特集Web2.0、日本銀行と米FRB、格差問題、日本の資本主義、資源インフレ、日本とアジア、インド経済、中東情勢、定年後海外ライフ、9つのテーマ別に良書・話題本を紹介します。

メイン > 東洋経済『テーマで探す現代を読み解く良書・話題本』 Web2.0とインターネットの未来


『テーマで探す現代を読み解く良書・話題本』
週刊東洋経済 2006年8月12日・19日合併号 48~49ページ)

Web2.0とインターネットの未来
流行を追いかけずにネットの全体像をつかむ

選者 須磨国際学園研究理事 池田信夫(いけだ・のぶお)
1953年生まれ。1978年東京大学経済学部卒。日本放送協会などを経て、2005年から現職。著書に『情報技術と組織のアーキテクチャ』など。



書店の本棚に並ぶインターネット関連書籍を見ると、不可解なカタカナや略語 だらけの本があふれていて、戸惑う人も多いだろう。

しかし、そのほとんどはマニュアル本かハウツー本で、普通のビジネスマンが こういう流行を追いかける必要はない。大事なことは、現在のインターネットの 全体像を知ることだ。

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる
ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる梅田 望夫

筑摩書房 2006-02-07
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ところが、そういう日本語の本は驚くほど少なく、2006年の現状を伝えるのは、『ウェブ進化論』程度しか見当たらない。だからこそ、これがベストセラーになったのもうなずける。

しかし、この本の現状認識には疑問も残る。特に、そのキーワードである「Web2・0」という概念は、その定義がよくわからない。現象的には、確かに、「ブログ」(日記風ホームページ)や「ウィキペディア」(読者が編集する百科事典)などの新しいメディアが急速に成長しているが、それは梅田氏の言うような「革命」ではなく、インターネットの誕生以来、変わらない理念が具体化した「進化」と考えたほうがよいのではないか。

その理念とは、「ユーザーがネットワークをコントロールする」という設計思想である。これまで、大部分のユーザーがダイヤルアップで使っている状態では、この理念は実現できなかった。ブロードバンドが常時接続・定額料金で自由に使えるようになったため、ブログや「SNS」(ソーシャル・ネットワーク・サービス)のようにユーザーが情報を発信するメディアが急速に普及し、ウェブを「民主化」したわけだ。

ザ・サーチ グーグルが世界を変えた
ザ・サーチ グーグルが世界を変えたジョン・バッテル 中谷 和男

日経BP社 2005-11-17
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star翻訳が悪すぎ
starネット業界で食ってる人はマジで必読でしょ!
starグーグルの凄さもヤバさもわかる一冊

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リンクで全世界のサイトが分散データベースに

Web2・0の中心的存在が、世界最大の検索エンジン、グーグルである。『ザ・サーチ』は、検索エンジンの歴史とグーグルのサクセス・ストーリーを中心にして、検索の仕組みを解説している。グーグルが従来の検索エンジンと違うのは、ウェブサイトの重要性を「ハイパーリンク」(サイトを引用する仕組み)の数で決めたことだ。リンクによって、全世界のウェブサイトが相互に参照する分散データベースになったのである。

新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く
新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解くアルバート・ラズロ・バラバシ 青木 薫

NHK出版 2002-12-26
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リンク数の分布を調べると、リンクの非常に多い少数の「ハブ」(グーグル、ヤフーなど)と、リンクの少ない大多数のサイトに分かれる「べき分布」になる。横軸にリンク数のランキング、縦軸にリンクの数をとって描くと、左上(ヘッド)のハブの部分が高く、右下(テール)のニッチの部分が長い「ロングテール」と呼ばれる双曲線(の正の部分)になる。

The Long Tail: Why the Future of Business is Selling Less of More
The Long Tail: Why the Future of Business is Selling Less of MoreChris Anderson

