日経ビジネス掲載の書評『新刊の森』の紹介です。

メイン > 日経ビジネス書評 『新刊の森』 2008年4月7日~4月21日

「民」富論 誰もが豊かになれる経済学 (朝日新書 95) (朝日新書 95)
「民」富論 誰もが豊かになれる経済学 (朝日新書 95) (朝日新書 95)堂免 信義

朝日新聞社 2008-02-13
売り上げランキング : 2123

おすすめ平均 star
starこの本が売れれば日本が変わる。
star意外な視点も、まっとうなスタンス、「経世済民」の書
star朝日新聞が自信を持って世に問う書!!

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日本の政治の混迷ぶりは目を覆うものがあるが、世界経済も先が見えない迷路に入り込みつつある。貧しい人々の住宅購入を対象にしたサブプライムローンという米国の金融問題が、世界の金融市場全体を揺さぶっているのはその一例だ。最初は比較的軽微な局地戦と思われたが、経済のグローバル化のおかげで世界に一気に拡散し、各国の実体経済にも悪影響を及ぼしている。

グローバル化が各国の経済を多様で豊かなものにしていることは誰でも承知している。プラス面は大きい。しかし、世界のあらゆる国で進行する「経済格差拡大」のルーツが、各国の経済政策よりもグローバル化そのものにあることが広く知られるようになった。

競争を推し進めるほど、途上国、先進国を問わず競争に生き残れない弱者が数多く生まれる。勝者との格差は拡大し、さらに固定的なものになりがちだ。その結果、世界各国に恵まれない人々が増え、各国の社会秩序や政治の不安定化を招来する。成長率は高いのに多くの国民の暮らしぶりは良くならないという、日本を含めた世界各国の現実。世界経済も、そこに暮らす人々も、不安に満ちた時期なのだ。

問題は、グローバリゼーションのメリットをある程度享受しながら、デメリットを緩和し、格差の少ない安定した社会を築くための経済学が出来上がっていないことである。今の経済学にはまだ一昔前の教条主義が残っている。それでなくても、各国の政治も新たな時代に即した政策を具体的に推し進める試みさえできないでいる。

今こそ社会経済学といった分野が必要な時期なのだが、異分野からそれに挑戦をしようという人が現れた。経済学を勉強する前は大手電機メーカーでシステム開発をまず担当し、その後は銀行のオンラインシステムを作っていたというのが、この本の著者である。既存の学会や政府から知恵が出ないのだから“領空侵犯”は歓迎すべきだ。財政赤字の意味を問い直し、経済では「神の見えざる手」が調和を取ってくれる、というのは間違いだと主張する。

この本のいくつかの主張には違和感がある。しかし面白い。グローバリゼーションの時代においては新しい価値観と経済学が必要なことは確かなのだ。国全体の競争力を高めるという自然な結論の中で、(1)地産率を高める(2)国際競争の少ない分野での国内生産向上(3)労働分配性を高める――を指摘する。傾聴に値する主張だ。今後、国が真剣に検討せざるを得ない問題だと思う。【評者 住信基礎研究所主席研究員 伊藤洋一】

■2008/04/21, 日経ビジネス, 81ページ

バカ親、バカ教師にもほどがある (PHP新書 515)
バカ親、バカ教師にもほどがある (PHP新書 515)川端 裕人 藤原 和博

PHP研究所 2008-03-15
売り上げランキング : 1391

おすすめ平均 star
starこのような刺激的なタイトルをつけるのならば,もっと痛烈な学校,親批判をして欲しかった。
star本当に子供のためになることは何か?

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民間出身の公立中学校の前校長が、PTA活動に積極的に取り組む作家を聞き手として、親と教師の「壁」を語る。

「うちの子のためにサッカー部を作れ」「自分の子供の写真が少ないアルバム代金を返せ」…。我が子かわいさのあまり、無理難題を言う「モンスターペアレント」が問題になっている。一方で、「私のクラスにいじめなんてない」と逆ギレするような「モンスターティーチャー」も存在する。本書は、親と教師の現在の状況を象徴する18のケースに対し、東京都杉並区立和田中学校でのやり方を基に、幾つかの対処の可能性を示す。「居心地のよい環境ばかりにいても子供は成長しない」「ニーズに応えるのがよい学校ではない」など、教育の本質に迫る意見が率直に交わされている。

■2008/04/21, 日経ビジネス, 81ページ

不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか (講談社現代新書 1926)
不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか (講談社現代新書 1926)河合 太介 高橋 克徳 永田 稔

