メイン > 日経ビジネス書評 『新刊の森』 ( 2008年4月28日 )
| 「今のロシア」がわかる本―日本人が知っておきたいロシア経済とその世界戦略 (知的生きかた文庫 あ 30-1) | |
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「おまえ、本当はこういう本だったのか」
思わずつぶやいてしまうような、その書名と内容との乖離に喜びの声を上げることがある。本書はまさにそうした1冊だ。
ここにあるのは紛れもなくBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の一角を占めるロシアの今の姿だ。
しかし、1997年から2001年までモスクワに留学し、ボリス・エリツィン政権から金融危機、そしてウラジーミル・プーチン氏の登場というロシア再生への胎動を現地で体感した著者の描くロシアは全く別の表情を見せる。
情報の小片を丹念に集め、パズルの空白を慎重に埋めていく著者の複眼は、プーチン氏が国際的な批判を退けるように断行した新興財閥グループの解体と再編の背後にあるものを追う。そして、チェチェン独立運動への容赦のない対応の真意を探る。
そこに見えてくるものは何か。「9.11テロ事件」によって激変した世界秩序の中、欧州におけるロシアの台頭、イスラエルの地位低下を阻止しようとする米ネオコンの策謀、時期を同じくして起こったアレクサンドル・リトビネンコ氏変死事件。
うつろな目でカメラを見つめるリトビネンコ氏の映像は、プーチン氏の冷徹な独裁イメージを喚起させるには十分だった。その映像戦力を担ったのがロシアのテロマネーともつながりが指摘される英国の企業であった事実は、果たして何を物語るのか。
著者の精緻な分析は、その先の重く厚い扉を開けてみせる。そこには9.11によって激変したオイルマネーを中心とする世界的な資金洗浄システムとロシアの国家的な思惑が絡み合う世界が待っている。
この資金洗浄ネットワークをたどっていけば、ブッシュ家が深く関与し、ビンラディン家をはじめサウジアラビアのオイルマネーが育てた国際的な犯罪銀行「BCCI」にたどり着く。
著者は言う。「BCCIが築き上げたネットワークこそテロネットワークの原型である」と。
米国が目を光らせる中、ロンドンに吸い上げられていた中東のオイルマネーは世界のオフショア市場を通じて米国に還流していた。米国はマネーロンダリング(資金洗浄)を容認しつつこのシステムを謳歌し、ドルは世界を席巻した。しかし、それが崩壊した今、世界史のレベルで世界は動こうとしている。
激変する世界の最深部を透徹した視点で探ろうとする著者の次回作が待たれてならない。【評者 ジャーナリスト 児玉 博】
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創業90周年を迎えた松下電器産業は、今年10月に社名を「パナソニック」に変更して新たな飛躍を目指す。「ナショナル」で親しまれていた白物家電などのブランドも順次パナソニックに統一していく。本書は同社の創業者であり、“経営の神様”と呼ばれ、多くの企業人から手本とされてきた松下幸之助氏の哲学や功績を解説する書だ。
幸之助流哲学を論じた書は多いが、本書ではそのエッセンスを今日の経営課題に関連づけているのが特徴だ。「5つの鉄則」の1つ「人をつくる」では、相次ぐ食品偽装事件や情報漏洩事件を「人材の育成・管理を怠った結果」と捉えて、モノ作りの前に人づくりを重視した幸之助氏の考え方を示す。また、現役の経営者が日々の活動において支持している幸之助語録も添える。
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著者に聞く-パーソナルライフ-前田高行氏[中東経済問題研究家] 中東権力者の実像は?
経済発展が著しいアラブ諸国の内側を、権力の中枢にいる王族の姿を通して解き明かす。情報を得にくいこの地域に対し、理解を深めるべきと言う。
──これまでは中東といえば、日本から遠い存在でした。ところが、このところは原油価格の高止まりもあり、建築ラッシュに沸くドバイなどに注目が集まっています。
日本と中東諸国との時差は6時間程度ですが、情報が届くには18時間以上かかってしまう。というのは、地球の裏側にある欧米を通って届くからです。つまり、日本には直接アラブからの情報を得る術がほとんどないのです。当然、途中である程度のバイアスがかかってしまいますから、入ってくる情報は遅いうえに偏りがあります。
1996~99年に、私は日本貿易振興機構(JETRO)で、サウジアラビアのリヤド事務所長を務めました。そこで、まず日本の一般の方々にもっとアラブについて知ってほしいと考えました。2004年に定年退職したのを契機に、中東関係のブログを立ち上げました。3年ほどブログでの情報発信を続けていると問い合わせを受けるようになり、ついに自分の目で見たものを書籍にまとめることにしました。
──サウジアラビアには、数多くの王子がいるということですが、日本人社会と王族との接点は?
