は既に日本にも及んできているのに、小泉純一郎さんには危機感がまるでないからです。
昨年は台風が10個も上陸し、死傷者が200人ほど出ました。温暖化の影響であることは明白です。損害保険会社は、保険金を5000億円支払ったそうですが、これが1兆円になったら、潰れるところだって出てくる。米航空宇宙局(NASA)は今年、世界の平均気温が歴史上最高になると警告しており、温暖化は目前の危機なのです。
英国のブレア首相は、こうした状況をきちんと理解し「2050年までの温度上昇を2度程度に抑えよう」と理路整然と主張しているのに、我が小泉さんの頭にあるのは、郵政改革だけ。まず、この“小泉危機”を乗り越えないと、日本の先行きは暗いままです。
山本良一(やまもと・りょういち)氏
1946年生まれ。東京大学卒、同大学大学院博士課程修了。『1秒の世界』など著書多数。専門は環境問題。
| ウォルグリーン―世界No.1のドラッグストア | |
![]() | 松村 清 商業界 2005-02 売り上げランキング : 8,101 おすすめ平均 ![]() 関係者必見!!Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ここ10年で急成長を遂げた日本のドラッグストア業界だが、現在は「高度成長期から選別の時期に入った」と業界の事情に明るい著者は指摘する。爆発的に店舗数を伸ばしてきた大手チェーン店でさえ、不振に陥るところも現れ始めた。2006年にはさらなる逆風が襲う。医薬品販売の規制緩和によって、薬局・薬店やドラッグストアの専売品であったOTC(大衆薬)の一部がスーパーやコンビニエンスストアでも売られるようになるのだ。著者は、多くの薬局・薬店が「消えていく運命にある」とまで言う。
では、日本のドラッグストアはどうあるべきか――。そのヒントを、米国で激烈な小売り競争を生き抜いているウォルグリーンに見いだそうとするのが本書である。米国の小売業界には、ウォルマートというディスカウントストアの巨人が存在する。低価格の魅力や専門性のないドラッグストアがことごとく敗れ去っていく中で、ウォルグリーンは専門性・利便性・接客性に焦点を絞って独自の強みを打ち出し人気を得ている。「事業の多角化から撤退し調剤に注力する」「24時間営業やドライブスルーのある店舗を増やす」「主要顧客となるシニア層の女性に優しい接客を徹底する」など、市場ニーズを巧みに読み取った戦略を分析する。
| 悪魔のマーケティング タバコ産業が語った真実 | |
![]() | ASH(ACTION ON SMOKE AND HEALTH) ASH (ACTION ON SMOKE AND HEALTH) 津田 敏秀 切明 義孝 日経BP社 2005-01-20 売り上げランキング : 3,837 おすすめ平均 ![]() 知っておくべき。 もう終わってるネタ。新鮮味なし。 知らなかった現実を見ました。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「タバコ産業は自らが作り上げてきた巨大な怪物(喫煙者)に餌を与え続ける方法を探さねばならない。もはや発展途上国でタバコの販売量を増やすしか道はないのだ」――。欧米の元たばこ会社社員のこうしたコメントこそ、たばこ産業の本質を物語っていると編者らは指摘する。
本書は、英国で喫煙率低下のための運動を推進する民間健康推進団体ASH(Action on Smoking and Health)が、欧米のたばこ産業の内部文書などを基に、同産業が世界に向けて発信し続けてきたメッセージの欺瞞や、その裏にある“本音”を暴き出そうとするものだ。たばこ産業は、1950年代には既に喫煙と肺ガンの間の因果関係に気づいていたはずだと言う。「科学的に証明された事実を無視し続けるのはうんざりだ」と、たばこ会社の元研究者が告発する一方で、公式には90年代後半に至ってもなお「様々な見方がある」などと曖昧な見解しか示していない現状を憂える。
また、聞こえのよい宣伝文句とは裏腹に、同産業は「未成年者にどうやってタバコを売り込んでいくか」に注力してきた実態があると糾弾。「タバコなんざ、ガキや貧乏人に黒人、あとはバカに吸わせておけ」など、耳を疑うような内部関係者の発言が次々に紹介されていく。
| アマゾンの秘密──世界最大のネット書店はいかに日本で成功したか | |
![]() | 松本 晃一 ダイヤモンド社 2005-01-28 売り上げランキング : 4,212 おすすめ平均 ![]() Amazon立ち上げの追体験、できます。 残念ながら期待はずれ 設立に至る経緯はよく分かったのだけど・・・Amazonで詳しく見る by G-Tools |
アマゾン・ドット・コムは、そのスタートが書籍販売中心だったが故に「ネット書店」として知られている。しかし、全米では最大のインターネットショッピングサイトでもある。日本でも「アマゾン」の名を知らないインターネットユーザーは少ないはずだ。本書は、2000年の日本サイト立ち上げのメンバーに加わった著者が、内側から見た同社の戦略や強みをまとめたものだ。また右も左も分からぬままゼロからビジネスモデルを確立していく“起業顛末記”としても興味深く読める。
日本のアマゾンは世界中のアマゾンサイトの中でも優等生だと言う。米国では事業規模を拡大できてもなかなか黒字を計上できない状態が続いたが、日本のサイトでは着実に利益を出しているのだ。その背景には、著者が関わったマーケティング部門が行った綿密な市場研究と、インターネットの特性を最大限に生かした顧客獲得戦略がある。著者はそれを「アマゾン独自の世界観」だと見る。