Hyperion Books 2006-07-11
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ロングテールは、社会現象によく見られる。たとえばアマゾン・ドットコムの扱う書籍は300万点以上になるが、その売り上げは少数のベストセラーと大多数の売れない本に分かれる。通常の書店の売り場に置ける本は数万点が限界だから、テールの大部分は切れている。

しかし、アマゾンには売り場面積の物理的限界はないから、テールの部分は限りなく長い。その結果、アマゾンの売り上げの半分は、ランキングで4万位以下の本が占めているという。

テールの部分こそ、従来は存在しなかった新しい市場である。その新しい市場を狙うために、消費者がこれまでに購入した商品の履歴を基にして新たな商品を推薦していくのが、アマゾンの「おすすめ」というわけだ。

また、グーグルは、検索で入力されたキーワードに関係のある広告を画面に出す。たとえば「ビジネス雑誌」と入力すると、検索結果の右側に『週刊東洋経済』の広告が出る。この広告料金は、広告代理店を通さないで、オークションで決められるものだ。

従来のマーケティングでは、ヘッドの「売れ筋」を狙って大量に宣伝する手法がとられてきたが、このような手法では、広告主にとって無駄が多いばかりでなく、消費者も不要な情報を見せられる。それよりも、アマゾンやグーグルのように、必要な情報を必要な消費者に提供するシステムのほうが効率が高く、消費者にも役立つ。

ユーザーが送る動画を見せるサイトに注目集まる

「ヘッド」と「テール」の分化する現象は、これまでも「ネットワーク外部性」や「ひとり勝ち」として知られていたが、Web2・0ではテールが伸び、ヘッドが低くなって市場が多様化する現象が注目されている。

この「べき分布」は、株価や為替レートにも広く見られる。従来の経済学では、こうした値動きをランダムウォークと考えることが多かった。だが、『ネット株の心理学』でも詳細に解説されているように、最近の「行動経済学」では、市場参加者の心理の動きに依存する一定の法則性があることに注目している。

ネット株の心理学
ネット株の心理学小幡 績

毎日コミュニケーションズ 2006-06
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star行動ファイナンス論的視点からのデイトレーダーの評価は面白い
starネットで買いました
starひとつ高い視点からの投資指南書

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次世代のインターネットの主役は、ブロードバンドを利用したビデオ配信だと思われてきたが(『融合するネットワーク』)、今のところ、これは大きなビジネスになっていない。著作権法などの制度的な障害もあるが、最大の問題は、在来のマスメディアをモデルにしてビデオ配信を考えていることではないだろうか。

融合するネットワーク
融合するネットワーク谷脇 康彦

かんき出版 2005-09
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ユーザーから送られた動画ファイルを見せる「ユーチューブ(Youtube)」というサイトが注目を集めているのは、それがWeb2・0的なブロードバンドのモデルを示しているように見えるからだ。

Web2.0 BOOK
Web2.0 BOOK小川 浩(サイボウズ株式会社) 後藤 康成(株式会社ネットエイジ)

インプレス 2006-03-01
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star「ロングテイル」といわれてびびらないために
star素人には手ごわいがこの程度は当たり前?
star今が旬の本ですね

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スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法
スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法ダンカン ワッツ Duncan J. Watts 辻 竜平

阪急コミュニケーションズ 2004-10
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star脆弱な法則?
star 『新ネットワーク思考』と一緒にどうぞ
starネットワーク網の設計

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民主化するイノベーションの時代
民主化するイノベーションの時代エリック・フォン・ヒッペル サイコム・インターナショナル

ファーストプレス 2005-12-09
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starリードユーザが主導する革新の時代
star先進ユーザによる自社製品の改良、革新:この資産を競争力に変えるヒント

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そのほかにも、Web2・0に関する事項をカタログ的に整理したものとしては、『Web2・0 Book』、ネットワークの興味ある特徴を分析した『スモールワールド・ネットワーク』、ユーザー中心の技術革新については『民主化するイノベーションの時代』などがある。