講談社 2008-01-18
売り上げランキング : 52

おすすめ平均 star
starまさにそのとおり
star現場力低下の原因を探る良書,あなたの会社は大丈夫?
star無関心すぎるのも程度問題

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B型自分の説明書
B型自分の説明書Jamais Jamais

文芸社 2007-08
売り上げランキング : 19

おすすめ平均 star
star何で当たるんだ!?By B型男子
star説明書の作り方として読むこともできる。
starB型は自分がかわいい

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「人間関係の希薄化」を憂える識者の声をよそに、自分中心主義に走る若者が増え続けている。そうした傾向を実感できる2冊がランクインした。

『不機嫌な職場』(八重洲ブックセンター本店ビジネス書の12位)は、仲間同士なのに協力し合えないギスギスした環境が生まれる原因を探り、その解決法を模索する書。組織が個人の仕事の領域を厳密に定義し、専門性を求めれば求めるほど、社員は「タコツボ」に引きこもり、他人に無関心になると分析する。かつて多くの職場では社内旅行や運動会を通して「トータルの人間性」を理解し合っていた。しかし今、こうした催しは不人気だ。それに代わる仕掛けを創出した米グーグルやサイバーエージェントの事例を紹介する。

昨秋出版されて以来のロングセラー『B型自分の説明書』(紀伊國屋書店総合3位)は、B型人間にありがちな特徴を列挙した書。そもそも血液型性格判断に科学的根拠はないが、「集団行動の中で1人だけフラフラ散歩したりする」「歌を口ずさんでる時、人が参加してくるとヤダ」などのチェック項目は、確かにそんな人物がいそうで楽しい。著者は明言していないが、協調性より個性の方が大切だというアドバイスにも取れる。

■2008/04/21, 日経ビジネス, 85ページ

道路問題を解く―ガソリン税、道路財源、高速道路の答え
道路問題を解く―ガソリン税、道路財源、高速道路の答え山崎 養世

ダイヤモンド社 2008-03-14
売り上げランキング : 8682

おすすめ平均 star
starまともな提案
starなかなか

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道路には、我が国の矛盾が凝縮されている。日本の道路建設への支出はドイツ、英国、フランス、イタリアという4カ国の道路投資額合計に匹敵するが、日本では渋滞がひどく、道路が開通していない地域も多く不便なままだ。本書は、現在の道路問題の構造を詳細に解説し、解決の方法を提言する。

終戦直後、道路財源が足りなかった日本は1954年、ガソリンにかかる税収をすべて道路整備に使うという特定財源制を導入した。その後、財源が豊かになっても制度は続き、次第に、道路予算は政治の道具になっていく。日本の道路は、早く安く作って国民の役に立たせることから、多く長く予算を配ることが目的に変わっていった。

一番深刻なのは高速道路だと指摘する。日本道路公団は民営化したが、巨額の借金は返済不能となる可能性が高く、その損失は国民が背負わされるからだ。解決策として、著者は今ある道路財源や財政に貯まった積立金で借金を返済し、高速道路を無料化する方法を示す。今は活用されていない高速道路が自由に使えるようになれば道路システムの輸送力が向上し、将来の道路予算も削減できると主張する。

現在の理不尽な道路の仕組みは戦後政治そのもの。道路問題の解決は、日本の立て直しに通じると強調する。

■2008/04/21, 日経ビジネス, 83ページ

わが子に「お金」をどう教えるか (中公新書ラクレ 273)
わが子に「お金」をどう教えるか (中公新書ラクレ 273)篠上 芳光

中央公論新社 2008-03
売り上げランキング : 3143

おすすめ平均 star
star正しいと自分が信じることを本気で正しいと言い切る、著者の姿勢に感動

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お金の教育というと、「株式投資の方法」など、金儲けの話に偏りがち。学習塾を経営し、子供と日々、接する著者は、本当に大切なことは「お金のことを正しく理解し、きちんと使えるようになることだ」と主張する。

ある私立の高校生は同級生を「リーマン(サラリーマン)の子供」と差別的に呼ぶ。別の小学校では、一部の親が借りたホテルのスイートルームで、子供たちだけでパーティーを楽しんだという。拝金主義が蔓延する現在、それに感化されてしまっている子供もいる。子供にきちんとした金銭感覚を持たせるには、まず親が「所有こそが豊かさであり、幸せである」という認識を改めることが重要だと指摘する。

「人間の価値」と「お金を持っているかどうか」は全く関係ない。それを理解させるためには、子供の「学力の偏差値」ばかりでなく、「心の偏差値」も上げることを重視すべきだと説く。多くの子供たちを見ている著者は、「心の偏差値」が高く、心が満たされている子供たちには、お金はほとんど必要ないことを実感するという。