サウジアラビアには現段階で1000人以上の王子がいます。一方、現地の日本人の数も変動がありますが、1000人超というところでしょう。日本企業が現地に代理店を作る際、その会社のオーナーが王族ということがあります。そうなれば商談などがありますが、通常は一般の日本人が王族と親しく話せる機会はそんなにはありません。
──アラブ社会も変化しています。
2001年に発生した米同時多発テロは、王族の生活を変えました。王族は富豪であるケースが多いのですが、かつて彼らの豪遊ぶりは世界的に有名でした。ところが、この事件以降は目立たないように徹するという考えが浸透したようです。
アラブの国々では、豊かさゆえの悩みも尽きません。例えば、若年層は“就職難”に直面しています。外資系企業を誘致しても、現地の若者は机に座って電話でやり取りするような仕事をしたいと考えており、そうしたポストはあまり必要ありません。国は製造業を奨励していますが、実際に工場で働くのは外国人になるでしょう。
そもそも彼らは「お金があるのになぜ働くのか」という疑問を抱いており、親も無理に働く必要はないと考えている。アラブ人の若者にとって働こうにも、その動機づけが難しいのです。
──産油国が世界に対する資金の出し手となり始めています。
原油価格は1バレル=100ドルの水準が続き、アラブの産油国は速いペースで資金を蓄えています。こうした国々は既に基本的なインフラを整えており、お金の使途はあまりない。だから、お金のままで米国に投資して還流させているわけです。原油の値段は当面、同90~100ドルの水準が続くでしょうから、今後も世界の救世主としてアラブマネーは活躍するはずです。
──日本は、アラブにどう向き合っていけばよいのでしょうか。
以前から言われていますが、米国から離れ、もっと独自の姿勢を打ち出すべきです。ただ「言うは易し、行うは難し」で、これまでもこの課題には対策すら見いだせていません。どのような策を取るのか、具体的にステップを追って考える時期に来ています。
前田高行(まえだ・たかゆき)氏1943年京都府生まれ。アラビア石油などを経て日本貿易振興機構へ。96~99年にリヤド事務所長を務めるなど合計10年以上中東に駐在している。
| 愛国者の流儀 | |
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自らを「青い眼の日本人」と称するビル・トッテン氏は、1969年に米企業社員として来日して以来、我が国の文化や風土を敬愛してやまない愛国者の1人だ。日本国籍を取得し、ソフトウエア販売会社を経営する傍ら、メディアを通じては一貫して「日本の脱米国論」を主張してきた。本書では「愛国心の喪失」と「米国によるマインドコントロール」を切り口に、この国の問題点を探り出す。
昭和の時代には日本古来の精神を受け継いだリーダーが存在していた。しかし今日のリーダーは愛国心を否定する戦後教育を受けた経営者や国会議員に取って代わられてしまい、それが社会の混乱を招いているように見える。また、靖国神社参拝問題や歴史教科書問題を巡る海外からの批判を黙して受け入れている日本人の姿には、米国の巧妙なマインドコントロールが解けていない現実を痛感すると言う。
米国に対しては、サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題などを挙げて「モラルも道徳も存在しない国」と厳しい。著者が恐れているのは、日本が米国型の格差固定社会を容認しつつあることだ。かつての日本人が『論語』から学んだ倫理観や、江戸時代の寺子屋教育の利点にいま一度着目して再起せよと呼びかける。
| ケータイチルドレン 子どもたちはなぜ携帯電話に没頭するのか? (ソフトバンク新書 71) | |
![]() | 石野 純也 ソフトバンククリエイティブ 2008-03-15 売り上げランキング : 6408 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「ケータイ(携帯電話)」はもはや身体機能の一部というのが、現代を生きる多くの若者の感覚だ。ある調査によれば、女子高校生は1日に約2時間にわたり携帯電話でインターネットにアクセスしているという。これを由々しき事態と見て、監視・是正すべきという声が上がる中、ケータイ文化に詳しい著者は、そうした決めつけには誤解があるとして実態の解明を試みた。
まず、ケータイは本当に有害情報の温床なのかと問う。オンラインゲームや音楽のダウンロード、大手通信関連会社が運営するSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用する若年層の多くは、大人たちの心配とは裏腹に、自身の個人情報を公開するか非公開にするかという点に注意深く対応しているという取材結果を示す。それが事実ならば「正すべきは子供たちの遊び場を無神経に荒らす大人の方だ」という著者の指摘もうなずける。
それでもケータイは危険性をはらんでおり、見知らぬ他人と接触できるいわゆる出会い系サイトや、いじめ・誹謗中傷合戦に発展することもある“学校裏サイト”の存在を著者は否定しない。しかし、安易に法規制に頼らず、まずは大人社会が正確に実態を把握し、事業者らと連携して子供たちを守る手立てを模索すべきだと主張する。
| 中堅崩壊―ミドルマネジメント再生への提言 | |
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企業の頭脳が経営陣、手足となるのが若い社員たちであるならば、背骨となって身体機能全体を支える役割を担うのが“中堅(ミドル)社員”だ。新入社員の誰もが最初の昇進目標としてきた「課長職」に象徴されるミドル層に、今、深刻な歪みが生じていることを種々の調査から明らかにする書。経営者に対してはミドルマネジメントの見直しが危急の経営課題だと訴える。
ミドル層を具体的には35歳から47歳までの社員と定義するが、本書が着目したのは41歳までの「ミドル前期」に該当する世代だ。彼らはバブル期の大量採用で入社を果たしたものの、同期の人数が多過ぎることで「ある種の存在感」を失った。にもかかわらずその後の景気後退により減少した戦力の穴埋めのために最前線に立ち続け、さらには時代の要請から専門職化を求められた。著者はその姿を公官庁で言う「ノンキャリア組」のようだと評する。
そうしたミドル層の本音や悩みを1000人のアンケートなどから浮き彫りにし、対策を講じている企業の実例を示す。また、経営者を代表して伊藤忠商事会長の丹羽宇一郎氏がインタビューに答えている。丹羽氏は、優秀なミドルを確保するためにはミドル予備軍が過ごす10年間の社会人教育や基盤作りに手を抜くなと助言する。


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