メイン > 東洋経済『テーマで探す現代を読み解く良書・話題本』 「円の支配者」と「世界の中央銀行」


『テーマで探す現代を読み解く良書・話題本』
週刊東洋経済 2006年8月12日・19日合併号 50~51ページ)

「円の支配者」と「世界の中央銀行」
日銀・FRBを知らずに経済は語れない

選者 専修大学教授 野口旭(のぐち・あさひ)
1958年生まれ。88年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。専修大学経済学部助教授を経て、97年より現職。



金融政策は、経済の成り行きにとてつもなく大きな影響を与える。その一例は、日本の「失われた10年」とアメリカの「すばらしき10年」という、1990年代における日米両国の経済実績の相違である。これは、両国の同時期における中央銀行の金融政策運営の巧拙によって生み出されたといっても過言ではない。だが、金融政策の担い手である中央銀行が、何を目的として何を行っているのかは、必ずしも国民には十分に知られていない。

ところが、日本では、長期にわたるデフレ不況が、日銀の金融政策に対する一般的な関心を高めることに大いに寄与した。日本は、1930年代の大恐慌期以来のデフレの下で、ゼロ金利政策と量的緩和政策という未曾有の政策を実行した。当然ながら、多くの専門家や当事者たちが、それらの政策の検証をさまざまな観点から行っている。

縛られた金融政策-検証 日本銀行-
縛られた金融政策-検証 日本銀行-藤井 良広

日本経済新聞社 2004-01-22
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star現役のジャーナリストが抉る日銀の金融政策の光と影
star不況レジームはいかに形成されたか

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ドキュメント ゼロ金利 ー日銀vs政府 なぜ対立するのかー
ドキュメント ゼロ金利 ー日銀vs政府 なぜ対立するのかー軽部 謙介

岩波書店 2004-02-28
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日銀はこうして金融政策を決めている―記者が見た政策決定の現場
日銀はこうして金融政策を決めている―記者が見た政策決定の現場清水 功哉

日本経済新聞社 2004-09
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おすすめ平均 star
star結構おもしろい

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日銀の金融政策は正しかったのか

『縛られた金融政策』と『ドキュメント・ゼロ金利』は、ゼロ金利政策からその解除と、その後の量的緩和政策の導入に至る速水優前総裁時代の日銀の波乱に満ちた政策決定過程を、ジャーナリストならではの手法で検証したものである。『日銀はこうして金融政策を決めている』は、福井俊彦総裁の就任によって日銀の何が変わったのかを、同様にジャーナリストの観点から検証したものである。

強い円 強い経済
強い円 強い経済速水 優

東洋経済新報社 2005-02
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ゼロ金利との闘い―日銀の金融政策を総括する
ゼロ金利との闘い―日銀の金融政策を総括する植田 和男

日本経済新聞社 2005-12
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おすすめ平均 star
starコンパクトな良書。惜しむらくは回顧録的要素の欠如か。
star量的緩和解除を考える
star流動性の罠に陥った時の金融政策について

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日銀はだれのものか
日銀はだれのものか中原 伸之

中央公論新社 2006-05
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エコノミストたちの歪んだ水晶玉―経済学は役立たずか
エコノミストたちの歪んだ水晶玉―経済学は役立たずか野口 旭

東洋経済新報社 2006-03
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『強い円 強い経済』『ゼロ金利との闘い』『日銀はだれのものか』は、それらの政策を担った当事者たちの証言である。評者著『エコノミストたちの歪んだ水晶玉』は、この間の金融政策への評価を含む。

これらの中で評者が最も感銘を受けたのは、速水総裁時代に日銀審議委員であった中原伸之氏の回顧録『日銀はだれのものか』である。中原氏は、経済状況の悪化に手をこまねくばかりであった速水日銀にあって、日銀執行部との対立と日銀政策委員会内部での孤立を恐れず、一貫して積極的な政策措置の実行を主張し続けた。本書を読めば、速水時代の日銀が曲がりなりにもゼロ金利政策や量的緩和政策を導入するに至ったのは、ひとえに中原氏の孤軍奮闘によるものであったことがわかる。