老舗企業や商店の家庭の子供は、裕福でありながらも質素・堅実な環境で育ち、独自の金銭哲学を身につけ、自立しているケースが多いとして、各家庭での教育方法の実例を示す。

■2008/04/21, 日経ビジネス, 83ページ

3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代 (ちくま新書 (708))
3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代 (ちくま新書 (708))城 繁幸

筑摩書房 2008-03
売り上げランキング : 82

おすすめ平均 star
star真の自立とは
starルポルタージュとしては最高に面白いが…
star長くなりました。すみません。

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戦後、確立した年功序列と終身雇用の制度は「昭和的価値観」を形成した。本書は、そうした昭和的価値観にとらわれずに生きる“アウトサイダー”たちの仕事ぶりや考え方を紹介する。

ある若者は新卒で外資系投資銀行に入行し、常に自分の市場価値を高めていくことを心がけて働いてきたという。「雇用に関するリスクは高いかもしれない」としながらも、「自分の市場価値のことを全く考えず邦銀やメーカーに就職した人は度胸がある。将来会社が潰れたら、絶対路頭に迷う。他人に人生を任せる生き方の方がはるかに高リスク」と言い切る。別の若者は大学卒業後、大手企業に勤めた。本社の海外統括部門というエリートコースにいたが、決まり切った日々の繰り返しに嫌気が差し、4年目で退社。老舗のバーで酒の修業を始め、27歳で自分の店を出した。「指と舌と感性の3つを使った創作活動」と表現する現在の仕事に充実感を得ているという。

彼らが、昭和的価値観から飛び出した背景は様々。学生時代から他人とは違う方向を見ていた人もいれば、企業の中で行き詰まり、レールから降りた人もいる。レール自体に乗りそびれ、結果としてアウトサイダーになったタイプもいる。多様になった「平成的生き方」の一端がうかがえる。

■2008/04/21, 日経ビジネス, 83ページ

健康の味
健康の味南 伸坊

白水社 2008-03
売り上げランキング : 2179


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その人の著書が出ると、中身などお構いなしに必ず買う。私にとって南伸坊氏は、そんな1人。イラストレーター、装丁デザイナーであり、伝説の漫画誌「ガロ」の編集長も務めていたが、おにぎり頭で物理的に顔のデカイ面白いオジサン、と言った方がピンとくるだろう。

伸坊氏の代表作、『歴史上の本人』(朝日文庫)。独自に考案した「顔面学」に基づき、メーク、カツラ、衣装を駆使し外見から入って、聖徳太子、織田信長など歴史上の人物になりきり所感を述べる、その奇想天外な試み。

あるいは、『笑う写真』(ちくま文庫)。呵々大笑する運転免許証やパスポートの写真を筆頭に、脱力系の怪しげなフォトを満載した写真心理学の大著。余人の追随を許さぬ書ばかりである。

そんな伸坊氏、一見、煮ても焼いても平気そうだが、還暦が近づき、さすがに体のあちこちにガタがき出した。そこで、襲来する各種症例を相手に滑った、転んだ、起き上がった、の奮闘を綴ったのが本書である。各編に楽しい自筆挿絵のオマケまでついている。

伸坊氏は、これに気をつけろ、あれをチェックせよ、という健康上の脅しには乗らない。むしろ、「安心させて、結果的に治ってしまう」という流儀を好む。

「死ぬ気でやる健康法というのは、いかがなものか?」という屁理屈で、腹筋運動や冷水浴などへの挑戦も長続きしない。ガン対策も、笑えば免疫力がつくとの説を信じ、普段通り生活する。元来、伸坊氏の人生目標は「へらへら笑って楽しく暮らす」なのだ。

他の伸坊氏の著書と同様に、夫人の文子さんも随所に登場し、絶妙な漫才を繰り広げる。かのメタボ・ウエスト問題も、夫人にかかれば、「男は85cm以上の者は死刑。病気を装ってさりげなく執行されるらしいよ」となる。ところが、伸坊氏のウエストは、気を抜いて計測すると95cm、積極的に腹を膨らませる(この辺がいかにも伸坊流!)と、1mにもなるという。

とまあ、ゆるキャラ、ぬるキャラに溢れた健康ハウツー本なのだが、実は伸坊氏、「ひょっとしてもう長くないのでは」と思い、しみじみと桜を眺めたこともあったようだ。

そんなこんなで、熟慮を重ねた末に行き着いた感懐が、「健康の味は、健康が損なわれて、そして回復できた、ほんの短い期間にのみ味わえる味である。健康が常態になった時、人はすみやかにその味を忘れてしまう」。なかなか味なお言葉じゃありませんか。【評者 ローンスタージャパン会長 岩下 正】