インターネットという大海にバナー広告など無数の触手(入り口)を張り巡らすイソギンチャクのような存在となり、一度入ったら出口がないかのような仕組みを作り上げる過程を明かす。同サイトの最大の売りである「カスタマーレビュー」を定着させるまでの秘話も披露する。
| 逆転戦略 ウィルコム-「弱み」を「強み」に変える意志の経営 | |
![]() | 鈴木 貴博 ダイヤモンド社 2005-01-28 売り上げランキング : 3,275 おすすめ平均 ![]() 後半が面白い 実現性の高い仮説ストーリー 業界の俯瞰は正確。しかし組織分析の詳細が甘い。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
2004年6月、ルイス・ガースナー元IBM会長率いる米カーライル・グループと京セラは、共同でKDDI子会社・DDIポケットの買収を表明した。今年2月、DDIポケットは「ウィルコム」として生まれ変わった。本書はモバイル通信市場の熾烈な戦いを振り返りながら、カーライルと京セラの狙いが「PHSによる携帯電話の逆転」にあると分析。その詳細を明かす。
かつて、PHSは「つながりにくい」ことがネックとなり、携帯電話に顧客が流れてしまった。DDIポケットは、その後、地道に基地局を増強し、携帯電話と同じ品質でサービスが提供できる体制を整備。2001年、データ通信に特化した新サービス「エアエッジ」を開始した。エアエッジはモバイルによる情報発信・収集に熱心な30代ビジネスマンの間でヒットし、DDIポケット復活に貢献した。
安定的な需要を確保しつつあるウィルコムだが、本書は巨大資本カーライルはさらなるポテンシャルを見いだしていると推察する。丹念な取材を基に、そのポテンシャルとは、第1にこの先、電波不足が生じた時、一番優位な立場に立てること、第2にデータと音声を組み合わせた完全定額制の導入を実現し得るポジションにいることではないかと仮説を立てている。
| 土地の値段はこう決まる | |
![]() | 井上 明義 朝日新聞社 2005-02 売り上げランキング : 6,408 おすすめ平均 ![]() どこの業界も大変なんだ・・・ 不動産鑑定ってこうだったんだ パラパラと立ち読みしてから買えばよかったんですか。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
東京都心部の地価が上昇に転じるなど、下落し続けた地価に歯止めがかかったとの認識が浸透している。だが不動産鑑定士として活動してきた著者は、日本の地価は今後5年でまだ半分に下がると主張する。
2004年の地価の上昇地点を詳細に分析すると、需給バランスの改善によって値上がりした地点はほとんどない。丸の内、汐留、品川、六本木など、大型の不動産投資で地価が上昇した例が目立つ。逆に言えば、このような投資がなければ、地価下落に歯止めはかからなかったことになる。また、こうした一極・短期集中型の不動産投資が、逆に周辺地域の急速な地価下落を招いていることから、投資による効果が息切れした後は、地価は都心部でも再び軟調に推移すると指摘する。
「5年で半値」が現実になれば、土地の買い手はもちろん、土地を担保に融資した金融機関も大きな痛手を受ける。著者は、特に「人」を見ずにお金を貸し込むプロジェクトファイナンスを危険視し、不動産収益を分析するノウハウがない日本の金融機関は、近い将来、プロジェクトファイナンスで大量の不良債権を発生させると予想する。
「一物一価」が成り立たず、需給の関係以外の要素が大きな影響を与える地価の実情なども解説している。
| 横浜市改革エンジン フル稼動 中田市政の戦略と発想 | |
![]() | 南 学 上山 信一 東洋経済新報社 2004-12-22 売り上げランキング : 4,860 おすすめ平均 ![]() 変革には目に見える成果から 日本の自治体改革の最先端 巨大組織改革の希望の書Amazonで詳しく見る by G-Tools |
中田宏市長の下で改革を進める横浜市の2年半の活動を紹介する。中田市長の改革への思想と哲学、また市長の理念を受けて実務家集団が作り上げた改革プログラムを解説する。
一般に、市長は行政組織の長として、現行秩序の「適切な維持・管理」を重視しがちだ。だが、中田市長は「選挙で選ばれた政治家」であることを強調し、職員に対して、「変えることの責任」を訴えた。「1年でできない改革は4年たってもできない」との姿勢で、早々に改革に着手していった。
具体的には、公立病院、公営交通、保育所サービスなど、財政破綻の懸念がありながら、長年放置されてきた事業について、改革の方向を示す作業を進めた。市長を補佐して改革を進める「エンジンルーム」を創設し、わずか2カ月で「横浜リバイバルプラン」を策定した。現場レベルでは些細に見える改善も次々に取り入れていった。
従来の組織の伝統を覆す経歴の持ち主であることから、本書は中田市長を日産自動車のカルロス・ゴーン社長になぞらえ、中田改革を「自治体業界のゴーン改革」と表現する。政令指定都市最大の350万人を超える人口、3万3000人の職員数を擁する横浜市の改革の成否が、全国に与えるインパクトは極めて大きいと指摘している。


「読みものとしても秀逸!!」
金融エコノミストには日常がこのように見える

基本は正しいが、なぜインフレターゲット?








もう終わってるネタ。新鮮味なし。