また、その中原氏の政策提案が、内外の優れた専門家との交流から生み出されたものであったことも示されている。福井時代へと続く日銀の5年にわたる量的緩和政策によって日本経済がよくやくデフレから脱却しつつあることを思えば、中原氏こそ日本経済回復の最大の功労者であったとさえいえる。

逆に評者が最も不満を感じたのは、中原氏と同時期に日銀審議委員であった植田和男氏の『ゼロ金利との闘い』である。植田氏の基本的な立場は、日本経済低迷の原因はデフレそのものではなく不良債権による金融システムの毀損であり、したがってゼロ金利政策にせよ量的緩和政策にせよ、その役割は本来的に補完的でしかなかったというものである。これは、より積極的な金融緩和措置の導入に抵抗し続けていた、速水時代の日銀執行部の政策論理そのものである。

評者にとってとりわけ受け入れ難かったのは、「1~2%のデフレのコストはデフレ克服策のコストよりも小さい」(185ページ)という本書の主張である。これは、「インフレ率の1%の変化は2・5~5%のGDPギャップに対応する」(145ページ)という本書のもう一つの言及とは矛盾する。GDPの5%にも及ぶ損失が「小さい」はずはないからである。デフレの弊害をかくも過小評価する植田氏が、政策当局者としてデフレ克服に積極的になれなかったとしても、それは当然である。

しかし、その同じ植田氏が、不良債権問題がほぼ解決されて以降も、日銀は量的緩和解除を慎重に行うべきという、それ自体は適切と思われる提言をしていた理由は、評者には不明である。

同時期の金融政策を対照的な立場から描いたこの二つの書は、金融政策遂行において個人の果たす役割の大きさをあらためて浮かび上がらせている。『ゼロ金利との闘い』は、学者的観点からの日本の金融政策に対する分析としては、評者のように立場の異なる者にとっても明快である。しかし、その筆致は一傍観者のようであり、中原氏に見える実践家としての果断さは少しも見られない。


中央銀行総裁の考え、力量が経済を決める

この傍観者的な印象は、前日銀総裁による『強い円 強い経済』でより一層強まる。読者は、速水氏の「強い円」なる個人的信念が、ニクソンショックなど政策当局者としての、氏自身の苦い経験から発したものであるらしいことを知ることができる。しかし、金融政策の最高責任者としての速水氏が、ゼロ金利とその解除、そして量的緩和へと至る金融政策の歴史的な歩みをどのような考えで主導したのかは、わずか二十数ページの断片的叙述からしか知ることができない。

このように、金融政策の現実は、中央銀行総裁の個人的識見や指導力が大きな役割を果たすことを示している。それは、アメリカにおいてもまた同様である。

グリーンスパン
グリーンスパンボブ ウッドワード Bob Woodward 山岡 洋一

日本経済新聞社 2004-05
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実際、90年代におけるアメリカ経済の繁栄は、しばしば米FRB議長アラン・グリーンスパンの巧みな金融政策運営によるものとされてきた。評者も、それは半ば真実であると考える。グリーンスパンについて書かれた本は数多くあるが、その決定版は、「マエストロ」と呼ばれる金融政策職人ぶりを世界最高峰のジャーナリストが巧みに描き出した『グリーンスパン』であろう。

ベン・バーナンキ 世界経済の新皇帝
ベン・バーナンキ 世界経済の新皇帝田中 秀臣

講談社 2006-01-20
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おすすめ平均 star
starマクロ経済学の超入門編としては良いが。。。
star日本経済論者の第一人者でもある新FRB議長のバーナンキノミクス
starあるべき金融政策

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バーナンキのFRB
バーナンキのFRB加藤 出 山広 恒夫

ダイヤモンド社 2006-03-03
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おすすめ平均 star
starバーナンキFRB議長を評価するヒントがある
star資料本として最適
starFRBの政策が分かった気がしました。