■2008/04/14, 日経ビジネス, 65ページ

知識デザイン企業―ART COMPANY
知識デザイン企業―ART COMPANY紺野 登

日本経済新聞出版社 2008-02
売り上げランキング : 571


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世界でヒットした米アップルの携帯型音楽プレーヤー「iPod」や「英ダイソンのサイクロン型掃除機」は、どのような企業風土から生まれたのか――。知識経営に関する多くの研究やプロジェクトに関わってきた著者は、それらは「知識デザイン」を行う新たな企業、「アートカンパニー」ならではの商品やサービスだと指摘する。

知識デザインとは、品質やコストから発想する従来のモノ作りに足りないものを補う概念だと言う。主体的かつグローバルな感覚を持つ成熟した消費者は、画一的で表層的な商品やポジショニングされた高級ブランドをもはや好まないと説く。代わって支持されるのは地域性や文化性、とりわけ環境・生態系を重視した人間中心のモノやサービスであると分析する。

■2008/04/14, 日経ビジネス, 65ページ

コーヒーハンター―幻のブルボン・ポワントゥ復活
コーヒーハンター―幻のブルボン・ポワントゥ復活川島 良彰

平凡社 2008-02
売り上げランキング : 1971

おすすめ平均 star
starコーヒー関係者必読
star冒険物語のような人生
star一杯のコーヒーから世界が見える

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著者に聞く-パーソナルライフ-川島良彰氏[日本サステイナブルコーヒー協会理事長]

高校を卒業後、エルサルバドルに渡ってコーヒー栽培を学んだ。産地と流通、消費者が共存できる仕組みの啓蒙に力を入れる。その第一歩は消費者による日常の商品選択にあると説く。

――原油高の影響などで穀物の相場が高騰しています。コーヒー豆も相場商品です。影響はありますか。

コーヒーは世界で1次産品としては原油に次ぐ規模の取引額があります。 相場は高めですが、「コーヒークライシス」と呼ばれた状況を招いた時ほどの異常な価格変動ではありません。

ブラジルで霜害が発生し、1997年にコーヒー豆の相場が上がったことがあります。そこに投機資金が流入して異常なほどに急騰しました。当然、儲かると見た生産者が大増産に走りますね。しかし新しく植えた木からの収穫を迎えた2001年には供給過多に陥り、相場は生産者の損益分岐点の半分近くまで大暴落しました。

この時に多くのコーヒー園が潰れました。離農者も続出した。コーヒーを作り続けることができなくなったわけです。当時、私は生産国から日本に一時帰国したのですが、日本の関係者は相場が下がったと喜んでいる。「こんな価格でどうやって生産者が作り続けることができるんだ。いずれしっぺ返しを食う」と訴えましたが、聞き入れてもらえませんでした。

――その危機感は、川島さんが今、普及に力を入れている「サスティナブルコーヒー」活動に通じます。

サスティナビリティーは「持続可能性」と訳します。分かりやすく言うと、コーヒーを将来にわたって作り続けられるように、生産者、流通業者、消費者、さらには栽培地域の環境を含めて、特定の誰かを泣かせるような真似はしないという考え方です。  世界にはサスティナビリティーの理念に沿って、生産から流通までのガイドラインを示した認証団体がいくつかあります。農園から出た汚水を適切に処理するといった自然環境への配慮だけではありません。労働者の人権保護や生活環境の改善といった観点で、農園内に診療所や学校を作ることなども含まれます。

認証団体ごとに力点の置き方は違いますが、いずれにしても、認証を受けた農園では労働者の勤労意欲が上がります。いいコーヒーを作って利益が出たら、その分を労働環境の整備などの形で還元してもらえるからです。

――米国ではサスティナブルコーヒーに対する理解が進んでいるそうですね。

米国の場合、先ほど話したコーヒークライシスの影響を身近な問題として感じる環境にあったのです。

コーヒー相場の暴落を受けて、中南米では多くの生産者が農園を手放しました。解雇された労働者たちは職を求めて米国に流入した。その数の多さを見て、「これでは業界の将来が危うい」との危機感が米国の業界内に生まれました。

実はスターバックスコーヒーも、サスティナビリティーの理念で事業を展開していることが米国の消費者に支持されています。相場の下落時も相場以上の価格で豆を買い取り、産地を支えてきた。スタバは米国でこうした取り組みをアピールし、「サスティナブルなコーヒーを飲むことは格好いい」という流れを作りました。

私は日本でも消費者が積極的にサスティナブルコーヒーを選ぶ動きを広めたい。「搾取された農民を助けなければ」などと構える必要は全くありません。コーヒーは安らぎのツール。土壌汚染が減って産地の川がきれいになっていく姿とか、たくさんの鳥が飛んでいる農園の様子とか、そのコーヒーの先に広がるロマンを感じてくれればいいんです。消費者が動けば、外食産業なども行動を起こすと思います。

川島 良彰(かわしま・よしあき)氏
1956年静岡県生まれ。75年エルサルバドル国立コーヒー研究所入所。その後、UCC上島珈琲でコーヒー農園開発に従事。2007年に退社し、現職。

■2008/04/14, 日経ビジネス, 67ページ

理性の奪還 もうひとつの「不都合な真実」
理性の奪還 もうひとつの「不都合な真実」アル ゴア 竹林卓

ランダムハウス講談社 2008-02-16
売り上げランキング : 181

おすすめ平均 star
starここまで激しいブッシュ批判をゴア元副大統領が繰り広げているとは思いませんでした
starアメリカで何が起きているか
star大統領になるはずだった男アル・ゴアが、米国のもう一つの「不都合な真実」を暴く。

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元米国副大統領であり、昨年にはノーベル平和賞を受賞した著者が、環境破壊による地球の危機を訴えてベストセラーとなった『不都合な真実』に続いて放つ警告の書。今日の米国社会は「理性」を失った状態にあり、民主主義が危機に瀕していると訴える。

米国民は平均して1日4時間半テレビを見るという調査結果を示し、テレビへの過度の依存が公の議論から理性を奪っていると指摘する。テレビは瞬時に「恐怖心」を国民の脳裏に焼きつけると言い、米国市民の約半数が米同時多発テロ事件へのサダム・フセイン元イラク大統領の関与をいまだに信じていることを憂える。「現ブッシュ政権は、政治プロセスを操作するために恐怖を悪用したのだ」として、社会とメディアの本来あるべき姿を論じる。

また、インターネットなどによって“個人”が意見や主張を広く発信できる現在の状況を歓迎すべきだと述べる一方で、「権力による個人攻撃」が横行し始めているとも警告する。テロの防止などを大義名分とし、理不尽な捜査や不当な逮捕、盗聴、郵便物のプライバシーの侵害を推し進める政府は、結果として米国を建国以来の危機に陥れていると批判する。米国民のすべてに対して、憲法の精神に改めて敬意を払うよう呼びかける。

■2008/04/14, 日経ビジネス, 66ページ

メタル・ウォーズ
メタル・ウォーズ谷口 正次 ・

東洋経済新報社 2008-02-15
売り上げランキング : 2579

おすすめ平均 star
starスイカを縦に割りたい!!
star鉱山開発の環境問題に迫る一冊
star迫力はあります

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旧秩父小野田、太平洋セメントで資源開発部門の要職を歴任し、現在は資源・環境ジャーナリストとして活動する著者が、メタル資源を巡る熾烈な争奪戦の舞台裏を描く。これまで欧米メジャー企業の寡占的支配の下で保たれていた均衡が、中国の国家ぐるみの参戦によって大きく揺らぎ始めていると言う。「『ものづくり』の最上流で起きている『メタル・ウォーズ』には、さすがに無関心ではいられなくなったのが日本の現状である」と言い、我が国に迫る危機の本質と対策を論じる。

鉱物資源は豊富にあると考えられていた中国だが、その爆発的な経済発展によって世界一のメタル消費国となり、2000年前後を境に鉱物資源輸入国へと転換した。さらに、「原子力回帰」という世界の潮流にあってそのもととなるウラニウム資源には恵まれていないことも理由に挙げ、「(中国は今)資源の囲い込みに世界各地で狂奔し、首脳外交と官民一体となった資源戦略を繰り広げている」と指摘する。

この動きに危機感を募らせているのが欧米のメタル資源メジャーや我が国の総合商社などの既成の勢力だ。双方の思惑が激突するアフリカ諸国などの発展途上国では、深刻な環境破壊や先住民の強制移住などの問題が起きていることを現地取材を交えて告発する。

■2008/04/14, 日経ビジネス, 66ページ

知っておくべき日本人の底力
知っておくべき日本人の底力渡部 昇一

海竜社 2008-02
売り上げランキング : 2011

おすすめ平均 star
star日本人の品位の復権
starニホン人から日本人へと覚醒せよ。

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渡部昇一・上智大学名誉教授は英国史及び英語学研究を専門としつつも、皇室問題や靖国参拝問題を巡る論戦では保守系の論客として名を馳せる。本書では、戦後の日本が被った最大の「国難」は誇りの喪失だと指摘し、その原因を探る。同時に、誇るべき伝統や先人の存在を明らかにしていく。