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グリーンスパンを引き継いだ新FRB議長ベン・バーナンキについても、すでに何冊かの本が出版されている。その焦点は、学者であったバーナンキの年来の主張であるインフレ目標を、FRBが明確に導入するのか否かである。『ベン・バーナンキ』はインフレ目標を強く肯定する立場から、『バーナンキのFRB』はインフレ目標に対してやや批判的な立場から、バーナンキのこれまでの研究、政策提言、言動等を分析している。FRBがインフレ目標を導入すれば日銀もそれに追随するのはほぼ確実であるから、FRBのこの課題は、同時に日本の課題でもある。



メイン > 東洋経済『テーマで探す現代を読み解く良書・話題本』 格差問題をどう考えるか


『テーマで探す現代を読み解く良書・話題本』
週刊東洋経済 2006年8月12日・19日合併号 52~53ページ)

格差問題をどう考えるか
是非を論じるより原因と事実の究明を

選者 大和総研チーフエコノミスト 原田泰(はらだ・ゆたか)
1950年生まれ。東京大学農学部卒業、1974年経済企画庁入庁、内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官などを経て2002年から現職。



小泉改革路線が格差を生み出したという議論が盛んだが、事実として、小泉政権になって格差が拡大したのか、小泉政権のどの政策が、どのようなメカニズムで格差を拡大させたのかという議論は何もなされていないようだ。

事実と理論に基づかない政策が行われれば、逆効果にはならなくとも、無駄になる可能性は高い。まずは、事実とメカニズムの理解が重要だ。そのために必要な本として、定番的な本から紹介していきたい。

不平等社会日本―さよなら総中流
不平等社会日本―さよなら総中流佐藤 俊樹

中央公論新社 2000-06
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おすすめ平均 star
starエリート階級は相続される
star結果悪平等な総中流政策がなくなっただけのこと
star格差社会の本質に迫った名著

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『不平等社会日本』は、上級ホワイトカラーになれるチャンスが、戦前以上に、世代を通じて固定しているという。固定化は「生まれ」それ自体よりも、「生まれ」のもたらす機会によって生じている。

フランスのような代々その文化資本が受け継がれる形でのエリートの再生産ではなく、○×テストのような、より客観的な指標による選抜であるがゆえに、階層固定化の仕組みは見えにくいものになる。同時に、この見えない固定化は、エリートの空洞化をもたらすとする。クイズのようなテストの勝者がエリートであるなら、エリートの責任感を風化させるというわけだ。

階層の固定化は社会の活力を失わせる

しかし、そんな勝者がエリートの役割を果たせなければ、別の人間がエリートとして現れてくる。バブル崩壊後の日本を見れば、そう心配することはない。別のタイプの人間が現れて、政財官で新しいエリートとなっていると私は思う。問題は、階層の固定化が多くの人のやる気をそぐのではないかということだ。

階層化日本と教育危機―不平等再生産から意欲格差社会(インセンティブ・ディバイド)へ
階層化日本と教育危機―不平等再生産から意欲格差社会(インセンティブ・ディバイド)へ苅谷 剛彦

有信堂高文社 2001-07
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『階層化日本と教育危機』は、類似の視点を、教育に重点を置いて述べる。学習意欲の低下が、特定の階層の子供に顕著だ。教育は社会上昇の回路であったが、現在はむしろ固定化の手段になっているという。

希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く
希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く山田 昌弘

筑摩書房 2004-11
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『希望格差社会』は、日本は将来に希望が持てる人と絶望している人に分裂していると指摘する。1990年代から、企業はグローバルな競争の中で生き抜くために、クリエイティブな能力、専門的知識を持った労働者と同時に、マニュアルどおりに働く単純労働者を必要とするようになった。

二極化する仕事に対応して、企業は雇用行動を変えた。専門的・創造的労働者は企業の中核労働者として自社で育て囲い込もうとする。一方、代わりが効きマニュアルどおりに働けばよい単純労働者は、コストを下げるためにパートに置き換えようとする。