日本人から誇りを奪ったのは敗戦の事実そのものではなく、戦後の混乱に乗じて政財界や学界、マスコミに浸透した、我が国の歴史や皇室に反感を抱く勢力だと怒りをあらわにする。しかし、それらも長い歴史から見れば一時の出来事であり、日本人の「底力」はその程度で揺るがないとも言う。その最たるものが皇室の威厳で、人類史において2000年以上続いている組織は皇室とローマ法王庁の2つだけだと指摘する。しかも皇室は武力にも財力にも頼らずに国民の精神的支柱であり続けた稀有の存在だと言う。

また、我が国が神話を起源とする「神道」を基盤に置きながらも仏教を受け入れた歴史をひもといて、「対立ではなく融合を生み出した日本人の宗教観」こそ誇るべきと解説する。さらに、戦国時代の武将や天下を治めた志士たちが身をもって示した「武士(もののふ)の倫理・道徳力」の優れた点を挙げ、日本が世界の手本となる日が来ると論じる。

■2008/04/14, 日経ビジネス, 66ページ

食料植民地ニッポン
食料植民地ニッポン青沼 陽一郎

小学館 2008-03
売り上げランキング : 307

おすすめ平均 star
star具体例満載だけど

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>

ここ2~3年、食料に関して「買い負け」という言葉を見聞きする機会が増えた。人口増加と生活水準の向上に伴って新興国の需要が増えたために、日本が希望する価格で食料を買い付けられなくなっている。

買い負けの常態化は、食料の大半を輸入に依存している日本に食料政策の転換と食生活の見直しを迫る。本書はそんな環境の変化を直視せず、世界で「わがままな消費国」として振る舞い続けている日本に対する警告のルポルタージュだ。

著者は日本の食を巡るあらゆる当事者に厳しい目を向ける。食料自給率の低下に手を打てない日本の農政、米国などの干渉をはねつけられない食品安全行政、そして日本の消費者――。

海外にある水産物の養殖場や加工場を訪ね歩いた著者は「魚の小骨を全部取り除く」といった日本メーカーからの製品仕様がいかに神経質なものであるかを指摘。「まるで芸術品を求めているよう」と話す業者の声を引き合いに出しつつ、細部まで配慮が行き届いた食品を安く買えることが当たり前だと信じる日本の消費者に対し、「あまりの無知とおバカぶりにはもはや付ける薬もない」と嘆く。

ただ、個人的には日本人が食に関して無自覚な姿勢は今後、徐々に変わっていくと思う。これまでは産地やメーカー、流通業者が安全・安心に関わる経費や仕様に必要なコストを負担してきた。だがそれも、原料の仕入れや加工コスト、輸送費が企業の体力を上回る水準まで高騰すれば無理は利かなくなるからだ。

従来通りの高品質を求める消費者も、安全にこだわる消費者も多い。そして何より、価格にこだわる層が日本では主流だ。そのすべてを同時に満足させられない以上、食の提供側は製品ごとに品質に関するスタンスを明確にし、その情報を消費者に開示すればいい。

例を挙げると、BSE(牛海綿状脳症)に関して「検査する月齢を限定した牛肉」と「全頭検査を受けた牛肉」では価格は異なるだろう。仕入れ担当者が産地や栽培方法を自分で確かめた有機農産物とそうでない農産物も同様だ。

どちらが良いかの問題ではない。価格が高くても完璧に近い安全を求めるのか、安全は一定の水準で十分と判断して価格を優先するのかについて、判断を個々の消費者に委ねるということだ。その大前提は、「全頭検査ではない」といった付加価値になりづらい情報もきちんと開示することにある。多様性を確保することが、食に関する「当たり前の国」に脱皮する第一歩だ。【評者 ワタミ社長 渡邉美樹】

■2008/04/07, 日経ビジネス, 56ページ

公務員クビ!論 (朝日新書 96) (朝日新書 96)
公務員クビ!論 (朝日新書 96) (朝日新書 96)中野 雅至

朝日新聞社 2008-02-13
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おすすめ平均 star
starタイトルと中身が合ってない
star公は民を知らず。民は公を知らず。
star芸風を変えつつあるか

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市役所、県庁、厚生労働省、国の出先機関と、様々な公務員を経験してきた著者が、現在の公務員制度の実態や問題点を解説し、未来を予想する。

霞が関のキャリア官僚、国家公務員ノンキャリア、地方公務員に分け、それぞれが直面する問題を論じる。社会が富裕層・中間層・貧困層に3極化する中で浮上しつつある行政サービスの問題も指摘。現在の画一的行政サービスは見直しを迫られる可能性が高いと大胆に分析する。