仕事の質の二極化に対応して、労働者のステイタスも二極化する。将来の希望が持てる定職に就いている人と、実現性の薄い夢しか持てないフリーターに二極化していることが、希望格差社会だという。

仕事は人々にアイデンティティを与える。仕事を通じて、社会から認められているという感覚を得て、生きる糧にしている。そのような感覚から阻害された人々が大量に出現すると、社会は不安定になるという。

私は、現実の仕事はそれほど極端に分化していないと思う。日本は、マニュアル化された仕事ではなく、気を利かせた仕事により高い値段を払いたがる社会だと思う。

下流社会 新たな階層集団の出現
下流社会 新たな階層集団の出現三浦 展

光文社 2005-09-20
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『下流社会』は、そこにいる人々の意欲に注目する。「下流」とは単に所得が低いのではなく、働く意欲、学ぶ意欲、消費意欲が低いことだと指摘する。女性の正規社員では自分らしさを表現する言葉として、「てきぱき」「品がよい」「人付き合いが上手」などと答えるが、非正規社員では「一人が好き」「のんびりした」「こだわりが強い」と答えるという。

では、どうすればよいのか。社会にある不平等を、自由、個性、オンリーワンなどという言葉で隠している大人の欺瞞を暴き、だからこそ努力しろということになるのだろうか。

日本の不平等
日本の不平等大竹 文雄

日本経済新聞社 2005-05-24
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『日本の不平等』は、詳細な実証分析の集大成である。高齢化が所得の不平等化の原因であるということだが、同時に生涯所得の不平等化が進んでいる可能性もあるという。

年をとれば不平等になるというのは仕方がないことと私は思う。人々の才能、努力、運は、年齢とともに累積的に所得格差をつくり出していく。年金というセーフティネットを維持し、高所得高齢者の年金に課税することが必要だろう。

では、若者の間の格差はどうだろうか。階層化とは若者の格差が拡大することだ。残念ながらこのことについての著作はないようだが「フリーターの増加と労働所得格差の拡大」という論文は、若年の所得格差が拡大していることを示す。これは、非正規雇用の増大の影響が大きい。若年者が職業能力を獲得する機会を持てるようにすることが重要だ。

新・東京23区物語
新・東京23区物語泉 麻人

新潮社 2001-08
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残念ながら絶版で、ネットで手に入れるほかないが、泉麻人『新・東京23区物語』もある。85年の『東京23区物語』の2001年改訂版だ。23区の微妙な違いと階層意識に関する皮肉な観察眼が充満している。

不平等、貧困と歴史
不平等、貧困と歴史ジェフリー・G. ウィリアムソン Jeffrey G. Williamson 安場 保吉

ミネルヴァ書房 2003-06
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『不平等、貧困と歴史』は、19世紀から現在までの工業化と不平等がどのような関係にあったかを考察する。碩学の著作を要約するのは遠慮して、一つだけ意外な事実を紹介する。英国では、1834年の「国家のお慈悲」による高齢給付金の水準は、現代福祉国家の老齢年金よりも相対的には高かった。低所得労働者の市場賃金に対する比率は、サッチャー政権以前のそれの2倍だったという。


格差発生のメカニズム究明こそ重要

不平等に対して、どうすればよいのか。私は、不平等がグローバル競争の中で日本が豊かであり続けるために必要ならば、仕方がないと思う。

しかし、所得格差のすべてが、社会全体の富を増大させるために必要なインセンティブであるとは思えない。詐取、制度、規制、不必要な試験による参入制限などで生まれる所得格差をなくして、その後の不平等に対処することを考えればよいと思う。そのためにも、まず格差の生まれる原因を究明することが第一だ。



メイン > 東洋経済『テーマで探す現代を読み解く良書・話題本』 日本の資本主義をあらためて問う


『テーマで探す現代を読み解く良書・話題本』
週刊東洋経済 2006年8月12日・19日合併号 54~55ページ)

日本の資本主義をあらためて問う
歴史と現実を踏まえた本源的な株式会社論を

選者 経済評論家 奥村宏(おくむら・ひろし)
1930年生まれ。岡山大学卒業。産経新聞記者、日本証券経済研究所研究員、龍谷大学教授、中央大学教授などを歴任。専攻は株式会社論。



ライブドアによるニッポン放送株の取得から始まって、村上ファンドの阪神電鉄株、楽天のTBS株買い占めと、「劇場型買い占め」事件が続発する中で、村上ファンドに関係した福井俊彦日銀総裁、さらにはオリックスの宮内義彦会長へと事件の波紋は広がっていった。

バブル崩壊後、15年もの長期不況からようやく抜け出したと思われたところで起こったのがこれらの事件であった。

これで日本でもいよいよ本格的なM&Aの時代が始まった、とマスコミは騒ぎ、ホリエモンこと堀江貴文氏や村上世彰氏の演出に振り回されたが、はたしてこれらの事件が意味するものは何であったのか。

ライブドア資本論
ライブドア資本論佐々木 俊尚

日本評論社 2005-06
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おすすめ平均 star
star客観的な分析
star【外からライブドア(ホリエモン)を見る】
star淡々とした広範囲の分析

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それまでアメリカから輸入された株主資本主義論が日本でも流行していたが、ライブドアや村上ファンドによる株の買占め事件はあらためて「会社は誰のものか」という問題を投げかけた。

『AERA』の記者が書いた『ヒルズ黙示録』はライブドア、そしてホリエモンに密着取材を重ねてきたものだけに、ライブドアとニッポン放送株取得についてのいきさつとその内幕に詳しい。

ヒルズ黙示録―検証・ライブドア
ヒルズ黙示録―検証・ライブドア大鹿 靖明

朝日新聞社 2006-04
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事件の過程で、ニッポン放送とライブドアとの和解案が日本経団連関係者から提案されたが、この案にライブドア側が応じるかどうか、感触を探ってほしいと弁護士から頼まれ、著者がライブドアの幹部に当たったという話が出てくる。報道記者がこんなブローカーのようなことまでするとは、あきれた話だ。

著者は「ライブドア事件は、規制緩和が進んだ新自由主義の行き過ぎを是正するうえで、起きるべくして起きた事件といえる」といい、日本が規制緩和と過剰流動性の時代から転換していこうとする段階で起こったのがライブドアに対する強制捜査であったとする。だが、では、どのような時代に転換していくのか、という点になると、著者の見方はあいまいである。

ライブドア監査人の告白
ライブドア監査人の告白田中 慎一

ダイヤモンド社 2006-05-26
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おすすめ平均 star
starアカウントをやっている人は必見です
starプロフェッショナリズムと当時の心境
star会計士としての信念に感銘

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ライブドアから村上ファンドへと焦点は移っていったが、村上ファンドの発足から阪神電鉄株の買占めに至るまでのいきさつについては『村上ファンドの研究』が詳しい。

村上ファンドの研究―巨大メディアを狙う「ヒルズ族」の野望
村上ファンドの研究―巨大メディアを狙う「ヒルズ族」の野望水島 愛一朗

イーストプレス 2005-12
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star結果として「正しかった」のか?
starキャバンクラブさんへ
starで?

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その後、村上ファンドについては新聞や週刊誌、そして月刊誌が次から次へと特集を組んでいるが、『週刊東洋経済』の2006年5月20号と6月17日号の特集が最も詳しい。この記事を書いた記者たちが村上ファンドを徹底的に解剖したのが『トリックスター』である。

トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇
トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇『週刊東洋経済』村上ファンド特別取材班

東洋経済新報社 2006-07-28
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村上ファンドが仕掛けたさまざまな株の買い占めについて詳しく追うと同時に、村上世彰の生い立ち、そして小学生時代から通産官僚時代にまで至る人脈などについて詳しく書かれている。