世界的な公務員制度改革のトレンドは、公務員と民間企業で働く人との労働条件を限りなく同じに近づける「官民統一」。著者は官民統一の実現後は、「官民流動化」の方向に改革すべきと主張し、公務員は「親方日の丸」の安泰な職業ではなくなると強調する。

■2008/04/07, 日経ビジネス, 56ページ

ウェブ時代 5つの定理 この言葉が未来を切り開く!
ウェブ時代 5つの定理 この言葉が未来を切り開く!梅田望夫

文藝春秋 2008-02-28
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おすすめ平均 star
starこれからの時代の標になるかも・・・
starシリコンバレー精神好きだ~
starウェブ時代の名言集

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著者に聞く-パーソナルライフ-梅田望夫氏[作家、経営コンサルタント] 言葉は世界を変える

グーグルやアップルなど、なぜ米シリコンバレーから創造的な事業が生まれるのか。創業者たちの言葉には、次に来る変化を見通し、イノベーションを生むヒントがある。「日本のリーダーは自分の言葉を大事にすべき」と説く。

──なぜ米シリコンバレーのベンチャー経営者たちの名言を集め始めたのですか。

ここ10年、20年で企業の経営手法は大きく進化しました。ファイナンスにしても戦略にしても、一定の方法論が出来上がっていて、それに従えばある程度までは経営できます。

ただ、「どうやったらイノベーションを生み出せるのか」については、ほとんど進歩していません。研究所を作ってみたり管理志向を弱めてみたりと、みんな悩んでいます。

ところが、シリコンバレーという場所からは、次から次へとイノベーションが生まれてくる。中には本当に世界を変えるようなものもあります。

私は1990年代前半からシリコンバレーに住み始めたのですが、根っからの理系人間じゃないので、最先端で何が起こっているのかを理解できませんでした。しかし「ビジョナリー」と呼ばれる、先見性のある人たちの言葉を拾い集めていくと、そこから技術の方向性というか、未来が見えるようになってきました。

そしてそうした言葉が、次々と現実になるのを見てきました。ビジョナリーたちの言葉の中には、人間の創造性を刺激して、イノベーションを生むヒントが秘められていると思います。

──中でもお気に入りの言葉はありますか。

例えば、米サン・マイクロシステムズの共同創業者、ビル・ジョイ氏はこう言っています。「自分がやらない限り世に起こらないことを私はやる」。自分とは何かということに徹底的にこだわり、志向性を問い続ける。こうした生き方から、創造性が生まれてくるのだろうと思います。

また、米アップルCEO(最高経営責任者)のスティーブ・ジョブズ氏は2005年、米スタンフォード大学の卒業式でスピーチをしました。世界中で大騒ぎになったので、「YouTube」などで見た方も多いと思いますが、聴衆の心を揺さぶる、後世に残る名スピーチでした。

ところが、日本の経営者で同じようなことができる人はほとんどいない。国際会議なんかに出てみても、部下から渡された原稿を読んでいるだけで、自分の言葉でしゃべらないんですね。言葉は人を鼓舞して勇気づけることができます。組織も活性化できます。日本のリーダーは、もっと自分の言葉を大事にすべきです。

──文化の違いもあるのでは。

確かにそれはあります。しかし、シリコンバレー文化が花開いたのは、たかだかここ30年に過ぎません。

米インテル前会長のアンディー・グローブ氏も、「起業するのが怖くて悪夢を見た」と言っています。難民船に乗ってハンガリーから逃れてきたような経験を持つ人でも、40年前はそう感じていました。しかし彼らが成功体験を積み重ねることで、社会通念は変わってきました。米国では今や、起業はスポーツみたいなものです。

日本企業も独特の文化と強さを持っています。しかしシリコンバレーの感覚に触れて、企業のリーダーや中堅層がイノベーションを生み出すようになれば、もっと強くなれると思います。

シリコンバレーの雰囲気は好きになれない。日本の経営者にはそういう人が多いことは、よく知っています。だけど、そういう先入観を取り外して、一つひとつの言葉のレベルで、自分と波長の合うものを探してもらえれば、とてもうれしいですね。

梅田望夫(うめだ・もちお)氏
1960年生まれ。94年から米シリコンバレーに在住し、経営コンサルタントを営む傍ら、ウェブの最新情報を発信し続ける。著書に『ウェブ進化論』など。

■2008/04/07, 日経ビジネス, 56ページ

「基軸は人」を貫いて (私の履歴書)
「基軸は人」を貫いて (私の履歴書)井上 礼之

日本経済新聞出版社 2008-02
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ダイキン工業会長兼CEO(最高経営責任者)の経営論。