ライブドアや村上ファンドに対しては、無法者としての批判がある一方で、旧来の体制に挑戦した、志ある若者として評価する声も多い。

これに対し、『トリックスター』の著者たちは徹底的に村上ファンドを批判しており、読んでいて小気味よい。しかし同時に、なぜライブドアや村上ファンドが生まれてきたのか、という点についてはあまり触れていない。

彼らは日本の株式会社のこれまでの矛盾をついて、それで儲けようとした「壊し屋」であった、というのが評者の見解である。

乗っ取り屋と用心棒―M&Aルールをめぐる攻防
乗っ取り屋と用心棒―M&Aルールをめぐる攻防三宅 伸吾

日本経済新聞社 2005-12
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会社は誰のものかがあらためて問われる

株式会社の買い占め事件が起こると、当然ながら「会社は誰のものか」という議論が出てくる。そこで「会社は株主のものだ」という株主資本主義の主張が出てくるのだが、アメリカの株主資本主議論は1980年代に、機関投資家が大株主になった段階で起こってきたもので、それ以前にはそんな議論はなかった。この歴史的背景を知らず、アメリカは昔から株主資本主義であったというような議論をする者が多い。

会社は誰のものでもない。―21世紀の企業のあり方
会社は誰のものでもない。―21世紀の企業のあり方奥村 宏

ビジネス社 2005-09
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株式を買い占めて会社を乗っ取るというのは、会社の支配権を奪うということであって、会社を自分のモノにしたということではない。

会社はだれのものか
会社はだれのものか岩井 克人

平凡社 2005-06-25
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会社はこれからどうなるのか
会社はこれからどうなるのか岩井 克人

平凡社 2003-02
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star会社の仕組みがすっきりわかる。
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岩井克人氏はかねてから、「会社はヒトであると同時に、モノである」と主張してきたが、『会社はだれのものか』でも同じ主張を繰り返している。この本では「ライブドアとフジテレビ」を例にして議論しているのだが、岩井氏の前著『会社はこれからどうなるのか』(平凡社)と同じように、いささかスコラ哲学風で、現実から理論をつくり出していくというものではない。

株式会社に社会的責任はあるか
株式会社に社会的責任はあるか奥村 宏

岩波書店 2006-06
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この岩井氏の主張に対して、評者は『株式会社に社会的責任はあるか』(岩波書店)などで批判している。そして『会社は誰のものでもない』と『粉飾資本主義』で、21世紀の今、株式会社が危機に直面している、という視点から歴史的にこれらの問題をとらえようとした。

粉飾資本主義―エンロンとライブドア
粉飾資本主義―エンロンとライブドア奥村 宏

東洋経済新報社 2006-06
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ライブドア、村上ファンド、そして楽天はこれからどうなるのか、ということから、福井日銀総裁や宮内オリックス会長はどうなるのか、ということにマスコミの関心は移っている。一連の事件が意味するところは大きく、時代の転換を告げるものだけに、今後、これらに関する本がまだまだ出てくるだろう。

その際、起こっている事件を歴史的に位置づけるとともに、それが何を意味するのかを理論的に明らかにすることが必要だ。

エンロン事件などについて、アメリカではジャーナリストによる書籍がたくさん出ている。株主資本主義やコーポレート・ガバナンスについての教科書的な本よりも、こうした本のほうがよほど有益である。

なぜ企業不祥事は起こるのか―会社の社会的責任
なぜ企業不祥事は起こるのか―会社の社会的責任ローレンス・E. ミッチェル Lawrence E. Mitchell 斎藤 裕一

麗澤大学出版会 2005-11
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『なぜ企業不祥事は起こるのか』は投資銀行業界で現実の問題に接したあと、大学教授になった著者が書いたものだ。この本では株主資本主義論を批判するだけでなく、そもそも株式会社とは何か、という根本問題にまで立ち返って議論している。

株式会社が引き起こしているさまざまな事件を見つめると同時に、これを歴史的にとらえることで、新しい株式会社論を打ち立てていくこと、これこそが今求められている。



 
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