前半は日本経済新聞で連載した「私の履歴書」を収録する。小学生の時に受けた「いじめ」の体験、入社後1年ほどで、突然「行くのをやめた」と無断欠勤したエピソードも率直に記す。1994年6月、空調事業の不振で経常赤字に陥っていた中で社長に就任。空調とフッ素化学事業のグローバル化、不採算事業の撤退など、「選択と集中」を進める。空調では業務用、家庭用、ビル用の3本柱で世界トップ企業を目指す方針を掲げる。家庭用エアコンの乱売合戦が過熱する中、部品のグローバル調達、製造工程の効率化でコストを減らし、低価格品の競争力を強めた。無給水で加湿機能を持つエアコン「うるるとさらら」が大ヒット商品となり、危機に瀕していた国内空調の立て直しに成功するまでの道のりを振り返る。

後半は、「私の履歴書」を補足する目的で編集したもの。経営者として、ダイキン工業を急成長させ、収益力を高めた過程を追う。「空調3本柱戦略への転換」「中国への進出」「欧州市場の開拓」「OYLインダストリーズ買収」などの大きな決断について、背景や狙いを説明するほか、「人を基軸に置いた経営」「率の経営」など、著者の経営哲学を示すキーワードを解説する。

■2008/04/07, 日経ビジネス, 55ページ

円が元に呑み込まれる日
円が元に呑み込まれる日浅川 夏樹

実業之日本社 2008-02-20
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star読んでがっかり
starなるほどこうやってアオルのか

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2007年、東京証券取引所における時価総額の合計は16兆円減り、上海証券取引所は180兆円増えた。このところの株価の下落はあるが、それでも証券市場の日中逆転が起き、上海がニューヨークに次ぐ世界第2位の株式市場となる日はそう遠くないだろう。

「チャイナマネー」の台頭も目覚ましい。サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題で米金融機関が経営難に陥った間に、中国は世界各地に投資している。2007年9月に創設したばかりの政府系投資会社・中国投資有限責任公司(CIC)は12月、米投資銀行のモルガン・スタンレーに50億ドルを出資することを発表した。アフリカなどへの大型投資にも積極的で、同年、中国の対外投資は中国への投資を超え、資本の純輸出国となった。

著者は、日本が中国の経済的台頭、チャイナマネーの勃興を日本経済の発展につなげる戦略を立てるべきだと主張する。東京が東アジアの国際金融センターとなれば、アジアの成長ゾーンに投資される資金の流れを仲介し、大きな利益を得られる。金融市場への規制を国際標準に調整すること、国際的な金融業務をこなせる外国人が暮らしやすい環境を作ることなど、整備すべき条件は多い。2008年からの数年間がカギになると指摘する。

■2008/04/07, 日経ビジネス, 55ページ

美学vs.実利 「チーム久夛良木」対任天堂の総力戦15年史 (講談社BIZ)
美学vs.実利 「チーム久夛良木」対任天堂の総力戦15年史 (講談社BIZ)西田 宗千佳

講談社 2008-02-22
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star任天堂の記述は少ない「久夛良木健」史なれど、その業績は「もう一つのソニー」と評価できると思います
starプレステの歴史がこの1冊に

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開発者が「こういうものを作りたい」と描いた理想に向けて邁進する「美学」の会社がソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)。対する任天堂は新しい切り口、斬新なアイデアで、消費者の潜在需要を掘り起こす「実利」の会社だと著者は表現する。

SCEが「美学の会社」となったのは、同社の社長を務め「プレイステーション(PS)」生みの親であった久多良木健氏の影響が大きい。久多良木氏は「世界最高の、従来の常識を覆すコンピュータ」を目指し、妥協なく突き進んだ。初代「PS」では、リアルタイム性と3次元CG(コンピューターグラフィックス)での表現の豊かさを徹底して追求。高性能のハードウエアに加え、巧みな流通戦略・宣伝戦略でトップに立った。「PS2」「PS3」でも東芝やIBMと半導体を共同開発するなど、最高峰の技術を盛り込むことにこだわった。

だが、ゲーム市場では、操作方法を変えて新しい魅力を生み出した任天堂の「ニンテンドーDS」「Wii(ウィー)」に人気が集まるようになる。2007年6月、久多良木氏はSCEのビジネスから退いた。だが著者は、久多良木氏のモノ作りに対する姿勢には、多くの企業家が大切にすべき点が多くあると指摘する。熾烈なゲーム機戦争最前線のエピソードが豊富に描かれ、興味深い。

■2008/04/07, 日経ビジネス, 55ページ
 
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